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sk03 2015年統一地方選挙について

 先週から断続的に降り続いていた花散らしの雨が今日も街を覆う。くすんだ空の色と同じ色の地面に濡れた花びらたちがアスファルトに貼り付けられている道を踏みしめて悠宇は今日も渡海雄に元気よくおはようと声をかけた。対する渡海雄もいつも通り春風のように朗らかな笑顔と返事で応える。


「天気は悪いけど気分は悪くないわね。選挙カーも土曜日を境に街から一掃されたし」


「ああ、確か昨日が投票日だったんだよね。で、今回は何の選挙だっけ」


「統一地方選挙よ。全国一斉で、四年に一度開かれる選挙でまず昨日は知事選挙とか政令指定都市の市長、議員を決める選挙が行われたわけよね。まず戦前は市長や知事は選挙で決まるものじゃなかったものが日本国憲法発布によって選挙で決めるようになって、じゃあいっそ全国バラバラで選挙するより同じ日に固めたほうがいいんじゃないって事で大体同じ日にやるようになったみたい」


「ふうん、戦後からなんだね」


「最初はその名の通り全国一斉だったけど全国の自治体が何事もなく任期満了とはいかないもので、例えば知事や市長が亡くなったり、何らかの理由で辞職したりしたら当然選挙の時期もずれるわけよね。最近の例で言うと東京都知事、前回二〇一一年までは統一されてたけどそこで選出された石原慎太郎が国政出馬のため辞任したから時期もずれた。まあそれで選ばれた猪瀬直樹がやらかしたから期間内に二回も選挙やったわけだけど。それと議会の場合は解散もあるし、市議会なんかだと合併によってずれたパターンも多いみたい。それで第一回は当然100%だったけど三回目の時点で早くも半分以下になって、今では三割以下の統一率となっているわ」


「かなりバラバラだね。また巻き直しして合わせればいいのに」


「そうなるとそれはそれで大変でしょう。例えば二年ずれてるとして、統一させるには任期を二年に切り詰めるか六年に引き延ばすかになるけど、どっちにしても不公平な感じになるから。それはともかく、選挙当日に選挙カーを走らせる事は出来ないから昨日の時点でかなり静かになったでしょう」


「その分土曜日はかなり気合入れてたよね。僕も見たよ。商店街近くの十字路の北側には民主党、南側には維新の党の応援団がそれぞれ同じ服を着て大量に集まって、ちょっと邪魔だったなあ」


「ただでさえ人が多い休日の商店街だからこそ最後のお願いもそういうところでやるものよね。混乱の元だけど」


「印象としては一番気合入れて宣伝してたのが共産党で、民主党や維新の党もそこそこ見かけて、自民党は案外少なかった」


「自民党に関しては与党としての実績がすなわち宣伝ってところなんでしょ。最近日経平均株価が二万円突破したってニュースがあったでしょ。そうやって順当に結果を出していけば当然の帰結として支持者も多くなるってものよ。なお、私達の住む街でやってたのは都道府県の議員選挙と市区町村の議員選挙の二つだったわ。前者は定数六人に対して立候補者九人、後者は定数十二人に対して立候補者十五人という選挙戦になったわ」


「だからそれぞれ三人ずつ、涙をのむ人が出たわけだね」


「そうね。まず前者で当選したのは自民共産が二人ずつに公明と維新が一人、落選は民主二人と地域政党。後者は自民公明民主共産が三人ずつ当選して、落選は自民地域政党無所属が一人ずつ。ちなみに得票数トップはそれぞれ公明党と共産党の候補だったみたい」


「共産党案外強いね」


「ここの地域は伝統的に共産党が強いから。ただ全国的に見ても共産党がそこそこ伸びてきてるのは確かよ。と言うより民主党がね。都道府県議選では選挙前より百人ぐらい減らしたらしいじゃない。やっぱりここの退潮傾向は未だに止まる気配なしと。自民党が支持されるのは今の安倍政権信任というシンプルな構図だけど、共産党は単純に支持されてると言うより自民党政権に反対したいけど民主党には任せられない、じゃあせめてブレーキにはなってくれそうな共産党にって流れでしょう。共産党に入れてる人も万が一与党になりそうってなったらためらうはず。全国的に見ても自民党勝利の流れで、基本的には今の政権は信任されたと受け取ってまず間違いないわ。ところでやっぱり小谷野落選したわね」


「ああ、広島市長選挙ね。まあこう言うのも何だと思うけど、やっぱりなあって感じだよね」


「そうよね。まず根本的に前職の松井市長がそんなにマイナスが多くてどうしようもないってレベルじゃなかったもの。もちろん失言とかあったけどそれを込みにしてもね。まだ機は熟していないのに小谷野は随分早まった事をしたのねと思ったけど、やっぱりこれはタイミングを間違えたとしか言い様がないわ。案の定投票締め切りの八時になった瞬間松井当確が出たし。結局コップの中の嵐でしかなかったって事」


「ああも差が開くとね。まずは知名度がそんなに高まらなかったのがまずかったのかな」


「知名度は大事よね。サンフレッチェ広島の社長とは言ってもねえ。例えば今のレッズの社長は? ガンバの社長の名前は? って聞かれても分からないのと同じように内輪では知られていても一般的にはそれほど知名度が高い役職とは決して言い難い部分があるわけで。まあ見た目はインパクト抜群だけど」


「あの髪型は反則みたいなものだからね。薄いルックスの松井とは大違い。だからと言ってそれで投票する人はいないけど」


「ただそもそも論で言うとね、小谷野は最初から勝つ気があったのかってところに行き着きそうだけど。まず出だし、サンフレッチェの社長を辞める事なく選挙を戦いたいと言ってたけど結局辞任してから臨む事になったでしょう。明確な見通しを持った上での立候補にはとても見えなかったわ」


「選挙も概ねいつ頃あるってのは決まっているから本来そのタイミングに合わせて準備しておくものなんだろうけど、やっぱり時間が足りなかったのかな」


「他にいい候補がいれば社長を辞める事もなかったでしょうけど。湯崎知事も小谷野出馬に対して『サンフレッチェ広島は、政治的立場を超えて、みんなが応援しようというチーム。それを少し崩すことにならないか』と困惑していたみたいだし、その違和感はずっとつきまとってて払う事は出来なかった」


「つまりはスタジアムを市民球場跡地に作りたいがための立候補なのは明らかだったもんね。当然本人は『スタジアムだけの問題じゃなくて広島市政全体の問題なんだ』と言うだろうけど」


「選挙活動もねえ。ボランティアとかインターネットを活用するって言ってたけどそのインターネットの活用っぷりは涙が出そうだったわ。公式TwitterでNAVERまとめをリツイートしたり、各メディアで松井優勢が伝えられた時に『出口調査は年齢層が偏っているので実は互角』とか陰謀論レベルのツイートしたり。まあ劣勢だからと言って素直にそう告白する必要もないんだけど、それにしても平衡感覚を失ったのかなと疑ってしまうような言動はいささかね」


「結局出口調査通りの展開になったもんね」


「そしてもっと最悪なのは小谷野の支持者で、インターネットにありがちなアレな人ほど声が大きくて広く伝わるという流れが本当にきつかったわ。まずい市長などという現職を揶揄するTwitterのアカウント作ったりね」


「対立候補を叩く、いわゆるネガティブキャンペーンって奴か」


「しかしそこからひしひしと伝わってくるのは品性の下劣さばかりで、人間ここまで恥知らずになれるものかと感心したわ。これに携わっている人物は誰なのか、使われているイラストからもあらかた察しがつくというものだけど、これを見て『うわあ松井市長って酷い人だなあ。絶対投票しちゃいけないな』なんて考える人間がいるとはとても思えず、むしろこういう事をする人に嫌悪感を催すのが普通でしょうという代物。もっともこれは小谷野本人とは直接関係ないと思うけど、これをリツイートするなどして拡散しているのは大抵同じ口で小谷野支持を訴えてるわけでね。本質的には関係ない部分だけど人間、感情ってあるものだからあえてそれを害すようなやり口はどうかと思うわ」


「嫌な絵だよね。最初から貶めようという気持ちしか見えてこない。絵って文章よりも感情がダイレクトに伝わってくるものだけど、その強さは反面凶器みたいなものでもあるからね」


「個人的に気持ち悪いなと思ったのは『断崖カープ主義』の漫画よね。支持者も思わず苦笑いしてしまうようなユーモア皆無で卑しさばかりが目につく雰囲気がよく似ているわ。と言うか同じ人だったりしてね。今年の初めにフランスでイスラム教徒への風刺画を描いてた人たちがテロで殺されたけど、あれも漫画表現の強さを知らしめる一つだったわね。実際あの風刺画は悪意しかなかったし、テロは絶対に許されないけど、あのシャルリー・エブドの人たちももうちょっと力の使い方を考えるべきだったとも思うのよね。とにかく、スタジアムに関してはもはや市民球場跡地に建設される可能性は決定的になくなったと言えるわ」


「ああ、そうだよね、そこそこ。スタジアムはどうなっちゃうんだろう」


「まずは宇品が候補になるでしょうね。ただ宇品は宇品で反対もあるしそもそも民意は概ね『そんなのどうでもいい』って事だから、すんなり行くとは思えないわね。でもそれも仕方のない話。現状ビッグアーチでもサッカーは出来てるんだから。駅前の再開発とか病院移転問題、交通網の整備や災害からの復興対策と言った喫緊の課題と比べると後回しになるのも致し方ないでしょう。実際出口調査によると投票の際スタジアム建設を重視したのは6%だったらしいし」


「でもあれぼやぼやしてるとJ3まで落とされるんでしょ?」


「ちょっと規定から外れてるって程度で落とせるんなら落としてみればいいわ。もっと言うとその規定からして怪しいものなんだし。大体Jリーグは地域密着が理念って事なんだから選挙結果という地域からのきっぱりとした審判を厳粛に受け止めて、真に愛されるクラブ作りに邁進してほしいわね。今回は本人からするとやれる事はやり尽くしたからこそ立ち上がったつもりでもはたから見ると唐突な逆ギレで、しかも惨敗という旧日本軍みたいな流れだったわ。勝てる戦しかしてはならないって事じゃなくて、負けた場合もちゃんと考えようって話」


「しかも今回なんか負けは見えてたのにね」


「まあ負けは負けとしてこれからどうするかよね。いい場所にスタジアムを作れ使わせろと主張するだけでは駄目だってのが今回の教訓だとしたら、じゃあクラブとしてはどうすればいいのかという答えをどう導くか、注視しましょう。統一地方選だって敗戦後に生まれて新たな秩序として確立したものだし、サンフレッチェに関してもこれからはうまい具合に新しい常識が芽生えるかもとか期待してるけど、危険かしらね」


 このような事を話していると敵襲を告げるライトが光り輝いたので二人は素早く人目につかない場所に移動して変身した。


「アマミノクロウサギ女だ! この星に住む邪悪な生物を絶滅させてやるわ」


 雨降る路地裏に奇妙な兎が現れた。アマミノクロウサギとはその名の通り奄美大島や徳之島だけに住む固有種で、体毛が黒い。原始的な特徴を残しているらしいけど絶滅危惧種に指定されている。島嶼部固有の動物はそういうのも多い。しかしこの女はアマミノクロウサギそのものではなく、その姿を模した侵略者なので容赦はいらない。


「出たなグラゲ軍! お前たちの好きにはさせないぞ!」


「相変わらず懲りないわね。私達が来たからにはあなた達に勝ち目はないわ!」


「ほざくなよ。雑兵ども、奴らの首をはねるのだ!」


 どうやって仕込んでいたのか、闇の彼方からぞろぞろと出現した雑兵どもを渡海雄と悠宇は次々と撃破していった。そして残るはアマミノクロウサギ女だけになった。


「後はお前だけになったな、アマミノクロウサギ女!」


「だから勝ち目はないって言ったのに。適当に撤退するのも賢さでしょう」


「ふん、戦わずに撤退など単なる逃亡ではないか。誇りにかけてもそれはできん。そして戦いはこれからだ」


 そう言うとアマミノクロウサギ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。戦わないようにと訴えたところで大抵失敗するけど悠宇は諦めない。でもこうなったら戦うしかないので二人は合体して巨大化した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 レーダーも曇る雨の戦い。アマミノクロウサギロボットの素早い動きから繰り出される攻撃をうまく回避しつつ間合いを詰めて、一瞬の隙を見て体当たりした。これで敵のバランスは崩れた。


「よし、今よとみお君!」


「ならばこれだ! エンジェルブーメラン!」


 渡海雄はすかさず桃色のボタンを押した。両肩から飛び出たパーツを素早く組み合わせて投げつけると、ブーメランはアマミノクロウサギロボットの胴体をバラバラに切り刻んで手元に戻ってきた。


「ぐうっ、ここまでか。まあいい、次に期待しよう」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってアマミノクロウサギ女は宇宙へと帰っていった。寄せては返す波のように続く襲撃。しかし諦めない心こそが今は一番大事になってくるだろう。

今回のまとめ

・まだ前半戦だけどとりあえずは自民党勝利の流れ

・民主党はそもそも誰からも何も期待されてない現状を改善しないと

・小谷野落選は残念だが選挙の進め方がまずかったので当然とも言える

・負けという結果は覆らないからこれを受けてどう動くかが大事

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