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第16話 波乱の喫茶店②

「………っ……?」









 おかしい。


 私が目を瞑る前に最後に見た光景は、ナイフを持った複数の男性が私に向かってナイフを振りかぶったところだ。


 それにハッキリと音が聴こえた……いかにも人にナイフを刺したような…あの、鈍くて嫌な音が。




 しかし、私の身体にはどんなに待っても痛みは来ない。



 まさか、その痛みを感じる前に……なんて、想像はしたくない。


 暫く躊躇したが、私は決心して目を開けることにした。



 そこには――――――










「……え?」









 何もない。



 いや、何も見えないのだ。



 だが、私の耳には今もガラスの割れる音や嫌な音が聴こえている。


 とりあえず辺りを見渡そうと思い身体を動かそうとするが、まるで何かに締め付けられているかのようにビクともしない。




 ……締め付けられて…いる?









「……え、え………?」



「はわわっ…アスカさん、まだ見ちゃ駄目ですぅ……!!!」










 締め付けに対し、更なる抵抗をしていると私の頭上から声が聞こえた。


 この声は、あの泣いていた外見王子の声だろう。




 つまり、私は彼に抱きしめられているということだろうか?



 しかもガッチリと後頭部を抑えつけながらだ。










「まだってどういう―――――」




「「あははははははっ!!!早く逃げなきゃ捕まえちゃうよー!!!!」」


「っ…!!!」










 何故駄目なのか問おうとしていた私の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。



 トーンも速度も全く同じ、二つの声だ。



 この声は……










「ライムと、ユウム?」



「はいっ!!ボスですよ!!!

 ボスが俺達を助けてくれ…たのですが……うー…」


「……?」



「そのー…女性には、少し刺激的な光景で……はううっ!!!?」


「っ…!!??」




「「おねーさーんっ!!!久しぶりーっ!!!!」」










 突如、私の視界はクリアになった。


 そして真っ先に見えたのは、子供らしい無邪気な笑顔を私に向ける双子――――ライムとユウムの姿だ。



 しかしそんな笑顔とは裏腹に、双子の真っ白なスーツは狂気的な赤色に染まっていたので思わず顔が引きつる。



 ……ちなみに私のことを抱きしめていた彼は、グリグリと双子に踏みつぶされていた。










「おねーさんっ!!

 僕達、おねーさんと逢いたかったんだー!!!」


「偶然だね、偶然!!!

 これから一緒に遊ぼー!!!!」



「久しぶりね…それで、この状況は…」








 血に染まったのであろう赤い服。


 店内は暫く営業ができないほど、器物破損や死体等でぐちゃぐちゃになっている。


 そんな中、双子はキラキラとした目で私を見つめながら、今も白スーツの彼を踏みつぶしている。



 グリグリ、グリグリと……









「んー?

 えーっと、ライバル組織が襲い掛かってきてやっつけたんだー!!」


「偉い? 偉いよね?

 おねーさんも、ちゃあーんと守ったよ!!」



「「褒めて褒めてー!!!!」」



「あぐぐうぅ………だ、だずげでぇ……」





「……とりあえず、可哀想だから退いてあげて…」










 今にも死んでしまいそうな彼が、流石に可哀想になり双子に言う。


 二人は互いに顔を見合わせたが、やがてすんなりと彼から退いた。










「シーヴァのくせに生意気ー」


「シーヴァのくせにー」



「「シーヴァのロリコーン…」」



「ぐすっ……ロ、ロリコンじゃありませえええええんっ!!!!」










 ようやく退いてもらえたので自由になった彼―――――シーヴァと呼ばれた彼は、泣きじゃくりながらハンカチで顔を覆っている。


 あえて、双子がロリコンだなんて言葉を知っていたことについてはスルーする。



 …というか、大の大人が子どもに負けているだなんて………










「おねーさん、シーヴァに変なことされてないよねっ!!?」


「気を付けて、気を付けて!!

 シーヴァはロリコンだから!!!」


「違いますぅ…!!!

 ボスがあんなことしなきゃ、俺は抱きしめてませんー…」



「あんなことって、なーに?」


「何なーに? 僕達、知らなーい」



「「だって僕達は良い子だもん」」










 良い子はそんな血まみれの服じゃない。絶対に。


 改めて、この双子はマフィアだという自覚ができた。



 ふと、顔が引きつったままの私はハンカチで顔を拭き終わったシーヴァと目が合う。



 すると彼は慌てて立ち上がり、私の前に立つ。









「はうっ…挨拶が遅れてました……!!!!

 俺はシーヴァ、ボスの補佐担当ですっっ!!」


「ライムとユウムの補佐?」


「補佐といっても、正直あまり役に立ってないのが複雑ですぅ……」



「そ、そう……

 ところでどうして私を知ってるの?」


「はい、アスカさんのことはボスから聞いていたのですぐに分かりましたぁ!!!!」










 シーヴァは『ふふんっ』と誇らしげにそう言った。


 つまり、私は口頭だけの説明で姿が特定されるほど、おかしな恰好をしているのだろうか……?



 そんなことを考えて首を傾げた時、ふと外から視線を感じたので割れたガラスの隙間から少しだけ見つめる。






 そこには、大勢の人達がいた。


 恐らく、騒ぎを聞きつけて集まった…つまり野次馬だ。



 その中に、とても目立つ桃色の髪の毛をした女性が見える。


 ローズだ。


 遠くだから確証は出来ないが、きっと彼女だろう。



 本を買い直して戻って来たら、こんな状況になっていただなんて相当心配をかけたはず。


 声をかけようと思い、少し深呼吸をする。




 そして、言おうとした―――――――――はずだった。







「……………え……?」













 言葉が、つまってしまう。


 何故なら、あれはローズではないからだ。



 いや、彼女であってほしくない。

 



 ローズと思われる女性は、大勢の人混みの中でこちら睨むように見つめていた。


 その顔はこの現場よりも冷たく、狂気に満ちていて…私の胸の奥がざわつく。




 ―――――怖い……









「「……おねーさん…? 具合、悪いの?」」


「…っ…な、何でもない……

 あの、ちょっと人を待たせてるからもう行くね?」









 双子がじっと、私を見つめてきたが……何よりもローズのことが気になってしまい、私は彼女の元へと走る。



 途中、双子やシーヴァが「待ってー!!」と言った気はしたが、足を止めるわけにはいかない。










「……もう……おねーさん、行っちゃった…

 シーヴァのせい?」


「おねーさん、暗い顔ー……

 シーヴァのせい?」



「うー………違いますってばあ……」










 その後、私はあのローズらしき人物を人混みの中で必死に探していたが、見つからなかった。


 ローズはどこに行ったのだろうかと思い、もう一度本屋へ向かったらようやく会えた。


 どうやら彼女は今まで本を探していたらしく、先程の騒動のことを知らないらしい。




 ……よかった。


 そもそも、あのような怖い人が彼女のはずはないのだ。



 そして騒動の話をしながら、私達は屋敷へと帰る。



 




...to be continued...

というわけで、シーヴァさんが登場です。

シーヴァさんはきっとドジっ子で天然。それと苦労人。


そういえば、アンケートを設置しました。

キャラクターの人気投票等がありますので、よかったらお願いしますっ

上位なら出番や甘い展開が増える…かも、しれないです……←

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