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第43話 非現実的《鬼ごっこ》③

「ユ、ユキっ……近……」


「…………我慢、少し……見つかる」








 クローゼットの中は部屋以上に埃っぽい。


 それに、暗くてせまい。


 私一人でもギリギリだ。




 そんな空間で、私とユキは隠れている。




 ――――この状態からどのくらい、時間が経ったのだろう。


 話す度にユキの息が耳にかかって、くすぐったい。


 何よりも……恥ずかしすぎるのだ。







「……アスカ、怖い?」


「え、どうして?」


「肩、震えてる……それに……」


「……?」



「心音、すごいから」


「へ……!!??///」







 まるで子供をあやすように、ユキが私の頭を撫でる。


 ……どうしよう、ますます恥ずかしい。



 





「怖くないけど……その……」


「……アスカ、違う? それとも、恥ずかしい?」


「そう、恥ずかしいに決まってるよ……!!

 ユキは恥ずかしくないの?」





「……ボク……アスカ、好き。

 …………だから、アスカ以外……嫌」









 耳元で囁かれる、愛の告白。


 けれど、私は――――その言葉に恥ずかしさを感じなかった。





 私が感じたのは、恐怖と疑惑。


 


 そうだ、ユキは私が「好き」なんだ。


 例え《正直者》だろうと《嘘つき》だろうと、この言葉を言う。




 もしも、ユキが《正直者》の立場ならば単純な愛の告白だ。



 その反対の立場だった場合は――――いや、考えるのをやめよう。




 今はまだ、ユキを疑いたくない。


 疑いたくはないのだけれど……





「――ユキを、信じていいの?」


「…………っ……!!!!!!」








 自分自身へ問うつもりだったが、無意識に言ってしまった。


 


 そして、その言葉にビクッと過剰反応するユキ。


 その反応は、ますます私の不安を掻き立てる。




 暗くてユキの表情は見えないので、言葉で探るしかない。


 もしかしたら、これは正直者を見つめるための情報を得るチャンスかもしれないのだ。









「…………アスカ、ボク……信じる?」


「一応……まだ、ユキの事は疑えない」



「兄さん達は……?」


「えっと、ナツも疑えないかな……

 ハルトはまだよく知らないから、分からない」








 そういえば、ハルトとはあまり関わっていない。

 

 お菓子作りの時の影響なのか、ハルトは少し怖い印象があるからだ。


 普段じゃ想像は出来ないが、料理中のハルトならば私を「殺したい」と思っていても納得してしまう自分がいる。



 



 そんなことを考えていると、ふとユキがクローゼットの扉を開け、部屋を見渡しながら出て行く。


 







「鬼、音……聞こえない……大丈夫」









 ――――いつのまにか、鬼は他の場所へ行ったようだ。


 私もゆっくりとクローゼットから出て、扉を閉める。



 





「そういえば、ナツが帰ってこない……」


「ナツ兄さん……多分、厨房。

 鬼も、厨房」


「そっか……だから、遅れてるのかな」



「――――それよりもアスカ、これ」









 ユキが私に何かを渡す。


 黒くて柔らかく、可愛らしい。



 これは……








「猫の……人形?」



「約束、プレゼント……ボクの、気持ち」


「あ、この前の……?」







 まんまるで可愛い、少し大きな猫の人形。


 けれど見た目より軽い。


 それにこの人形を持っていると、どことなく身体が軽くなるような感覚がする。


 

 人形が、軽いからだろうか?







「ありがとう、ユキ」


「……六月……二十日」



「――――え?」








「六月二十日、ボクの部屋……絶対、人形と一緒……来て」









 じっとユキに見つめられる。


 その目は何かを訴えているような、とにかく真剣で必死な目だった。



 ……当然、断る理由はない。








「うん、いいよ。

 時間は?」


「いつでも、大丈夫……けど」



「けど?」





「誰にも、言わないで。

 誰も、連れて来ないで……」








 誰にも言わず、さらに連れてこない。



 その言葉だけだと、嫌な予感しかしないのだが……どうしよう。


 







「そんなに大事な内容なの?」



「…………大事、すごく。

 言おうか、考えた……けど、言う…………全部、その日に」




「それって、もしかして正直者の――――――」









 「正直者に関しての話」かと聞こうとした時、廊下からピーと甲高い笛の音が聴こえた。


 部屋の中に居てもハッキリと聞こえる、とても大きな音。




 その音を聴いたユキは、どことなく安心したような顔になった。








「……ゲーム、終了。

 ハルト兄さんかナツ兄さん……確保」



「え、もう終了……?」


「……開始、二時間……最短記録」



「数分だと思ってたけど、二時間も経ってたの!?」




「…………アスカ、戻ろ?」













 ――――《鬼ごっこ》は、ハルトが鬼に囲まれて捕まったという内容で幕を閉じた。



 ゲームに勝った私とナツへのプレゼントは、後日貰えるらしい。






 ユキは正直者か、そして六月二十日の予定、さらに後日どんなプレゼントが貰えるのか。

 

 三つの疑問が頭を埋め尽くす。


 

 そのせいで今夜も眠れない気がしたけれど、ユキから貰った人形をベッドの傍に置いておくと……自然と眠ることが出来た。







...to be continued...

インフルエンザで更新が遅れていました、ごめんなさい。


変な終わり方ですが《鬼ごっこ》は終了です。

次回は、勝者へ渡すジョーカーからのプレゼントとは……ですかね。

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