am15 ウィンキー音信不通記念 GBAスパロボについて
ユニークユーザー、つまりその日に何人の人がこの小説を見てくれたかという数字が出るのは二日ほど後という事になっている。
十一月十三日の朝、いつものようにユニークユーザーの数を確認したところありえない数字が弾き出されていたので目が飛び出そうになった。というのも、本小説の第二十一部に圧倒的に突出した閲覧数が記録されていたからだ。下の画像はその翌日である十二日の話別アクセス解析。その傾向がより先鋭化されている。
一体どうして。しかしすぐ察しはついた。二十一部のタイトルは「ウィンキースパロボの終焉について」だが、あの日にはまさにそのウィンキーソフトが本当に終焉の日を迎えたという情報がネット上を駆け巡ったのを思い出したからだ。なんか公式サイトとかツイッターが削除されて見られなくなったとか。
それを確認すべく、今更ながらウィンキーソフトでググったらなぜか五番目に二十一部が出てきた。公式、ウィキペディア、ツイッター、JINと来てここ(十三日時点。十四日には公式サイトやツイッターが消えた代わりにまとめサイトがいくつか上に来ています)。嘘だろう。そんな立派な内容でもないのに。世界にはもっとウィンキーソフトに詳しい人が語っているページなんていくらでもあるだろうに。
というわけで、別にインサイダーな情報なんかは持っていない私が言えるのはただ今までありがとうございましたとそれだけだ。それと戸惑い。二人もそういう感情でいた。
「ウィンキーソフトはねえ、むしろ今までよく頑張ったと思うよ。僕なんかはスパロボ絡みでしかウィンキーソフトを知らないけど、実際は八十年代からPCのゲームを作ったりしてたみたいだから、こういう業界の中ではかなり生き延びたほうじゃないかな」
「この業界、かつては大手だったメーカーも無慈悲に消滅ってよくあるものね」
「新たに出た魔装機神の評判ももう一歩だったし、やはりここらが限界だったか。でもウィンキーソフトについてはもう語る言葉は出し尽くしたし、現状どうであれ今までの功績が消えるもんじゃないからね。本当にお疲れ様でした」
「スパロボの基礎を構築した会社だもんね。まさかあれから二十年以上続くとは当時誰も思っていなかったでしょう」
「そうだね。さて、今回はウィンキーソフト以降のスパロボって事になるけど、今まで意図的に避けていたルートってのがあるんだ。それが携帯機のスパロボ。特にウィンキー以降のこれらのソフトはいずれも独自の魅力があって、いいものだよ」
「ふうん」
「でもワンダースワンとか持ってないから基本はゲームボーイアドバンスの話題になるけど。このハードから出たスパロボの嚆矢は二〇〇一年に発売されたスーパーロボット大戦Aだ」
「Aか。魁にふさわしいアルファベットね」
「うん。このゲームボーイアドバンスというハードは当時最新の携帯機でSFCレベルの表現力は軽く持ち合わせているんだけど、実際SFC時代に開発していたウィンキーソフト時代には見られなかったパイロットのカットインなど戦闘シーンにおける進化も適切に採用してスケールアップが図られているんだ」
「二〇〇一年だから、α外伝の頃か」
「主人公は二人の男女から選び、立場は違えどいずれも敵組織に所属する人物がアクシデントによって味方組織に拾われるところからスタートし、そこから自我と言うのかな、それまでと異なる信念が芽生えるという流れ。アクセルとラミアってね、どちらも人気が高いキャラクターだよ。作中においては『極めて近く、限りなく遠い世界』なんて言われてる平行世界から来た敵組織の設定も面白い。また版権キャラクターの使い方も上手いと評判で、非常に評価は高いんだけどね」
「だけど、何?」
「ただね、今となってはシステム周りがウィンキー時代の名残を引きずっているのかちょっと独特で、まあ難しいわけじゃないけど対応に時間かかるかなってところ。特に戦闘画面をカット出来ないのは面倒に感じるかも。そういった部分が決定的に近代化されたのは翌年発売のスーパーロボット大戦Rだよ。これはもうかなり快適にプレー出来る」
「Rってどういう意味でそう付けてるの?」
「確かreversalって、反転とか逆戻り、あるいは逆転を意味する英語の頭文字で、主人公が過去へとタイムスリップして、そこで悪いものたちを叩くってのが基本的展開だよ」
「過去へ、タイムスリップかあ」
「いいもんだよね。ウィンキーも今頃それ出来ればって思ってるかも。それはともかく、Rの主人公もやはり男女から選ぶ方式だけど、Aと違って同一人物の性別が男か女かという方式になってるから個性という部分では前作ほどでもない。OGシリーズでは兄妹って事で両者出演してたけど、これは妥当な改変だと思ったよ。それと主人公たちは戦闘用ではなくレスキューロボを作りたいけど予算確保のため戦闘用を作ったという設定で、それを踏まえて第二次OGはまさにそのための機体で参戦している。いつまでも戦闘用で戦い続けるのも嘘だし原作終了後の措置としては良かった。原作再現に当たる部分の体たらくに目を瞑るとね」
「えっ、それはどういう事?」
「まあ後で話すよ。さて、R本編に戻るけど最初の世界は原作の悪役が地球のトップに君臨しているなどスパロボ界屈指の絶望的状況だけど、過去の世界はそうでもなくて、むしろのんびりとした明るささえ漂っているんだ。それと敵組織について。敵ボスであるデュミナスと幹部の三姉妹以外に手駒はなく、そのため三姉妹は敵組織にどうにか取り入って手駒を増やす事に血眼になっていたのが印象的だったね。発想としてはAをより先鋭化されたと言えるわけで、これはRのシナリオライターがAのプロット、つまりシナリオ全体の流れを作った人だからそういう事になったんだと思う。そういうわけで下手すると主役チームより敵の動きのほうが面白かったり」
「それはまた独自の動きね」
「一人称あたいで勝ち気なティス。髪の色がピンクで人を見下すような笑みが特徴だけどよく見ると空虚な目をしているグラフィックが味わい深い。他の二人が内気な事もあって自分が引っ張っていかなきゃって意識もあるんだろうね、お姉さんぶってて三人の中ではリーダー的役割を担っているように見える。三姉妹呼ばわりしたところで悪いけど実は男のラリアー。普段は気弱だけど時々男気を見せてそれがググっと来る。七八歳で、サナトリウムで療養中の美少女みたいと評判のデスピニス」
「むう、サナトリウム!」
「儚げな雰囲気だね。他の二人からは妹のように慈しまれているけどそんな立場に甘んじる彼女ではない。そこは自分でもやれると頑張ってしまう性質なのかむしろやってる事は一番過激というタイプで、それと髪の青色の発色具合がなんか好き。この三人、見た目は子供だけど中身は悪辣で、基本的にはデュミナスの手駒として暗躍するんだけどたまにどう見ても任務とは関係ない場面で極めて感情的な姿を露わにしたり、なかなか一筋縄ではいかない連中だよ。それと服装などに関してはしばらく公開された資料がなくて、でも当時よく出ていたアンソロジーコミックではかなり独特なデザインで明らかに統一されていたから設定自体はあったんだろうね。それについて知りたければアンソロジーを買えという時代が五年ほど続いて、OG外伝でようやく誰の目にも見られる設定資料が詳らかにされたんだ」
「ふうん。この人達、気に入ってるの?」
「まあね。それがOG外伝とかいう薄っぺらい、伏線をひたすら貼りまくっただけみたいなしょうもない繋ぎのシナリオの中であんな適当に処理されるなんてねえ。悲しいし悔しくもあった。ほら、例えば自分以外の誰かが『Rは駄目だった』という感想を持ったとしてもそれは価値観の相違で、僕が『Rは好き』って言うのと変わらないからそれは別にいいんだ。人の数だけ主観はある。それはどちらが間違いって事でもない。でもね、公式であそこまで露骨に『こいつらはこの程度でいいだろ』的な雑な扱いされたのは、さすがにまいったな。ある意味創造主から捨てられたデュミナスの生い立ちの追体験をさせられたようなもので、スタッフの皆さんの粋すぎるサプライズに僕は感動のあまり涙さえ流したよ」
「うおう、相当腹に据えかねているみたいね」
「例えるなら黒い三連星のオルテガだけ仲間になったようなものだからね。それで喜べってのはとても難しかった。実はRとは別物らしいなんて姑息なエクスキューズも笑止。だったら最初から真面目にやれば良かったのになんであんな展開にしたのか。まさか批判の声がないと思ってたわけじゃなかろうに。成り行き上ここまで敵中心に語ってきたけど味方関連もおざなりで、チーム内の関係が深まるイベントをカットされたり最強機体お披露目という見せ場を他に取られたりと散々。そこには一欠片の愛着も感じられなかった。エクサランスレスキューというアイデアもそれ自体は良かった。でも根本的に最初の一手が大悪手だからそこからどう修正しようとおかしいままなんだよね。思えば以前もアクセルという人気キャラクターの扱いに失敗して一度殺した後で復活と無様な展開になったけど、OGなんてキャラクターありきの作品でキャラクターを大事にしないなんてどうかしてるんだよ」
「おお、湯島さん以来の激怒モード?」
「大丈夫。これ以上は内容のない罵倒になるからもうやめるよ。Rの話に戻ると、この三人を束ねるデュミナスはグラフィックも謎の一つ目で正体不明なんだけど常に冷徹、と思いきやどこかすっとぼけた部分もあるのが奇妙な人間味を感じさせる不思議な存在。わざとギャグとか言ってるわけじゃなくてね、基本真面目なんだけど抜けてると言うのかな。Rのテキストは全体的に朴訥とした雰囲気で、それがキャラクターの性格も決定付けているみたい。それとスーパー系の一話完結エピソードを今までより多く採用しているのも独自の味を醸し出す要因だね。全体的に名もなき一般市民の登場機会が多く、それはまさにヒーローたちが守るべき存在を間近に感じながらの戦いでもあったんだ。そんなR、個人的にはとても好きなんだけど評判は前作程ではなくてね。翌年発売ののスーパーロボット大戦DはRとは正反対の路線となったんだ」
「次はDって言うんだ」
「ライターも一新されたので作風はとにかく暗いと言うか、切羽詰まった、悲壮感漂う雰囲気が特徴的。名もない兵士が登場してその生命を散らすシーンがちょくちょくあったり、味方は常に追い詰められた状況にいるんだ。全体的にキャラクターはイライラしていて、たまに明るい話もあるけどすぐ絶望的な状況に押し潰されてしまうような本当にささやかな光という扱いで。敵組織も基本的に話が通じそうにないのばっかりだし。ゲームバランスもシビアになった」
「それは大変ね」
「主人公はやはり男女で、一応兄妹って事になってるけど妹のほうはやや複雑な生い立ちが、というもの。だから設定は妹のほうが凝ってるけど残念ながら意欲が空回りと言うか、男主人公のほうが人気高い。一方でオリジナルの敵は、幹部の数を増やしすぎたのがまずかったのかな。具体的に言うとウンブラは存在意義が怪しかった。コンターギオも面白みなし。イグニスも安っぽい煽り屋みたいで興が乗らない人達だったな。ユニットは格好良いんだけどね」
「人数が多すぎるとそうなるのは仕方ない部分もあるんでしょうね」
「まあオリジナル敵以外の部分がよく出来ているからセーフなんだけどね。このDの翌年は音沙汰なしだったけど二〇〇五年に、GBAでは最後となるスーパーロボット大戦Jが出たんだ。このJは、とにかくグラフィックが大きく進化してとても綺麗になったのがまず印象的。顔のアイコンが巨大化したり、一枚絵による演出強化が図られたり。ただシナリオは、どうやら途中でライターが交代したらしく妙にごたついているのが残念。誤字も多く、全体的に作りが粗い突貫工事っぽさがある」
「内部のゴタゴタか。たまにそういうのもあるのね」
「そういう事はあっても、とにかくAからJまで思えばたったの四年しか経ってないとは思えないほどの凄まじいスピードで進化を遂げてきたのがこの携帯機スパロボだよ。特に連続で出ていたARDは一年ごとにグラフィックもシステムもぐんぐん洗練されて、しかもシナリオもそれぞれ明確に異なる個性を持っているんだから。据え置き機で本流のスパロボががっしりと根を張る一方でこういった実験作も連発出来ていた二千年代前半こそがスパロボの全盛期だったと言えるね。OGシリーズもあったし、ワンダースワンもね」
「そんな毎年複数出せてたのにペースが鈍化したのはどういう事なの?」
「平たく言うと開発に時間がかかるようになったって事でしょ。より美しいグラフィック、より多くの参戦作品を求められて頑張ればそれが可能って環境は一種の底なし沼だからね。GBA時代は声なんか入ってなくて、でも今は携帯機でさえ当然のように声が入っているほどにハードは進化した。でもそれだけ無茶も出来なくなったと言えるからね。この時代の携帯機はかなり実験的な版権作品同士の絡み、クロスオーバーも盛んだったけど声が入るとそれもおいそれと出来なくなるから。まあシリーズの体力が落ちているからそうそう実験に走れないって事情もあるように思えるけど」
「今後スパロボの復活ってあるの?」
「それは知らない。自由にやれるって意味ではやはりOGに期待と言いたいけど、そのためには前も言ったけど今のシリーズを一度断ち切るのは必要不可欠だからね。まずはさっさと出しましょう。ウィンキーソフト時代の末期もそういう閉塞感はかなりあったけどαシリーズやこの携帯機達が自由な発想で飛び回る姿は勇ましく、新たな時代を切り開いた。その時のように大胆に動いて、それこそ今までの常識を打破するような作品の登場があるといいよね。それがウィンキーソフトに対する最大の供養となるのだから」
いや、まだウィンキーソフトが逝去されたと決まったわけではないのだが、まあ実際公式サイトとも繋がらなくなっているし、ここから復活とかするのなら是非してほしいところだが実際問題それは厳しいだろう。
そして十一月三十日、ウィンキーソフト自己破産申請へというニュースが流れ、やはりそういう事であったと判明した。とりあえずお疲れ様でした。
今後に関しては、とりあえずあれからもう八年経っているのに未だに続編一本しか出ていないOGシリーズの一日も早い清算を切に望む。例えば第四次のダンクーガの扱いは酷かったけどそれ以降改善されたとか、そういう事をOGでも言えるようになるといい。
今回のまとめ
・ウィンキーソフトは亡くなってしまわれたけどその功績は大きかった
・GBAスパロボはそれぞれ明確な個性があってどれも面白い
・進化のスピードもかなりのものでシリーズとして力強い
・OGで作品によって扱いが異常に雑になるのは勘弁してほしい




