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hg22 Someone Specialについて

 六月の声を聞いた途端に雨が降り始めた。今日はいい天気だったのでいきなり梅雨って事でもないのだろうが。しかし今までは逆に暑すぎたのだからこれで程よく熱気を鎮めてくれればありがたいものだ。渡海雄と悠宇は小学生なので少しぐらい濡れる程度なら何とも思わないし、晴れてくれたらそれはそれで良かったと思う程度だ。


「という訳でこれが光GENJI SUPER 5名義で出したファーストにしてラスト、唯一のアルバムである『Someone Special』だよ。いや、本当はもう一つあるんだけどあれはもうSUPER 5がどうこうって話じゃなくて光GENJIそのものの終焉を告げるアルバムだから、事実上SUPER 5のアルバムではあるんだけど心情的にはちょっと違うかなって」


「とりあえず本当にもう終わりがはっきりと見えてきた頃のアルバムって事ね」


「発売は一九九五年の三月。僕が持ってるのは通常盤だけど、黄色い床に茶色く塗られた壁という背景にした五人の衣装の色合いもやはりシックな色合いで比較的ナチュラルな雰囲気を醸し出してるでしょ? 初回盤は水色基調に文字が書いてあるだけで、中身はともかく外観はちょっと味気ないかな」


「そうね。この色合いだけで見ると秋のイメージ。でも出たのは春なのね。それにしても、七人から五人に減った事で今まで違う感じよね、やっぱり」


「そうだね。お誂え向けにグループ名をわざわざいじってまで五人である事を強調して、しかもデビュー曲が『Melody Five』とダメを押してくる始末。やっぱり光GENJIは七人でこそと思うファンの感情を逆なでするかのような扱いは酷いものだったけど、メンバーの団結もいい加減薄れてたみたい。諸星が言うにはこのSUPER 5として活動した一年は人生最悪の一年だったって事だから、色々あったんだろうなって察してしまうね。逆に言うとそういう中でもちゃんとアルバム出せたんだから見事なものだよ」


「メンバーのルックスはそんなまずい雰囲気ないけど。ああ、でもおでこを出すセンター分けの髪型となった内海は妙に老け込んだ印象が」


「この頃で二十七歳かな。若手演歌歌手がそう言われるタイプの爽やかさが出てると言うのかな、色々苦労する事も多かったのかなって邪推してしまうよ。それと山本は今まで以上に輪郭の歪みがはっきりしてるみたいで何かいまいち。妙に子供っぽい衣装やポーズが多くてしかもそれが滑ってるし。それと諸星の衣装は、和彫りっぽいデザインのシャツ着てたりしててちょっと怖い。本当に輩みたい。赤坂は衣装がなぜかジャージだったりするけどルックスはいい感じで、佐藤敦啓はまあ順調。前髪を下ろしてる写真などはかなり近代化されたルックスだなって思う。九十年代後半っぽいと言うか、これならTOKIOやV6にいても不思議じゃない」


「そもそも年齢的にはその辺にいても不思議じゃないしね。それで楽曲は、まずは『Angelic Day』。作詞三浦徳子、作曲清岡千穂、編曲水島康貴」


「アカペラから始まって、教会音楽を彷彿とさせる荘厳な雰囲気が印象的な楽曲。なかなか綺麗な曲だし、歌詞はいつもの三浦という気障な単語がバシバシ登場してこれもいい。ただこれのアウトロと次の曲のイントロが繋がっている事からも分かるようにいわば序曲だからね。ちょっと短くて単体でどうこう言うにはやや弱いのがもったいないね。ただ今までよりも大人びた雰囲気って事で、挨拶代わりとしてはいい感じだと思うよ」


「そして次の曲は『DIVA』。作詞作曲中村栄之輔、編曲田辺恵二、コーラス編曲秋元薫」


「中村も田辺も今までにはなかった名前だけど、今までにないセンスを持った若い音楽家と言える。田辺なんかは内海より若い。アレンジは打ち込み基調で軽く静かなんだけど、それがどこか神秘的な独特の世界観に繋がっているのが面白いところ。それにコーラスは『Yesterdayと呼ばない』で素晴らしいパフォーマンスを披露した秋元に加えてスタジオシンガーとして著名な高尾直樹と、CANDEEという今はもう亡くなられているみたいだけど高尾の妹さんの三人が担当している。このコーラス隊も今まで多く使われた曳田鈴木より大人びた声質で、曲の世界観をより明確にしている。間奏のスティールパン、南米生まれでピンピンと陽気な音を出す打楽器の音もどこか寂しげに響く使い方が興味深い。何というか終末、世界が一回崩壊して、廃墟広がる海岸に一人佇む女神って感じのビジュアルイメージ。いや、神様だから一柱か。どうでもいいけど。歌詞も地球規模って言うのか、やたらと大規模でアニメっぽい。エヴァとか? そう言えばエヴァのテレビ放送開始とこのアルバムは同じ年だから、同じ世紀末の空気を吸って生まれた魂の兄弟みたいなものなのかな」


「絶対関係ないと思うけどな。それにしてもちょっと地味な曲が続いているみたいね。次は『キミは逆襲する!』。作詞夏目純、作曲谷本新、編曲水島康貴」


「これはねえ、派手ではあるんだけど……。イントロの出だしからして異様にチープな音で脱力不可避。やっぱり予算減ったのかなあ。しかしだからってここまで露骨に安っぽい音になるのかという衝撃。それはないでしょ水島。サビのメロディーは強引だし、歌詞も関ジャニ∞あたりのほうが合うんじゃないかな、みたいな。なまじ勢いある曲調だから薄っぺらさが丸出しになってて、威勢だけはいいけど空元気みたいな曲」


「派手ならいいってものでもないのね。次は『Someday』。作詞松井五郎、作曲山口美央子、編曲鈴木英利」


「編曲の鈴木はあまり見ない名前だけど、アレンジ自体はそんな奇を衒った事もなく普通だと思う。ミュージシャンにはギターの樋口直彦とかコーラスの桑原芳郎とか今までに見ない人たちが参加してるけど、だからと言ってレベルが極端に上下するものでもないからね。それより楽曲はなかなかの名バラードで、ふとした事から昔の仲間を思い出してまた会いたいと締める歌詞なんかは彼らの境遇とそのまんま重なるし、一番盛り上がる部分を最後に持って行ってそこまでは徐々に気分を高めていくようなメロディーの構成もいい。これに関してはSUPER 5ならではの曲だね。物理的に二人少なくなって、歌声も含めて色々失ったからこそリアリティが高まっている」


「次は『明日があるさ』。作詞只野菜摘、作曲秋元薫、編曲井上日徳、コーラス編曲秋元薫」


「このタイトルだと坂本九とか吉本の人たちが歌ってた曲を思い浮かべる人が多いかと思うけど、あれとはおそらく意図的に正反対の雰囲気を纏った別れの曲だよ。しかも劇的な情景ではなく、愛の全てを消費し尽くして真っ白に燃え尽きたような静かな別れ。印象的なのは内海が長々とソロを張ってる二番で、レゲエっぽいけど陽気な盛り上がりは一切ない、枯れた打ち込みのリズムが淡々と刻まれる中にふわふわと浮かぶ消え入りそうな力ない声がこの曲の世界観と奇妙にマッチしている。これもメンバー減少に伴う歌声のパワー低下によってかえってこういう曲にはうまくフィットするようになったって意味では『Someday』と同じく新機軸と言えるね。自由だとか明日だとか、そういう言葉は何とあてのないものかと思わせるのはこの軽い歌唱あってこそ」


「次は『Lover's Beat』。作詞中村邦男、作曲羽場仁志、編曲井上日徳」


「羽場は八十年代から活躍していた作曲家で、ジャニーズではタッキー&翼への提供が多いかな。シチュエーションとしては『JOYFUL RHAPSODY』に似ていて、ネオンきらめく華やかな夜の街を軽やかに渡り歩くという路線だけど、より軽やかさを重視したのがこの『Lover's Beat』ってところかな。ピアノの音などなかなか心地良いし。ただ全体的なパワー不足は如何ともし難いものがあり、あからさまに打ち込みなブラス音もどうにもスカスカだし、悪くはないけど良くもないってレベル。七人から五人になって歌声が変わるのはまあ仕方ないとして、アレンジも薄くなってるのはいかがなものか。華やかさを表現するには色々足りていないかな」


「次は『THE LONG AND WINDY ROAD』。作詞田久保真見、作曲大門一也、編曲水島康貴」


「タイトルは多分ビートルズの『THE LONG AND WINDING ROAD』をもじったものだけど、曲自体はずっと打ち込みサウンドが続く中で『進み続けるしかない』という決意を歌ったもので、なかなか男らしくていい感じ。やっぱりアレンジは地味だし曲の構成としてはちょっと単調なのが気になるけど。太陽は色を失い寂寥たる荒野が延々広がってるような孤独な世界観は結構格好良いけどもうちょっと華があればってところ。矛盾してるみたいだけど、名曲ってそういう複数の面を持ってるものだからね」


「確かに。次は『馴染みのムジナ』。作詞津田りえこ、作曲編曲井上日徳」


「これは何と言えばいいのか。とにかく変な曲だよ、としか言い様がない。曲自体最初からふざけているとしか思えないし歌詞も何それって感じだし歌唱もグダグダになっていくし。意図的なお遊び曲って事であえて語るべき部分はあまりない」


「次は『君がいれば何もいらない』。作詞作曲沢田聖子、編曲水島康貴」


「ピアノ一本で弾き語り、というイメージの静かなバラード。いや、本当に演奏は必要最小限しかなくてとてもシンプル。沢田はデビュー時アイドル的要素を持ち合わせたシンガーソングライターだったようで、彼女のアルバムのジャケットを見ても確かにルックスはかなりいいね。それはともかくこの曲自体は綺麗なバラードってだけで終わるからなあ。Bメロがちょっと強引なのがやや気になる程度で、悪い曲じゃないよ」


「そして最後は『氷が溶けて血に変わるまで』。作詞MOTOMY、作曲水島康貴、編曲井上日徳」


「このアルバムで唯一打ち込みじゃない生のドラムが使われている事からも分かるように、このアルバムの中では圧倒的にロックテイストの強い楽曲だよ。歌詞に関しては『THE LONG AND WINDY ROAD』と同じ路線かな。やっぱり『前へ進むしかない』という。本人たちよりむしろジュニアの皆さんがよく歌ってたみたい。バラードなどではなく勢いのある楽曲でラストを飾るってのはいつもの光GENJI的だよね。ただ一曲目が『Angelic Day』で大人っぽかったのに結局こうなるのかという噛み合ってなさみたいなのは多少あるかも」


「それもそうね。大人びた曲が増えたけどそうじゃない曲もまだまだ残ってるというバランス」


「勢いある曲では『氷が溶けて血に変わるまで』はいいけど『キミは逆襲する!』はアレンジが軽くて失敗してるし、これぐらいのアレンジが基本になるのなら成長したメンバーに合わせてアダルト路線を突き進むのが良かったのかなとも思うよ。『Someday』みたいな過去を思い出すタイプの曲や『明日があるさ』みたいな枯れた雰囲気の曲もしっかりこなせているんだから」


「確かにその辺は新機軸になっていたわね」


「ただいきなり大人びた曲ばっかりにするとそれはそれで商品として難しい部分もあったんだろうとは容易に想像できるけど。全体的には地味な楽曲が揃っているので初めて聞いた時は正直しょっぱいアルバムだなって思ったけど、何度か聴いていくとこれはこれでいけるなって思えるようになった一枚。Amazonではなぜか五百円からだけど別にレアって事もなく、中古では案外よく見かけるけどあえて最初のほうに手を出すものでもないね」


 このような事を話していると敵襲を告げる警報が鳴り響いたので二人はすかさず戦闘モードに変身して敵が出現したポイントへと急いだ。


「ふははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のノビタキ女だ! この星を正しく美しい色に塗り替えてやるわ!」


 ノビタキはスズメよりもうちょっと小さな渡り鳥、衣替えをするため春と秋では見た目が全然変わってくる事でも知られている。今は夏なので漆黒の体毛を模した姿のまま、誰もいない草原に佇んでいる。冬羽だともっと茶色っぽい色になるようだ。


「出たなグラゲ軍! お前たちの思い通りにはさせないぞ!」


「せっかくいい天気なのにそんな日をこういう戦いに浪費させるなんて、いい加減にしてほしいわね」


「ふん、今日こそが貴様ら最期の日なのだからそんな事はどうでも良かろう。さあ行け雑兵ども!」



 続々と出現した雑兵を渡海雄と悠宇は素早く撃退し続けて、残った敵はノビタキ女一人だけというところまでこぎつけた。


「これで雑兵はもういない。後はお前だけだノビタキ女!」


「こうなってもすがりつく猫型ロボットとかいないんだし、素直に帰るのが一番いいと思うな」


「ふん。戦いはこれからだ。私は誰にすがらずともお前たちを倒してみせる!」


 そう言うとノビタキ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。どうせなら戦わずにすんだらいいのにという思いは今日も破られた。渡海雄と悠宇はまたやらねばならぬかと覚悟を決めて合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 ノビタキロボットの素早い動きにも冷静に対応して、じわじわと追い詰めていった。かくなる上はと飛び込んできたノビタキロボットを悠宇は持ち前の反射神経でうまく捕まえた。


「よし、今よとみお君!」


「うん、スプリングミサイルで勝負だ!」


 渡海雄はすかさず橙色のボタンを押した。脚部から放たれたミサイルが動きを止められたノビタキロボットの腹部に致命的なダメージを与えた。


「くっ、ここまでか。脱出するしかない!」


 ノビタキロボットの機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってノビタキ女は宇宙へと帰っていった。そろそろ本格的に雨の日が続くようになるだろうが心の中に輝く太陽は常に持ち続けていたいと願う二人であった。

今回のまとめ

・小粒な楽曲ばかりでかなり地味な印象を受けるアルバム

・参加した音楽家が若くなってるのもあり今までとはかなり雰囲気が違う

・「Someday」や「氷が溶けて血に変わるまで」は結構いい感じ

・五人を強調するのはかえっていなくなった二人を連想させて下策だったか

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