表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/63

第19話 扉越しの世界

「―――――――――遅い」









 おかしい。



 『すぐに戻ってきます』と言った執事は、三十分以上も帰ってこないのだ。


 何かあったのだろうか?










「……まさか…」










 私は、執事の置いていったジャケットを見つめる。


 先程内ポケットを見た時に入っていたのは拳銃と、カプセルの薬。



 拳銃は護身用だと分かるが、テトルフは元気そうだったし薬のことは謎だった。




 まさか、この薬は……










「テトルフ、どこかで倒れてる…?」










 そう考えるのが一番マトモだ。


 そうじゃなければ、いつまで経っても彼が戻って―――――



 否、帰ってこれない理由が分かる。


 薬を飲み忘れ、どこかで苦しんでいるかもしれない。










「………探しに行こう」










 執事は厨房へ向かっているので、その道を辿ればきっと見つけられる。



 私は彼に薬を届けることを決意し、ジャケットを手に持って急ぎ足で自室から出て行った。







*  *  *  *  *








「…で、結局…厨房まで来ちゃった……」









 私は今、厨房に入るための扉の前にいる。



 結局、厨房への道にテトルフは居なかった。





 ……だとすれば、ここで倒れているのだろうか?



 そう思い、私は扉に触れた。










 ―――――――その時。










『…………で……はい』



『……か………』






「…?」










 厨房の中から、二人ほどの男性の声が聞こえた。


 上手く聞き取れないが、この声には聞き覚えがある。










「…テトルフと……ジョーカー?」










 そう、この二人の声だ。



 こんな朝早く……ましてや厨房で、一体何を話しているのだろうか?


 私は気になってしまい、そっと扉に耳を当てる。










『……現状は、ジョーカー様の仰る通り…ですね』



『残念だけれど、可能性は低い……諦める気は無いのかい?』










 ……やはり耳を当てた方が、先ほどよりもハッキリと聞こえる。



 それにしても、これは何の話題だろう…。










『全くありません……オレは、必ずお嬢様なら分かると信じてますので』










 ――――――私の、話題?



 それに分かるってことは、この内容……《正直者》に関してのこと……?










『…そもそも、お嬢様はまだ気づいていないだけで……』


『その《気づかない》が、命取りになるかもしれないのに?』



『…………』










 テトルフの声が聴こえなくなる。


 黙ってしまったようだ。



 一体、私は何を気づいていないのだろうか?










『…何より、君は……僅かだけれど、彼女にはこのゲームに負けてほしいと思っているだろう?』



『……』




「………!!!??」










 どういうこと…?


 テトルフは、私が死ねばいいって思ってるの?



 いや、まだ確定ではない……


 ジョーカーは人の心が読めるみたいだけれど、テトルフは何も言っていない…だから……











『………否定はしません…』


「……っ………!!!!」



『やはり…しかし、その理由はどんなに探っても読めないな』










 ジョーカーが何かを言った気がしたけれど、私はテトルフの言葉に衝撃を受けていたのでよく聞こえなかった。



 ……じゃあ、今まで彼がしてくれた助言は…全て、嘘?


 《執事やメイド等の使用人はゲームには関係ない》って言っていたから、自由に嘘をついても良いって言っていた。



 冗談まじりの変な言葉や行動は嘘なのかもしれないけど、助言や私の体調を心配してくれたのは本当だと思っている。




 それが、全部…私を始末するための嘘かもしれないだなんて……





 ―――――信じていたのに。










「…そ、んな……」




「―――――――あの、アスカお嬢様?」



「っ!!?」










 急に背後から声をかけられ、ビクッと全身が震える。


 慌てて振り返ると、そこにいたのは……ローズだ。



 彼女は首を傾げながら、じっと私を見つめていた。


 私は慌てて、扉から離れる。










「ど、どうされました? 扉にべったりと張り付くだなんて…」


「え、う、うん……ちょっと……」



「…?」










 ローズは首を傾げたままだったが、やがて何かを思いついたように体制を元に戻して私の手を掴む。









「あぁ、そうでしたわ……

 私、お嬢様にお話がありましたの!!」



「話?」



「はい、とーっても大事な……ここでは言えない秘密のお話です」










 何の話だろう?



 私の手を掴むということは、着いてきてほしいと言うことだ。


 少し考えた後、私は頷く。










「分かった。

 どこなら話せるの?」



「この時間でしたら………私の部屋でなら話せます」


「じゃあ、ローズの部屋で」


「はい、分かりましたわ」










 テトルフとジョーカーの会話の続きが気になったけれど、今はローズの話に集中したい。


 とにかく、少しあの執事を信用するのは控えよう。



 寧ろあんなことを聞いてしまったら、信用しろと言われても難しい。



 そんなことを考えている私は、にっこりと笑って歩き始めるローズと一緒にこの場から去った。











『……それで、理由は?』



『――――おっと、随分話してしまいましたね。

 お嬢様が待ちくたびれているので、失礼致します』



『逃げるのかい?』





『いずれ分かることですので、黙秘するだけですよ』








 口元に人差し指を当てるテトルフ。


 ジョーカーは眉を寄せていたが、執事は一切気にしていないようだ。




 そして私が去ったのとすれ違いで、テトルフは紅茶を持って厨房から出て行った。






...to be continued...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ