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儀式ー1

 

「魔王様、スキルはどうだったんす?」


 周囲を円形にスケルトン囲まれたままで、ホルムズは恐る恐る尋ねる。

 それに対して、俺は華麗にスルー。

 まともに受け答えできる精神状態にないのだ。



 加護: 魔神の加護

『下位聖属性耐性』

『上位火属性耐性』

『上位水属性耐性』

『上位風属性耐性』

『上位地属性耐性』

『上位闇属性耐性』


 技能:

骸骨兵の創造クリエイト・スケルトン

食屍鬼の創造(クリエイト・グール)

黒炎弾(ダーク・フレイム)

死の宣告(プロナウンス・デッド)

死の玉(デス・ボール)

『絶対服従』

『傀儡』


 頭の中に浮かぶそれを見ながら、まさかのスキルまでもが魔王のようだということに唖然する。

 いや、マジで怖いわ! 絶対服従とか傀儡とかなんか本当に怖いわ!絶対に使いたくない!

 俺は完全に自分の殻に篭り中。


 そんな俺を見て、


「あの、魔王様、大丈夫っすか! スキルは後天的に得られるものが多いっす!もし、スキルなしでも焦ることはないっす! きっと魔王様なら恐ろしく凶悪なスキルを獲得できるっす!」


 ホルムズは無駄に高かったテンションを少し下げて、俺を慮る。

 骸骨だから表情の変化はないが、何となく心配そうな顔をしてる気がする。


「いや、スキルは幾つかあったけど・・・・・・」


「気に入らなかったっすか?」


「まあ、そんなところだ。ただ、お前が言ったみたいに恐ろしく凶悪なスキルかもしれないようなのが多くてな」


 あんまりこういうのは、期待してなかった!

 気軽に使えんのは、最初の三つぐらいか?

 いやそもそも最初の三つも気軽に使えるのかも確信できない。


「試せそうなのだけ、試すか・・・・・・」


 クリエイト・スケルトンなんかはホルムズが使ってたのを見た限り、確かに凶悪だけどちょっと安心感がある。

 名称的に同列っぽいクリエイト・グールも多分大丈夫。

 まあ、スケルトンとかグールとか作成するのに安心感があるなんて、おかしな話だけどな。

 それは、遺憾ながら、俺が魔王として転生してしまった証明になる。


「いや、魔王様、初めてのスキルは外で試した方がいいっす! 屋内だと建物ごと破壊する可能性があるっすから。 スキルが頭に浮かんで、それで使いこなせるようになったと言うわけではないんすよ!

 初めは調整とか難しいから、外でやるっす!」


「じゃあ、外に行くか。

  すぐにでも習得したいしな」


「でも、今日は外はすごい嵐っす。

  雨も雷も激しくて、穏やかではないっす!

 だから明日以降にするといいと思うっすよ!」


 ホルムズは、そう提案しながら、周囲のスケルトンを一瞬にして消去する。

 スケルトンや一瞬にして黒い塵になって空気中に消えた。

 なかなか神秘的な光景。

 俺もできるようになんのかな?

 ちょっとワクワクしちゃってる俺がいます。

 それも明日から外で修行することになるだろう。

 嵐の中、修行するほど追い詰められていないから、今日のところはすんなりと諦めてやろう。


「じゃあ、スキルはもういい。

  次は魔法について教えてくれないか?」


「そうっすね!私は元々、上位魔術師(アークウィザード)だったので、魔法は教えるの上手いっすよ!」


 ホルムズがさっきから誇り高そうに言っているアークウィザードについて詳しく知りたいけど、今は話の腰を折るのをやめる。

 とりあえず魔法が使えるようになることが先決だ。

 勇者的なのがいるとして、そいつに恐れて魔法を使えるようにならなきゃと義務感に駆られている反面、俺は非常にワクワクしている。

 魔法の存在するような世界に転生できたのだ。

 魔王だからとなく気持ちも強かったけど、今では早く自ら魔法というものを使って見たいと強く思っていた。


 が、やる気MAXで、ワクワクしているその時。


 コンコン!


 魔王の間の扉がノックされる音。


 そして続いて、


「魔王様、よろしいですか?」


 と、問いかけてきた。

 まあ、特に入るなという理由もないし、許可する。


 扉から現れたのは、白銀の髪を揺らし、不自然なほど白い肌と真紅の瞳を持った、美しさも併せ持つ男。

 決して人間の男ではない。人型の悪魔だと言うのは、雰囲気もろもろから分かる。


 さっきここに全員集合したときに代表となって俺と話した奴だ。


「儀式の準備が完了いたしました」


 彼は、先ほどと変わらず堅苦しく頭を下げてそう告げる。

 ここまでしっかりとされるとこっちの即席の振る舞いに自信がなくなってくる。

 もっと気軽にきて欲しいんだが。

 いや、それよりもーー、


「儀式ってなんだ!?」


 悪魔の口からそれを聞くとすごい禍々しいものを想像してしまう。

 俺、そんなの頼んだ覚えないんだけど。


「儀式って言ったら、血の杯の儀式のことっす!」


「ホルムズ、貴様なのか? ただのスケルトンかと勘違いしてしまった、すまない」


「ルシフェル!! 全然違うじゃないかっす!

  そもそも服装が違うから勘違いとかありえないっすよ!」


「本当か? 貴様は、スケルトンと入れ替わっていても誰にも気づかれまいよ。もしかしたらと思ったのだが」


「その冗談飽きたっすよ・・・・・・」


 なんだか、楽しそうに会話を始めるが、気にしていられない。

 ホルムズの言った血の杯の儀式という言葉が頭にこびりついて離れないのだ。

 何やら形にならない嫌な予感がするが、ひとまず儀式の詳細を聞くべきだろう。


「で、その血の杯の儀式とは何をする儀式なのだ?」


 俺の言葉を受けて、ホルムズと会話していたルシフェルが態度を改める。

 なぜかドヤ顔気味で説明し始めた。


「血の杯の儀式とは、魔物、悪魔、死霊それらの魔の勢力にとって必須でありそして楽しみでもある儀式で御座います。

 仲間として認め合ったもの同士の血を杯に混ぜ合わせ、飲むのです。

 この血が魔の勢力にとっては美味なので御座います。

 魔王様もご満足して頂けるはずです!」


 整った容姿で、胸を張ってそう宣言する悪魔。

 物凄い自信がひしひしと伝わってくるのは間違いないがーー。


 俺の心はもちろん大混乱だ。

 ま、魔物の血を飲むだって!?

 はっ???

 冗談じゃねえよ、マジで!

 絶対に嫌だ。

 人間の血を混ぜ合わせたものでも、絶対に飲みたくないのに、あの多種多様な化け物達の血の混合物を飲むなんて言語道断だ。

 ありえない、美味なはずないし、美味でも普通に嫌だ。

 これは、何としても回避しなくてはならない!


「俺は、儀式をしろなどと頼んでおらぬぞ!

  ただ、一人にしてくれとそう頼んだのだ!」


  取り敢えず、怒り口調で威圧だ。

 怒ってはいないけど、とにかく怒り口調で。

 今は反感を買うかもしれないとか、気にしてられないほど、切羽詰まった状況なのだ。


 俺の怒りを受けて、一瞬ホルムズも悪魔も体を強張らせる。

 俺の怒りは、配下にとっては不味いことに間違いはないみたいだ。よし、いいぞ、いいぞ。


 

「我々などが勝手な真似を失礼いたしました」


 悪魔は、素早く跪くと心からの謝罪。

 その姿勢、声音から悪魔が心の底から反省しているのが伝わってくる。


「どうして、儀式など勝手に準備したのだ?」


 刑事ドラマかなんかで、刑事が犯人に、「なんで殺しなんて真似したんだ?」と聞く時の口調みたいになった。

 なんか、おかしい気がするがスルー。

 理由だけは聞いてやろうではないか。


「言い訳のようになってしまいますが。

  血の儀式は、全ての魔の勢力にとって共通の楽しみだと認識しておりました。魔王様もまた、儀式を楽しんでもらえると我々は確信しておりました。

 我々は魔王様が元気がない様子だったので、何とか元気を取り戻させて頂こうとお節介ながら考え、勝手に準備をしてしまったという次第で御座います」


「お、おう。そうだったのか。

 私のためを思っての行動だったのか。

 一方的に怒って悪かったな」


「魔王様が謝りになる必要など欠片も御座いません!」


 ルシフェルは、ますます深々と頭を下げ跪く。

 かたっ苦しいが、悪い奴ではなさそうな気がしてきた。

 そう思ってしまえば今度は、可哀想に思えてきた。

 でも、情けは無用ではないが、感情移入しすぎると魔物の血を飲まされることになる。

 ただ、儀式について聞いたりして、もう怒ってないのを示すことぐらいはしてあげよう。

 ずっと、自分たちが怒りの対象だと思っていては、気が休まらなさそうだし。


「頭を上げよ。

  儀式とは、詳しくはどのように行うのだ?興味が湧いた」


「この儀式は魔の勢力にのみ特殊な効果を示します。

 この儀式を共に行ったものの間では、繋がりが大幅に強まるのです」


「繋がりが強まる?」


「具体的には、儀式を行ったもの同士では、念話が可能になります。それに性格も似てくると言われています。ですから血の杯の儀式を行ったもの同士は、家族のようなものとなれるのです」


「お、おう、そうだったか」


 そんな効果があったのか。

 繋がりも強まるし、俺の元気も取り戻せるかもしれないしって考えたのか。

 確かに悪くないアイデアだ。


 しかし、飲みたくないっていう理由だけじゃなく、ますますやめたほうがいいな。

 念話は便利そうだと思うだけだけど、性格が似てくるって・・・・・・。

 絶対ヤバイよ。

 俺が人間的な精神を失ったら、マジで普通の魔王になっちまうぞ。

 これは俺という存在の存続にも関わる重要な儀式だ。

 儀式を行ったら、多分俺の精神は他の魔物達に似ていって、最後には俺ではなくなる。


 ふう、危なかった。

 やっぱり、断って正解だ。


「まあ、いろいろ考えてくれていたのだな。

  感謝しよう。配下全員に私が心から感謝していたと伝えてくれ。そしてせっかくの儀式を潰してしまったことについても皆に謝罪をしていたと伝えてくれ」


「はっ! 勿体なきお言葉で御座います!」


 勢いよく跪く彼を見て、ふと思った。

 少しは信用できそうだというそんな印象の彼は、なんという名前なのだろう。


「名前はなんと言うのだ?」


「ルシフェルと申します」


「そうか、ルシフェル今後もよろしく頼んだぞ!」


「はっ!」


 再び勢いよく跪く彼を見て、俺は少し微笑む。

 もしかして、悪いやつばかりじゃないのかもしれないな、魔物も。


 そんなことを考えて、少しだけ心が落ち着く。

 なんとかなるかもしれないな。


 しかし、この時のなんとかやっていけるんじゃね、っていう甘い考えは直後にぶっ壊されることになるのだ!






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