第40話 ペア決め
――――テトルフとの買い物が終わり、屋敷へ着いた頃は丁度夕食の時間だった。
いつもならバラバラなのだが、今日は珍しく全員が同じ時間に食事をしている。
「そういえば、アスカはテトルフと買い物に行ったんだろう?
楽しかったかい?」
「うん、楽しかったよ。
またあのカフェに行きたいな……」
「オレのお気に入りのケーキセットを気に入って頂けて嬉しいです。
また一緒に行きましょうね、お嬢様」
私の右にはテトルフ、左にはジョーカー。
向かい側には右からナツ、ハルト、ユキが座って各自で食事をしている。
こんな風に全員で集まると、交流会の前日に行った会議を思い出す。
「なーなー、折角集まったんだし早めの会議しちゃおうよ!!」
「ふん、馬鹿ハルトにしちゃマシな意見だな。
俺様も丁度会議がしたいと思ってたぞ」
「……部屋、あまり出たくない。
会議、今すぐ……しよ?」
「ふむ、会議か……
私は構わないけれど、アスカやテトルフはどうだい?」
ハルト達もこの集まり具合を見て会議を連想したのか、ジョーカーに会議をしたいと言い始めた。
そこまで、鬼ごっこがしたいのだろうか?
いや、私も自分の世界ではあまり走れなかったから、鬼ごっこが楽しみだけれど……。
「私も会議して良いと思うよ」
「オレもです。
わざわざ後日集まるより、この偶然を有効活用すべきですからね」
「……そうか。
それでは会議を始めよう」
ジョーカーの言葉を合図に、全員が彼へ視線を向ける。
「まず、今回の行事は《鬼ごっこ》だ。
アスカ、ルールは分かるかい?」
「うん、前から知ってたよ。
それにテトルフからも聞けたし」
「ふむ……では早速、ペアを決めてもらおうか
ペアのどちらかが鬼に捕まったら負けだ。慎重に選んだ方が良い」
テトルフから聞いた時に疑問に思ったのだが、鬼ごっこにチーム戦とはどういうことだろう。
あれは個人で逃げたり捕まえるんじゃ……その辺りは私の世界とは違うらしい。
とりあえず、誰かとペアを組まなきゃいけない。
どうしようかと考えていると、ハルトが手を挙げて椅子から立ち上がる。
「はいはーい!!
俺、アスカちゃんと組みたいでーすっ☆」
「良いの?
私、遅いかもしれないけど……」
「全然オッケー!!
もしも本当にピンチなら、お姫様抱っこで一緒に愛の逃避――――痛い痛い痛いって!!!」
何かを言いかけたハルトが急にテーブルに突っ伏す。
……え、どういうこと?
ハルトは一体、何が痛いの?
「ナ、ナツ、ユキ!!!!
素敵なお兄様の両足を蹴らないで!!」
「足……?」
「ハッ、アスカ……馬鹿ハルトが長時間全力疾走できるわけねえだろ?
ここは身体能力的に俺様がアスカとやるべきだ」
「…………ピンチ、魔法……助ける。
だから、ボクと……組もう?」
何となく気になったので、少し屈んでテーブルの下を覗いてみる。
……ナツとユキの足が、今も真ん中のハルトの足を蹴り続けているのが見えた。
やっぱり、ハルトは苦労人だと思う。切実に。
――――さて、どうしようか。
最初に誘ってくれたハルト
身体能力が高いらしいナツ
ピンチに魔法で助けてくれるユキ
この中で一番疑問に思うのは、ユキの発言だ。
いくら私は体力が無いからって、魔法で助けられなければならないほどハードな鬼ごっこなのだろうか?
「……ねえ、テトルフ。
鬼ごっこってそんなにハードなの?」
「はい、速度も弾力も凄まじいのでかなりハードですよ。
それよりもオレはお嬢様の体調が心配です……辛くなったらいつでもリタイアしてくださいね?」
「………………今、何て言った?」
「速度も弾力も凄まじいと言いましたが……どうかいたしましたか?」
テトルフへと視線を向ける。
何故なら鬼ごっこの説明に、弾力なんて要らないはずだからだ。
それなのにテトルフは「弾力が凄まじい」と言った。
まさか……私の知っているような、普通の鬼ごっこじゃない……?
「テトルフ、鬼ごっこの説明を教えて。
もしかしたら私の世界の鬼ごっこと違うのかもしれない」
「おや、違うのですか?
鬼ごっことは、鬼役から逃げる遊びですよ」
「……その鬼役って?」
「鬼役は文字通り、鬼ですね。
鬼族の子供達が屋敷へ来てくれるのです」
「――――え? 鬼?」
「はい、鬼です。
……勿論、彼等は一切こちらに危害を加えませんよ」
どうしよう……私、すっかり忘れていた。
この世界は《魔法やらモンスターが当たり前の世界》。
当然、鬼だっているはず。
つまり、この鬼ごっこは――本当の鬼からひたすら逃げると言うことだ。
これはジョーカーの言った通り、本当に慎重に選んだ方が良い。
いくら危害がないからと言っても、相手は鬼なのだから。
そう思い、私は視線を三兄弟へ向ける。
すると、真っ先にナツと目が合った。
彼は私と目が合うと勝ち誇った笑みを浮かべ、私に向かって親指を突き立てる。
「喜べ、アスカ。
俺様はジャンケンに勝った……つまり、お前は俺様とペアだぞ」
「……ペア、ジャンケンで決めたの?」
「おう、ジャンケンほど公平な物は無いからな。
頑張ろうぜ、アスカ!!」
「……負け……すごく、悔しい」
「うーん、グー出してたら俺の勝ちだったのになー」
選ぶ暇もなく、私とナツはペアに。
そして、ハルトとユキのペアが完成した。
「――――決まったようだね。
開催は明後日の朝十時から、夕方五時までの間……屋敷内で楽しくイベントをしよう」
ジョーカーが「解散」と言い、本日の会議は終了してそれぞれ食事を再開する。
……どうしよう、全然逃げ切れる自信がない。
けれど、頑張らなきゃ。
...to be continued...
次回から、楽しいリアルな鬼と《鬼ごっこ》編(?)が始まります。
そして、再びアンケートを設置しました。
誰落ちにしようかの参考にします。
今回は集計を非公開にし、私以外は結果が見れないので良し悪しをバンバン記入してくださって構いませんよ!!!!←
皆様、お時間がありましたら出来る限り協力をお願い致します……!!