vm10 サンフレッチェ年間勝ち点一位について
三連休最終日。こんな日に限ってざんざか雨が降っているが少年と少女にとってそんなものは何の障害にも成り得ない。渡海雄は悠宇に呼ばれていたので黄色い傘を差して歩いて家まで向かった。
「とみお君昨日の見た?」
「もちろん! いやあ、強かったねえ」
「本当にねえ、完璧だったわ。試合序盤は多少湘南のいい部分が出たかなってところだけど徐々に攻めていって、特にミキッチが切れ味抜群だったわね」
「あの一点目の切り返しで完全にフリーになってたもんね。いや、その前のロングボールも見事だったし、最後走り込んだドウグラスもお見事。佐藤寿人が触ってたとか触ってないとかあったけど、まあ仮に触っててもオフサイドはないからどっちでもいいかなって」
「その興奮も冷めやらぬ直後の二点目、青山のミドルシュートも無慈悲なまでに正確だったし、そして佐藤寿人がついにゴンこと中山雅史選手に並ぶJ1通算百五十七ゴールをヘディングで決めて前半だけでもう勝利をほぼ確定」
「後半にもドウグラスが二点決めて、終わってみれば五発大勝。しかも無失点」
「見ていても湘南のシュートはコースから大きく逸れていたり威力が足りていなかったりで、それほど脅威となるオフェンスは出来ていなかったように思えたけど、これは広島のディフェンス陣がうまく対応出来ていたって事でしょうね。しっかり守られているから多少無理にでも打ったけど精度を欠いてしまう。前節のガンバ戦だと宇佐美が怖いシーンを作ってたけど林のファインセーブでどうにかしたし、セーフティネットがバシバシ張られているのがサンフレッチェの守備陣よね」
「リーグ最多得点かつ最小失点。当然勝ち点も今の制度とチーム数になってからは最多だって事だし、まさに攻守ともに隙なしと数字が示しているよね」
「チームとしての軸がしっかりしていたのがやはり大きいわね。それは長年の積み重ねなんだけど、その中でもボランチの森崎和幸と青山。彼らの盤石さがそのままチームのそれに繋がっていたわね。守備陣も塩谷、千葉、水本でしっかりしてて、昨日の試合は骨折の水本に代わって甲府から移籍の佐々木が入ってたけど、しっかり無失点と層の厚さも会得」
「運動量が多くて途中交代の多いウイングでも、基本はミキッチと柏だったけど柏負傷時には清水が頑張ったりベテラン山岸が試合終了寸前にゴールを決めたり」
「選手交代も結構上手く行ってたわね。それで言うとやっぱり浅野のスーパーサブ起用とか。確か当初はツーシャドーのスタメンだったけど何となくもう一歩で。そう言えばツーシャドーのポジションは当初試行錯誤だったわね。高萩と石原が抜けたツーシャドーどうするのってところからまさかドウグラスと柴崎になるとは思いもよらなかったわ。しかも浅野含めてガッツリフィットするし」
「確か四月ぐらいだっけ。ボランチのイメージが強かった柴崎を二列目で使い始めたのは。最初聞いた時は本当にって思ったけどまさかああもはまるとは」
「ドウグラスも当初はかなり荒削りと言うか、率直に言うともっと下手だったと思うけど実はあんなに引き出しがあったんだという多彩なゴールを披露してくれたわね。ガンバ戦で突如放たれた直接フリーキックには驚いたわ。今年のドウグラスはとんでもない確変状態で、適当に打ったようなシュートが意外にも威力コース抜群でバシッと決まったり、やってて楽しかったでしょうね。そしてワントップ佐藤寿人も何だかんだ言って当然のように二桁得点というノルマ達成。ただ来年以降は浅野もスタメンで勝負となるでしょうし、どこまで守りきれるか」
「前は佐藤寿人が抜けたらどうするんだろうと思ってたけど、上手い具合に次も見えてきたよね。関係ないけどガンバ戦と言えばトラックの部分でチアの人達が試合中ずっと踊ってたのはいい意味で驚いたなあ。観客の大部分が『宇佐美それは決めなアカン』『パトリックイライラしすぎや落ち着け』と試合に集中していたであろう中でもあの素晴らしいスタミナとプロ根性」
「チアはともかく今の素晴らしいチームを作り出したのはクラブに携わる多くの人達が素晴らしい努力を積み重ねてきたからよね。選手に監督コーチ、そしてフロントとそれぞれがよく頑張って、しかも上手く連携が出来ているからこその勝利よ。予算規模の限界もあり選手が抜けていくのはある程度仕方ないものと割り切った上で今も将来も見据えた構成がなされていて、もちろん内部の争いもいい意味で激しくて良いサイクルが出来上がっているようね」
「いやあ、本当に褒めちぎってるねえ」
「だって、嬉しいじゃない。下位予想されたりサプライズ枠はこことか無責任な事言われる中でこの結果なんだから。後はスタジアムだけ」
「スタジアムかあ。どうなの? やっぱり宇品?」
「秋にはその辺の交通量調査を実施したみたいだし、その結果などを踏まえてどのような結論になるやら。最悪宇品さえ駄目になってペンディングだってあるし、予断を許さない状況よね。とにかく場所に関しては、府中町とか広島市周辺にでもいい場所があればいっそそっちでもとか思うけど、まあそう簡単に土地があったら苦労しないわよね」
「実際建設が決まってからも時間かかるし、なかなか上手く行かないものだよね。これから最短で決まったとしても今全盛期の選手たちはまず間に合わないだろうから」
「まあ湿っぽい話はここまでにしておいて、今は勝利の余韻にただ浸りましょう。とまあ去年までならこれで終わっていたけど今年はさらにチャンピオンシップとか言って、まず来週には年間二位の浦和と三位のガンバが対戦。その勝者と十二月の二日と五日に対戦して、それを勝ち抜いて初めて年間優勝、チャンピオンと呼ばれる資格を得るわねよね。だからサンフレッチェ優勝とはまだ言えないの。セカンドステージ優勝かつ年間勝ち点一位になっただけ」
「何ともまあ面倒な」
「でもまあ、それがルールだから仕方ないわね。浦和は無敗でファーストステージ制覇したし、ガンバは去年の三冠かつナビスコカップ準優勝。まさに役者は揃ったという面子でいい事よ」
「一方で最終節、勝てなかった事で年間順位が四位に落ちたFC東京は、惜しかったね」
「守備的なサッカーをベースに、今までの浮ついたところがなくなりつつあったけど監督交代らしいから意外よね。もう少し待っても良かったとは思うけど。ただ監督を続投か交代かの判断って難しいからね。清水とかそれで泥沼にのめり込んだような部分もあるから」
「清水はついに落ちちゃったね。まあ順位相応のサッカーだったけど」
「二十年といくらか戦い続けて、疲れきったみたい。来年以降はJ2になるけどしっかりと傷を癒やし、進むべき道を見極めるといいわ。それと山形と松本は、果敢に挑んだものの実力差で跳ね返されたという印象。序盤は甲府がかなりやばかったり、仙台や鳥栖ももう一歩だったり、新潟も苦戦してたけど最終的には収まるべきところに収まったかなという三つよね」
「でも落ちるところがあれば上がるところもあるわけで、大宮がまず決めたよね」
「まあさすがよ。そして、まさに今もう一つの自動昇格チームが決まるところよ。J2二年目で苦しみながらも後一歩まで漕ぎ着けた磐田と井原監督の下で大きく成績を伸ばして終盤猛烈に迫ってきた福岡。このどっちかがプレーオフに回るのだから熾烈よね」
「プレーオフ決定してるのはセレッソと愛媛で、六位の枠に長崎、ヴェルディ、千葉か」
「この三つだと去年大きく低迷したヴェルディあたり面白そうだけど。途中までは良かったけど終盤かなり失速してるからどうなるか。とにかく勝つしかないわけだから。千葉もね。長崎は引き分けでもいいけど、勝ち切る気持ちでやらないと引き分けすら奪えないのはこれまでのプレーオフが示しているし全力で戦うしかないわけよ」
「この戦いも真剣勝負だよね。そしてNHKはサッカー中継が終わった後に大相撲だったけど、日馬富士だったねえ」
「千秋楽、優勝候補全滅で終了という何とも言い難い終わり方だったけどね。と言うか鶴竜の成績何よあれ。最後の最後だけ意地を見せたけど、それだけ。でもまあとりあえず日馬富士にとっては怪我明けでもあり、久々の優勝よね。やっぱり体が動けば凄い強い」
「後は、一応カープの話もしておく? ロサリオ退団とか」
「ロサリオ退団はかなり残念だけど、本人のモチベーションの問題もあるみたいだし、仕方ないのかしらね。そこはもっとうまくやってほしかったけど。まあ海外かなるべくパリーグに行ってくれたらいいんだけど。あまり敵では見たくないから」
「その代わりなのか、プライディという外野手を獲得したね」
「打撃はホームランはそれほど多くなく、その分結構盗塁も出来るタイプだそうね。どっちかと言うとエルドレッドみたいなパワータイプのほうが、と言いたいけど活躍してくれればそんなのは関係ないってものよ。それとバルディリスを調査してるとか。懸案のサードだけど飛び抜けた実力があるわけじゃないような。でもまあある程度の数字は保証出来ると思うし、穴埋めにはいいのかも。今年は育成から支配下が久本、辻、中村と三人いるしもうオフの補強はほぼないと見ていいでしょうし。トレードはあるのかしら」
「トレードはあんまり活発じゃないよね」
「それと移籍で言うと木村昇吾。FAしたものの今のところ連絡なしで、最終的にはどこへ行くのやら。彼はリザーブとしては便利な選手よ。でもレギュラーとかそういう器じゃないし、どこの球団にも木村レベルじゃないにせよ同じタイプの選手はいるし」
「これでどこからも話が来なかったらどうするの? 引退?」
「最悪そうなるわね。その前にどこかから声がかかるか広島が再契約するか。ただ今回は残留を認めないようなコメントも出してるし後者の可能性は低いと見るけど。当然カープからしても戦力的にはマイナスだけど、そこはぼんやりとした安部とか打撃力皆無な上本を我慢しつつ起用となるのかしらね。数字だけ見るとトレードで来る前年の木村は今年の上本と大して変わらない打撃成績だし、守備を磨いたらチャンスありそう。新人の西川も二遊間だけど実力はどうか」
このような事を話していると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので渡海雄と悠宇はすぐに着替えて敵が出現したポイントへと雨粒を受けつつ走った。
「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のダイシャクシギ女だ! このような星など私のキャリアの通り道に過ぎないが仕事はこなさねばな」
長くて曲がったくちばしが印象的な星界の渡り鳥がこの地球へと、枯れすすきの草原へと降り立った。間もなくそれを討たんとする複数が草原に現れた。
「出たなグラゲ軍! お前たちの思い通りにはさせないぞ!」
「いい加減諦めてくれればいいものを。でも来るようなら手加減はしないわよ」
「ふん、現れたな逆臣ネイの手先ども。貴様らを殺せば私の地位も高まる。死んでもらうぞ! 行け、雑兵ども!」
四方からぞろぞろと出現した雑兵の群れを二人は次々となぎ倒し、やがて残る敵はただ一人だけとなった。
「ふう、どうにか雑兵は倒せたな。後はお前だけだダイシャクシギ女!」
「勝手に踏み台にされるのも迷惑な話よ。黙って飛び立てばいいものを」
「馬鹿め。貴様らこそ私達のため黙って犠牲になれば良かったのだ。こうして踏み潰される前にな!」
そう言うとダイシャクシギ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。それに対抗すべく、渡海雄と悠宇も合体して一つになった。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
秋空に舞う二つの巨体。くちばしを鉤爪のように振り回すダイシャクシギロボットの攻撃を悠宇はうまくよけつつ体勢を整え、カウンターの裏拳が炸裂した。
「よしっ! いいぞゆうちゃん!」
「とみお君こそチャンスよ!」
「オーライ! ならばエンジェルブーメランで勝負だ!」
渡海雄はすかさず桃色のボタンを押した。肩からカチャリと射出されたパーツを組み合わせて敵の巨体へと投げつけた。ブーメランの不規則な動きは、しかし確かにその肉体を切り裂いた。
「くっ、なんというパワーだ。仕方ない。帰るしかないか」
機体が爆散する寸前に作動した脱出装置でダイシャクシギ女は宇宙へと戻っていった。
こんな戦いを繰り広げているうちにJ2最終節が終わっており、その結果磐田が昇格を決めた。直前で追いつかれたかと思ったら即勝ち越しゴールという劇的な勝ち方だった。一方で福岡は、今日も勝ったものの得失点差で及ばずプレーオフに回る事となった。プレーオフで三位のチームが昇格した事は今までにないが、福岡はかなり上り調子でここまで来たので、その法則を打ち破る力はあると思うがどうか。
なお六位は長崎、ヴェルディ、千葉がいずれも敗北したため前節の時点で一番上位にいた長崎がプレーオフ進出となった。長崎はこれで二回目の出場で、若い印象の割に経験豊富なチームだ。ヴェルディは、終盤の失速がやはりきつかったか。千葉はついにプレーオフ進出すら逃してしまった。ともかく、福岡、セレッソ、愛媛、長崎からどこか一つが昇格となる。
またJ3も最終節が行われ、レノファ山口が後半アディショナルタイムラストプレーで追いつくというこっちも劇的な展開で優勝、J2昇格を決めた。一方で、後一歩で優勝を逃した町田は復帰を賭けて大分との入れ替え戦に臨む。
ついでに、私のシーズン前の順位予想は二月二十二日に投稿された通りだが、終わってみると想像以上に当たった。まず何より広島一位。正直「優勝してくれると嬉しいよね」みたいな願望だったものが、まさか実現するとは。また、下位の三つが順位含めてバッチリ当たってしまった。こっちはそんなに嬉しくない。結果が結果だし。
他には横浜七位と鳥栖十一位も。順位一つ外れだと浦和、鹿島、仙台。今までは基本大外ればっかりだったのでこんなヒットしたのは奇跡的と言える。一番大きく外したのは新潟。なおJ2で当たったのは十八位の群馬だけで新潟なんて目じゃないほどの大外れを連発している模様。こっちが実力だ。
今回のまとめ
・サンフレッチェ年間勝ち点一位とりあえずおめでとう
・試合中ずっと踊ってるガンバのチアは本当に凄いと思った
・山口に磐田と狙っていたかのように劇的な展開連発で凄い
・バルディリス獲得って本気なんだろうか




