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第25話 『ノエル』③

「……………」


「………………」








 私の目の前には、半裸の青年。


 またの名を、女風呂に侵入している不審者だ。

 

 そんな不審者に壁際へ追い詰められ、私は逃げたいけれど身動きが取れない。



 しかし、こんな状況で逃げること以外を考えるのは駄目だけれど………



 私は、この不審者のことが気になっている。








 いや、不審者の頭に付いている《真っ黒なウサギの耳》が気になって仕方がないのだ。



 遠くからだと、このウサギの耳は玩具やコスプレグッズだと思っていたが……ピクッと動いている。


 …………まさか、本物?










「――――――――ジロジロ見ないで、変態」


「へ…っ……!!??」



「鍵閉めてたのによく入ってきたねー……

 驚きのあまり、声が出なかったよ」










 じっとウサギの耳を見つめていたら、目の前の青年にため息をつかれた。


 ………変態は私の目の前に居る、とツッコミを入れたいのだが……



 この青年の声に聞き覚えがあった。





 青年の割には、少し高音な声。


 ……誰だっけ…








「…………アンタ、もしかして誰だか分かってないの?」



「うん、分からな……………アンタ?」










 今、目の前の青年は私を『アンタ』と呼んだ。



 私をアンタと呼ぶ人は、現状では―――――――










「………ノ、ノエル……なの?」






「そうだけど、何? こんな近づいても気づかなかったの?」



「え……ええええええええっ!!!!???」




「う、うるさいなっ……耳元で叫ばないでよ!!!!」









 青年―――――――――ノエルが追い詰めるのを止め、ウサギの耳を抑えながら私を睨む。



 な、なんと、目の前の半裸の不審者の正体は、ノエルだったのだ。


 信じられない。



 というより、信じたくない。





 嘘だと信じたくて、私は青年を見つめた。



 ノエルと同じ黒い髪……唯一違うのはツインテールじゃなく、ショートなこと。


 整った顔立ちだが、男らしいとは言えない……女顔というやつだろうか?


 何より、目の色も私との身長差も、同じだった。


 けれど……髪色と同じウサギの耳はノエルには無かったはず。



 というより、あるわけがない。



 しかし、目の前の青年は自分をノエルだと言って………どういうこと?









「な、何で……!!?」



「それはどっちの意味?

 ……ノエルが男だったこと? それとも耳?」


「……両方……」



「話してもいいけど、その前にアンタがここに来た理由を説明してよ」


「えっと、これを……」










 睨んだまま、ノエルが腕組みをして私を見下ろした。


 まだノエルだと信じられないが、とりあえず私は懐から櫛を取り出す。










「櫛、落としたみたいだから届けに来たの」


「……たしかにノエルの櫛だけど………

 じ、じゃあアンタが鍵をこじ開けて入ってきたのも……?」


「…………元から、開いてたよ?」



「そんな……ノエル、どの道でも危険だったってこと…!!?」










 鍵が開いていたことと、櫛を忘れてたことの両方に驚いているノエル。


 ……説明したから、そろそろ理由を聞けるかな?









「それで、ノエルはどうして男――――――――」



「ちょっと待った!!!」


「え?」


「……その、今から話すこと………絶対に、誰にも言っちゃ駄目だよ? 絶対だからね!!?」


「…え……うん、分かった」


「……じゃあ、話すか」









ノエルが凄い迫力で言ったので、私は思わず怯んでしまった。



やっぱり、この男性がノエルだなんて信じたくない……









「――――――まず、見て分かる通り……ノエルは《男》。

 ちなみにボスやシーヴァでさえも、ノエルの本当の性別を知らないよ」


「でも、ジョーカーから貰ったプロフィールに女って………」


「戸籍も名刺も全部、女で登録してるに決まってるじゃん」


「どうして?」


「………ノエルの家、昔から暗殺稼業で……たまたま顔が女っぽいけど男なノエルが産まれたから、性別を偽って生きるように言われてたの」


「……?」



「アンタって意外と馬鹿なんだねー……ほら、女の方が色々と便利なのよ。

 特に暗殺に関しては対象者(ターゲット)が大概オヤジばっかりだから、可愛い女の子だとホイホイ騙せるってことだよ」










 ………大体は理解できた。


 たしかに、男よりも女の方が得するかも。



 じゃあ、頭の耳は……









「………そして、ノエルはウサギと人間のハーフ。

 簡単に言うと獣人ってやつ」


「普段、耳はどうしてるの?」



「それは……ちょっと櫛、貸して」










 ノエルが手を伸ばしてきたので、櫛を渡す。


 渡したのは良いけれど、何の関係があるのだろうか?



 櫛を受け取ったノエルは、ひとまず自分の服――――――ゴスロリのミニドレスを着始めた。



 ……ウサギの耳を生やした青年が、こんな恰好をしていたら流石のイケメンだろうと逮捕されるだろう。









「よーく見てなよ?」









 ノエルが髪ゴムを取り出し、片方の耳に結ぶ。


 そして髪を梳かすように、その片方の耳へ櫛を動かした。



 すると―――――――









「………!!!!!」



「どう? これが耳の謎……分かった?」










 櫛で梳かされたウサギの耳が、さらさらの《髪の毛》に変わった。


 同じようにもう片方の耳もゴムで結んでから櫛で梳かし、ノエルから耳が完全に無くなった。




 この髪型は……そう、ツインテールだ。


 しかも、ノエルと同じ………









「本当なの? 本当にノエル……?」


「しつこいなー……

 ノエルだって言ってるでしょ? アンタいい加減、現実ってやつを認めなよ」



「け、けれど、つまりそれって………」










 ―――――――この一週間、私は男の人と寝てたってこと……!!!?



 そう考えると、顔がすごく熱くなってしまう。




 それを見たノエルが、にっこりと笑って私を見つめた。









「……ま、今日も一緒に寝ようね?」


「えっ!!??」


「何驚いてるの?

 アンタが急にノエルを部屋から追い出したら、ノエルの秘密がバレちゃうかもしれないでしょ?」


「そうかもしれないけど…でも、ノエルは男で……!!!」


「今は《女の子》。

 それよりもノエルは早く部屋に戻って、寝る前のお手入れがしたいの」


「そんな……」



「大丈夫、ノエルはアンタに変な感情は持ってないから……ほら、行こう?」










 ノエルに催促され、一緒に脱衣所から出て行く。



 ………どうしよう。


 ローズの件と、女の子だと信じていたノエルの正体。




 私、この世界の女性が信用できなくなりそう…………






...to be continued...

と、いうわけで……ノエルは男でした。

まだ先だけれど、ACT.4の最初の方に【現時点で判明していること】と【好感度】を書く予定です。

なお、キャラプロフィールに書いてあるノエルの《女》設定は変えません。

最初から男って書いてしまうと、驚きが無くなってしまいますからね。


次回、ローズさんが動き出します。

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