2枚目-嫉妬-
寒い日は、コタツでぬくぬくしながら冷凍みかんを貪りたい。。
『…どこ…ここ…。』
頭上の窓から、太陽が差し込み僕の目の前には、知らない天井が広がっていた。
僕は起き上がり辺りを見回すけれど誰もいない。
呆然としていると、扉の向からとても素敵な匂いがした。
ガチャ…
『あ。起きたんだ。おはよう』
要さんが、優しく微笑んでくれて僕は、少し心が跳ねた。
『お…はようございます…えっと…ここは要さんのお家ですか?』
『フフっ…そうだよ。九澄くん嫌いなものはない?』
『あっ、はい!特に無いです。えっと…泊めてもらってありがとうございました…ご迷惑をお掛けしてすみません…』
僕がそう言うと、要さんは優しく微笑んで『さあ、朝ごはんにしよう』と、小麦色に焼けたパンと目玉焼きとサラダを机の上に並べた。
要さんが作ってくれた朝ごはんは、今までに味わったことがないぐらい美味しかった。
僕は『ご飯、とても美味しかったです!…ありがとうございました…お邪魔しました。』そう要さんに言い残し扉を閉めようとした時『また、来てね』と優しく微笑んだ。
そして、要さんの家に泊まってから2週間が経った。
あれから、連絡先を交換して頻繁にメッセージをやり取りすることが多くなった。
【九澄くんへ
最近仕事は順調?無理はしないでね。身体にあまり良くないから(o^∇^o)ノまた、遊びに来てね。メールの返事待ってます。
要より】
相変わらず、要さんはメールでも優しかった。
【要さん
仕事は、まぁ…大丈夫です。お気遣い、有難う御座います。】
僕は、正直メールで感情を文章に乗せるのが苦手で、あまり得意ではないから、いつも面白くもない文章しか打てない…
なので、送ったあとでとても罪悪感を感じる。
でも、要さんは『九澄くんらしくていいと思うよ。』といつでも優しかった。
ある日、要さんのお宅にお邪魔した時、1枚の写真が目に入った。
綺麗な写真縦の中に写っているのは、要さんと白いワンピースを着た綺麗な女の人が二人で写っている写真だった。
その写真を見た時に少しだけ、心がズキっと痛んだ。
『あ。その写真ね、僕の元彼女なんだ。』
僕は、てっきり出会ったのがゲイバーだったから、要さんはゲイだと思っていた。
『要さんは、ゲイではないんですか?』
『え?あ〜…そうだね。ゲイではない…かな。』
僕は、少しだけ悲しくなって、それ以上は聞けなかった。
それから、少し沈黙が続いて
『……あのっ、僕ずっと思ってたんですけど、要さんっていい匂いしますよね!何か香水とか付けてるんですか?』
僕は、沈黙に耐えかねて要さんに話題を降った。
すると『…え?あ〜…そうだなあ特につけてないよ。香水はあまり好きじゃないんだ…あはは』と、要さんは眉をひそめて笑った。
『あの…さっきの写真の人、まだ好きなんですね』
と何故かポロっと口に出してしまい、僕は慌てて自分の口を両手で塞いだ。
『ん〜…そうだね…そうかもしれない。ひきずられてるのかもしれないね。』
僕は、自分でもっと悲しくなった。
数日後、僕は偶然要さんを街中で見かけた。
すると、綺麗な男の人(たぶんΩ)と二人で夜の街へ消えて行った。
それから、何度か要さんを見かける。
車を運転していたり、建物に入って行ったり、何故こんなにも要さんを見つけてしまうのか、自分でも不思議だったのだが、要さんが近くにいる時はとてもいい匂いがする。
でも、要さんはβだと言うからフェロモンなわけないと自分自身に言い聞かせていた。
あの一件があってから、僕は要さんのメールに返信をしていなかった。出来なかったんだ。
そして、要さんはいつも誰かと一緒にいる。
その光景を見るだけで、吐き気がした。
「悲しい…哀しい?どうして?なんで?僕はどうしてこんなに悲しんでいるの?わからない。なんで?なんで!!!どうしたんだよ。ぼくは…要さん!助けて!!要さん!!!あっ、ダメだ…要さんは好きな人がいるんだ…え、だからダメ?え?好きなの?まだその女が好きなの?なんでどうして!別れたんでしょ?なのに、なんで?僕の方が要さんのこと好きなのに!!!!!!!!…え…?まって…僕は…要さんの事が…好……き…?ゴホッ…」
・・・僕は、そのままコンクリートに叩きつけられた。
その時見えた最後の景色は、赤い液体とシクラメンの赤い花びらだった。
シクラメン【赤】-花言葉-
"嫉妬"