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第12話 失くし物と体調不良

「無い……どこっ…?」









 朝になり、朝食を済ませた私は自室で先日貰った『年間行事表』を見ようとしていたが、その紙が部屋のどこを探しても見当たらない。



 どこに置いてしまったのだろう?


 それに、昨日貰ったばかりで失くしただなんて……










「えっと、昨日はたしか……」










 ユキの部屋を出て、それから歩いて……そうだ、私はメイドとぶつかった。



 もしかすると、その拍子に落としてしまったのかもしれない。











「探してみる価値はあるよね。

 よし、行こ……うっ!!?」










 ガンッと音を立てて、私は椅子に足をぶつける。


 あまりの痛みに若干泣きそうになった。









「ま、またぶつけた……っ…」










 ……そう、まただ。


 朝からこれを合わせて四回目。



 少し頭がぼーっとし、そのせいで足元が不安定になりぶつけてしまう。



 睡眠不足のせいだろうか?











「とにかく、探そう……

 どうしても見つからなかったら、素直に謝って紙をもう一枚貰わなきゃ…」











 そう言い、私は自室を出る。



 すると、どこからか視線を感じた。





 気になったので辺りを見渡すと、愛らしい桃色の髪をしたメイドがいた。


 何か用なのかと思い、私はその女性に声をかける。









「……あの、何か?」




「――――はい、改めて謝罪に来ましたの……

 昨日は私の不注意のせいで、本当にごめんなさいね?」



「昨日?

 ………あ……あの時の?」











 メイドが私の前まで近寄り、深々と頭を下げる。



 恐らく、昨日ぶつかったメイドだろう。











「い、いえ、私も不注意でしたし……」



「そうですよね!!

 でも、怪我がなくて良かったわ」









 頭をあげ、ホッと胸を撫で下ろすメイド。


 なお、私はさらっと肯定されたことを気にしない。










「あの、それであなたは?」



「あらあら、私としたことが名乗るのを忘れていました……

 私はローズと申します」



「ローズね、よろしく。

 そして私は…」



「アスカお嬢様でしょう? ここのメイド達は皆知っているわ」










 にっこりと可愛らしい笑みを浮かべ、私を見つめるローズ。


 名前通り、とても華やかで美しい女性だと思う。











「実は、私はここでメイド長を担当していまして……

 本来なら、お嬢様のお世話役でしたのよ?」



「そうだったんですか?」



「えぇ、同じ女性の方が余計な気遣いは要らないはずですもの」










 と、言うことは……本来なら彼女が私のお世話係だということか。


 正直、テトルフよりも親しみやすいかもしれない。



 やはり、同性が一番だ。




 ――――そういえば、ローズは私とぶつかった相手だとすれば…











「ローズ、私とぶつかった廊下に……紙は落ちてなかった?」



「……紙?

 いえ、先程お掃除に行きましたが、ゴミ一つ落ちていませんでしたわ」




「そっか……ありがとう」



「また何かございましたら何なりと。

 私は、お嬢様と仲良くなりたいので積極的にお願いします」










 そう言い残し、ローズは去っていく。



 さて、廊下にあの紙が無いのであれば……貰うしかないのだろうか。




 とりあえず、もう一度部屋を探してからにしようと思い、自室のドアに手をかける。










「部屋に戻ろう…………っあ…!!!??」










 突如、頭に激しい痛みが生じる。


 痛い……あまりの頭痛に、意識が持っていかれそうだ………。




 立つことも困難になり、その場で蹲ってしまう。




 段々と意識が朦朧となる中、最後に感じたのは誰かの視線と……私を呼ぶ声だった。


















「―――――――だ……っ…!!!?」



「……」




「―――――っ……しろ…!!!!!」










 誰かの声がする。



 そして、鼻に甘い匂いが掠めた。


 これはお菓子の香り……いや、もっと透き通った甘い香り。



 それに暖かい……安心するぬくもりだ。







 その心地よさが、ゆっくりと私の中から痛みを消していく。




 痛みがある程度治まり、私は声の主を確認するために目を開け、身体を起こす。










「…………ここ…は…?」










 見慣れないモノクロ調のベッドに寝ている私。


 家具も床も壁も、部屋の全てが白黒だ。


 この部屋にいるだけで、色の感覚が狂いそうになる。



 ……それにしても声の主は、いないのだろうか?




 じっと辺りを見つめていると、ふいに扉が音を立てて開く。









「―――――やっと目が覚めたのかっ!!!」




「っ…ナツ……?」









 部屋に入ってきたのは、大量の氷枕を抱えたナツだ。


 私の目が覚めていることを確認すると、物凄い勢いで駆け寄ってきた。




 ……急な展開についていけず、私は首を傾げる。











「…ナツ、その大量の氷枕は…」



「あ?

 …氷枕って沢山あった方が良いんだろ? 屋敷の全部持ってきた」











 さも当然のように語る彼に、思わず苦笑いしそうになる。


 一方で、ナツは大量の氷枕を地面に置いて、少し俯きながら私の傍へしゃがむ。



 ベッドに座る私は、じっと床にしゃがんだナツを見下ろす。



 例えるなら、叱られた子犬のようだ。


 耳を折り、尻尾を垂らして俯く……今の彼はそんな風に見える。










「……っつーか、何があったんだ? いきなり倒れてよ…」


「少し、頭が痛くて…」



「すっげー真っ青だったぞ?

 たまたま俺様が通らなかったら、お前はどうなってたんだ?」









 眉を寄せ、絞り出すような声でそう言うナツ。



 ……本当に、どうなっていたのだろうか。


 多分ただの睡眠不足だから、そこまで一大事にはならないが……少し怖い。




 そして、私はふと思ったことをナツに質問してみる。










「……というか、ナツ……ここは?」


「ここは俺様の部屋だ。

 緊急事態だからって無断で女の部屋には入れねえよ」



「そっか……ありがとう」











 ここは彼の部屋だったらしい。


 随分とモノクロ調な部屋だが、何となく彼のイメージに合っている気がした。



 では、あの甘い香りは……薔薇の香りだろうか?











「……とりあえず、もうちょっと休んでろ。

 昼飯は俺様が持ってきてやる」



「い、いいよ……もう、動けるから……」




「駄目だ!!

 完全に元気になるまで、お前に拒否権は無いぞ!!!」



「……は、はあ…分かった」






「良し、いい子だ。

 お前は黙って俺様に甘えればいいんだよ」











 ナツが手を伸ばし、ゆっくりと私の頭を撫でる。


 暖かい手……大量の氷枕より、彼の手の方が今の私には丁度良い。




 それがとても気持ち良く、再び私は意識を持っていかれた。













「………本当、心配させるんじゃねえよ…ばーか」








 私が眠りについたのを確認したナツ。



 やがて彼がそう呟き、私の額に自身の口を押し当てた感触はその行為をした本人しか知らない。






...to be continued...

次回、体調不良の原因が判明予定。

…ローズさんは私の中では超絶美人です。美人メイド万歳。


ここまで読んでくださりありがとうございました!!

感想やご指摘などがございましたら、遠慮なくお願いします!!!

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