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慕い人  作者: 彼方
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野坂とデート(?)

 私はあの夜ナイトショーを観に行った際に、野坂と再会してからたまに連絡を取り合っていた。彼女は今近くの服飾雑貨店で働いているらしく、その愚痴ばかり零していた。

「私、本当はもっと芸術に関わる仕事がやりたかったのよ。脚本家とか、アニメーターとかさ」

 私はやかましく声を張り上げている野坂にうんざりしながら、「今からなればいいだろ」と言った。

「まだ23だぞ。これから色々と道が拓けてくることもあるだろうさ」

「どうだかね」

 彼女はそう言って、ビールの缶をまた一本開けたようだった。

「おいおい、あまり飲みすぎるなよ」

「あのさ、穂積。明日の夜、会わない?」

 突然そんなことを言われ、私は思わず言葉を失ってしまう。

「それはどういうことなんだ?」

「たまには飯一緒に食って、盛り上がろうよ。じゃあ、夜の八時に駅の広場で待ち合わせ。以上」

 そこまで語ると、野坂は一方的に電話を切ってしまった。

 私は携帯電話をじっと見つめながら、何なんだ、あいつ、と零した。

 あいつと久しぶりに会うことを考えると、何故だか無性に楽しくなってくる自分に気付いた。

 私は新しいワインを開けながら、ふと我に返ると、どうからかってやろうかとそればかり考えていた。

 だが、約束の日、思いがけない人と再会することになるのだった。

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