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第39話 ブローチ

 少し暑いけれど、いつも通りの制服を着る。


 ナツから貰ったワンピースでもいいのだが、少し落ち着かないのだ。


 そして、今日は何となく左胸の部分に薔薇のブローチをつけた。


 これはテトルフから貰った物だ。


 太陽の光に当たり、銀色にキラキラと輝いている。




 別に彼が言っていた「デート」を意識したわけではない。


 ……何となく、つけただけだ。









「身体の調子はどうですか? 気分は悪くないですかね?

 先程お嬢様用の日傘を購入致しましたので、差しましょうか?」


「い、いや、元気だし暑くもないよ……?」



「それなら良いのですが……あぁ、あれもお嬢様に似合うと思いません?」


「――――これ以上、買わないで」






 日傘なんて差せないほど両手に紙袋を持ち、私の前を歩くテトルフ。


 きっと私達は《傲慢なお嬢様と荷物持ち執事》に見えるのだろう。





 実際は違う。


 私が何度止めても、テトルフがどんどん購入していくのだ。

 


 最初に購入したのは、当初の目的である動きやすい服。


 蛍光ピンク色のポロシャツとホットパンツ……ちなみに私は一切選んでいない。


 次に化粧水や保湿パック、可愛らしいリボンのついた白い日傘。


 さらにペンや手帳などの小物も購入している。




 ――――買いすぎだ。









「では欲しい物がありましたら、遠慮なく言ってくださいね?」


「分かったけれど、どうしてそんなに買ってくれるの?」



「…………どうしてだと思います?」









 前を歩いていたテトルフが動きを止め、ゆっくりと振り返って私に微笑む。


 理由なんて、分かるわけがない。


 あるとすれば《執事だから》……だろうか?








「やっぱり、分かりませんか?」


「えっと、執事だから……?」


「はい、半分正解ですね。

 正しい回答は、オレが吸血鬼だからですよ」



「……どういう事?」







 

 再びテトルフが歩き出したので、私もそれに着いていく。



 それにしても……物を沢山買う理由が《吸血鬼》とはどういうことだろう。


 コレクション魂が高いとか?



 駄目だ、全然分からない。









「吸血鬼は他の悪魔とは違い、非常に高貴で誇り高き種族です。

 特に、自分の縄張りや所有物を荒らされることが大嫌いですね」


「そうなんだ……」


「一度欲しいと感じたらすぐにマーキング――《自分の物だ》という証明を残します。

 そうすれば他の吸血鬼から取られる心配がないのですよ」


「どんな証明を残すの?」



「人でしたら首に深く傷痕をつけるか、貢物を捧げて身につけてもらう……ですかね。

 例えば――――」







 もう一度テトルフが立ち止まって振り返り、自身の左胸を軽く叩く仕草をした。


 それにつられ、私も自身の左胸を軽く叩く。


 すると、何かひんやりした物が当たった。



 ――――テトルフから貰った、ブローチだ。








「っ……!!!!」


「オレからの貢物、気に入って頂けて嬉しいです。

 吸血鬼は独占欲が非常に高いですので……ずっと、身に付けていてくださいね?」



「いや、え……つまり、テトルフは……」




「はい、狂おしいほど好きですよ」



「――――え?」







 あまりの爽やかな笑顔に暫く思考が追い付かなかったけれど、今……好きって言ったの?


 いや、そんなことはないはず……でも、吸血鬼の貢物って……



 私の頭の中が、様々な仮説でいっぱいになった。


 一方で目の前のテトルフは私を見ながら、肩を震わせて笑って……え、肩が震えている?








「……え、えっと、テトルフ……?」


「いえ、あまりにもお嬢様が純粋でしたからつい……

 先程の発言は、冗談ですよ」


「冗談?」


「マーキングの種類の貢物を捧げると言うのは冗談です。

 ブローチはただのプレゼントですから心配しないでくださいね」









 …………嘘。


 それを聞いて、私は少し安心した。


 もしもこれが本当だったのなら、これからテトルフにどう接すればいいのか分からなくなってしまう。



 別に嫌いではないけれど、かといって好きでもない……と思う。


 自分の感情なのによく分からない。









「――――まあ、嘘ですけれど」


「え?」



「何でもないですよ。

 それより、この先にオレが気に入っているカフェがありますので行きませんか?」


「う、うん、じゃあ行こうかな」



「それでは行きましょうかね」








 満足そうにテトルフが頷き、背を向けて歩き出した。



 ……さっき、何かを言っていた気がしたけれど……



 私の気のせいだったのだろうか?







...to be continued...

執事さんと買い物の回。

今更ですが、この世界の吸血鬼は日差しとか十字架とか気にしません。平気みたいですね。


ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!

亀更新ですが、頑張ります!!!

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