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第50話 得たモノ、失ったモノ

 ……あれから、一時間ほど経過した後。


 ユキがそっと離れ、私から少し距離を空けて座った。







「大丈夫、ユキ?」



「…………」







 黙ったまま、ユキは小さく頷く。


 ――――さて、何を話そう? 






「え、えっと……ユキって、こんな趣味があったんだね」


「……アスカ……軽蔑?」


「え、軽蔑?」



「…………ボク、趣味……変、すごく。

 自覚、してる……けど……止まらない」








 ユキが辺りを見渡し、弱々しい声で言う。


 

 ……この趣味には少々……いや、かなり驚いた。


 というより、驚かない人の方が圧倒的に少ないはず。

 

 







「軽蔑はしないけど……びっくりしたかな……」


「……本当……?」


「うん、本当だけど……一つ聞いて良い?」


「……?」



「《嘘つき》は殺戮が大好き……さっきも聞いたけど、ユキは私を殺したいの?」









 そう、私にとって最大の問題はここだ。



 もしもユキがそう思っているのなら、私としては少し抵抗があるけれど距離をおきたい。





 ――――改めて、このゲームの恐ろしさを実感した。




 口数は少ないけれど、ゲーム開始から約二ヶ月間で大分親しくなっている相手。


 しかし、相手は私に友情ではなく殺意を向けているのだ。


 ユキが言ってくれなければ、きっと私は今のままだとユキを《正直者》としていただろう。



 そして……始末(ころ)される。






 そんな事を考えていると、ユキが首を横に振りながら「今は、違う」と言った。









「…………最初は……思ってた。

 けど、話して……そんな感情、無い……理解した」


「だから、私に教えてくれたの?」



「……死ぬ、駄目…………嫌われるより……嫌」




「そっか……ありがとう、ユキ」









 現実を、受け止めよう。


 嘘つきの役割のユキだけれど、今は嘘を言っていないのだから。


 







「……アスカ、ボクも……質問、良い?」


「うん、良いよ?」



「…………《ゲーム》……どこまで、したの?」






「……どういう事?」








 ゲーム。


 考えられるのはジョーカーとしている、この犯人当てゲームだが……それは少し違う気がする。



 では、他のゲームは何だろう。


 ゆっくりと意味を考えた。



 ――――そして、一つだけ思い浮かんだ。









「ゲームって、まさか……」



「……ボク達の……ゲーム。

 ここは、ゲーム世界……だよね?」








 ユキは、私が頭に浮かんだものと同じ事を言った。



 ……いつ、知ったのだろう。








「どうして知っているの?」



「……前……ジョーカーから、聞いた」


「そうなんだ……」


「…………それで、どこまで……したの?

 正直者、誰?」



「いや、実はプレイしてな……え……?」








 おかしい。



 ユキの言葉に、疑問を抱く。






 ……ユキは……《正直者を知らない》のだろうか?









「ユキ、ユキって正直者は誰だか知らないの?」


「……知らない……」


「てっきり、知っているのかと思った……」



「…………ある日、テト……カード、くれた。

 カード……《嘘つき》の文字」



「嘘つきって書かれてただけのカード?」


「正直者、好き……アスカを。

 ……テトが……言った……それだけ、だよ?」









 首を傾げながら、ユキは言う。


 

 ……まさか、知らないだなんて思ってもみなかった。









「てっきり、知っているのかと思ったよ……」




「……この前……ハルト兄さん、ナツ兄さん……話し合った。

 けど……誰も、自分以外…………役割、知らない」


「そっか……」








 ユキが正直者ではないとすると、後はナツかハルト。


 テトルフの「三人から選べとは誰も言っていない」と言う発言も気になるけれど、これで正直者を当てられる確率はかなり高くなったはず。



 ……この二人だったら、どちらが正直者だろう?


 







「…………これからは……もっと、アスカ……守る、約束。

 情報も……手に入れて、支える」


「ありがとう……でも、無茶はしないでね?」


「……ボク、大丈夫。

 だから、アスカ……人形……いつも、持ってて?」



「――そういえば、どうして人形を持ってくるように言ったの?」








 

 この話し合いに、人形は要らなかったはず。


 ただ持っていて欲しかっただけだろうか?



 ユキから貰った人形を取り出し、じっと見つめる。


 ……可愛い。


 持っているだけで気持ちが安らぐ……そんな気がする。


 きっと、人形特有の癒し効果だろう。









「………………人形……秘密」


「……教えてくれないの?」



「……秘密、だよ?

 とにかく……アスカ、大事……持って」



「う、うん。分かった」


「じゃあ……部屋、戻る。

 ……ここ……アスカ、長く嫌……だよね?」









 ユキに質問され、私は少し頷く。


 いくら作り物だからと言っても慣れていないので……長時間居ると、気が滅入ってしまいそうだ。


 







「……行こ?

 そろそろ、帰ってくる……だから……」



「うん、行こう」









 ユキが立ち上がり、猫耳のフードを被り直して私に手を差し伸べる。


 その手を掴んで立ち上がり、私達はユキの部屋へと向かった。




 暫く歩いた後、ユキが止まる。

 

 ……今度はユキにぶつかっていない。








「……伝えるの……抵抗、あった。

 けど、知ってもらえて……少し、嬉しい」



「これからも、仲良くしてくれるよね?」




「…………当たり前、だよ?

 アスカ、ボク……とっても、大事な――――――――」













「大事な……その続きは、何ですか?」










 入る時に聞いた重い音と共に、眩しいほどの光が私達を照らす。



 元々暗い場所に居たせいか、その光は酷く目が眩む。






 そして、その光の先で笑顔を浮かべている者が居た。










「…………っ……!!!!??」



「……テト…………」







「ごきげんよう、ユキ様とお嬢様。

 そんなところに道があったのですね、初めて知りました」









 そう、テトルフだ。


 テトルフが懐中電灯を片手に、こちらへ歩み寄る。




 ……ユキは僅かに震えながら、私の手を一層強く握った。








「……テト、どうして……?」


「用事が早めに終わってしまい、やることがないので帰ってきました。

 ちなみにジョーカー様はまだ本屋ですよ」



「…………そう……」



「それで、ユキ様達は何をしていたのです?

 ――――わざわざ隠し部屋で語るのですから、とても大事な内容なのでしょうね」







 にっこりと、テトルフは微笑む。


 ……もしもバレたら……私達は、どうなるのだろうか。



 



...to be continued...

もう少しで次章です。

本当はここで区切りたかったけれど、まだ続きます。


そして、アンケート終了しました!!

合計37……ご協力、本当にありがとうございます。

コメント返信と結果は後日、活動報告に載せますね。

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