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rm13 カープの非常にまずい戦いっぷりについて

 ここまで無駄に雨が多かったがようやく陽気な春らしい日々が続くようになって渡海雄と悠宇も一安心とばかりに上着の枚数を減らしている。街路樹のツツジも鮮やかなピンク色で太陽の輝かしさを祝福しているようだ。


 土曜日の朝は心地よい。ましてや学校がないんだから。でもクラブ活動、じゃなくて普段のトレーニングのため二人は南郷宇宙研究所を訪れていた。


「おはよう、とみお君。それにしても今日も暖かくてやっと春になってきたみたいね」


「そうだね。雨はもう当分懲り懲りだよ」


「この陽気に乗じて目覚めてくれればいいんだけどね、カープも」


「ああ、カープ酷いよね。今のところ最下位で。特に打線がどうしようもない」


「打線は本当にねえ。平均得点が二点台だって事だけど、まるで別の競技をやっているかのような冷温停止っぷりよね。不調の中でも一人気を吐くって選手さえいなくて全体的に低調なのがかなりきついわ。あえて言うと安部ぐらい?」


「ああ、安部は現状実力以上の数字を残してる印象あるね。逆に酷いのは丸。今は無事二割台にまで上げてきたけど長らく一割台だったし、一体どうした事かなって数字」


「日本人の不調も目を覆いたくなるような惨状だけど、それ以上に問題なのがエルドレッドがいないって事よね。まあ別にエルドレッドじゃなくてもいいんだけど、とにかくホームランが絶望的なまでに少ないのが一番きついわ。チーム全体でも未だに一桁しか打ってない上にチーム最多本塁打が菊池って。確かに菊池は案外パンチ力のある選手ではあるけどそれはあくまでも意外性の領域で、本来打つべき選手がまるで打てていない事の証明よ。ちなみにチーム最多打点は田中広輔。まあ二遊間の選手が打ってくれるのはいいんだけど本来打線の主役になっていないといけないファーストとか外野の選手が軒並み貧相な成績なのが悪いわ。それこそ丸とか」


「タイムリーはヒットにヒットを重ねないと生まれないけどホームランはいきなり点が入るからね。去年の序盤はエルドレッドがよく打ってたよね」


「しかしエルドレッドは怪我で当分は試合出場不可能。ロサリオも春先の離脱からの調整が不十分と見えて非常にまずい成績のまま推移して、グスマンはそこそこヒットを打っていたものの彼もまた離脱。大砲は外国人に頼らざるを得ないチーム構成の中でこれではね。阪神を戦力外になった新井が四番とかそんな貧相な面子じゃ得点力不足も当然と言わざるを得ないわね。まあ新井は新井で元々期待された選手じゃないなりに頑張ってはいるけど、彼では現状が精一杯でしょうから」


「それでシアーホルツという新外国人獲得したけど、彼はどうなんだろう。名前を見るにドイツ系のルーツ持ってそうだけど」


「もうドイツだろうがオランダだろうがやってもらうしかないでしょ。メジャーリーグでは四番目の外野手として評価されてて結構試合にも出場していたみたいだけど。とにかく長打なくして得点は遠いものだから。長打が増えれば監督も無駄な機動力野球にこだわる必要だってなくなるわけだし」


「何か盗塁失敗も多いよね」


「機動力野球と称して必然性のない盗塁を敢行させてみすみすアウトを相手に献上するのは新人監督にありがちな過ちの一つだけど、何でもかんでも自分で動かそうとせずにもっと選手を信じるようになればまた変わってくるはずよ」


「投手陣はよくやってくれてるのにね」


「特に先発はね。黒田はさすがの実力だし新外国人左腕のジョンソンも非常に良好。そして福井が現状戦力としてやれてるのはありがたいわ。大瀬良と野村は、もうちょっとかなって。でもよくやっているからこそもうちょっと報われてもいいのではという結果が歯がゆいわよね。特に前田。まあ彼に関してはエースなので相手もエースをぶつけてくるパターンが多いというのは大変だと思うけど、未だに一勝しか出来ていないのはチーム全体の恥よ。まるで加藤良三コミッショナー時代に戻ったような寒々しい打線からは一刻も早く脱出しない事には順位も何も、始まらないわ」


「リリーフも何となく不安定だよね。去年からの流れをずっと引きずってるみたいな」


「まず抑えのヒースがその役割を果たしているとはとても言えない内容に終始しているのがきついわね。ランナー出しすぎで安定感皆無。防御率だけは良くても登板の度に平均でランナー二人出しているようでは、防御率もいずれ崩壊するのは目に見えているわ」


「調べたらヒースって防御率一点台なのか。それと一岡や中崎も微妙に失点シーンのイメージが強い感じ」


「現状先発投手の負け数よりもリリーフ投手の負け数のほうが多くて、特に一岡は今の時点ですでに三敗もしているんだから酷い話よ。ただリリーフに負けがつくのは結局のところ打線が凍りついているから先発投手の奮闘を生かす事が出来ずにそのしわ寄せがリリーフ陣に来ているって形だから、やはり一にも二にも打撃よ」


「確かに打たれるにしても延長まで続いた結果だったりするよね。そう言えば去年の今頃は一岡、中田、永川、ミコライオの四人が好調だったから同じように打撃が凍りついていたけど何とか粘って延長サヨナラ勝ちってパターンが多かったけど、今年は逆になってるよね」


「あれもミコライオがサボった辺りから崩れていったけど。それで交流戦は大負けしたのが去年の流れだったわね。永川がホームラン打たれたりして。ただ冷静に考えて今年の勝ちパターンとされたリリーフ陣、中崎一岡ヒースはいずれも一年フルで活躍した経験がない選手なんだしこんなもんと思えばこんなもんではあるのよね。去年の一岡みたいに防御率一点台未満ながら途中離脱するよりも、多少防御率が高くても一年間怪我することなく投げ続けてくれたほうが本当のところはありがたいものだし、ここは踏ん張りどころよ」


「楽天に移籍したミコライオは離脱してるから切った事自体は間違いじゃなかったと言えるけど、現状もっと整備してくれないとまずいよね」


「それと離脱と言えば松山。今年もチームが苦しい時、不可抗力とは言い難い形で離脱してくれたわね。この辺の印象の悪さが監督から信用されない一因となっているのではと思わせるには十分なだけに、今いる選手たちには気をつけてほしいわね」


「なかなか難しいものだよね。プロとしてやってる以上怪我人って絶対出てくるものだし。ところで二軍はどうなの?」


「成績はなかなかのものよね。投手陣はあの中村恭平のコントロールが良くなっているらしいとか、オープン戦では滅多打ちにあってた飯田がよく抑えているとは聞くけど、どれだけ使えるやらってところよね。そして打者は、もう少し入れ替えるなり手を打つには絶好の機会じゃないのって思うわ。土生や庄司が二軍でいくら打ったところであまり期待は持てそうにないって気持ちは非常によく分かるけど、とにかく持ってる駒で使えそうなものはとりあえず使ってみるに越したことはないでしょ。今の打線はどん底なんだから。これをきっかけに何かが起こる可能性はゼロであるとは決まっていないんだし」


「とにかく浮上には打撃の改善あるのみってところかな。それと話は変わるけどサンフレッチェ。こっちも何とも言えない成績だけど」


「まあここまでは良くもなく悪くもなくってところよね。相手に恵まれた部分はなきにしもあらずとは言え、あんまり上で目立つ事なく、でも確かに上位をうかがえるいい位置ではあるわね。選手では浅野に覚醒の徴候があるのはいい流れよ。FC東京戦で三人のディフェンダーを前に堂々とドリブル突破してゴールを奪ったあの一連のプレーは素晴らしかったわ。ナビスコカップの松本戦でも若手が躍動したと評判だし。それとドウグラスが案外やれてるのが意外と言うか面白いものよね。サンフレッチェのサッカーも何となく停滞と言うか、同じようなメンバーで同じような流れって感じがあったけどここらで風穴を開けてフレッシュな空気が流れこんでくれるといいわね。それこそ森保監督をいい意味で悩ませるような選手が出てくれれば」


「今年からニステージ制って言ってもしばらくは関係ないもんね」


「優勝はともかく降格は一ステージ制の頃と同じなんだしまずはシーズン三十四試合という意識で最後まで戦い抜くのが大事よね。結果的に十七試合という小さな区切りの中において他の十七チーム以上に立てるチャンスがありそうならその時には頑張るってぐらいで」


「今年はACL出場がないもんね」


「ACLと言えば浦和は残念な結果になったけど柏は予選突破確定で、鹿島とガンバもまだ可能性が残っているって事で、終わってみるとちゃんと勝負には持ち込めたわね。まあリーグ開幕してない中でのACL序盤で手こずるのは毎年の話なんだけど」


「そう考えるとACLで勝つって事を考えるとその辺のシーズン日程の調整が重要になるのかな?」


「ただ結局のところそこまでして獲るタイトルじゃないって認識もあるみたいだし、なるようになればいいんだわ。浦和に関しては数は補強したけどそんな大層な選手でもないし。そして石原は全治六ヶ月の重傷を負ってしまって、これもまた残念な結果よね」


「広島ではいい思い出をくれたけど浦和じゃこのままだと単なる不良債権。プロの厳しさだよね」


「思い出って形じゃなくて心に残るものだから。そう言えば市民球場跡地に残っていたライトスタンドもついに撤去されるらしいわ」


「そうなんだ。それでイベント広場になるんだっけ」


「結果的にはそうなってしまいそうね。もっともあんな何かに活用するわけでもないのに延々と晒し者にされていたスタンドがようやくその使命を完全に終える時が近づいているんだから感慨深い話よね。大体元々あんな中途半端に残してたのがおかしかったのよ。改修が不可能だったんだからさっさと壊して記念プレートでも残してくれれば十分だったと思うけど、なまじ形として残ってたから変な意味合いまでも残り続けて整備が進まなかったんじゃない?」


 このような事を話していると敵襲を告げる警報が研究所全体を包んだ。休日でも平日でも、敵はお構いなしに現れる。ならばやるしかないと渡海雄と悠宇は素早く変身して敵が出現したポイントへと走った。


「ふはは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のカイコガ男だ! 地球人類は素直にグラゲに養われるが良い」


 カイコガはその繭が絹になるからと人間に育てられる日々が長すぎてもはや野生に帰る事が出来なくなった生物である。成虫は白くて羽があって見た目はちょっといい感じだけど、その羽は見てくれだけの存在と化していると言う。


「出たなグラゲ軍! お前たちの好きにはさせないぞ!」


「そう簡単に私達が飼い慣らされてなるものですか。それよりもいい加減諦める事ね」


「出たなエメラルド・アイズ。貴様らだけはしっかり殺しておかねば計画は成就すまい。さあ行け雑兵ども!」


 ビルの谷間を埋めるように続々と出現した雑兵を渡海雄と悠宇は撃破していき、残る敵はカイコガ男だけとなった。


「雑兵は全て片付いたから残るはお前だけだなカイコガ男!」


「あなた達にはあなた達の理屈があるんでしょうけど私達だって同じよ。繭籠りの最中、勝手に繭を破られていい気はしないでしょう」


「ふん、お前たち如きに崇高なるグラゲの理念が理解出来るとは到底思えん。ゆえに分からせてやろうというのだ」


 そう言うとカイコガ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦いは避けられないのか。渡海雄と悠宇も合体して対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 カイコガロボットの見た目は格好良さと可愛さを兼ね備えたデザインだがいざ戦ってみると俊敏性に欠けていた。


「よし、一気に勝負をつけるぞ。ランサーニードル!!」


 渡海雄は冷静に黒いボタンを押した。胴体から射出されたニードルがカイコガロボットの白いボディを貫く。


「うおおおおお、これまでか!!」


 カイコガロボットが爆散する寸前に作動した脱出装置によってカイコガ男は宇宙へと帰っていった。ふと大地を見ればタンポポやオオイヌノフグリ、レンゲやシロツメクサの花が太陽の光を浴びて精一杯に輝いている。宇宙の広さに比べると地球はそんな花一輪に過ぎないのかもしれない。しかしかけがえのない一輪である。


 なおこれは今日の朝に行われたもので、今日の試合はと言うとカープは阪神から十一点奪って快勝した。ただ阪神のミスが多かったのが気にかかる試合で、復調と言うには早いだろう。サンフレッチェは清水に勝利。一点目となる千葉のゴールがチームのJ1通算千ゴールだったらしい。


 ただ清水もただでさえかなりまずいチーム状態な上に村田が負傷退場とか、本当に危険そうだ。今のところ甲府山形清水がまずいかなという雰囲気だが何の意外性もない。ただここから何かが起こりうるのがJリーグ。終わってみるまでは分からないものだ。

今回のまとめ

・とにかく打線が悪すぎる

・投手陣はなかなかいいだけに今日みたいに点を取れたらまだいける

・サンフレッチェはこのぐらいをキープしつつ若い選手が伸びるといい

・思い出は心の中に残るもので具体的な形として現存し続けなくてもいい

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