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異世界小説書こうと思ったら・・  作者: 希灯路(きひろ)
序章 『これは現実?夢の世界?』
6/6

第6話 「本当の仲間」

「はぁぁぁぁあ!!落ち着いたぁーー!」

マミの声が響く。

隣でヤガミがひどく落ち込んでいた。

マミの落ち着くような言葉を探し、

かけつづけ彼女を和まし、励まし・・・

それが終わると、

反転、

今度はマミの怒れる罵声が彼をこのようにしたのだった。

「センパイ、何考えてるんですか!!」

「バカですか!バカなんですか!!」

「あんな単純に突っ込んでいくとか死にたいんですか!!」

「ぶっちゃけセンパイ!!ナイフで5匹いけましたよねっ!!」

「カッコつけたかったんですか!」

「格好つけたかったんですか!」

「バカなんですね!!おバカなんですよねっ!」

「・・・・」

「・・・・」

延々と続くかと思ったその怒りの声にヤガミだけじゃなく、

シエラもなぜかシュン・・となる。

それが終わっての、ようやくの現在であった。

新たにヤガミは心の中で誓う。

「マミは怒らせてはいけない・・・」・・・と。

地球では多少、怒らせたこともあったがここまでとは・・・

「マミちゃん・・・あの頃の君は・・・」

高校を卒業して社会人になったばかりの真実の姿が思い出される。

「なんですか?センパイ!!」

心の中を読んだのだろうか、マミはぐいっと胸ぐらを掴み威嚇する。

「なんでもない、なんでもないよ」

近付いてきたマミに距離を取り両手で「どう、どう」

「ふん!」

そんな仕草に照れ笑いのヤガミ。

「はい!じゃあ・・そろそろ出発しましょうか」

パン!と手を叩きシエラが割って入る。


反省会を終え、一行はしばらく危険は除外し安全な街道を進む。

進む中、遠くのほうでは戦闘の声が聞こえてくる。

見つめる先、そこに馬上で掲げ上げられた旗、

馬上に跨る10数名の一団が映る。

「黒地に青い剣が交差・・・んっとルーテシア騎士団ですね」

旗を見てマミが答えた。

「おお!あの方々のおかげで今回どんだけ助かったかっ!」

銀煙の森での出来事を知っているのはわずか二人。

様子を見ているとまだ問題は現在進行中なのか

魔物と騎士たちが闘っているようだ。

魔物の数は・・およそ20頭。

対峙する騎士たちは上手く連携を取り魔物たちを討伐していく。

すると、その一団の一人がこちらに向かい馬を走らせて来る。

「お・・・なんだ??」

チラっとシエラを見る。

「なにかしらね?」

シエラは目で大丈夫と語る。


馬上の人物は3人の視界に大きく入ってくる。

ようやく顔が見え、年は30代半ばの男性だという事が分かった。

「君たちは傭兵か?」

馬上から男が声をかける。

「はい、私はC級、こっちがD級、彼女はA級魔導士ですが・・どうかしました?」

すかさずマミが間に入る。

「ほう・・A級とは。ん・・ああ、昨日、街道で我が隊から死者が出てしまってな。

注意するように回っているのだ」

馬上の男は周辺を見渡しながら答えた。

「そうですか・・」

死者という言葉にヤガミは顔を曇らせる。

「少し前から魔物の数が多くなっている気がするのだ。傭兵なら心配ないと思うが

気を付けるようにな」

付け加え、

「っと・・。私はルーテシア騎士団、

百人長 ディラス・ルーグナーだ。君たちは?」

「あ・・私はC級傭兵のマミです」

「俺はD級傭兵のヤガミ・・・です」

「A級魔導士、シエラ・セーヴィスです」

それぞれ、答え、

「すみません・・」

ヤガミが付け加える。

「亡くなった方には申し訳なく・・」

「良い旅を」

ヤガミの言葉を遮りディラスはそう言い、一団のほうへ馬を走らせていく。

「申し訳なく・・か。我らにとってはありがたい言葉だ」

去っていくディラスにヤガミは深く頭を下げる。

とここで重くなった雰囲気にヤガミは場を和ませようとし、

「実はここにも死者になりそうだった人物が・・・・」

二人の少女に蹴られた。

「痛っ!!」

「笑えないです」と、マミ。

「少し黙ったらどうなの?」と、シエラ。

騎士団による魔物の掃討が終わると彼らはそのままヤガミらの反対、

商業都市 シーアスの方面へと進みだす。

彼らを見送り、

ヤガミらは再び魔物の討伐を交え王都エレノーアを目指す。


ディーア街道の中間、南の国境へと続く分岐路を越えた頃。

「いやぁああああ!!」

マミの悲鳴が大きく高鳴る。

「グギャ!!」

「ガギャ!!」

言葉にもならない声、醜い姿に小さな角が目立つ。

ゴブリンである。

「マミちゃーーーーん!!」

マミは悲鳴を上げながら1体、2体と正確にゴブリンの頭を飛ばす。


このゴブリンはすべての女性の敵である。

種族問わず女性を相手に彼らは子種を作る。

年齢層の高い薄い小説にはよく出てくるヤツらだ。

さらにはその残虐性も大きく描かれているだろう。

この世界の女性はどう思っているかまだ分からないが

日本人たるマミからすれば悲鳴の対象なのだろう。

「・・っと」

ヤガミはゴブリンの一撃をかわすとセイナークをその胸に突き刺す。

同時に後方から襲ってくるゴブリンをシエラの魔法が捉える。

「はぁ・・・めんどくさい」

シエラはというと淡々と、ヤガミの周囲のゴブリンを次々と倒す。

先の出来事の影響か、シエラはヤガミの周辺の変化を常に把握していた。

おおよそ30体はいただろうか。

これといった問題もなくそれらは駆逐されていった。

「きゃああああ!!」

「来るなぁあああ!!!」

「逝けーーーー!!」

マミはその悲鳴とは裏腹に多くのゴブリンを容赦なく斬り捨てていった。

「・・・・」

「・・・・」

そんな様子のマミに二人は・・・。


「終わりかなぁ・・」

周辺にゴブリンの姿はなくなった。

「はぁ・・はぁ・・」

マミの息遣いは荒かった。

30体の内、20体近くのゴブリンを倒していた。

ゴブリンの習性なのかマミはずっとゴブリンから狙われ続けていた。

陰部を隆起させた醜い小鬼が次々と襲い掛かってくるのである。

必死になるのも仕方ない。

「もう・・イヤ。こいつらホント気持ち悪い!!」

愚痴もこぼれるというものだ。

そっとマミのもとに歩み寄りポンポンと肩をねぎらう。

「とりあえず・・二つ目の依頼もクリアだ。」


空を見上げると少し、暗くなってきていた。雲が太陽を遮っているようだ。

「雨かな・・・?」

ヤガミは何故か緊張を隠せずにいた。

なにか・・・この先で起こるような不安。

「そうですね、急いで王都に向かったほうがいいかもです」

と、マミ。

一行は歩き出す。

王都エレノーアまでの行程を急ぐように。


東の王都エレノーアと西の商業都市 シーアスを結ぶディーア街道。

この街道は普通に歩いて10時間ほどの行程である。

一行は朝、シーアスを出て道中、危険な討伐を経験し、

ヤガミの失態による思わぬ事態を招いた。

ようやく夕方になったくらいであろうか、

彼らの眼前には王都エレノーアがその姿を現そうとしていた。


王都エレノーア、城壁に囲まれたその都市は城壁の内側に城下町、

そしてその中央に大きく二つの塔が経ち、その間に王城があった。

城壁には北側、南側に城門があり、ヤガミらは南の城門を前にしていた。

そこはいま、混乱の中にあった。

「どうなっている!!」

「分かりません!!

南部国境に出ていたフィオ隊からの連絡が途絶えました」

「国境はどうなっている!!」

「国境守備軍からの連絡はとくにありません」

「く・・・戻ってきた騎士はどうだ?意識を取り戻さないのか??」

「ダメです先ほど亡くなりました」

「外傷は?」

「はっ!おそらく魔物かと思われる傷があるのみで・・」

「魔物、、、この近辺の魔物に我が騎士団が敗れることなどあるはずもない」

「ええ・・ですが最後の連絡では魔物が多すぎる気がする、との報告も・・・」

雨が降り落ちるこの城門にてそんな会話が聞こえてくる。

「あの・・」

ヤガミは会話の主へと歩み寄る。

「なんだ?」

騎士、それも恐らく地位の高い人物であろう男はヤガミに耳を貸す。

「はい、ここに来る途中、百人長のディラスさんにお会いしました」

「ん?ディラスに??何か言っていたかね?

「はい、魔物が多くなっているから気を付けろ、と」

「そうか、どのあたりで会ったのだ?」

「えっと・・」

言葉に困るヤガミにマミが助け船を出す。

「ディーア街道の国境分岐路から少しシーアス側の第四休憩地の近辺ですね」

「そうか・・」

続け、

「すまんな、情報提供感謝する」

「何があったのですか??」

恐る恐るヤガミは聞く。

「分岐路から南方の国境付近に送ったルーテシア騎士団フィオ隊が

姿を消したのだ。唯一の生存者が援軍を頼みに来ていたが死んだ」

「すまんな!先を急ぐ」

そう言い、

男は周辺の騎士たちに指示を与え城門を後にする。

城門に着くまでに暗かった空からは雨が落ちていた。

数百の騎士たちは男に続き、街道に馬を走らせていく。

「南・・・」

ヤガミは確かに聞いた。

銀煙の森は街道の北側にある。今回は南の国境付近での騒ぎ。

シエラの魔物ではない可能性が高い・・気がする。

「私たちと別れた後、何かあったのかな」

道中に会った騎士が思い浮かばれる。

「どうだろ・・・雨も強くなってきたし宿を決めよう」

とヤガミは二人の仲間を城内へと誘う。

「これもシエラから解放された魔物なのか・・・」

心中は申し訳なさで感情が高ぶってしまう。


ディーア街道、そこから外れた場所、位置的には銀煙の森の南西付近、

そこではいま、激戦が繰り広げられていた。

12名の馬上の騎士の一団、その周辺には数百もの、騎馬、人、魔物が所々に倒れ、

さらに多くの魔物たちは一団へと迫ってきている。


「クライス!!増援はまだか?」

ディラスは周囲の騎士たちに怒鳴る。

「うちらの部隊はすでに・・・」

「これだけか・・俺の隊がこんなかたちで・・・」

迫りくる魔物たち、

その中には上位の魔物とされるデスバーネスが3体、

さらには西洋風の甲冑を身にまとう首無し騎士デュラハンが3騎、

ハウンドが100頭近くいる。

「はぁはぁ・・・くそ・・」

馬上の騎士、ディラスは絶望に目を閉じそうになるが必死に耐えた。

「このまま逃げても追いつかれるだろう、クライスは撤退し、王弟殿下に

この状況を伝えろ!!あの方ならなんとかしてくれるはずだ!」

後方の騎士に意思を伝え、ディラスは他の騎士たちに目配せする。

「で・・ですが・・・隊長・・・」

「黙れ!!我らが時間を稼ぐ!!街道まで行き、シーアスまで走り抜け!!」

11人の騎士たちは各々、武器を手にし意気を高める。

ディラスは馬上槍を手に騎馬を促す。

「行くぞ!!」

ディラス、そして10人の騎士たちは魔物に向かい突進を始める。

同時にクライスと呼ばれた青年は彼らとは対極、反対の方向へと騎馬を走らせる。

「隊長・・・みんな・・・」

残った者たちを思うと逃げ出したくなる。

だが逃げたところでどうなるというのだ。

大きく息を吸い込み、最後の命令に絶対の覚悟をもって従う事を決めるクライス。

ひたすら、ただひたすらに馬を駈け街道を目指す。

突進するディラスは一つの目的をはっきりと意識している。

デュラハンの討伐である。

馬上の死霊騎士たるデュラハンは確実にクライスを追撃するはずである。

ここで必ず倒さなくてはならない魔物なのだ。

突進する10人の騎士たち。

それに対し、ハウンドたちが一斉に襲い掛かる。迫りくる

ハウンドを馬上槍で貫き、払いのけ、倒し、騎馬で

押し潰し、ディラスはデュラハンを捉え、騎馬を操りそれを捉える。

槍はデュラハンを貫き、1騎を落とす。

周囲の騎士たちは一人はハウンドに倒され、

一人はデュラハンにより落とされ、

一人はデスバーネスの牙、

一人はデスバーネスの尾に貫かれ、

次々と落ちていき、息を引き取る。

三人の騎士はデュラハンの1騎を落とし、直後にハウンドに襲われる。

突進し、魔物たちを貫いた騎士たちの一筋の矢は、

さらに馬を返し突進を始めるころにはその数はディラスを含め4騎であった。

「あと、一つだ。行くぞぉぉぉ!!!」

4騎は恐れを知らず、デュラハン目掛け突き進む。

その4人の騎士たちの視線には信じがたいものが映る。

後方より駆けてくる5騎のデュラハン。

「くそ・・・クッソ!!!!クライス・・・頼む・・・」

圧倒的な絶望、それに抗う事が出来ないと悟るディラス。

4人の騎士たちはデュラハンを1騎倒し、馬上から落ちる。

槍を捨て剣を抜くディラス。

迫りくるハウンドを1体、1体と斬り倒し、

デスバーネスへと向かい走り出す。

そんなディラスの足をハウンドが噛み砕く。

倒れ込み、振り向き、足を噛むハウンドを斬り捨て、

今一度、それを見る。

大きな尾が視界に映り、ディラスはその生涯を終えた。

「クライス・・・頼む・・」

最後の瞬間、確かにそう聞こえた気がした。

「ヒィ・・ヒィイイイイ・・・」

周囲から残った配下たちの恐怖の声が聞こえる。

この闘いは人の敗北であった。

ルーテシア騎士団、ディラス隊が一人の騎士を除き、殲滅した日であった。


「はぁ・・」

「はぁ・・・」

クライス・ディアート、彼はルーテシア騎士団の伝令役として配属された。

彼の父はフィアーク王国の宰相であった。父の命で騎士団へ入り、ひたすら

伝令として騎馬を操り駆け抜けていった。

馬術においては自分は誰にも負けない、と信じていた。

ディーア街道へ入り、ひたすら騎馬を走らせる彼の後方には多くの魔物が居た。

多くの人々がこの街道を利用する。だが、この日、この街道には多くの死体が横たわっていた。

ディラス隊が闘う中、この街道でも多くの闘いがあったようだ。

魔物たちが街道に迫り、傭兵、冒険者、騎士たちがそれを迎え撃ち、死んでいった。

その街道をひたすら、走り駆けていくクライス。

その視線の先から戦闘音が聞こえてくる。

そこには・・・

「なんだ・・・あいつは・・・」

意識を失いながらそれを目に焼き付けるクライス。


それは異様な光景であった。

巨大な剣を振り回し、魔物たちを次から次へと斬り捨てていく戦士。

血のような赤髪、片手に持つ巨大な剣、超剣と呼ばれるものである。

一度、それを振り抜くと、数十体ものハウンドが肉塊へと変わる。

眼前のデスバーネスをものともせず、それを振り抜き、振り落とし、振り上げる。

無限の体力、無限の腕力、それを見せられた。

「闘・・・・神・・・」

クライスは馬上から落ちた。

そこへ後方から迫りくるハウンド、さらにはデュラハンが6騎。

赤髪の男は振り返り、クライスの元へ駆け寄る。

「ちっ・・・面倒なの連れてきやがって」

クライスを片手で持ち上げ、騎馬へ乗せる。

迫りくる魔物たちへと超剣を向けると・・・

闘皇破(とうおうは)

と叫び、彼の身体を覆う凄まじい量の闘気を纏わせ、放つ。

地面は割れ、超剣の先、その風景は大きくその姿を変えた。

迫りくるハウンド、デュラハンはその爆発、衝撃破の前に崩れ落ち、あるいは消し飛んだ。

「ふぅ・・・バルト、状況は?」

と呟くと、

『周囲に魔物の気配無し』

答えたのは超剣であった。


名工の武具、超剣バルト

S級傭兵 あざ名を「闘神」

この世界で聖王と呼ばれた男の仲間の一人、エル・メリクルス。

その人の武器であった。

「さて、とりあえずシーアスへ行くか」

エルは何でもない顔をし、その周辺へと目を映す。

茂みの中、街道から外れた先に多くの人たちが姿を現す。

「ありがとうございます・・・」

「助かりました・・・」

「本当にありがとう」

口々に感謝を述べる人々、そしてクライス。

彼らを引き連れエルは商業都市シーアスへと

足を進めていった。


その頃、ヤガミらは不安を抱え込みながらも宿屋の一室に集まっていた。

宿の主人、さらには傭兵協会へと足を運び、いくつかの状況が明らかになった。

街道から運び込まれた負傷者たちの証言を基にしたものが主であった。

状況としてはこうである。

現在、街道を含めフィアーク王国全域に魔物が次々と現れ、

おそらく銀煙の森や国境沿いのディヴァーク山脈などから

魔物が平地に降りてきている、との事だ。

国境へ続く街道はすでに人や魔物たちの死骸がそこらに転がっており、

街道へ向かったルーテシア騎士団本隊が対応をしている。

王都エレノーアは城門を閉め、完全な籠城状態へと移行した。

状況を考える限り、魔族が関わっている可能性があるそうだ。


傭兵協会ではフィアーク宰相の名で依頼が届けられ、王都守備にB級傭兵たちが派遣されていた。

傭兵たちの中で最高位のA級傭兵 フラーク・バンデス。

彼は王城にて国王であるイスタ・フィアークとの謁見へ向かった、という。

「なんかすごいことになってきたね・・・」

マミはさすがにいつものような笑みはなかった。

「ほんと、どうなるんだろ・・・」

とヤガミが相づちを打つ。

「ヤガミ、ちょっといい?」

と、シエラ。

「ごめん、少し話してくる」

ヤガミはマミに告げ、二人は部屋を離れた。

「シエラ・・これって」

シエラの顔を見て思わず身構えた。

「数が多すぎる、私の連れてきた魔物じゃないわ」

とシエラは彼女だけが気付く事が出来た事を話す。

「あと、あの城に魔族が居るわ」

絶句せざるをおえないヤガミ。

「・・・」

「近く、城内からも潜ませた魔物が出てきて、ここが狩場になる!!」

深刻な状況を淡々と語るシエラであったが・・・

「ヤガミ、どうするの?城内に入って魔族を殺すか早々にこの国を離れるか?」

「魔族が居る限り状況は変わらない」

シエラがヤガミに迫る。

それだけ危険な状態なのだろう。

「分かった。マミちゃんは・・・」

ここで考え込むヤガミ。ずっと考えてきたことだった。

「マミちゃんにはシエラのこと話そうと思う」

意を決し、ついにその言葉をシエラへ告げる。

「・・・・・・」

シエラは何も言わなかった。

自分が八魔神と呼ばれる魔族であるという事実。

従来のこの世界の住人ならば、必ず、と言っていいだろう、

シエラを殺そうとあらゆる手を打つであろう。

本来ならば問題はなかった。

だがヤガミが狙われたとき正体を隠しながら守り切るのは難しい。

銀の魔神 シエラの代名詞ともいえる

『魂の支配』(ゼノヴァ・イクス)を使うしかなかった。

「ほんと・・・最悪な気分よ」

小さく、ヤガミの背に向かい呟く。


「マミ、いいかい?」

1人、部屋へ戻ったヤガミはマミの目をしっかり見る。

「うん、話して。シエラちゃんのこと・・・」

薄々、気付いていたのかマミは正確にシエラの事と見抜く。

「わかった・・・」

静かに、マミにだけ聞こえる、という声でいきさつを話すヤガミ。

衝撃的な内容であるはずだ。彼女はこの世界の住人でないにしても、である。

八魔神、銀炎、『魂の支配』(ゼノヴァ・イクス)・・・。

それを聞き終えたマミは・・・にこり、と笑い、

「シエラちゃんを呼んで」

と訴えた。

ヤガミは戸を開けシエラを迎え入れた。

「・・・・」

「・・・・」

「マミ・・・?」

二人の沈黙にヤガミはマミに声をかけた。

「うん!ありがとう、シエラちゃん。センパイを助けてくれて!!」

そう言い、マミはシエラを抱き寄せる。

「え・・・?」

思わぬ反応にシエラは硬直した。

「あのとき、シエラちゃんがウェアウルフを・・・一瞬、見えた気がするの」

「ありがとう、シエラちゃん」

さらに強く抱きしめるマミ。

「それだけでいいの?」

シエラはあえて口に出す。

「うん、いいの。シエラちゃんは味方だよ。絶対に言わない。

私はシエラちゃんもセンパイも護るの。一緒に闘うよ!」

「マミちゃん、シエラ・・・」

二人の美少女のハグ。加わりたいと思う事になんら不思議はない。

ヤガミは手を広げ・・・

「キモイ、ヤガミ」

「マヂむりです、センパイ」

二つの心無い言葉がヤガミの胸を貫いた。


隠し事もない本当の意味でマミは覚悟を持ち、

ヤガミ、シエラの新しい仲間がここに生まれた。

「本当の仲間」

嬉しい響きだった。

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