できることを調査しよう1ーー技能(スキル)編
魔王になってしまったことは、まあ一応認めよう。
これが夢である可能性とかあると思うけど、いやあって欲しいけど。
俺は今、魔王の間で一人である。
すぐに一人にさせてくれた頼んだのだ。
そう言うと、配下の者達は恐らく心配そうな顔をしながら、出て行った。
恐らくと言うのは、顔どこにあるの? と言いたくなるような異形の化け物もいたからである。
この急展開流石に一人になりたかった。
魔王になってしまっているせいか、化け物に囲まれても全く恐怖を感じなかった。
だから周りが人間だとしても、とにかく一人になりたかった。
さて、落ち着いて今後のことを考えよう。
俺が一番にするべき事はなんだろう?
取り敢えず身を守りたいな。
俺は安全なのか?
この世界のことも全く分からないけど魔王になって、一番怖い存在はやっぱり勇者だよな。
突然攻めてきたりしないよな?
てか俺、まだ生まれたばっかだし!
これで攻めてこられたら、勇者が悪者だと思う。
それに配下の化け物達。
見事な跪き方だったけど、裏切ったりしないよな?
うん、人間でも信用しきるのは難しいのに、化け物をいきなり信用できるわけない!
裏切る可能性も考えて、やっぱり闘う力が必要だよな。
魔王になったわけだし、相当強力な戦闘力がないと困るが。
参考になるか知らんが、こういう転生ものでは頭の中にスキルとか浮かんでくるよな・・・・・・。
できればそういう転生ものと同じ展開をなぞって欲しいんだけど。
て、魔王に転生してる時点でもうなぞってないけど。
俺は必死に頭の中で頑張る。
いや頭の中で頑張るってなんだよ・・・・・・。
スキルが頭の中に浮かんでくる訳ねえよな。
なんか猛烈に恥ずかしくなってきたわ。
どうすりゃあいいんだ!
体は動かしたくねえ!
魔法とかでそういうのが使いたい!
誰かに教えて貰うしかなさそうだな。
それから数分、ぼーっとする。
と、ぼーっとタイムを破るノックの音が響いた。
トントン!
「魔王様、お呼びになったっすか! 入ってよろしいっすか!」
なんかテンションの高い感じの声だ。
「別に呼んでいないぞ」
俺は、扉を越えて届くよう少し大きめに声を出した。
ぼーっとタイムを邪魔されてちょっと怒り気味で。
「では、闘い方を教わりたいと考えなかったっすか?」
声はなおも扉越しに話しかけてくる。
うるさいな! と思いかけて止まった。
確かに、闘い方を教わるしかないなと思ったな、そういえば。
え? 何で分かったんだ?
こいつ、もしかして心が読めるのか?
いや、ここは落ち着いていこうか。
「取り敢えず入ってくれ」
そう言うと、扉が開いた。
外から入ってきたのは、黒いボロボロのローブに身を包んだ男だ。
ハイテンションな声から想像していた姿と全然違う。
どんな顔をしているんだろうと覗き込むと・・・・・・。
骸骨の顔だった。
Oh!まじか!
流石にちょっと驚く。
死霊系だろうか。
とにかく聞いてみよう。
「お前は、何者なのだ、説明しろ」
あ、ちなみに口調はこんな感じで威厳ある感じにした。
最初は、完全に素で反応しちゃったけど、やっぱり舐められないようにするべきだと思い直したのだ。
一人称は、俺から私にした。
「私は、かつては強大なる上位魔術師、今はリッチとしてこの世に残り続け、魔術や技能などを研究しているっす!
私の研究は世界でも最先端を行ってるっす!
えっと、皆んなからはホルムズと呼ばれているっす!」
かつてアークウィザードだったリッチ?
アークウィザードがどんな存在か詳しく知らんが、なんとなく予想できる。
もしかしている元々人間だったのか?
そうなら少しは信頼できるかも!
「お前は、元は人間か?」
「そうっす、元は人間だったっす!
でも今はあの時の感情の動きは理解できないっす!」
人間だったというのは嬉しいが、もはや人間とはかけ離れた存在のようだ。
骸骨は、そのままのテンションで続ける。
「私は、数百年前栄えた魔法国家メラノウスの宮廷魔道士だったっす! メラノウスが魔王様により滅ぼされた時に、私は才能を見込まれて、リッチに姿を変えられたっす!」
自分が闇堕ちしたときのことをここまでテンション高く話すとは・・・・・・。
本当に人間じゃないのね。
まあ、それはともかく本題に入ろうか。
「どうして、私が闘いを教わりたいと思っていることが分かったのだ? 心が読めるのか?」
「そんなすごいことはできないっす!
ただどういう仕組みかはわからないっすけど、この魔王城で闘いを教わりたいと考えた者がいれば、私はその人に呼ばれたと感じるっす!」
へえ、不思議な話だ。
「仕組みが分からないっていうのは、どういうことだ? 自分の能力とかじゃないのか?」
「能力じゃないっす! 前魔王様が私に施した仕様っす!
前魔王様は、我々魔の勢力を自分の想像通りに創造できるって言ってたっす!
私は、リッチに変えられて、この魔王城の者達に魔術や技能についての情報を与える存在として人間から改造されたっす!」
なるほど、そういうことか。
しかし、魔の勢力を想像通りに創造できるだと・・・・・・。
魔王らしい恐ろしい能力だ。
まあ、でもそれはともかく心を読まれたってことではなさそうだから一安心。
それにこの骸骨は、闘い方を教えてもらうにはもってこいのようだ。
「じゃあ、その魔術とか技能とやらの使い方を教えてもらおうか?
いや、その前にそもそも私にそんなものが使えるのか?」
「魔王様の体の中には、物凄い量の魔力が蠢いているっす! 前魔王様よりも凄い量の魔力っす!
まず魔法では全魔王様の比にならないと思うっす!
魔王様は、魔法が使えるようになれば世界最強の存在となると確信してるっす!」
世界最強って・・・・・・。
なんかアホみたいだなー。
世界最強って、流石にお世辞だろう。
相性とかあるから最強って滅多にないものだからね。
でも少しは喜んでいいかもしれない。
「じゃあ、それをどうやって使うのかよろしく頼む、骸骨魔法使い」
「骸骨魔法使いじゃないっす! ホルムズっす!」
骸骨なのに非常にハイテンションな奴である。
「分かった、ホルムズ、よろしく頼む」
ホルムズは説明を始めた。
「まず、魔法は時間がかかるので、スキルから説明するっす!
スキルっていうのは、魔力を一切消費しなくても使えるその一人特有の特殊能力のようなものっす!
先天的なスキルや熟練度によって突然獲得出来るスキルなど様々あるんすが、まあ今は関係ないっすね!
今、魔王様がスキルを使えないのは、鍵がかかってしまっているからっす!」
「鍵だと? それはどうやって外すのだ」
「簡単っす! スキルを使える者が、鍵のかかっている者にスキルを使っていいという許可をして、自分のスキルを鍵のかかっている者に見せればいいっす!」
よく分からんが、使える者が許可すれば封印が解かれるのか。
ああ、子供のうちは危ないからスキルを使わせないためとかか?
優しい世界のシステムだ。
「じゃあ、今から私のスキルの一つを見せるっす!」
そういうとホルムズは、真剣な表情をした(ような気がした)。
そして、静かに呟く。
「下位骸骨兵の創造」
おお、なんか黒いローブを着た骸骨のリッチっぽいぞ。様になっている。
と、ホルムズの周囲を円形に囲むようにして、黒い靄が現れる。
それが床に吸収されたように見えた直後。
床から10体ほどの骸骨兵が現れた。
なにやら、呻き声を上げながら待機している。
物凄く怖い光景のはずなのに、俺は落ち着いて見ていた。流石、魔王といったところだろう。
「魔王様、どうっすか!」
「なんかホルムズが増えたな」
魔王に転生したお陰で、冗談まで言える。
「違うっす!同じ骸骨だけど全然違うっす!
魔王様、ひどいっす!」
泣きそうなホルムズは、そのまま続ける。
「それよりもスキルは解放されたっすか!」
ああ、そうだった。頭の中を探そう、とそう思った瞬間。
ビリビリっと頭に衝撃が走る。
物凄い衝撃だが、それは一瞬で終わった。
もしかしてこれがスキルが解放された時の感覚か?
あ、なんかまじで頭の中に浮かんでるぞ。
ゲームかよっ!
加護: 魔神の加護
『下位聖属性耐性』
『上位火属性耐性』
『上位水属性耐性』
『上位風属性耐性』
『上位地属性耐性』
『上位闇属性耐性』
技能:
『骸骨兵の創造』ーー スケルトン種全般を創り出せる。創造数、維持時間は、熟練度に依存。
『食屍鬼の創造』ーー グール種全般を創り出せる。創造数、維持時間は、熟練度に依存。
『黒炎弾』ーー 一点攻撃。
『死の宣告』ーー 宣告された対象は即座に高確率で死に至る。死に至らしめる確率は、熟練度に依存。
『死の玉』ーー 広範囲攻撃。
『絶対服従』ーー人間種にのみ使用可能。使用条件あり。
『傀儡』ーー人間種にのみ使用可能。使用条件あり。
え、まじで?
何なんだ、これ!?




