第14話 愛ゆえの×××(テトルフ視点)
「………可愛らしい寝顔ですね」
お嬢様が倒れてから時間はあっという間に経ち、そろそろ太陽が昇り始めた頃。
結局お嬢様は、オレが帰ってきた時には熟睡していまして……ハルト様が作ったお粥は食べずに終わりました。
そして現在のオレはお嬢様の部屋で、寝る間を惜しんで見張りをしています。
何故見張りをしているかと言いますと……
ここで、とある方を捕えたいと思っているからですよ。
―――――――実は昨日の夕食、お嬢様の食事の中に特殊な薬が混ざっていたそうです。
その薬は人の神経を鈍らせ、過剰に摂取すると呼吸さえも不可能になるという恐ろしい薬らしいですね。
まだ確認は出来ていませんが、お嬢様の体調不良はコレからきたモノだと予想しています。
ですので、ここで見張っていれば捕えられるかもしれないのです。
しかし……一体、誰が犯人なのでしょう?
「あのメイドは口を割りませんでしたからね……
とりあえず、ジョーカー様に頼んで解雇致しましょう」
少しでも邪魔な芽は潰さないとお嬢様の身が危険です。
暗殺や襲撃ならばオレの専門なのですが、毒というモノは分かりません。
最初は、折角のお嬢様との二人きりの時間をハルト様が邪魔していたので不愉快でしたが……
今ではとても感謝しています。
危うくお嬢様が死んでいたかもしれない。
それだけは許しません。
――――絶対にダメです。
「まだ、《味見》はしていないのですから……」
吸血鬼であるオレはまだ、お嬢様の血を一滴も飲んでいません。
本当は無理矢理でも皮膚を傷つけ…
いや、身体を拘束して首筋に噛みつきたいのですが……
それをしてしまえば、お嬢様は悲しんでしまう。
想像しただけで、オレは苦しくなってしまいます。
きっとその行為を酷く後悔し、苦しさのあまり最悪自ら命を絶つかもしれません。
だから、オレはお嬢様の血を飲みません。
けれど何故、こんなにもお嬢様に恋焦がれて執着をしているのかだなんて…
オレさえも、分かりません。
しかし、恋とはそういうものですよね?
気づけば相手が気になり、やがで全てを欲する………。
その血も、声も、身体も、全部全部……独り占めしたくなってしまう。
「………もしも…」
オレが貴女の部屋に堂々といることを知らない、眠っているお嬢様。
もしも、お嬢様が《ゲームオーバー》になってしまったら……
「―――――その時は、オレが貴女を連れ去りましょう」
誰にも見つからないよう、誰にも触れられないように。
ジョーカー様の魔法は厄介ですが、魔法の届かない場所はいくらでも熟知しています。
オレが必ず、お嬢様を護ってみせます。
「……ですので」
その時は、嫌がらないでください。
怖いかもしれませんが、すぐにオレが何とかします。
しかし、お嬢様がオレに抵抗をしてしまえば……
壊してしまうかもしれません。
それだけは、したくないのです。
とにかく、犯人が捕まるまでは薬の件は秘密にしましょう。
バレてしまえば、お嬢様は食事をすることが怖くなってしまうかもしれない……
ただでさえ細い身体なのに、食べることができなくなってしまえば本当に死んでしまう。
「もう少し経ったら、一度部屋を出ましょうか」
この見張りには、やましい気持ちなんて一つもありませんが…第三者の視点から見れば完全な変質者として見られる恐れがあります。
そんなことになればお嬢様に変な眼で見られてしまいます……
しっかり回避しなくてはなりません。
そう、中から物音が聞こえたら何事も無かったかのように…普通にノックをして入り直します。
そうすれば、お嬢様から見てオレは『たった今』入ってきたことになりますからね。
「これも全部、お嬢様が好きだからなのでしょうか……」
こうして、オレは不審な物が無いか一度室内を見渡して確認した後、ゆっくりと扉を閉めて出ていきました。
………早く起きてくださいね、お嬢様?
...to be continued...
やったね主人公ちゃん!!ゲームオーバーになっても【執事監禁END】のお蔭で生きれるかもしれないよ!!←
…というわけで、テトルフ視点なお話でした。
彼はヤンデレっていうより、独占欲の塊です。
しかし抑えています。独占欲がオープンならばゲームの進行ができませんからね←
ここまで読んで下さってありがとうございます!!
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次回はマフィア回……だと、思います…多分……。