A journey of unreachable love -Prologue-
少女は昔、小さな国のお姫様でした。
お姫様にはひとりの騎士がいて、その騎士はお姫様に忠誠を誓っていました。
長い時間を共にするふたりは、互いに惹かれ合い、
深く強い絆で結ばれていきました。
しかし、お姫様には自分でも知らない秘密があったのです。
"愛する人を想うほど その人との記憶が消えてしまう"
それはお姫様が産まれてまだ間もない頃。
小さな国に未曾有の大飢饉が訪れました。
田畑は痩せ、作物は実らず、
雨は一滴も降らないほど強い日照りが続いていました。
このままでは民が苦しみ続けると思った国王は、神に祈りを捧げました。
「どうか神様、我らとこの国をお救いください。
この祈りと我が愛娘を女神イシュタルの御名を通して御前にお捧げ致します。」
どんな手を打ってもこの大飢饉を乗り越えることは出来ないと悟った国王は、
産まれたばかりの愛娘の生命を捧げてでも国を救おうとしたのです。
もうそれ以外に残された道は無かったのです。
それを見た女神イシュタルは、民を思う国王の優しさを汲み、
愛娘の生命を奪うことなくこの小さな国に手を差し伸べました。
しかし、女神は愛娘であるお姫様の生命の代わりにひとつだけ奪ったのです。
「人を愛する」ということを。
これがお姫様の秘密であり呪い。
誰かを慕い、愛情を抱いてしまうとその人との記憶が徐々に消え、
最終的には全て無くなってしまう。
その人の顔や名前だけではなく、思い出や慕う気持ちまでも忘れてしまう哀しい呪い。
この秘密をお姫様が知ることになるのは、誰かを慕い、愛したときでした。
記憶が消えてしまってから数ヶ月後のある日、
お姫様はひとりの少女として旅に出ることにしました。
騎士と共に、思い出を巡る旅に。




