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どうやら俺は魔王に転生してしまったらしい

 

 暗い。

 いや何も見えない。

 そして何も聞こえない。

 なんだこれ? どういうことだ? と、少し考えた後、さっき起きたことを思い出す。 


 端的に言って、俺は死んだのだ。

 どうして死んだのか、どのように死んだのか、悪いが今は思い出したくない。

 未練は勿論あるけど、今はとにかく思い出したくなかった。


 今、俺は死んで、魂だけがどこかを彷徨っている状態。

 今の俺は、ただの精神体なのだ。


 ていうか、この状態っていつまで続くんだろ?

 まさかの永遠とか? 

 嫌だな、そんなの。

 気が狂いそうだ。

 なんでもいいから、この死んだ状態から抜け出したいな。

 とそんなことを思っていると突然変化が起きた。


 今まで精神体だけの存在だったんだが、今どうやら俺の体が出来始めてるみたいだ。

 体の輪郭なんかがどんどん出来てくる。

 それから続いて細かいところ。

 まさに洗練された造形美を目指しているかのように、ゆっくりと時間をかけて俺の体が出来ていく。

 体の出来る感覚はちょっとこそばゆい感じだが、とにかく俺は待ち続ける。


 そして。

ーー目覚めよ、人間。


 低くおぞましい声。

 特に何も考えず、その声に従って目を覚ます。

 この新たな世界で。


 ◆


 ファッ!?

 何だ、こりゃあ一体?


 「魔王様、ずっとお待ちしておりました!」


 俺の目の前で一斉に数十人?の化け物達が跪いて、そう叫んだのだ。

 

 へ? 何??????????

 どういうこと??????????


 目を開けた直後だったから何が何だかさっぱりだ。

 どういう状況なのかよく分からないんだけど・・・・・・。

 ていうか今俺、こいつらに魔王って呼ばれてたよね? 

 聞き間違いじゃ、ないよね?


 「え、魔王って俺のことじゃないよ、ね?」


 俺は、跪く化け物達に恐る恐る尋ねる。

 実にアホらしい質問だ。そんなはずがあるわけ・・・・・・。


 「貴方様以外に誰が魔王様でありましょうか。

 貴方様は、生まれた瞬間よりこの世界で最も尊い唯一無二の存在、魔王様でございます」


 最も前で跪いていた、男性的だが美しいと言える悪魔が立ち上がって応える。


 ファ!?

 待ってくれ、ちょっと待ってくれ!

 勘違いをしているんじゃないのか。俺は、魔王なんかとはほど遠い存在だぞ!

 

 「いやいや、待ってくれ! 俺は魔王なんかじゃないぞ」


 俺の発言を受けて、化け物達が笑い出した。

 とっても楽しそうだ。

 やっぱり俺をからかってるだけだったのか?


 と、さっきの悪魔が再び口を開いた。


 「魔王様節、すばらしいものでございます。しかしそれは自らを貶める行為でございます。

 我々、魔王様にお仕えしております者を笑わすためには、少々代価が大きすぎるかと」

 

 いや、違うから!

 何が、魔王様節、素晴らしいものでございます、だ!

 全然、面白くもなんともねえだろうが!

 って、それで化け物達は笑ってたのか。

 面白くもないのに無理矢理笑ってたのかよ・・・・・・。

 つまらん野郎だな、とか絶対思われてるだろうな、チクショー。


 って、違う違う!

 そんなのどうでも良くて、大事なのは俺が魔王じゃないってことだぞ。

 どうしてこんな勘違いが起きてるんだ?

 

 俺は、一旦落ち着いて現状を確認。

 暗めの大広間の玉座の位置に俺は座っているようだった。

 そもそもなんでこんな所に座ってるのかが謎だ。

 次に、俺の前に控える化け物達に目を遣る。

 悪魔とか魔物とか死霊系の存在が集っている。

 ファンタジーで言うところの悪の存在だ。

 それは、伝説上の存在で、しかも人が見たりしたら気が狂いそうなほど恐ろしい姿でーー。


 そこで違和感に気づく。

 それは俺の行動、いや心の動きそのものだ。

 

 どうして俺は、こんな化け物達相手に恐怖も何も抱かなかったんだ?

 ていうか悪魔とか初めて見るはずなのに、すんなりと受け入れてたよな。

 それは、俺が死というのを経験したからか?

 いや、違う気がする。


 俺は恐る恐る自分の手を見る。

 そこにあるのは肌色の手ではなく、紫色の手だった。


 「ぎゃああああああー」


 俺は一人絶叫した。


 ◆


 

 俺は、魔王である。

 あ、先ほどは見苦しい姿をお見せしました。

 今は、自分が魔王なんだろうなと思っております。

 どうしてそう思うことになったのかというと・・・・・・。

 自分が、どうやら人間ではないらしいことに気づいた俺は、鏡を持ってこさせて自分の姿をこの目で確認した。


 そこに映っていたのは、長いことお付き合いした愛着ある姿などではなかった。

 周りの化け物とは格が違う姿、雰囲気を持つ化け物だった。

 その瞬間に魔王だと思いました。


 その姿を説明すると。

 

 まず紫の肌。そして光る眼。牛のような大きい角1本ずつとそれよりは小さめの角2本ずつの計6本の角。

 口を開けると覗く歯はギザギザだし、でかい歯、いやむしろ牙と呼べる物もあって、それは口を閉じても目立っていた。

 見える限り翼が6枚あるし・・・・・・。

 そういう所を抜きにすれば人型と言えなくもないが、まあ見た瞬間、魔王だって思った。


 これでさっきまでの普通の人間とは思えない行動に少し納得出来た。

 魔王となったから、本能的には化け物達に一切恐怖を感じない。

 あの時は、興奮状態だったから違和感も何も感じなかった、ということだろう。


 今の俺は人間的な心と魔王として体の本能がずれてるみたいだっていうことも大体分かった。


 どうやら自分が化け物だった、という衝撃事実には人間的心が打ち勝ったようだけど。


 さらに化け物達視点の話も少し聞いた。


 簡単に言うと、彼らはかなり前に前魔王が身を滅ぼしてからずっとこの魔王城に残って、新たなる魔王の誕生を待っていたらしい。

 魔王は、この俺がいる魔王の間の玉座に生まれるらしい、ということは彼らも知っていた。

 そして遂に今日、その玉座に濃密な瘴気が渦巻き始めたのだ。

 これは、もしや魔王の誕生ではないかと、この城に残る者が集結し玉座を見守っていた。

 すると、俺が誕生したという話だった。


 まあ、この話で確信みたいなものに変わった。


 だからなんだと言ってやりたいが、どうやら俺は魔王に転生してしまったらしい。

 



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