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03 魔女のペットその二 もふもふ度★★★

「さあ、イーフォ、メシを食うぞ! 何が食いたい? 何でも言え!!」


 私はイーフォを着替えさせると、昼食の用意を始めることにした。といっても、まだ献立すら決めていないがな。せっかくだからイーフォの希望を聞くことにしたのだ。

 まあ、初日だからな。腕を振るってやろう。

 私がイーフォの返事を待っていると、イーフォは目を輝かせて言った。


「じゃあ、グラタン!! 絶対にグラタンがいい!!」

「ん? それだけでいいのか?」


 それだけでは栄養状態を改善するには足りんな。イーフォの毛並みはもっと良くなるはずだ。栄養を取らせねば。

 イーフォが悩み過ぎて他に食べたいものを言わないので、私が決めることにした。


「肉にするか。イーフォは痩せたからな。もっと食って栄養をつけろ!」

「う、うん!」


 イーフォは戸惑ってくれたが、肉で構わないみたいだな。まあ、銀狐族は肉食だからグラタンよりはいいだろう。

 さあ、肉を調達するか。


 私はキッチンの窓をガラガラっと開け、ひょっこり顔を出した。雲一つない青々とした空がよく見える。うむ、いい天気だな。


「アールー―!!」


 私が名前を呼ぶと、空からバサバサッという大きな羽音が響いた。

 数秒待つと、窓の向こうには大きな鳥が現れた。同時に、イーフォの感嘆の声が上がる。


「お、おねえちゃん、とりさん、すっごいおっきいね!」

「そうだろう! アールはとある世界にいたアエルウスソカルという種族でな、羽毛がふわふわだったからさらっ……連れてきた!」

「すっごーい!」


 アエルウスソカルは鷲と鷹と鳶を足して、二乗して、3で割って作った種族らしい。どうやってそんなことをしたのか私は知らん。その世界の神が言っていた。

 赤茶の見上げるほど大きな体躯に鋭い爪、嘴も鋭くて、アエルウスソカルに捕まったら普通の人間は確実に死ぬな。まあ、私は人間じゃなくて魔女だからな、余裕だ。

 アエルウスソカルは自分の格上以外は見下す生態がある。だから私はちょちょいのちょいと屈服させ、上位関係を明確にして私のペットにしたのだ。群れを見かけたときにこいつだけひときわ羽毛がふわふわしていたからな。


「イーフォ、アールは自分より強い奴にしか懐かない。だから、あまり近づきすぎないように気を付けろ」

「あ、あぶないの?」

「ん? 私には危なくないが、イーフォには危ないな。一応攻撃するなと言っておくが、気安く近寄るなよ」

「う、うん。わかった」

「まあ、イーフォも必死に頑張れば20年くらいでアールの実力を超えられるんじゃないか? 魔法のセンスも悪くないと思うしな」


 イーフォは初対面の時に私を魔法で欺いて見せた。私が油断していたとはいえ、あれは並大抵の才能のでできることじゃない。つまり、イーフォの魔法の才能はこの世界でも逸材ってことだな。この世界では獣人はあまり魔法を使えないらしいからな。それで気づかれなかったんだろう。


「ぼ、ぼくもまほーつかえるの!?」

「ああ。言ってなかったか?」

「う、うん」


 どうやら私はイーフォに言ってなかったみたいだな。まあ、教えるのはまだ先だし、構わんだろう。


「そうか。でも、教えるのは落ち着いてからな。今はとりあえず、……アール、何か肉を取ってきてくれ。何でもいい」


 私がアールに頼むと、アールは巨体に似つかわしくない高めの鳴き声でけぇーんと返事した。うん、可愛いな。後でもふろう。

 まあ、これでアールが数分で何か取ってきてくれるだろう。私はグラタンの用意でもするか。


「じゃあ、作るかっ!」

「うん!」


 イーフォの元気のいい返事を聞くと、私は亜空間を開いて、材料を次々と取り出していった。

 グラタンにはマカロニと玉ねぎとマッシュルームとブロッコリーと……、まあ、いろいろだ。私の料理はオリジナリティに富んでいるからな。地球にない野菜も使うか。

 マルートというこの世界の芋のようなもの。ジェスラというとある世界の緑のエビ。ああ、チーズはあの世界のやつが一番美味いんだったな。

 私がどんどんと材料を出していく姿をイーフォはいちいち声をあげて楽しそうに見ていた。空間魔法はこの世界ではまだ確立されていないものだ。珍しくて当たり前だろう。それに、選んでいる具は私のおすすめだからな。見てて面白いはずだ。


 私は沢山の材料を取り出すと、キッチンの台に魔法陣をかき始めた。

 すると、横から覗いていたイーフォが首を傾げた。


「おねえちゃん、りょうりするんじゃないの?」

「ん? どうした? 私はグラタンを作ってるんだぞ。何かおかしかったか?」


 これは私が作り上げた料理用の素晴らしい魔法陣だ。材料をのせ、料理の名前を言えばお目当ての料理ができる。私にしかできないオリジナルの魔法だ。

 うん、さすが私だ。


 私が材料を魔法陣に乗せ終えるころには窓の外からけぇーんという鳴き声がした。どうやらアールが戻ってきたようだな。アールは前足にイノシシのような動物をつかんでいた。両足にあるのは片方が自分用だからだろう。


「アール、助かった」


 私はお礼を言うと、小さい窓に入るはずもない大きな頭を押し付けて撫でてとせがむアールの頭を撫でた。アールは羽毛だからもふもふというよりはどちらかというとふわふわとかふさふさしている。頭の上は毛が短いので特にふさふさしている。

 うむ、気持ちがいいな。後でもっと撫でてやろう。


 私はアールからイノシシを受け取ると、まずはグラタンを完成させた。

 材料は既に魔法陣にのせているので、魔力を通して、グラタンと唱える。すると、そこにはほくほくのグラタンが出来上がってのっていた。


「わぁ、すごーい!」


 次はイノシシだ。まあ、簡単にステーキでいいだろう。

 私はイノシシを魔法陣にのせると、ステーキ、と唱えた。私はミディアムが一番好きだからな、焼き加減はもちろんミディアムだ。

 あとは、野菜を適当に見繕い、魔法陣にのせてサラダを作った。今日は玉ねぎドレッシングだ。


「よしっ、できた!」


 品数はそう多くないが、人数が少ないからな。これで十分だろう。

 イーフォに手伝ってもらい、ダイニングに運ぶ。イーフォは料理は手伝えなかったからと運ぶのに精を出していた。

 ダイニングに料理が並ぶと、私は吐き出し窓をガラガラと開け、私のペットたちを呼んだ。


「ケサパサ―! アール―! 二号―!」


 すると、ぽよんぽよんと跳ねながらケサパサが、翼の音と共にアールが、どすんという地響きと共に二号が現れた。

 うん、私のペットはみんな可愛らしいな。


「さあ、昼メシを食おう!」




アールはふさふさでした。


次はもふもふします。

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