あったの?
「へぇ~、水引ねぇ」
「福引きで3等が当たった」という言葉に反応した母は、私が見せた3等のはつね糸を見てやや落胆した様子で言った。
「なんか、長浜って三味線の弦が有名なんだって。知ってた?」
「昔、なんかで聞いたことがあるわね。お義母さんだったかしら?」
母にそう言われ、思い出したことがあった。
5年前に亡くなった祖母は、三味線を趣味にしていて閉じられた戸の向こうから音がよく漏れていた。
晩年は手の自由がきかず三味線自体に触れることがなくなっていたが、それ以前はたまにお祖母ちゃんから手ほどきを受けていた記憶があった。
――懐かしい思い出だ。
「でも、そんなのを水引にするのは、なんか勿体ないわね」
「あっ、やっぱそう思う?」
お母さんも、私と同じことを思ったらしい。
仕方がないとはいえせっかく与えられた役目を果たせず、別な物に使われるというのは本望じゃないだろう。
「三味線――確かまだお義母さんの部屋にあったと思うけど」
「まだあるの?」
「確か、ね。亡くなったあと誰も片付けていないから、生前に整理していなければどこかにあるはずよ」
「ふ~ん……」