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現代––––ロンドン
その日のロンドンはしとしとと雨が降っていた。
しかしそんな中でただ一人、都会の雑踏の中で傘もささずにぼうっと立っている女性がいた。彼女の端正な顔に表情はなく、虚ろな目はどこか一点を見つめているようにも見えた。
寒がるようでもなく、プラチナブロンドのミディアムヘアや濡れて身体に張り付いたブラウスやスカートからとめどなくぽたぽたと雫を垂らしている彼女を、誰もが少し邪魔そうに避けて歩いていた。
少ししてゆらりと顔を上げた彼女の目に、ある店先の雑誌の表紙が映った。
すると、彼女ははっと気づいたように辺りを見回し、ちょうど近くにあった警察署に駆け込んで切羽詰まったようにただ一言放った。
「メアリーチュード・カレッジはどこですか?」