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異世界小説書こうと思ったら・・  作者: 希灯路(きひろ)
序章 『これは現実?夢の世界?』
3/6

第3話 「夢か現実か、という世界で」

それは穏やかな朝日を感じられる、良い一日の始まりであっても良かった。

そこには39歳、独身の男が立っていた。

ほんの数分前に眠りから覚め、発した一言は・・・


「って夢オチかーーーーーい!!!ざっけんな!!!」

今でも先ほどまでの情景が記憶に残っていた。

彼は数分前、異世界 アーリアスという世界でたった半日という時間を過ごして眠りに

ついたはずだった。


「おいおい・・マジか。39歳にもなって異世界冒険ファンタジーな夢を

見てたのかよ・・しかもイケメン仕様とか・・・イタタタタ、痛すぎて

俺さん、タンスに足の小指ぶつけて裂けちゃうわ!!」

自己嫌悪というレベルではない自分に対する負の感情。


「・・・でも、なんかすげえ鮮明な記憶だな・・。歩いた感覚、シエラとの会話、

セイナークを持った感じ・・・あっ!・・・!?」

ふと、思いつく。

「来い!!セイナーク!!!」

だが静寂はここぞとばかりに一層、引き立ち更なる嫌悪感。

「うっは・・・お父さん、お母さん、先立つ不孝を・・・もごもご」

一層、自分を叱咤激励してみたが・・・。


十数分の時が過ぎ、八神は落ち着きの中、出来事の始終を思い返す。

信じられないほどの鮮明な記憶、そして激しい痛みは容易に思い出される。

これまで夢は何度も見たことはあった。

だが、見ていたという感覚はあるが、記憶はおぼろげであるのが通常である。


「実際の夢の中で夢を疑って・・・違うと気付き、やっぱり夢でした・・・か」

森の中でシエラと初めて出会ったとき、彼は夢を疑い頬を強めにつねっている。

痛みはあった。ならば・・・いまはどうだろう。

「痛み・・・なかったら・・・」

思わず、ハッとなった。

無意識に現代を夢に、アーリアスを現実にと願っている自分を見つける。

だが、当然のごとく痛みはある。

「は・・ハハハ」

力のない笑みはしばらく続くと・・・

「忘れないうちに小説書こう」

と、机へと向かう。


「ふーん、なにかしら、この変な世界は」

それは机に向かう広樹の後方から突然、聞こえた。

「この声・・・」

驚きを隠せず、八神は瞬間的に振り向く。

「あなた、誰よ?ヤガミの夢の中のはずなんだけど・・・」

そこにはシエラが立ってい・・・ない。

「シ・・エラ?」

何もない空間に向かい名前を呼ぶ。

「は?」

「へ?」

「うそ、あなた、ヤガミなの??」

目の先より少し上、そこには宙に浮かぶ小さなシエラの姿があった。

「シエラ?なんでここに!」

二人は同時に声を発する。


ここは現実の世界、世に言う地球の日本である。

そこでアーリアスという異世界ファンタジーな世界の夢を見ていた八神。

しかし、この現実の世界において夢の中で出会ったシエラが存在し、目の前にいた。


「ここはどこよ!あなた、こんな変な世界の夢を見てるなんて・・痛々しい子だったのね」

ウルウルと演技じみた演技でシエラは言う。

「シエラさん、小さいくせに変わらないね」

八神は腕を力いっぱいピクピクさせ、精一杯の反撃。

「人間のくせに言うわねー」

「そんな人間の旅の仲間になりましたよねー」

八神と小さなシエラはお互いの額を合わせバチバチと火花を散らす。


「・・・・」

「・・・・・・」


互いに火花が消え沈黙が生まれる。

沈黙を破ったのは八神であった。

「シエラ、どうやってこの世界に来たんだ?」

チラリとシエラの姿を目に映す。

「怒らないでね、私の本体は今、眠っているあんたの隣にいるのよ、

夜中、あんたの部屋からうめき声が聞こえたから見に行ったらうなされてて、

あんたの魂に私の魂を干渉させてシメシメと夢の中にって・・・・イタタタ」

話の途中から指の先でシエラの頭をグリグリ。。。

「痛ったいわね!!なにすんのよ!!!」

当然、怒るシエラ。

「シメシメじゃねえよ!まったく・・」

頬をボカボカと叩かれながら考え込む。


「あっちの俺は今も寝てて存在してる・・?」

理解のできない話であった。八神広樹という地球に住む俺が向こうの世界に飛ばされた、と

思っていたが夢だったとついに結論した。


だが八神広樹はあっちの俺が見ている夢だとシエラは言う。

俺の認識では八神広樹が主であり、ヤガミはそこから派生した・・生まれたもの。のはず、

記憶を遡ってみると八神広樹としての記憶は幼少期、青年期、現在とたしかに俺の中に存在

しているんだ。間違いなく八神広樹が俺である。

「つながり・・」

一度、繋がったことで共存関係がある・・・夢を媒介にしているってこと・・?

「シエラ、向こうの俺を起こせないか?」

結論は向こうの俺が起きた時、こちらの俺は向こうへ行く。

逆にこちらの俺が起きた時、向こうの俺がこちらに戻ってくる?

「無理!」

即断という速さでシエラは答える。

「なんでだよ!!」

ツンツンとシエラをつつく。

「やめなさい、やめなさいって。。もう!!」

指先に噛みつくシエラ、だがなんか。。。こそばゆかった。

「キモっ!・・」

シエラは思わず体を震わせる。

「すまん、なんで無理なんだ?」

指先でシエラの頭を撫ででみる。

「こっちに来た途端、能力が出ないのよ!この世界は魔力が無いわね、夢の中だろうと

私が魔力を使えないなんてありえないのよ、本体は魔力のある中にあるんだからね」

つづけて

「今も、本体はあんたの横で魔力を使って精神を夢の中に送り込んでるのに、まったく

能力を感じない。・・・・・・・・この世界、なんか変よ」

シエラの中の違和感、当然、俺には分からない。

「じゃあ、どうやって戻るんだ?」

「簡単じゃない、あんたが目を覚ませばいいのよ」

腕を組み頬を赤らめシエラは言う。

「自力で戻れねえのかよ!!」

再び指の先でグリグリ、、

「やめなさーーーーい!!」

「あはは・・」

思わず笑みが浮かぶ。夢なのか現実なのか分からない。


だがシエラは目の前に存在し、向こうにもヤガミとシエラは今も存在している。

おそらく今の俺が眠りにつけば向こうの俺へと移っていく。

ような気がしていた。


「さて、小説を書きますか」

あっさりと考えることを放棄した俺はシエラを横目に再び、

パソコンの前でキーボードを打っていく。

シエラはというと、部屋の中を飛び回り、周辺を観察しているようだ。

部屋の中にはキーボードのカタカタ・・・という音だけが鳴り響く。


「ヤガミ、これ何??」

「時計だ、時間を教えてくれる」


「ヤガミこれは??」

「冷蔵庫だ、中に入っているもの冷やすんだ」


「これは?」

「クーラーだ、部屋の中を温かくしたり、冷やしたりできる」


「これはこれは??」

「エロ本だ、俺の右手が・・・」

・・

・・・

・・・・

「って!!どうやって見つけたーーー!!」

笑いながらシエラは天井高く飛び上がる。

「右手でどうすんのー?」

「うるさーーい」


俺はシエラとのこんなやり取りを嬉しく感じていた。

ふと、時計を見ると12時を過ぎたくらいだった。

「さて、飯でも食いに行くか・・」

上空のシエラはスッーーと俺の肩に降りてくる。

「私も連れてきなさい!」

「無理!」


「なんでよ?」

「見つかるとめんどい。。」


「問題ないわ、夢の主であるあんたしか見えないから、たぶん」

「夢・・・ね」

服を着替えながら考えてみる。

シエラの中ではこの世界はあくまで夢なのだ。

それを試すのも悪くないか。

「じゃあ、約束だ、シエラが視認されたらすぐに隠れること、

騒ぎが収まったらこっそり、このポケットの中に入ってくること」

上着のポケットを指差す。

「ポケット・・・?そこの事ね、いいわ。間違いなくそうはならないしね」

自信満々にシエラは受ける。

「フゥウ・・じゃあ行くか」

「おーう」

二人は部屋を後にし、目指すはレストラン。

そこへの道のりは険し・・・・いはずもなく、なんの障害もあ・・・・るはずもなく、

シエラの言う通り、すれ違う人は空を飛ぶシエラを認識もしていない。

シエラはというと、

すれ違う人の髪を触ったり、服を触ったり、

感覚はあるのだろうか、受けた人たちは不思議に思う。


そして目の前から可愛い女子高生が見えると、

シエラはそのスカートを思い切りめくった。

青と白のボーダーの入ったパンティーが八神の目に入った。

「キャ!!」

被害を受けた女子高生は俺に気づき気まずそうにすれ違う。


ある程度、距離が離れ、

「シエラ・・なにをしてんだーー!!」

「え?ああゆうのが好きなんでしょ?さっきの本にも・・・」

「やめーーーい!!」

心の中でグッジョブ、シエラなんて思っているはずがない。。

「シエラ、ほんとああゆうのはいいから、マジで」

内心とは裏腹に正義感、常識なんてもので上辺を繕う。

「ええパンティーやったなぁ・・・」

なんて思っているのは内緒だ。


「あれなに?」

「車だ。乗り物・・だな」


「あれは?」

「電柱だな、電気を各家庭に送るんだ」


「電気って雷のこと?

「そんなもんだな、冷蔵庫とかクーラーとかは電気で動くんだ」

「へぇ・・・面白い世界ね」


なんて会話を交わしながら二人はレストランに到着する。

自動ドアが開き、可愛い子が接客する。


「いらっしゃいませ、何名様でしたでしょうか?」

「二・・っと。。一人で」

「ではこちらへどうぞ」

「ども」


シエラは耳元で

「あの子のも見とく??」

「やめなさい」

と小さくつぶやく。


席に案内され、席に座ると見慣れた子が八神の前に現れる。

「ハァーイ、センパイ」

「居たんだ、真実ちゃん」


真実と書いてマミと呼ぶ。八神の年の離れた数少ない友人であった。

昔の職場で高校を卒業して入社したのが真実だった。

数年の後、彼女は会社を辞め、俺も数年前に辞めて、一昨年、偶然にもここで

再会していたのである。


「日替わりランチですね。ありがとうございます」

笑顔で対応し、真実は振り返る。

「見とく??」

ここぞと、シエラは聞いてくる。

「やめい!」

と返すと、

真実の視線を感じた。



「・・え?」、と八神。

「・・あ!!」と真実。

そして、去っていく真実。

「偶然、だよな・・・」

考え込む八神。

シエラもまた・・・

「・・・・」

重々しく考え込んでいた。


食事を済ませ、会計を終えると、店内には真実の姿はなかった。

当のシエラもすでに興味をこの世界へと移している。

帰りの道中、あの一瞬の真実の視線を思い出そうとするがはっきりとした

確信はもてないままアパートの一室、俺の部屋に着いた。

「まぁ・・・気のせいだろう」

言い聞かせるように自分の答えをひねり出し、改めて小説へと

向き直りPCの前で時間は過ぎていった。


当然ながら、その間にもシエラは次々とこちらの世界の観察を優先的に

行っていた。


「これは?」


「これなに??」


「ほれは???」


シエラの質問に簡潔に答えながら思うように小説は書きあがっていった。

稚拙な文章もあるだろう。

だが手ごたえは今まで以上と思っている。


「ふぅう・・・」

コーヒーを片手に一息つく。

シエラはTVに夢中なようだ。

「もう11時か・・・」


外は闇の中に包まれていた。

「便利なものよね、この電灯っての。電気は偉大だったのねぇ」

お菓子を口に入れようとしながらシエラは話しかけてきた。

「お菓子はどうだ?」

「ほいひひわ」

口の中をもごもごさせながらシエラは答える。

「そですか」


不思議なものだ、向こうで半日、こっちで一日、シエラとは普通に会話している。

目をこすり、俺は覚悟を決めていた。

ただ寝るだけなのだが、正直な話、恐れてもいた。普通に目を覚ました時、こちらでシエラも

居なかったらどうしようか、と。


「大丈夫よ、きっと」

小さな声でそう聞こえた気がした。

「だな、寝るわ」

俺は寝具へと向かい、そして眠る。

やはりシエラはTVの前から動くことはなかった。

「・・・・・」

「・・・・あの・・・・・になる・・・・わね」

シエラの声は聞こえなかった。

なにかぼそっと言った気がした。

だが、俺はそのまま眠りについていった。


そこは窓の外から鳥たちの鳴き声が聞こえてくる。日差しはベッドで眠る

俺を容赦なく包み込む。


「ハッ!!!」

目を覚ますとそこは・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


・・・・


「おはようでいいのよね、ヤガミ」

それは銀髪の美少女の声だった。

そして俺の目に映ったのは木製の柱に壁、間違いなくアーリアスの世界だった。

「戻・・・れた?」

「そうね、TVがいいところだったのに迷惑な限りだわ」

「は・・ははは」


シエラの話では地球で俺が眠ったと同時に、シエラも戻れたらしい。

同時に俺も目を覚ましたようだ。

「どう思う?」

率直にシエラに聞いてみる。

「そうね、お菓子は美味しかったわ。夢だと、単純に言えないわね」

「にしても・・あんた、いい年だったのね」

笑いながらシエラは俺の肩を叩く。

「うるさいよ」

現状で秘密は完全に暴露されたわけだが、シエラからすると今の俺の夢が地球の俺と

考えているようだが・・・。

・・・・・「にしても・・あんた、いい年だったのね」

「ん?」

「シエラ?」

シエラへと目をやり、

「なによ?」

振り返るシエラ。


「あっちの俺が本体だと認識してるのか?」

シエラの目を見て聞いてみる。

「・・・・

よくわからないけど、そういう感覚にさせられていた、気がするわ」

シエラもまたヤガミに目を合わせ答える。

「・・・・させられていた・・・・?」

「意思がある・・・?のか・・・?」

口には出さず、言ってみた。

が、それ以上、シエラは何も言わず部屋を後にする。

「分からない・・・か」

俺もまた着替えを済ませ部屋を出て、異世界での旅を開始する。

この

「夢か現実か、という世界で」

旅を始めよう。

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