表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/63

【全て正直に話す】

 自室へ着くと、既に部屋にはテトルフが居た。


 テーブルの上に二人分のカップがあり、テトルフは床に正座をして私を待っている。






「丁度良いタイミングですね。

 たった今、紅茶の支度が整いましたよ」


「テトルフ、もう来てたの?」


「はい、そうですよ。

 それではお嬢様、テーブルの前にお座りくださいませ」








 言われるがまま、私も床に座った。


 テトルフは慣れた手つきで紅茶を飲んでおり、私もカップに手を伸ばす。



 ベージュ色の紅茶がカップに入っている。


 ミルクティーだろうか?




 じっとカップの中身を見つめていると、テトルフが口を開いた。







「本日はシーズンであるアッサムティーにミルクを加え、少し甘いミルクティーを作りました。

 ちなみにオレが厳選した茶葉ですよ」


「美味しそうだね」



「この時期のアッサムとミルクの組み合わせは、とても美味しいのです。

 お話をしながら、ゆっくりと飲んでくださいませ」








 にっこりと微笑むテトルフ。




 ――正直に話そう。


 嘘をついたってバレてしまいそうだし……何より、テトルフに嘘をついてはいけない気がする。



 紅茶を一口飲み、私はテトルフを見つめた。








「まず、あの場所は――――」








 全部話した。


 本物そっくりの手が無数に飾られた空間、ユキの隠していた趣味……そして、ユキが《嘘つき》だと知った事も。



 私の話をテトルフは真剣に聞いてくれた。


 時々、驚いたように目を開いたが……話している最中は決して口を挟まなかった。



 ようやく話し終わり、私は一息つく。








「とても驚きました。

 未だに、頭の中で整理が出来ていませんが……」


「私も知った時、凄く驚いたよ」


「ユキ様の趣味にも驚きましたが、何よりも自身から言ってしまった事に驚いています」


「やっぱり、言っちゃ駄目な事なんだよね?」



「当然ですよ。

 ゲームのルールで説明されなかったとはいえ、タブーですね」








 小さくため息をついて、テトルフは紅茶を少し飲む。



 ――タブーと言う事は、ユキに何か罰があるのだろうか?








「テトルフ、ユキに何かするの?」


「…………オレ自身はユキ様に何もしません。

 しかし、オレがジョーカー様にこの話を伝えてしまうと、恐らくユキ様……いや、お嬢様も含めて……」








 それ以上は言わなかったが、何となくその先は分かる。


 

 きっと、始末(ころ)されてしまうのだろう。




 ……そんなのは嫌だ。








「やっぱり、こんな内容じゃ見逃せない……?」



「……少し……数分ほど、考えさせて下さい。

 いくらお嬢様やユキ様が大切な方であっても、オレの雇い主はジョーカー様で……」








 テトルフは顔に手を当て、何かを考えるようにブツブツと口を動かす。


 私はただ、テトルフがどんな結論をするのか待つだけだ。




 それから数分後、顔に当てていた手を自身のジャケットの内ポケットへ移動させた。


 たしか、そこには拳銃があったはず。



 ――――――まさか、この場で……?








「こ、ここでするの……!!?」



「……おや、オレが何をしようとしているのか知っているようですね。

 そうですよ、ここでします」








 にっこりと微笑み、内ポケットからゆっくりと手を引き抜く。



 そして、テトルフの手には拳銃が――――









「………………何、それ?」









 ――――拳銃は握られていなかった。


 それどころか、もっと可愛らしい物を握っていたのだ。



 あれは……飴玉の包み紙、だろうか?




 唖然としていると、テトルフは首を傾げる。







「……何故、そのような顔をされているのです?

 まさかオレが何をしようとしているのか、知らないのですか?」


「いや、てっきり拳銃で私を……」



「そんな事はしませんよ。

 もっと簡潔な方法を思いつきましたから」










 ビリッと音を立て、包み紙を破る。


 そこから桃色の飴玉を取り出し、テーブルの上に置く。



 この飴玉が、テトルフの言う《簡潔な方法》?









「こちらはお菓子の飴玉……そっくりの薬ですね」


「薬?」


「はい、これを食べた者は記憶を失くす事ができます」


「記憶を失くす……そんな薬をどうして持ってるの?」



「お嬢様の世界の事は知りませんが、こちらでは普通に売られていますよ」








 飴玉を見つめながら、テトルフは「まあ、少々値段が張りますけれど」と付け足した。


 

 私が聞きたかったのは、どうしてそんな物をテトルフが持っていたのかと言う事だが……もしかして、聞かない方が良いのだろうか?








「その薬って、どれくらい記憶を失うの?」


「摂取量によって違います。

 全部食べると、全部の記憶が失われますね」


「そんなに強力なんだ……」


「はい、そんな強力な薬をオレが飲みますよ」




「――――――テトルフが……?」









 何故、私ではなくテトルフが飲むのだろう?


 理由が分からない。



 そうこうしている内に、テトルフは飴玉を手で粉々に割り始めた。







「――――よく聞いてくださいね、お嬢様」


「……何?」


「ユキ様は昔から《子供らしくない子供》でした。

 自分が欲しいと思っても決して口に出さず、周囲の目や反応を窺っていて……自身の感情のままに行動した事は僅かしかありません」


「……」


「そんなユキ様が、お嬢様に生きてほしいと……何より、ユキ様自身の事を知ってほしいと思ったから、危険を承知で行動したのです。

 それなのにお嬢様が忘れてしまっては、本末転倒ですよ?」


「そう、だね……」



「ですので、オレはそんなユキ様の勇気を――踏みにじる事は絶対にしたくありません」








 粉々になった飴玉を僅かだけ手に乗せ、テトルフはハッキリと言った。 








「これを食べた後、恐らくオレはユキ様の部屋へ向かう前の事以外、忘れてしまいます。

 その場合、オレがお嬢様の部屋へ居る理由を尋ねたら《一緒に紅茶を飲もうと誘った》とでも言ってください」



「分かった。

 ……その、ごめんね?」



「いえ、気にしないでください。

 それでは――――」












 その後、テトルフの予想通り……自身が私の部屋へ居ることを驚いていた。


 理由を聞かれたので、ちゃんと言われた通りに言うと、首を傾げていたが最後は頷いてくれた。


 

 ――――多分、自身の目の前にミルクティーがあったからだろう。



 疑われなくてよかった。






 そして、あっという間に何日か過ぎ……


 気付けば六月が終わり、七月になっていた。






...to be continued...

選択肢成功です。

次章へ行けますよ!!!


……こんな感じに[Select Episode]をやっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ