爆弾
爆弾は置いといて、ミサイルといえばテポドンが脳裏に浮かびます。
ふと、母から言われたことを思い出した。
「あんたは爆弾みたいだ…… 」
何故だろう?その続きが思い出せない。何か大切なことだった気がするんだが。
ガンッ
頭を思い切り壁に叩きつけられ、意識が現実に戻った。
「ははっ、やっとお目覚めか。ここがどこだか分かるか?」
私は回りを見て今までの状況を理解し、その元凶を見つめた。私を拉致監禁した奴を。
「分かったようだな。そうさ……」
私はすべてを失った。金も、友も、家族も、社会的立場も、男としての生き方も。
すべては私に復讐を行った目の前の奴が原因。
奴が今まで私に行ってきた行動、復讐を、歪な笑顔で語る。
どんな方法で、家族がどんな表情で最期を迎えたのかを。
友を私の側にいられない環境下に置き、監禁し殺す直前の表情を。
私の金が自然と失くなる仕組みを。
私の社会的立場を破壊し、男としての物理的な生き方が出来なくなる為の仕組みを。
奴は自信満々に、どう苦労して、この偉業の数々を世間にもばれずに行えたかを語った。
私は奴の話を聞けば聞く程、心が無に近づく。最近の私は増え続ける不幸な事故や事件に巻き込まれる家族、友人の話で、心は疲弊していた。
多分私は、奴を死んだ目で見てる。既に死んだ感情は、怒りや悲しみなどの懐かしい感覚を私にもたらすことなく、ただ今を認識させる。
精神が、心が、死んでいると言うのに、身体が無意味に鼓動を鳴らす。
「聞いてんのか!おいっ!」
ゴンッ
再び、頭を壁に叩きつけられた。
「いい加減にしろ!」
「……」
それでも黙ってる私に痺れを切らし、奴はぶち切れて包丁を刺した。
「なにっ笑ってんだよ!」
そうか。死んだ心に身体がついてくると思って、私は自然と笑っていたみたいだ。
それを認識した瞬間、心に火が着いたかのように熱くなった。そして、最後の言葉を吐いた。
「最期に私からもささやかな復讐をさせてもらおうと思ってね」
そう言った瞬間辺りが真っ白くなり、轟音と衝撃がその場を支配した。
その場には、最初から何も無かったかのような更地と化した。
爆発の前に、私は母から言われたことを思い出していた。
「あんたは爆弾みたいだ。人型時限爆弾付アンドロイド、それがあんただ。あんたが全て失ったと認識し納得した瞬間に爆発する。
だがな、絶対に人として生きていけるように育ててやるからな。楽しみにしてろよ」
それを聞いた私は泣きながら笑っていた気がする。
あぁ、ごめん。母さん、もう無理だ。今行くよ。
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