四話 序章その四:引退生活はセクシーな問題だ。
前回までの『おれ天』!!
スピ〇ツとラピ〇タと〇牙
さて、今の状況を説明しておこう。
場所は俺の家。
時刻はそろそろ日をまたぐ頃。
目の前には縛られたカナフ。
もちろん、縛り直した。今回は俺の煩悩を刺激しないようになるべく平和的な縛り方をしたのだが、どうしてもエロく見えてしまう。
ので、俺にSっ気があるんだということにして諦めた。ナットからは汚物を見るような目を向けられて、それでもムラっときてしまったのは、今後の立場のために黙っておいた。
『でもさ、テト。どうするのさ、こんまま帰してもまたやってくるだけだよ』
気を失っているカナフを見て、ナットは問うてきた。
「そうだよな、でも彼女、一人暮らしとか絶対させちゃあいけない人間だろ。なんかやらかして天界に目を付けられるのはごめんだ。天界に帰すってのが論外とすると、やっぱりカナフはここに住むしかないのか…………」
『ごめん、テト。聞こえなかった。もう一回言ってくれる?』
ナットの目が笑ってない。
怖い。ここはバカのふりをしよう。
「? 『天界に目を付けられたくはない』ってとこ?」
『違うよ! 普通逆じゃあない、それ』
「だよな。カナフをここに住ませたいんだけど、ダメなのか?」
『ぬぅわんだってーーーー‼』
え、なに?
リアクション新鮮過ぎない?
こういうやつって、聞いてて分かった上で威圧のための表現じゃあなかったのか?
これじゃあ、知的で圧力のある人から情緒不安定の人に変わっちまうじゃあないか。
『テト、今この女と同棲したいって言ったの?』
「なんだよ、同棲って。人聞きの悪い。それだと俺が下心増し増しでカナフと暮らしたいって言ってるみたいじゃあないか」
『似たようなもんだろ。毎朝「おはよう」って言ってさ、狭いキッチンでご飯は一緒に作ったりして、日中はイチャイチャしてさ、そんで夜は二人でお楽しみするんだろ!? そんなのボクが許すと思ってんの? リア充生活なんて、爆発しちまえば良いんだッ!』
この国の結婚年齢引き上げてるのはお前が原因だったか。
反リア充の天使に一億人託すなんて人選ミスってんだろ。
「じ、じゃあ、どうすれば良いんだ? 一つを除けば、何か対案があれば喜んでそれにするよ」
『この女を始末する』
「ざ、残念だが、そいつがダメな一つだ」
こんなとこでカッコ良い台詞使いたくなかった。
しかもなんだよ。『始末する』って。怖いわ。
あれか? ナットってメンヘラって奴だったりしちゃうの?
『ってのは冗談』
「でも、対案はないってことか」
『そう、分かるでしょ? ボクの気持ち。心配なんだ。彼女を悪く言うつもりはないけれど、彼女、いつ爆発するか分からないダイナマイトじゃあないか。テトと一緒に居たって、それが幾分かマシになるだけ。なにか彼女の関心を削ぐものがないと、絶対何か事件を起こすよ』
ナットの声色は、柔らかだった。
天界でもカナフの嵐のような性格は有名だ。
なにしろ、世界最古の天使で、仕事から逃げ出そうとする神を毎日追い回しているのだから、有名にならない方がおかしい。
その気質も、どうやったらそれが収まるのかも、俺に近い天使ならだれでも知っていた。
「でもなー」
『そうやすやすと見つからないよねぇ』
それを見つけるのは簡単なことじゃあない。
俺とナットは頭を抱えた。
ナットはどうか分からないけれど、俺はただ頭を抱えただけだ。
その内になって何も考えてなんかいない。こうしていればナットが何か妙案を思いついてくれるもんだ。
『三人寄れば文殊の知恵』といっても馬鹿が三人集まっても馬鹿が三倍になるだけだし。
「ん?」
見えたのは、無造作に置かれてあったギャグマンガ。
内容は生徒会の面々がドタバタする脳内ピンク色のコメディだ。
俺、妙案思いついちゃったかも。
*
それから数日経って、俺たちは大勢の前でさらし者にされた。
「あ、あの、カナフって名前だとご出身は北欧の方でしょうか?」
「……」
一人の男子が質問するが、カナフは答えようとしない。
周囲からは答えたくないように見えるのだろうが、実際彼女に出身地なんてないんだから答えようがない。
「そうだよ、彼女は……」
「お前には聞いてねぇよ、黙ってろモヤシ」
「……さいで」
俺の助け舟も虚しく質問者の彼に拒絶されてしまった。
てか、口調厳しくねぇ?
美女の隣にいるだけでそんなにつらく当たるか、普通?
『今の彼、カーストのトップだよ』
「なに分かんの? ナードさん」
『ボクの鋭い観察眼をもってすればお茶の子さいさいよ。あと、クソヲタク言うなし』
片方の耳に付けたイヤホンから聞こえるナットとこそこそ話している間、カナフはまだ答えていなかった。
「カナフさん、何か答えないと怪しまれちゃうよ」
「でも、何て言えば良いのか……」
「適当で良いんだよ、どうせ誰も覚えないんだし」
「そうか、じゃあ適当で良いんだな?」
「そうそう、あることないこと言っちゃいな」
「分かった」
そう言うと、カナフは大きく息を吸う。
その姿は、引っ込み思案な美少女が思い切って大衆の前で発表するような儚さがあった。
「出身地は北欧で合っている。隣のテトも同じでな、私たちは昔から一緒に過ごしてきた。お前らの言う『幼馴染』ってやつだ」
カナフさんッ!?
周りに人達の目線が痛い。
てか、なんで俺を睨むんだよ。訳が分からん。
「じ、じゃあ、お二人は、その、あれなんですか?」
ほら! 彼、勘違いしてんじゃん。
「あれとは何だ?」
「カナフさん、カナフさん。直接的な表現は避けて。色々と危険だから、主に俺が」
「? 分かった」
たぶん分かってないだろ。
なに一丁前に考えてんだよ。
「この前、テトに告白された上、自宅で緊縛された。他の女がいるというのに二回も」
『あれ』を何だと思ったんだッ!?
この空間で、今俺の人権がなくなったんだけど。
おい、なに得意げにグーサインしてんだ、ぶっ飛ばすぞ。
『大丈夫だよ、テト。テトは神様だから、人間に殺されても転生できるよ』
「分かってるよ、そんなこと」
さて、今の状況を説明しておこう。
目の前には、俺に敵意をむき出しにする30人前後の集団。
時刻は、ニートにはきつい朝の8時30分。
場所は、青春の舞台とも名高い『学校』である。
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