12 神の嘲笑
あは、あははははっ!!
ああ、本当に笑いが止まらない。
魔女が、あの魔女があんな顔をするなんて!!
僕はさっきまでこちらを睨む魔女が映っていた画面を眺めた。転移して魔女そのものは違う画面に移ったが、そこには僕のお気に入りがまだいる。あの、魔女の顔を歪めさせたやつだ。
時を動かすと、そいつは目の前にいたはずの魔女が一瞬で消えたことに驚いていた。その反応もいちいち面白い。そして、すぐに固有スキル『鑑定』で周りを調べていた。おそらくあいつの理解しえない情報が読み取れるくらいだろう。だが、それでいい。もっと魔女に興味を持てばその足で探そうとするだろう。僕はそれの助力をするだけ。
この男は興味のあることだけで動く人間だ。特に魔法に興味を示しているからそれを追究する。その観点も面白いもので、僕は前々から気に入っていた。だから身軽になるように二輝星もあげたし、まだ試作段階の『鑑定』もくれてやった。それがまさか魔女をあんな顔にさせてくれるとは思わなかったけれどね。
僕はあの魔女が嫌いだ。
僕がこの世界の神になる前から僕を知っているあいつが。
いつもからかってくるし、僕のほうが年下だからって馬鹿にする。それに『箱舟』行きになりそうな世界を見つけてカスタマイズすれば下手くそだと罵った。思い出すだけでもイライラする。
ああ、本当に嫌いだ。
魔女のことは神の中では有名だから、弱点をすぐに見つけたけれど、それを有効に使えたためしがない。あいつの屁理屈に勝てないからだ。くそぉっ!
……でも、今はあいつが馬鹿にしたこの世界をもって本当に良かったと思うよ。たまたま拾った魂が魔女の弟だったなんて幸運だった。だって、これであいつに復讐できるからね。
魔女の一番の弱点はもちろん弟だ。
あの研究狂いの父親に目の前で殺されたせいで行方不明になった魂をずっと探していたらしい。結果は僕の世界で見つかったのだけれど、その魂はこの世界の肉体にとらわれている。つまり、僕の掌の上だ。僕がしようと思ったらなんでもできる。それを解放する方法もあるけど、あの魔女には絶対にできないみたいだからあいつは僕の言いなりだ。だから得意の魔法を制限されても何も言えていない。
次の弱点は今まで使えてなかったけど、今日有効に使えたから笑いが止まらない。だって、長袖しか着れないのに脱げって言われたんだよ? 大好きな弟とも一度もお風呂に入ったことないっていうのにさ。なのに、何にも知らないやつに肌を晒すなんて余計にできるわけないよねぇ?
あは、あははははっ!!
さっきの歪んだ魔女の顔を思い出す。
本当に笑いが止まらないや。
やっと、やっと魔女に復讐できている気分だよ。この間も新しい機能がバグになったせいで借りを作っちゃってその気分が薄れていたからね。
あー、本当に、なりそこないのくせに僕を馬鹿にするからこうなるんだ。
ざまぁみろ。