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できることを調査しよう2ーー魔法編

 

 俺が魔王に転生してから、数週間経った。

 俺は、勇者がこの魔王城に攻めて来ても決して負けない、いやむしろ圧倒するくらいの力をつけるために必死に修行に励んだ。


 まずスキル。


 新たなスキル獲得とはならなかったが、それぞれのスキルはかなり使いこなせるようになった。

 熟練度と呼ばれる、曖昧なものさしがあるのだが、それもそこそこ上がっているはずだ。


 例えば、『骸骨兵の創造クリエイト・スケルトン』や『食屍鬼の創造(クリエイト・グール)』などは、上限以内であれば創造する数などを一体単位で調節できるようになった。

 下位の骸骨兵を生み出すのならば、一度で500体可能である。

 しかし、この数になると一体一体の戦闘力がかなり低くなってしまう。


 そのため、一つ一つを強化して、創造する数を減らすのが有効的な使い方。

 そして、俺はそれをだいたいマスターした。


 5体の創造に全力を尽くせば、白骨馬に乗った如何にも強そうでカッコいい骸骨兵ができ、そいつらは10倍の強さに踏みとどまらない。


 まだ人間と闘わせたことがないから、どれくらいの実力なのか人間のものさしでは正確には分からないが。

 でも、配下の皆曰く、人間の戦闘力は弱いらしい。


 安心だ。これで征服も上手くいく。


 って、待てよ・・・・・・。

 俺は何言ってんだ。

 危ない危ない。完全に魔物っぽい思想になってた。

 偶にこういうことが起こるのが不安要素ではあるが、あまり気にしようという気にもならない。


 とにかく、俺は本心では征服なんてする気はない。

 勇者が突然攻めて来たりしたら、正当防衛で闘うために実力に磨きをかけているだけだ。


 でスキルの説明に戻るとクリエイト・グールもまたクリエイト・スケルトンと同じ。

 スケルトンの方もグールの方も、軍隊的な数として強化することも可能だから、とても便利だ。

 維持時間も使えば使うほど伸びていくから、今は常にスケルトンやグールを魔王城の前に待機させている。


 で、次に直接攻撃系『黒炎弾(ダークフレイム)

 と『死の玉(デス・ボール)』について。


 こいつらは、何も言わなくて発動できるようになった。

 俺的には大きな収穫。

 いちいち、ドヤ顔で『ダークフレイム』とか叫ぶのは流石に恥ずい。

 いや、是非とも自分でやってみてほしい。

 現実的に考えて、魔法の詠唱ならともかく、スキルをいちいち叫ぶのは恥ずかしいでしょ。

 まあ、それは置いといて。


『黒炎弾』は、俺は基本的に指パッチンすることで発動させる。

 実際のところ指パッチンする必要もないんだけど、ちょっと様になるからそれで発動させてる。


 で、黒炎弾はほぼ無尽蔵に生成することができ、威力は小さめ。

 心の中で命じたり、黒炎弾が生成してる方の腕を振ったりすると、狙った対象に勢いよく黒炎弾が飛んでいくようになってる。

 まあ、飛んでいくときのスピードとか狙いの精度とかも練習してかなり向上させた。


『死の玉』は、黒炎弾よりも高威力。

 発動させると掌の上に、漆黒の球体が生成していき、その生成に集中すればするだけ玉が大きくなっていく。

 俺の体よりも大きくなることも可能。

 腕を上げる必要ができるわけだが。


 で、『死の玉』については名前がどこまでスキルの本質と関係しているかが重要である。

 本当にただの高威力弾なのか、それとも放たれた対象に死をもたらすのか。

 これは、あまり使うべきではないと考えた。

 威力自体もやばいし。


 一度、宙に浮いてから、ありったけの大きさの『死の玉』を、草原にぶつけたことがあったのだが、隕石が落ちたみたいに大きなクレーターができた。

 それを見て、流石にやばいすぎるなと思って、今はあまり使っていない。


 後のスキルは、使っていない。

『死の宣告』とか名前からして使いたくないし、『絶対服従』や『傀儡』は人間種のみにしか発動できないって説明されていたし。

 発動させたこともないから、その発動条件があるらしいが、何が発動条件なのかも分からない。


 で、重要なのはここから。


 俺はこの数週間の間に魔法を使えるようになろうと本当に頑張った。

 魔法は習得が難しいと、ホルムズが言っていたが本当に難しかった。

 まず自分の中の魔力を自由自在に操れるようになることが必要なのだ。

 自由自在といっても、ある程度指示が出されて、体から発散させたり、体の表面に纏わせたり、体から切り離したり、体の一部分に溜め込んだり。


 まあ、本当は全部できる必要はなかったらしいのだが、俺はたった数週間でその魔法の基礎を身につけたのだ。

 魔王という最悪の存在に転生して一時はどうなるかと思ったが、魔法習得が早かったりしたのは嬉しかった。

 魔王である代わりに、一応チートを授かっているようだ。

 ただ、それを人間に対して使ったりはしないつもりだが。


 基礎を身につけた後はなかなか早かった。

 どんどん色々な魔法を覚えることができた。

 魔法には、火、水、土、風、光、闇の基本属性があって俺は案の定、闇だったのがちょっと残念だったが、どんどん覚えれたのは良かった。

 魔法の方はスキルと違って、皆に共通するようなものが多い。上級レベルに達すれば、独自のものが発生したりするが、基礎の後に身につけられる魔法なんかは特に共通だ。


 それが俺にとっては逆に有り難かった。

 俺のスキルは、危険性の高いものが多すぎる。

 即死性のあるものが多すぎるのだ。

 だから、もし闘いの場面に放り込まれたならば、魔法で闘うだろうと思う。

 魔法で気絶させたりできれば最高だ。

 スキルは奥の手である。


 数週間経ったわけで、血の杯の儀式の効果も流石に出始めていると思うが、未だ簡単に殺戮を繰り返すような、魔王っぽい精神になったりはしていない。


 さっきの征服が云々という発言くらいの血の迷いは本当に稀に起こるが、その自分の変化に気づき、訂正するのに難くはない。

 だからそこまで心配することはなかったのかなと今は楽観的に考えたりしていた。

 まだ、これからって可能性もあるし、似てくるといっても少しだけという可能性もあるし、配下が俺に似てきたっていう可能性もある。


 正直三つ目ならば、この魔王城で静かに暮らせそうなんだが、あまり希望的観測ばかりするのはやめようと思う。



 で、大事なことはまだある。

 例の体の乗っ取りは、この数週間一度も起こらなかった。

 つまり、本当に俺に丸投げしたのだ。


 乗っ取られないのなら、世界を手に入れるという目的自体を俺が撤回してもいいのだが、あまり気がすすまなかった。

 配下は皆、生き生きとしているのだ。

 今のところ、人間を殺したりしていないようだし・・・・・・。

 今後、こんな中途半端だと取り返しのつかないことになりそうだと分かってはいるのだが、なかなか気が進まなかった。


 今は、本当に中途半端な状態。

 近くの都市に魔王城の者をいくつか送って偵察させている。

 目立たないように、そして無駄に殺生しないようにという固い条件付きで。

 幸い、俺の命令には従順だから悪さはしていないようだ。

 魔王城にそのまま残るものは、その警備と俺の修行を手伝ったりした。

 そんな感じで、今のところは外の情報収集と俺の実力の向上ということで、人間を襲ったりするのを踏みとどまらせている。


 まだまだ俺の実力は向上するだろうから、一年くらいはなんとかなるんじゃないかと考えている。

 そして、一年後の俺に後は頼むって感じだ。

 最後には、世界を手に入れるなんてやめだって素直に言えばいい。

 今はまだ、言う勇気が出ない。

 まだ言わなくて大丈夫なはず。


 そんな人間の悪い癖「後回し」は、いいことなんて何も引き起こさないと分かっているが。

 こういうところから、物語は始まるのだ。


 それはともあれ、近況報告はざっとこんな感じ。


 転生してから数週間。

 俺は遂に次のフェイズに移ろうとしていた。

 それは魔王城の外に出てみるということ。

 勿論、俺が修行していたのは魔王城近くの外だったから、外自体に出たことがないというわけではない。


 ただ俺は、魔王城を少しだけ離れて散歩したいと思っているだけだ。

 今のところは、遠出もする予定はない。

 ただこの日、近隣でいいから散歩しようとしただけ。

 勇者はちょっと怖いけど、今の実力ならきっと大丈夫だし、それに都合よく現れたりしないはず! とそう自分に言い聞かせて、俺は外を出歩くことを決意したという次第。




 そういうわけで俺はただの散歩に出かけることになる。

 そう、ただの散歩に。



 ーーだが物語というものは突然に起こるものだ。


 その散歩から俺の魔王としての物語が本格的に始まろうとしていた。






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