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hg23 See You Againとその後のベストアルバムについて

 梅雨の次は台風だ、とばかりに南洋で荒ぶる台風が本州に直撃するとかしないとか。この心のざわめき。台風接近ってロマンだよなって思う渡海雄は一日中少し興奮している様子だったが、その理由はおそらく台風だけではない。彼は今ひとつの区切りを迎えようとしているのだから。


「……ついにこの時が来てしまった」


「そうね」


「思えば長い日々だった。延々と紹介し続けてきた光GENJIのアルバムも本作『See You Again』がラストとなるんだ!」


「わあおめでとう。それにしても凄いサイズね」


「一九九五年の八月十九日、つまりデビューしたのと同じ日に発売された文字通りの卒業アルバムで、体裁も本当に学校の卒業アルバムみたいになってる。中にはデビューから今までの写真やディスコグラフィ、近藤真彦からまだCDデビューしていなかったKinki kidsまで、先輩後輩からの寄せ書きなどが掲載されているんだ。他は横書きなのに一人だけ縦書きな近藤の大雑把さや、忍者四人の丁寧かつ兄貴分っぽさを出したコメントが見どころかな」


「やっぱり気持ち入ってる人とそうでもなさそうな人っているものね」


「このサイズだから中古CD店なんかじゃあまり見かけないけど無茶苦茶レアって程でもないから、購入する場合は言い値に飛びつかず、吟味してからのほうがいいよ。そして肝心のCDは三枚組。まず一枚目は普通のアルバム」


「そしてその一曲目は『永遠に一度の夏』。作詞松井五郎、作曲編曲太田美知彦、コーラス編曲曳田修」


「タイトルが抜群にいいんだけど曲自体もかなり格好良いよ。太田の曲らしくアニメっぽいカタルシスがあるのが特徴。ギターが大いに活躍するロック調のサウンドはパワフルかつ高揚感に満ちているし、出だしはジリジリとした日差しを思わせる重たさがあるんだけど切なげなBメロを経て力強いサビへと続く構成も良好。特にあえて演奏を抑えてコーラス重視のBメロが美しくていいね」


「次は『JACK MY DREAM』。作詞MOTOMY、作曲編曲和泉一弥」


「豪快なブラスが印象的な、これまたロック調のラフな激しさがある曲。赤坂と佐藤敦啓の二人による歌唱は『ふたりの宝物』以来だけど、ファンシーなあれとはまったく雰囲気を変えているのが成長を感じさせる部分。いっそ解散後はこの二人を組ませてデビューさせてたら、とか思ったり。まあ今となっては叶わぬ事だけど」


「次は『雨(情熱を止められない)。』作詞横山武、作曲谷本新、編曲田辺恵二」


「低音を効かせたサウンドがストイックな印象を与える曲。悪くはないよ、地味だけど。ただ想像以上にファン人気があるなって感じ」


「次は『Festival Tour』。作詞三浦徳子、作曲編曲水島康貴」


「三浦によるちょっと大袈裟な歌詞がさすがだなあって、そんなバラード。サビは結構ぐっと来るね。それにしても三浦や和泉一弥はともに『Hey! Say!』からの参加で、ここまで一番長くお付き合いしていい曲も多かったからね。そういう感慨も多少はあれど、でも基本的にはそこそこって程度」


「ここでもう半分なのね。次は『EVERYDAY SUMMER DAYS』。作詞作曲編曲MOTOMY」


「内海、山本、佐藤敦啓の三人主体で歌った曲で、ジャンルとしてはレゲエって事でいいのかな。基本キーボード一本って感じの慎ましいアレンジなんだけど、それが可愛らしいんだけどどこか寂しげな独特の空気を醸し出している。賑やかにするよりもこれぐらいのほうが逆に趣がある、なかなかの佳曲だよ」


「次は『KEEP ON RUNNIN'』。作詞津田りえこ、作曲編曲井上日徳」


「走り続けるというタイトルにふさわしくロックサウンドによる性急なテンポがハードでアグレッシブな雰囲気を作り出している曲」


「次は『路の上から』。作詞平井森太郎、作曲編曲SORA」


「諸星メインに山本のコーラスが被さった、アコースティックな音色が印象的なフォークソングっぽいバラード。シンプルな編曲に二人の歌声が綺麗に調和しててまさにハーモニーって感じ」


「そして早くもラスト。『この夏からONE WAY』。作詞松井五郎、作曲岸正之、編曲米光亮」


「いかにも光GENJIらしい前向きで爽やかな夏の曲。曲調に関しては外連味のない正統派と言うのかな、七人で歌っていても不思議ではない雰囲気。一番のサビが終わってから新しいメロディーを経て間奏へ突入する構成が好き。歌詞は、というよりこのアルバム全体の傾向としてやっぱりラストって事もあるし『明日』『走り続ける』『捨てる』『旅立ち』などなど、新たなるスタートを思わせるワードが続出してるんだけどこれもそう。最後は前向きに走り続けるという非常にストレートな、でもいい形を作っての別れだよ」


「そうね。そして二枚目のディスクに突入するけど、その一曲目は『Real World』。作詞佐藤敦啓、作曲編曲浜田敏希」


「この二枚目はコンサートで歌われていたソロ曲をまとめて収録したものと言えるんだ。そしてこの曲は言うまでもなく作詞者が歌ってる。曲を作った浜田は、検索するとベーシストが出てくるけど多分この人なんだろうな。ロック調のサウンドでサビの開放感は悪くない」


「次は『Morning』。作詞佐藤敦啓、作曲谷本新、編曲米光亮」


「これも佐藤敦啓のソロだけど前曲よりメロディーがいいからおすすめ。二番がない構成でちょっと短いのが残念だけど。その後のソロ活動でもロック調の楽曲を連発するけど、アレンジがこれぐらいの塩梅ならなお良かったと思う。やっぱり米光亮って素晴らしいアレンジャー」


「次は『Still I Love You』。作詞MITSUCO、作曲大島賢治、編曲L.B&G、コーラス編曲鈴木弘明。誰って人がいっぱいいるわね」


「これは赤坂ソロ曲。曲自体はギターが印象的だけどあんまりパッとしない。とりあえず作曲の大島はザ・ハイロウズのドラムの人だね。とは言ってもあのバンドって本体はヒロトとマーシーだからね。ああ、世間をお騒がせしてないほうのマーシーだよ」


「そんなの分かってるわ。次は『HEEBI-JEEBIES』。作詞作曲船越敬司、編曲金山徹」


「これは山本の曲。タイトルはEが足りていないのかなと思う事はあれど大まかには英語でイライラする気持ちとかそんな感じの意味らしい。大人の色恋沙汰を連想させるクールなダンス曲だけど本懐は遂げられなかったように思える。これは歌い方がまずいよ。『ヒー!』『ビー!』って何であんな元気いっぱいなのか。アカペラっぽい出だしは期待持てただけにとても残念」


「次が『COUNT DOWN』。作詞松井五郎、作曲土橋雅樹/岡崎敏之、編曲米光亮」


「これは諸星の曲。ここのソロ曲だと一番アレンジががっしりしているし諸星の歌唱もスケール重視でよく合っている。なかなか格好良いと思うよ。早口でまくし立てるAメロからだんだんメロディーも伸びやかになって、本人のキャラクターにも合ってる」


「次が『LONELY FUGITIVE-終わりなき疾走-』。作詞内海光司/船越敬司、作曲編曲金山徹」


「これは当然内海の曲。闇に溶け入るような歌唱と金属的なアレンジが結構格好良い雰囲気の曲。それと、歌詞の合間合間に歌われてないポエムが挟まっているのも特徴。一説によるとダンスで表現しているって事だけど。まあ曲の邪魔にはなってないし演出の一環としてはありなんじゃない」


「そして最後に三曲。『Diamondハリケーン』『ガラスの十代』『STAR LINGT』」


「それぞれ水島康貴、田辺恵二、井上日徳による編曲で山本、赤坂、佐藤敦啓がメインとなって歌われている実験的リメイクだよ。『Diamondハリケーン』はレゲエっぽい出だしからジャングルサウンドが展開される構成やアウトロで原曲のイントロが引用されるアイデアは良いけどいかんせん音がダサい。『ガラスの十代』は、特になしかな。歌い方がやけにネットリしてるのはずっと歌い込んできた成果か。『STAR LIGHT』はワイルドなロックアレンジが施され、LPバージョンで追加されたフレーズからギターソロに雪崩れ込む流れは案外格好良い。原曲に及ばないのは仕方ないけど、バリエーションとしては面白いんじゃない。そして三枚目はメンバー五人が選んだ思い入れのある曲が集まっている。納得の曲から意外なアルバム曲まで色々だけど、本人のコメントに思いを馳せるのがいいと思うよ」


「……これで彼らが残した音源は全て見てきたのね」


「そうだね。終わってしまったんだね。ああ、ついでに解散した後に出たベストアルバムが二つあるからこっちも説明しておこう。まず一枚目は二〇〇一年発売の『光GENJIベスト』。ポニーキャニオンが企画したベストアルバムのシリーズで、シングルから選抜された全十六曲入り」


「対外的に知名度高そうな曲は軒並み収録されている感じね。意外なのは『君とすばやくSLOWLY』ぐらい? 一方で『Diamondハリケーン』『剣の舞』などが落選。『地球をさがして』を落としてどちらか入れれば良かったのに」


「でも人気全盛期を殊更に重視せず後期の楽曲まで採用するバランス感覚は称賛したい。最初の一枚としておすすめ。そしてもうひとつは二〇〇二年発売の『光GENJI All Songs Request』という二枚組のベスト。これはインターネットで投票した上位三十曲をまとめたアルバムで、他にはチェッカーズや岡田有希子でも同様の企画がなされているみたい」


「でも三十一曲収録されてるけど?」


「三十位が二曲同数だったらしいんだ。選曲はかなり独特で、まず対外的に有名な曲が結構外れてるのが第一のポイント。具体的には『パラダイス銀河』『太陽がいっぱい』『勇気100%』辺りね。オリンピック系も。また『Diamondハリケーン』『剣の舞』辺りも選外だから前のベストの補完としても使えない」


「逆にその辺を外してよくベストアルバム作れたわね」


「一位が『2.5.7』なあたり本当にファンだけが投票したんだと思う。熱心に聴き込んできた人ほど『有名曲だけじゃなくて後期の楽曲やアルバムにもいい曲がいっぱいある』という心理が働くもので、実際真理だと思う。ただ商品としてはあまりにもバランスが……。選出されたシングル曲は全部『光GENJIベスト』にも収録されてるしね。『STAR LIGHT』『ガラスの十代』『CO CO RO』『WINNING RUN』『Meet Me』『Bye-Bye』の六曲なんだけど。だったらせめて初期二曲や『WINNING RUN』はアルバムバージョン収録とかやってくれればなあ」


「つまりこの六曲がレコード会社の考える最大公約数的ベストにもコアなファンが選出したベストにも入る超名曲って事に?」


「個人的な好みだと別の曲が絶対入るけど、まあ多数派だとね。ともかく、三十一曲中シングルはわずか六曲で他はカップリングやアルバム曲がぎっしりというガチすぎる構成だから、ファンじゃない人が『懐かしいね光GENJI。改めて聴いてみようか』ぐらいの気持ちでこの選曲を見ると『なんか知らない曲ばっかりだな』と思う事必至で手を出す事はまずないだろうね」


「確かにこの二つのベストでどっちを買うかって問われると絶対前者よね」


「だからまず『光GENJIベスト』を買って気に入った人はこれも買って、これもいいと思えたら各アルバム収集に走るとか、そういう流れが理想型なのかな。ちなみに僕の場合シングルは『TAKE OFF』、カップリングは『LUNAR PARK-GO-ROUND』、アルバム曲は『水の惑星~Love Balloon~』が一番好きだけど、これらは全部未収録。結局人の好みはそれぞれだから色々当たってみるのが一番だよ」


「でもこのアルバムも十年以上前で、それ以降はまったくないの?」


「色々あったからね。ちなみに選出された曲に関してはさすがファン目線って事で、割と納得の面子。リアルタイムを過ごした人には馴染み深い『THE WINDY』とか『333』通常盤にしか入ってない二曲、赤坂と佐藤敦啓のデュエット二曲が選ばれてるのは見事なもの。いくつか『何で?』ってのもあるけど、それはまさにリアルタイムと後追いの差ってもので、つまりコンサートで印象的なステージングを披露した曲がいくつも選ばれているようなんだ。あっ、そうだ。次は映像方面行ってみよう!」


 夏に新たな誓いの言葉。しかし今日のところはそれもなくなった。敵襲を告げる警報が鳴り響いたからだ。渡海雄と悠宇は素早く変身して敵が出現したポイントへと向かった。


「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のオニベニシタバ女だ! この汚れた惑星を浄化させるのが使命だ!」


 その名の通り、鮮やかな朱色と黒が入り混じった後翅が印象的な蛾の姿を模した女が出現したのは夏草が生い茂る野山だった。でも前翅の色は地味で、閉じていると単なる地味な蛾にしか見えないのも奥ゆかしい構造と言える。


「出たなグラゲ軍。お前を殺す気はないからすぐに立ち去れ!」


「そうよ。失うものなんて少ないのに越したことはないのだから余計な事はしなくても」


「よくもほざいてくれる! すでに勝った気でいるとは随分楽天的だな。雑兵を奴らを蹴散らせ!」


 交渉はやっぱり決裂した。襲い来る雑兵は渡海雄と悠宇が次々と破壊していって、間もなく残ったのはオニベニシタバ女だけとなった。


「よし、雑兵は全て片付いた。後はお前だけだなオニベニシタバ女!」


「誰もが望んでいない戦いならばお互いに矛を収めるのが正しいでしょう」


「ふん、戦いはこれからだ。我らの切り札は知っているのだろう?」


 オニベニシタバ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦いは免れないのか。しかしこうなったからには即刻撃破して被害を食い止めるしかない。渡海雄と悠宇も覚悟を決めて合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 熱気と湿り気を帯びた南洋からの風が気だるく吹き抜ける夕刻に二つの巨体が相まみえている。空を翔けるオニベニシタバロボットの攻撃を回避しつつ、良い風の訪れとともに一気に接近して距離を詰めた。


「よし、今よとみお君!」


「うん。レインボービームで決着だ!」


 渡海雄はすかさず白いボタンを押した。胸部の発生装置から様々な波長を持つ七本のビームが同時に射出されてオニベニシタバロボットの胴体を貫いた。


「むううっ、ここまでか。脱出するしかない!」


 無念さを噛み締めながら、オニベニシタバ女は機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によって宇宙へと帰っていった。戦いを終えて家路に向かう二人の耳にジージーと蝉の声が響く。今年初めて聞こえたノイズだ。入道雲は大きく膨れ上がり、夏だった。

今回のまとめ

・馬鹿でかいジャケットで存在感あるけど取り扱ってる場所も多くない

・様々なタイプの佳曲が揃っておりアルバムとしても実用性十分

・ソロ曲集と言える二枚目はさすがにテンション落ちるけど

・明日は何か本当に台風が直撃しそうで不安と期待が入り交じる

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