4 神条冬也
冬也視点です
俺はある日、一人の少女と出会った。その少女はひどく痩せ、部屋の隅で膝を抱えて座っていた。少女は突然部屋に入って来た俺を、ただじっと動かずに見つめる。俺は、少女の纏う気配になぜかとても惹き付けられた。運命のようだと思った。まさか、この俺がそんな事を思う日が来るとは。愛しいという思いがこみ上げてくる。俺は、この子と出会う為に生まれてきたのだと思った。思わず差し出していた手を、少女は困惑したように見つめる。少し首を傾げる姿が、可愛いと思った。抱きしめた少女の体は、骨ばっていて折れそうだった。驚いて固まる少女の髪は灰色で、ボサボサに伸びていた。前髪が顔を覆っているため、顔と目の色はわからない。抱き上げてみても重さがほとんどない。俺は何故もっと早く来なかったんだと、後悔した。
「あっ!神条社長ぉ~。今日はいらしてたんですね!お会い出来て嬉しいですぅ~。良ければ、お昼ご一緒しませんか?」
会社に出てくると、間延びした話し方で女が近づいてきた。確かこの女、新入社員だったな。可愛いらしい容姿(まあ、美恵には足元にも及ばないが。)をしているらしい。(どうでもいい。)
「何故俺がお前と昼食をとる必要がある」
そう言って、離れようとしたその時、
「えっ!あ、あの、私はただ、社長に喜んでもらえたらと、思っただけなんですぅ~」
女が俺の腕にしがみついてきた。気持ち悪い。すぐに腕を振り払ってその場をあとにした。
その後も、社長室から出る度に話しかけてくる。こいつ仕事してるのか?後で調べさせるか。にしてもこの女うざい。ベタベタ触って来て気持ち悪い。俺は社長室に戻り、秘書にしばらく誰も入れないように伝えた。
俺は秘書が出ていったのを確認すると、服の下に隠していた、ロケットペンダントを出す。金と白銀の装飾で、真ん中に赤い石がはめ込まれている。これは、去年、俺の誕生日に美恵がくれたものだ。開けると、俺が自分で入れた美恵の写真がある。最初、灰色だと思っていた髪は、汚れていただけで、本当はとても美しい白銀だった。傷んだ髪と一緒に前髪も切った。驚いたことに、美恵の瞳は右が赤色、左が金色だった。
はぁ、癒される。美恵可愛い。早く帰って、美恵と過ごしたい。滅多にない、美恵の笑った写真。
カワイイカワイイカワイイカワイイカワイイカワイイカワイイカワイイカワイイカワイイカワイイ
ひとしきり癒されるとペンダントをしまった。
「美恵~ただいま~」
「お帰り、冬也」
会社が終わり、家に帰ると、美恵が抱きついてきた。美恵は成長するにつれて、どんどん綺麗に、可愛くなっていく。悪い虫がつきそうで心配だ。
はぁ、やっぱり美恵といると癒される。今日は、面倒なのがいたから疲れた。抱きしめる腕にいつもより力が入ってしまった。美恵に言われて気付いた。
夜は、今日のことを話して心配した美恵が一緒に寝てくれることになった。
俺としてはもう少し男として認識して欲しいと残念にも思うが、俺以外とは一緒に寝ないどころか、同じ空間で寝ないので、嬉しくも思う。
美恵は外に出る時なんかは、黒のカラコンに前髪の長い黒いウィッグをかぶります。
ちなみに、冬也は外国人の血が入っているので、髪は黒ですが、目は青いです。