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am02 もうちょっと進んだアタックNo.1について

 せっかくの日曜日なので渡海雄は高校野球の甲子園に行く予選の決勝を見るため近所にある野球場に行ったら、そこで偶然悠宇と出会った。目的は同じであったようだ。芝生の外野席の一角で二人の言葉は尽きなかった。


「あら偶然。こんな事もあるものなのね」


「そりゃあもう、だって僕たちは魂の兄弟だからね」


「ふふ、もしかすると本当にそうかも知れないわね。そう言えばさ、昨日アタックNo.1の五話から八話をやってたから見たけど、結構進んだわね」


「まあ昔のアニメだからね。はしょるところは思いっきりはしょるから。まず第一話では茶色の枯葉が窓から教室に紛れ込んでいたりして多分秋。バレー部対不良グループはその一ヵ月後。それから早川登場して大会あって負けて本郷先生がしごいて練習試合して、七話では桂城さんが卒業して次の展開へと、ガンガン進んでいく」


「そして登場した四天王に鮎原はやられて八話では特訓だったけど、あの四天王は性格悪いわね」


「まあさすがに笑いすぎでしょ。しかも顔も泉は前髪で片目を隠したニヒルな髪型でこれはまだしも、他の工藤、香取、小沢はそれぞれ眼鏡、出っ歯、猿って感じでルックス偏差値がた落ちだよ。それとちょっと関係ないけど前の学校で某ビジュアル系バンドのファンで泉みたいに前髪で右目を隠した同級生がいたけど、あれは二次元限定だね。もっさりしすぎるんだ」


「変なクラスメイトもいたものね。写真とか持ってる? 後で見せてほしいんだけど」


「うん、いいよ。まあ思えば四天王の狼藉も早川ほどじゃないんだけどね。『四天王が自分たちの練習のためにコートを独占してる』みたいなシーンで早川が鋭く睨んでたけどついこの間までは自分がそれやってたよねってのも五話から八話までという区切りだとあらわになっちゃう」


「そう言えば五話の早川の口だけっぷりは凄まじかったわね。あの全身黒タイツに身を包んで華麗に舞ってた一人バレーは何だったの?」


「何だったんだろうね。練習では出来てたはずのスパイクはネット直撃、トスすら上手く上げられない体たらくで桂城さん中学最後の公式戦一回戦敗退の大戦犯となってしまうという無様さ。その後、練習試合でようやく勝利を手にする事が出来たけどちょっと遅かったね。おっ、抑えた」


「今のはショートが上手かったわね。抜けてもおかしくなかったわ。そう言えば四話で早川が自分に反発した鮎原、柏木、桂城の三人を自分の家に招いて圧力をかけたシーンあったけど、やっぱりあっちでも金で見せかけの友達を買うような手口を使っていたのかしらね」


「それとちょっと変だったのは早川に呼ばれた鮎原がそれまで制服だったのにいちいち私服に着替えたけど柏木と桂城さんは制服だったところ。ファッションと髪型にこだわりある原作では三人とも素敵な私服だったのに。それと一話で桂城さんの命を受けて鮎原を勧誘に来た眼鏡の原さんと地味に美人な長谷さんも原作では私服だったけどアニメではそうじゃなかったし。まあいちいちデザインするのは面倒だからだろうけど。それとアニメでそのシーン、その場にいた努君が先輩に向かってやけにぞんざいな口調だったけど、これも原作では原と長谷は二年生だけどアニメでは三年生、七話でも原作は桂城さんだけが卒業だったけどアニメでは三人が卒業になってるし。結構細かい部分では変えられてるんだよね」


「やけに細かいところまで気にするのね」


「それだけ衝撃的だったんだよ。原作の絵含めてね。早川のお父さんは意外といい人な気もするよ。買収失敗した途端『しまったなあ。かえって怒らせてしまった』とか反省してるのを見るとね。それと試合後にバレー部のコーチに就任した本郷先生のしごきでも『負けるものか』と凄まじい執念を見せていた早川の姿を見ても負けず嫌いで単純と言うか、親子ともどもあんまり裏表のない性格なんだろうなってのが分かるよ。松島中戦では普通に決められるようになったし、そう考えると短期間で物凄く成長したんだね」


「そう言えばその試合が終わった後の早川の豹変も見事だったわね。いきなりけじめをつけるために『ぶって』とか言い始めて」


「もうこれ以降はあんな陰湿でエゴイスティックな性格は影を潜めるからね。まあこの手の豹変はある意味名物みたいなものだから。多分鮎原のあの目だよ。あそこから発射されるカタルシスウェーブを受けるとまるで別人のように和解して鮎原に尽くすようになる、とかそんな特殊な力があっても不思議じゃない。今後も最初はあくどい性格だったのに鮎原との接触を経てすっかり変わる人が連発するけど元祖は桂城さんだからね。第一話では集団でリンチしていたものが鮎原最大の理解者であるかのような立場に落ち着くんだから。ついに卒業しちゃったけど」


「それにしても、卒業式もいきなりだったしそれまで出ずっぱりだったものが結構あっさりいなくなった印象あるけど、本当にこれからしばらく出番ないの?」


「ないよ。まあ富士見学園は上下関係が結構ゆるいらしい上に桂城さんが受験だってあるはずなのにいつまでもバレー部に居続けたから卒業も唐突な感じがするけど、これで当分はお別れ。そういえば今後、高校編の大沼もよく分からないタイミングで部活を引退するね。大きな大会が終わったら引退って流れがあれば普通だけど、それなら桂城さんは早川のせいで一回戦敗退したあの大会で引退が筋だけどその後の猛練習にも参加してるし。ついでに原と長谷もね。もっと言うと本郷先生が課した猛特訓の結果、バレー部には八人しか残らなかったって話の後で消えたはずの福田と大木、それに元々バレー部にいた肌の色が濃くてカチューシャをした部員が何食わぬ顔で練習に参加してる様はちょっと粗っぽかったね。大木とか『チームワークが大事よ』みたいな事言ってたけど肝心な練習試合の時にはいなかったという」


「まあ何か理由があったんでしょ。例えば、その日は忙しかったとか。あるいは、もしかするとアレかも知れないし。それか、怪我とか?」


「ああ、それは考えられるね。かなり厳しい練習だったからそりゃ誰も怪我なく終わるわけないか。特に大木なんて普段から運動してなさそうだし。大木と言えば三話、バレー部に勝った後でさりげなくパワー馬鹿だった事を告白しててやっぱりそういう事だったのかって思ったね。それと池崎も危なかったし。六話のラスト」


「そのシーンの本郷先生も切れまくってたわね。禍々しくて完全に悪役な笑いっぷりも凄いけど『池崎、お前は休んでろ』と言った舌の根も乾かないうちに『鍛え直してやる』とか言ってボールを投げつけて、さすがに池崎が気の毒に見えたわ」


「本郷先生の特訓は今となっては体に悪いとかで死語ならぬ死トレーニングと化しているうさぎ跳びとかやらせててこれぞスポ根という熱い展開だったね。それと神社の階段を走る時、桂城さんはトップグループにいなかったのに、先頭で張り合ってた早川が鮎原の足を引っ掛けたとか引っ掛けてないとかで騒動になったどさくさにまぎれて再開してからは最前線に張ってたし、それと松島中に第一セットを取られた瞬間、相変わらずレシーブの弱さを見せたけどその時の切なそうな表情も良かったね」


「ふっ。でも桂城が卒業した後の八話は正直あんまりって感じの話だったわね」


「まああれは展開上仕方ないけどね。特訓回で要は『鮎原と早川はレベルアップしました』ってだけだから。ただ次の九話がまたとんでもない展開連発で熱くなるから乞うご期待ってところかな。でももう桂城さん当分出ないからね。あっ、一点入った」


「うまいスクイズだったから焦ったわね。やっぱりミスすると流れも悪くなるものよね。それじゃあ、九話からはどうなるの?」


「それは見てのお楽しみだよ。まあ、鮎原の武闘派っぷり全開って感じだから。そう言えば四天王が『喧嘩でもするつもり?』みたいな挑発してたけどそのままだと多分返り討ちにあってたから喧嘩じゃなくてバレーで勝負出来て良かったねと言うか、九話では鮎原に翻弄されっぱなしだし」


「まさか富士見学園バレー部は元不良のたまり場なんて想像もつかなかったでしょうね」


「気性の激しい中沢、池崎に身長が高い柏木と福田、パワーに自信の大木。早川もかなりきつい性格してるし、そして彼女たちの上に立つ最強鮎原。いやあ、こんなの相手にしてたら命がいくつあっても足りないよ。まあとにかく四天王とは基本的に和解してから全国大会に行くけど、十二話だったかな、登場する吉村はなかなかの美人だよ。ポニーテールみたいに一箇所に集めながら、その髪を三つ編み二本にしてるヘアスタイルは結構独特だし、何より鮎原の過去を知る女という意味では極めて希少価値の高い人物ではあるんだ。基本空気で生かしきれてないけど」


「また美人のお話?」


「中学編はそこが強いんだから。そして最大のライバルとなる福岡中学の垣之内も変な方言はまあご愛嬌として、強気そうな顔とプレーにおける安定感、それに爽やかな人間性もあってポテンシャル以上のクオリティを誇る好人物だし、そしてソ連のシェレーニナは現在でも戦えるレベル。まあそれから世界大会に突入するけどその辺はまた後で語るとして、当分はこの辺に注目かな。ああ、野沢は悪役だけど顔自体は結構いいよ。スポーツできなさそうなところとかね、こういうのが好きな人も結構いると思うし」


 先制したチームが二点目もスクイズで決めた瞬間、敵接近を知らせるライトが輝いた。こんな事もあろうかと肌身離さず持っているのが二人の身だしなみとなっているが、「何もこんな時に」という心を押し隠して今日もまた危険に身を投げ出す以外の選択肢は持っていないのだ。


「ふははははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のシオカラトンボ男だ。草原で同じ制服を着込んだまま軍事演習をしていると見えるがこの俺が叩き潰してくれるわ!」


 ちょうど五回裏の攻撃が終わってグラウンド整備に入った頃合であった。顔にある羽根を使って上空から侵略者が降り立った。芝生の上を舞うトンボならば風情があるがサイズにも限度がある。しかも野球を軍事演習と見間違えたようだ。被害が大きくなる前にご退場願うしかない。二人は恐怖に駆られて逃げるふりをして人目につかない木々の隙間に入り込むと、素早く戦闘モードに変身した。


「お前たちが戦うべき相手は野球のお兄ちゃんたちじゃなくて僕たちだろう!」


「スポーツを軍事演習と間違えるフィルダースチョイスは良くないわ! もうちょっとこの星のルールを勉強したらどう?」


「むうっ、貴様らは例の二人か。面白い。望み通り蹴散らしてくれるわ! かかれい!!」


 シオカラトンボ男の指示でグラウンドの両端、一列ずつ並んだ雑兵がマウンド付近に立つ二人目掛けて一斉に向かってきた。その数ざっと十八人。しかし実力的には一回戦敗退レベルであり、あっさり蹴散らされた。


「残ったのはお前だけだなシオカラトンボ男!」


「円滑な試合進行のために、とりあえず場所を移しましょうよ。ここは戦場じゃないのよ!」


「ふん、軍人であるこの俺がいる場所であればそれはどこでも戦場よ。そして一気に決着をつけてやるわ!!」


 シオカラトンボ男は懐にしまっていたスイッチを押すと見る見る巨大化した。これがドーム球場なら突き破っていただろうが幸いローカル球場なのでそういう被害はなかった。負けじと二人も巨大化した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 ただでさえシオカラトンボロボットがある上で自分たちも巨大化すると球場に入りきらなくなるので、メガロボットは空中に浮いた。それまでは使っていなかったが空を飛ぶこともできるのだ。それを見たシオカラトンボロボットも自慢の羽根で飛び立ってドッグファイトが展開された。


「いける? 頑張ってねゆうちゃん!」


「ふふっ、何のために訓練したと思ってるの。私とメガロボットの性能を信じてほしいな! そら来た!」


 直線的な動きからの急旋回でシオカラトンボロボットの背中を捉えた。


「やった。そして当たれ、サンダーボール!!」


 すかさず渡海雄は黄色のボタンを押した。右手首から現れた光のボールはシオカラトンボロボットの背中に向けて、不規則な曲線を描きながら進んでいった。必死に回避するシオカラトンボロボットだったが、サンダーボールは追尾式なのでついにその機体に直撃、全身をショートさせた。


「ぐうっ、撤退する以外に道はないとは我ながら情けない。それにしても忌々しきは逆臣ネイよ。これほどの力があるとはな」


 ロボットが空の藻屑と化す前に脱出装置は作動した。試合もグラウンド整備が少し長くなった程度で影響なく再開された。結局先制した高校がその後も堅実に追加点を加えて勝利した。二人は終盤の攻防あたりは疲れもあって眠気が襲っていたが、九回ツーアウトあたりだとさすがに目覚めてその瞬間を目に焼き付けた。平凡なライトフライが目の前で処理され、試合は終わった。


「決まった。いやあ大変な試合だった」


「本当にね。でも良かったわ。ちゃんと試合が挙行できて」


「うん、そういう意味では僕らも試合に参加したようなものだね。地元の代表だから甲子園でも頑張ってほしいな」


 内野席にはそれぞれの高校を応援する生徒たちや家族、それにスカウトやカメラマンに記者と色々な人種がいるが外野席も上半身裸のおっさんやら新聞を広げて領地を確保する暇そうな大学生、それに渡海雄や悠宇みたいな子供もいる。誰にとっても余暇を過ごせるのは平和あってこそ。それを守るために二人はまた戦い続けるのだ。

今回のまとめ

・桂城さん卒業でストーリーは新たな展開を迎える

・陰謀を張り巡らせる陰湿な早川みどりはどこへ消えたのか

・本郷先生に限らずスポ根指導者は今となっては危ない人だったりする

・最近実際高校野球観戦したけど曇りの日だったから気持ちよかった

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