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第20話 宣戦布告

【六月ではなく、五月でした……修正します】

 部屋は人の心を映す。








「ここが私の部屋ですわ」










 ローズに誘導され、私は彼女の部屋に着いた。


 そこは、彼女の髪の色のように……桃色の可愛らしい空間。



 まさに女の子の理想像を描いたような部屋だ。









「…それで、話って……」


「―――――その前に、それを貸してくださいませんか?」



「……それ?」


「えぇ、お嬢様が持っている…その服の事ですわ」










 ローズがじっと、私の持っているジャケットを見つめる。


 テトルフのジャケットに、何かあるのだろうか?



 特に断る理由が無いので、私はローズにジャケットを渡した。


 受け取ったローズは満足そうに微笑み、ゆっくりとジャケットの内ポケット部分をまさぐる。




 ……取り出したのは、あのカプセルの薬だ。










「ふふ……やっぱり、テトルフ様が持っていたのね…?」


「それは、テトルフの薬じゃないの?」



「えぇ、あの方の薬じゃありませんわ」










 ……まあ、厨房で普通に会話をしていたから…病気じゃないとは思っていたけれど。



 ということは…










「じゃあ、ローズの物?」



「そうですわ、私のモノですの」


「それなら、どうしてテトルフが持ってたの?」



「奪われましたわ。

 殆どは燃やされてしまい、残ったのはこれだけのようですわね」










 薬を燃やすだなんて……

 

 テトルフは何を考えているのだろう。



 一方で、ローズはうっとりとしながら薬を見つめていた。


 やがて暫く経ち、その視線が私に向く。










「この薬が何なのか、知ってますか?」



「知らない」



「ふーん…本当に知りませんの?」


「うん、全然知らないけど…?」









 理由なんて知るはずもない。


 私が首を振り続けると、突然ローズが肩を震わせながら笑い出す。










「……っ…ふふ……本当に、知らないのね……?」



「うん、全く……」




「…ふふふふっ……やっぱり、馬鹿だわ………馬鹿すぎるわね!!!」



「ロ、ローズ?」










 狂ったように高笑いしながら、私を指さすローズ。


 ど、どうしたのだろうか?



 それに、この薬の存在なんてさっき知ったばかりだから尚更だ。



 暫く笑い続けた後、彼女は目を細めて私を見つめる。




 その表情は―――――――とても冷たい。










「この薬はね、とーっても身体に悪い薬なの」



「は、はあ…」



「最初は貧血程度だけど、服用すればするほど強烈になっていく……意味が分かる?」



「サッパリだけど?」




「ほーら、やっぱり馬鹿。

 馬鹿で馬鹿のように馬鹿な発言ね」










 何回も馬鹿と発言し、ローズは満足そうに笑う。





 …ん、貧血のような症状……?










「まさか、この前の私の体調不良って……」



「今更? 気づくのが遅いんじゃないかしら?」


「で、でも誰がこんなこと…」






「私が食事に入れた……当然でしょう?」




「……へ?」



「それに大事な紙を盗んだのも私」










 今日は、朝からとんでもない情報ばかりが入ってくる。



 何と、彼女は私の食事にとんでもない薬を盛っていたようだ。


 さらに失くしたはず『年間行事表』も、彼女が原因らしい。


 しかし、色々と疑問が出てくる。










「じ、じゃあ、廊下で私を心配してたのは…」


「嘘に決まってるでしょ?

 早く死なないかなって見てただけ」



「死…っ…!!!?」



「えぇ、さっさと死ねばいい」










 にっこりと笑っているが、その滲み出ている狂気は隠していない。










「それにしても、お嬢様って運が良すぎよね……」



「…?」




「だって、まさかマフィアとお友達だなんてね?」



「!!!」










 《マフィア》と聞いて、私はある場面を思い出す。



 喫茶店の崩壊を聞きつけた、沢山の野次馬が群がる中……冷たい目をしたローズらしき人物がいたことを。



 まさか、彼女が仕向けたのだろうか?










「あの喫茶店の騒動、ローズがしたの?」


「そうよ?

 あの黒い服の人達に、お嬢様を始末してって頼んだの。他のマフィアが巻き込まれてたなんて知らなかったけどね」



「そんな……あそこには他の客も居たんだよ!?

 そんな事したら、私以外の人だって…」





「はあ?」


「!!!??」







 ガッと音を立て、ローズは私の首と掴んだ。


 その力は同じ女性とは思えないほど、力強く抜け出すことは不可能だった。



 息が苦しいけれど、私は必死にローズを睨む。



 ……彼女は、普段の可愛らしい顔とは全く違い…怒り狂った表情で私を睨んでいた。



 そんなローズの目に、光なんてない。









「だったらさっさと死になさいよ、死ねばいいのよ。

 ほら早く死んで。そうすれば誰も迷惑にならないから早く。どうしたの? 死なないの? ねえねえねえねえ」



「っ……ぐ…!!」



「うざいのよ、うざいうざいうざいうざい。病弱気取ってちやほやされて馬鹿みたい。

 気持ち悪い。その服だって似合わない。貴女なんてゲームのルールがなければこの屋敷に入ること事態許されないのよ? それを平然と過ごすのもむかつく。それにそんな貴女に騙される皆もむかつくのよむかつくむかつく。さっさと死んじゃえ」










 ギリギリと音を立て、ローズは私の首を絞める。


 爪が食い込み、痛い。



 苦しさのあまり、息ができない。










「……が……ぐっ…!!!!」






「―――――――――なーんて言いたいのですけど、今殺しちゃうと私も始末されちゃうのよねー」



「っ……ケホッケホッ…!!!」










 ぱっと、ローズが私の首から手を放す。


 そのまま地面に座り込み、私は喉元を抑えながら激しく咳込んだ。



 その様子を、ローズは冷たい目で見つめている。










「………ですので、一つ勝負をしませんか?」



「…勝負……?」



「私は来月……五月までにお嬢様をこっそり始末(ころ)します。お嬢様はそれから逃れてください」


「逃れきると?」



「私は金輪際、お嬢様に牙を向かないと誓いますわ」


「拒否権は……?」



「ありません。

 仮に貴女が拒否しても、私が勝手に遂行しますもの」










 拒否権はない。


 私は、深く頷いた。










「決まりですわ…ふふ、楽しみですの……!!!」



「ところで、どうして五月?」




「もうすぐだからというのもありますが……今日には理由が分かりますわ」


「そう……」



「誰にも相談しちゃ駄目よ? ……言ったら、その時点で…」










 それ以上は何も言わず、ただ私に笑みを向けるだけ。


 彼女の話とは、このことだったのか……



 ゆっくりと立ち上がり、私はローズの部屋を出た。


 止められなかったので、恐らくもう好きにして良いようだ。










「……五月、か………」









 部屋に戻ったら、年間行事表を見てみよう。



 そう思い、首元をさすりながら私は自室へと戻った。








...to be continued...

次からはACT.3です。

…別に10話単位で区切っているつもりはないのに……

ACT.3はきっと長い…と思います……

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