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第15話 波乱の喫茶店①

 ―――――朝、私はジョーカーに呼ばれて玄関ホールへと向かった。



 本当は、私を起こしに来たテトルフも一緒に着いていこうとしていたが、ジョーカーが「仕事はどうしたんだい?」と威圧ある声でそう言われたため、大人しく仕事へ向かったようだ。




 玄関ホールへ着くと、そこにはジョーカーと一緒にローズがいた。


 私と目が合い、彼女はふんわりとした可愛らしく微笑んで一礼をする。










「ふふっ……お嬢様、おはようございますっ!!」



「おはよう、ローズ」





「……さて、揃ったようだし…アスカ、私の頼みを聞いてくれるかい?」



「ジョーカーの頼み?」



「そうだ。君も私に頼みがあるなら……ギブアンドテイクだろう?」










 ……ジョーカーは私の心を読んでいるのか、既に貰った紙をなくした事を承知のようだ。


 交渉に応じなければ意味がない上、私は特に断る理由が無かったので大人しく頷く。



 それを見て、満足そうにジョーカーは笑う。










「ありがとう。

 それでは街へ行って、新作の本を買ってきてくれ」



「…………街?」



「そうだ、街の中心部にある本屋……道は彼女が案内してくれる」




「今日は私以外忙しくて……道案内は私にお任せ下さいませ♪」










 ジョーカーがローズに視線を向けると、彼女は再び可愛らしい笑顔を見せた。



 正直、街へはもう二度と行きたくはなかったのだが……


 頼み事ならば、仕方がない。










「分かった…。

 それで、どんな本なの?」



「店主に《例のものを頼む》と言えば良い。

 すぐに持ってきてくれるだろう」


「……は、はあ…」









 どこのゲームだ、とツッコミをしたいが…


 あえて心の中でしか言わないことにする。



 心が読める彼には、伝わっているはずだから。


 ふと、ローズがこちらを見ながらニコニコと笑っていたので彼女に視線を向ける。



 テトルフといいローズといい、ここの使用人達は笑顔が凄いと思う。








「ふふっ…

 使用人以外の女性とは初めてのお買い物……楽しみましょうね♪」


「うん、私も初めてだから楽しみだなあ…」



「あら、やっぱりですの?

 お嬢様は身体が弱いと聞いてましたから、そうだと思いましたわ」









 ………ローズは、その…天然毒舌タイプ……なのだろうか?


 時々、彼女の言葉がとても胸に突き刺さる。



 しかし、事実なので仕方がない。





 そんな会話をし、ジョーカーに見送られながら私達は街へと向かった。








*  *  *  *  *









「………ふう…買えたね…」



「お疲れ様です、お嬢様!!」








 街の中心部にある、小さな本屋。


 今日は死体が転がっておらず、スムーズに移動や買い物ができた。


 店主に『例のモノを頼む』とお金を添えて冗談半分に言ったのだが、店主は血相を変えて赤いカバーのかかった本を投げ渡してきた。


 本をローズがしっかりと受け止め、店を後にする。



 そして、早めに頼み事が終わってしまった私達は、ローズの提案により近くの喫茶店にてお茶会を始める。










「……それにしても、普段はこんな街なんだね…」



「はい、ヤクザやマフィアなどが抗争さえしてなければ、この街はとーっても綺麗なのですわ♪」


「そっか…

 それなら、この街は悪くないかも……」



「また今度、頼まれ事がなくても買い物に行きましょうね!!

 ……あら…?」










 話をしている最中、ふとローズがきょろきょろと辺りを見渡す。



 …どうしたのだろうか?


 少し経った後、ローズは申し訳なさそうに眉を下げる。









「ごめんなさい、お嬢様…私……

 歩いている途中で本を落としたみたいですの…」


「えっ…!!?」



「だ、大丈夫です…!!

 すぐに買い直してきますので、ここでお待ちくださいませ!!!」



「へ? あ……行っちゃった…」










 静止する間もなく、ローズは急いで喫茶店から飛び出してしまった。



 …さて、彼女が帰ってくるまで何をしていようか?



 色々と案を考えた私。










 ――――しかし、その案は背後から聞こえた突然の爆発音により、かき消された。










「………っ!!!??」









 慌てて振り返ると、喫茶店の入り口と思われる場所が跡形もなく消えていた。


 鼻に掠めるのは焦げ臭い、刺激臭。



 さらに、拳銃やナイフを持った体格の良い黒いスーツの男性がゾロゾロと中へ行ってくる。





 ……まさか…










「――――――マフィアの……抗争?」









 店内にいた人々は恐怖のあまり、震え上がる。


 勿論、私もだが………




 今の私には、それよりも気になることがあった。










 入り口の跡形もない場所に、凶器を持った男性とは真逆の真っ白なスーツを着た男性が、たった一人だけ居ることだ。


 この男性を一言で例えるなら『王子』。


 髪は水色で、まるで寝ぐせのようにボザボザ……いや、くせっ毛なのだろうか?


 真っ白なスーツにそんな淡い髪色だなんて、きっと女性にモテるだろう。



 しかし、そんな外見とは裏腹に男性は泣きじゃくりながら黒いスーツの男を見つめ、同時に彼等も白いスーツの男性を見つめている。




 否、睨んでいた。



 やがて少しの沈黙の後、黒スーツの男性がズカズカと歩いて白スーツの彼の前に立つ。









「やっと追い詰めたぜ!!!」



「ひいっ……!!?」









 黒スーツの男性が彼に刃物を向ける。


 どうやら、黒スーツの男性たちの目当てはこの王子だったようだ。

 


 今にも気絶しそうな顔で悲鳴をあげながら、彼は必至に辺りを見渡す。




 ………私と、目が合ってしまう。




 すると、彼は目をキラキラと輝かせ、黒スーツの男性が向けた刃物をするりと回避して私に向かって走ってきた。









「――――――ア、アスカさぁああああああんっ!!!助けてぇええええ!!!!」



「!!?」




「……え?」










 初対面の、しかも大の大人にすがりつかれてよろける私。



 何故、この彼は私のことを知っているのだろうか?





 というか、黒スーツの男性の視線が痛いのだが………










「っち…てめえも仲間か?」


「え、あ…いや……この人とは初対面で…」



「嘘つけ!!!そのひ弱男のように外見には騙されねえぞ!!!!」




「ふえっ…!!?

 アスカさん危ない…!!!」










 私にすがりついていた彼が、黒スーツの男性達の奇襲に気付き、私を後ろに下がらせる。


 しかし彼自身も怖いらしく、地面に蹲って泣き出した。




 ………数名の男性が、現状が上手く理解できていない私を囲む。



 ギラリと光るナイフが、私に向かって振りかざされる。






 恐怖のあまり、私はつい咄嗟に目を瞑ってしまう。











 ―――――――ズブリ、と鈍くて嫌な音が聴こえた。









...to be continued...

次回、アスカちゃんの運命はいかに……!!

そして、外見王子な彼は何故主人公を知っていたのか…詳細は次回ですっ

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