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第29話 お茶会へのお誘い

 ――――誰かに頬を何度か叩かれて目が覚めると、私は自室のベッドで寝ていた。



 






「ちょっとー……アンタ、いつまで寝てんの?」


「………ん……ノエル、テトルフは?」



「は? ……テトルフさんがどうしたのよ?」








 ベッドで横になる私、その隣で私の顔を覗き込むノエル。



 どうやらノエルが私を起こしてくれたらしい。


 だが、妙な違和感がある。




 ……私は、テトルフとさっきまで話していたはず。


 彼の独り言を聞いて、それから「仕事とはいえ監視だなんて行為をして申し訳ございません」と何度も謝られ……その後は……



 その後、何があった?




 思い出せない。


 まさか、寝てしまったのだろうか?









「まさかアタシが寝てる間、やましーことでもしてたの?」


「違っ……!!!!」


「冗談だよ、アンタが男慣れしていないことぐらい分かるし」


「ま、まあそうだけど……」


「男慣れしてたら、ノエル見たって何も感じないし……ねー?」










 ニヤリと意地悪な笑みを浮かべ、ノエルが耳で私の頬をペチペチと音を立てて叩く。


 ……え、耳?




 必死に目を擦り、まじまじとノエルを見つめる。



 そう、今のノエルはツインテールではなく………ウサギの耳を生やしていた。


 つまり、《男》としてのノエルであって……







「……っ………!!!!」



「何、まだ驚いてるの?」


「いや、だって……その……」



「いい加減慣れちゃいなよ。

 まだまだ、アタシとアンタは一緒のベッドで寝るんだし?」










 どうやら、私を起こす時に頬を叩いていたのは《手》ではないようだ。


 ……あの可愛らしい、ウサギの耳で叩かれていたのか……。






 そう思っていたら、無意識にノエルの耳を掴んでいた。










「うわっ、ちょっ……何すんの!!!??」


「な、何となく?」



「何となくで耳を掴まないでっっ!!!」









 ジタバタと暴れ、必死に私の手から逃れようとしているノエル。


 ……なるほど、ノエルは耳が弱点なようだ。











「お願い!!耳は勘弁して!!!!」


「……じゃあ、もう私に変なこと言わないって誓って?」


「へ、変なことって何!!!?」


「例えば男慣れしてないとか……一緒に寝ようとか」



「わ、分かった!!!もう変な言い回しはしないから!!!!!」



「うん、約束ね」





「………ゼェ…ゼェ……ノエル、アンタなんか……き、嫌い……!!!!///」










 耳を掴んでいた手を離すと、ノエルはすぐに毛布の中にもぐりこんでしまった。


 その時、ほんのりと頬が赤かった気がしたけれど、恐らく怒りすぎたせいだろう。




 ……ちょっとばかり、やりすぎただろうか?










「ごめん、ノエル……大丈夫?」


「………」


「ノエル?」


「………」


「ねえ、ノエルー?」


「……あー……もう、黙ってよ………変態」



「なっ…!!?」










 もぞもぞと毛布から顔を出すノエル。


 ノエルは頬を膨らませ、ジト目で私を見つめた。


 ……あ、いつの間にか耳ではなくツインテールの髪になっている。



 私に触れられることを恐れて、毛布の中で髪の毛をセットしていたようだ。










「アンタさー……

 もしかして、わざと?」


「え、何が?」


「……分からないなら良いよ、この鈍感」



「ええっ…!!!!??」


「変態、馬鹿、鈍感……サイテー」








 次々に罵声を浴びせられ、どう対処していいのか分からなくなる。


 というより、何故私はこんなにノエルに言われているのだろう……考えても余計に分からない。



 この状況をどう対処していいのか悩んでいた時、ふと扉がコンコンと音を立てた。


 ――――誰かがノックしているようだ。










「はい、どうぞー?」



「失礼致します。

 アスカお嬢様、そしてノエル様……お食事の時間ですよ」










 部屋に入ってきたのはテトルフだった。


 どうやら食事の時間だと伝えに来たようだ。



 ……そうだ、テトルフが来たのであれば……










「ねえ、テトルフ。

 私ってあの後………」



「はい、とても可愛らしい顔で寝ていましたね」


「やっぱり……」


「ですので、オレが部屋まで運びました。

 お嬢様は見た目以上にとても軽くて、少々驚いてしまいましたよ」






「――――――あのさ、どういう事?」




「え……?」


「……おや? ノエル様?」









 急にノエルは私とテトルフの間に入り、しかも何故か私を睨んでいる。


 ……えっと、私……ノエルに何か変なことをしてしまったのだろうか?



 それとも、さっきの怒りがまだ……?




 どうして不機嫌なのか理解できず、私は首を傾げる。


 それを見たノエルは、一層不機嫌そうな顔になった。










「何?

 アンタ、やっぱりテトルフさんと……」


「え、いや……そんなことはないよ?」


「本当に? 絶対に?

 ちゃんと、神の前で絶対って誓えるの?」



「…う……誓えるけど、ちょっとノエル近い……!!!」








 グイグイと間近まで近寄られた挙句、凄まじい威圧をかけられる。


 ――――怖い、色々な意味で。



 それに、何だかノエルの様子がおかしい。


 最初に会ったときの女の子らしいノエルとは、まるで別人だ。



 ……いや、これが素?




 未だに表情に変化が無いノエルに困っていると、執事が止めに入ってくれた。








「そろそろお嬢様で遊ぶのは止めてください、ノエル様」


「テトルフ……」



「少し黙っててよ、テトルフさん。

 女同士の会話に口を出さないでくれる?」









 …………いや、女の子じゃないよね?


 そう言いたいけれど、必死に心の中だけで抑えておく。











「では、女性同士の会話が済み次第……

 朝食の時間なので、第一ホールへ来てくださいね?」




「分かったから、さっさと行って」


「……えぇ、最後に伝言を残してから失礼しますね。

 アスカお嬢様、ジョーカー様が十二時頃にお茶会をするので来てほしいそうです」



「――――ジョーカーがお茶会?」




「はい、場所はジョーカー様の部屋。

 その際、マフィアの当主であるライム様とユウム様も出席なさるようですね」



「…………そう……」



「それではまた、ホールにて逢いましょう」









 そう言って、テトルフは部屋から出て行った。


 ……ジョーカーの部屋で、お茶会……



 何故私が呼ばれたのかは分からないけれど、断る理由は無いから行くしかない。









「…………ねえ、アンタってテトルフさんが好きなの?」


「えっ!!?」










 ずっと黙っていたノエルが、急に私にそう言った。


 ……好き?



 私が、テトルフを?





 いや、全然考えたことない。


 たった今想像をしてみたが、無理だ。










「……いや、全然……」



「ふーん……まあいっか。

 ほら、さっさとご飯食べに行くよ――――――アスカ」



「えっ……!!?」










 初めて、ノエルが私の名前を呼んでくれた。


 あまりに突然の事だったので思わず大きな声を出してしまったが、仕方ないだろう。



 しかし私の態度が気に食わなかったのか、ノエルは少し乱暴に私の腕を掴んだ。









「何よ、呼んじゃ悪い?

 テトルフさんには名前で……しかも、お嬢様とか呼ばれてるくせにノエルは駄目なの?」


「駄目ってわけじゃないけど……急に呼ばれて、驚いただけ」



「………あっそ。

 じゃあ、頑張って慣れなよ」









 腕を掴まれたまま、私はノエルに引っ張られて部屋を出る。



 ――――よく分からないけれど、ノエルと仲良くなれた……のかな?








...to be continued...

一歩間違えれば、ノエルの方が変態。

ちなみにノエルは生意気系クーデレ(?)ってやつですね。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!

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