表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/406

hg20 FOREVER YOURSについて

 春爛漫。もはやこの言葉以外に今日という日を言い表す表現もなかろう。それほどに強く朗らかな日差しと芳しい花の香りがただよう街はついに桜も満開となった。


「それにしてもセンバツで優勝した敦賀気比の松本、凄かったわね」


「うん、そうだね。あんなにホームランをバンバン打てるなんてね。東海大四もチャンスは作れたんだけどねえ。お互いに粘り強い戦いの中から接戦を演じつつ、最後は一振りで決めるという見事な結末だったね」


「見事と言えば今は桜も満開よね。心も華やぐみたい」


「でも桜って、散るよね。そしてそれ込みの美しさでもある。というわけで、ついにこの時が来てしまったという『FOREVER YOURS』。一九九四年の七月に発売されたアルバムなんだけどね、これを最後に七枚の花びらから二枚がはらはらとこぼれ落ちていく、そういうアルバムとなってしまった」


「ああ。確か大沢と佐藤寛之が脱退したんだっけ?」


「そう。七人って事を強調していたところからの脱退ってとてつもなく大きな事件だからね。そういう現実のあれこれを考えざるを得ないような曲もちょくちょく入ってたりしてるから、特にリアルタイムのファンでは様々な思い入れがありすぎてまともには聴けないって人もいるらしいよ。もっとも僕らは後追いファンなので、単純に流れてくる楽曲に身を委ねればいいんだけどね。そこは後追いの楽なところだよね」


「ジャケットは、比較的シックな色合いの衣装でなかなか悪くないじゃない。赤坂が前髪を上げてるのはちょっと微妙だけど。それと佐藤寛之と山本の髪が膨らみすぎて今まで以上にキノコっぽくなってるのもちょっと。そして楽曲のほうは、まず一曲目は『APPLE SEED』。作詞平井森太郎、作曲和泉一弥、編曲米光亮」


「やけに長いイントロが気合入ってるよね。そのイントロ含めて全体的に暗いというか終末的な雰囲気を醸し出してて、歌詞も大沢と佐藤寛之の脱退を暗示しているとか言われたりね、そういう意味では『荒野のメガロポリス』みたいな曲とも言えるのかな。実際歌詞を見ると破壊と再生がテーマなのは明白だけど、よりインパクトの強い破壊という部分に目が行くのは仕方ない事だとは思うよ。楽曲単体で言うと結構格好良いんだけどタイミングの問題もあって不幸な受け止められ方をした曲ってところかな。和泉一弥は相変わらず外れが少ないよ」


「次は『BABY PLEASE』。作詞作曲高橋一路、編曲根岸貴幸、コーラス編曲土橋雅樹。ここで新しい名前が出てきたわね」


「根岸は田中公平と組んだアニメ系楽曲で知られているアレンジャー。『勇者王誕生!』とかワンピースの『ウィーアー!』とかかなり派手目な楽曲に携わってるけど光GENJIではかなり抑えめと言うか、そもそも別にアニメ専任ってわけじゃなくて永井真理子なんかともよく組んでたしね、基本的には洗練されたアレンジを魅せてくれている。この『BABY PLEASE』もそうで、イントロはちょっとびっくりするけどすぐまったりとした打ち込みサウンドになって、歌詞も大人の色恋沙汰って感じ。SMAPでもやれそうなお洒落感が漂っていて、こういう曲もやっていたともっと広まれば少しイメージも変わっていたはず。それと歌詞の横に写ってる大沢の表情がとてもいい。きりりと鋭く、しかしどこか空虚な視線が寒気さえ感じさせて、様々な決意ゆえのものと思うよ」


「そうね。次は『恋の温度』。作詞高柳恋、作曲清岡千穂、編曲根岸貴幸、コーラス編曲土橋雅樹」


「GENJIの五人で歌う曲としてはこれが最後となるね。サンバフレーバーを大量導入した濃厚なラテン風味が陽気な雰囲気を盛り上げる曲だけど、コーラスも担当している土橋の声質が今までにない独特な大人びた雰囲気を醸し出しているのが今までの夏楽曲との違いとなっている。この土橋は元々20世紀Jr.というバンドのボーカルで、高音でちょっと癖のある声質がコーラスにおいても個性的なアクセントとなっているというのかな。こういう曲調でも『CO CO RO』みたいな底抜けに明るい楽曲とはならず、どこか翳りを感じされるのもこれが最後だからってだけが理由じゃないはず。まあ歌詞も結構アーバンだし編曲もちょっと洒落てるから土橋だけじゃなくて最初からこの辺が着地点だったんだろうけどね」


「次は『Dancing Love』。作詞内海光司、作曲山口美央子、編曲金山徹」


「これは最後の光曲。作詞は内海で、かなりもろな大人の色恋沙汰を描いているのが特徴。曲もアレンジも、そして特に大沢の歌唱がねっとりとしすぎでなんだこれはってなるしなんならちょっと笑える。でもこれが最後だと思うと多少は感慨深い、かも」


「次は『僕たちが愛していく』。作詞三浦徳子、作曲岡本朗、編曲水島康貴、コーラス編曲土橋雅樹」


「何か三拍子の、妙に暗い曲。歌詞もどこか神秘的と言うか心の中を探求していると言うかちょっと不思議な雰囲気で、最終的にはタイトルの通り君と僕ふたりともが愛し合ってるってところに収斂するのかな。それにしても関係ないけどこの土橋雅樹、ググったら浦和レッズで活躍してた土橋正樹のほうがよく引っかかるなあ。ちなみにどっちも苗字の読みは『つちはし』であって『どばし』じゃないよ」


「どっちかと言うと『どばし』のほうが多いイメージだけどね。『ぜひ! 一度! お越しください!』みたいな」


「えっ、何?」


「いえ、こっちの話。さて、次は『HEAT TRAP』。作詞津田りえこ、作曲編曲小西貴雄」


「これが何気に六分を超えるダンスナンバー。イントロは淡々とした打ち込みによる演奏だけど少しするとソウルフルな盛り上がりを見せてくれる。スージー・キムのコーラスやちゃんと本物を使ってるブラスが情熱的で、歌詞は暑すぎる夏の一夜という感じでこれまたもろに大人の色恋沙汰。それとダンスナンバーなので当然間奏が長い」


「そして次は『KOOLじゃ待てない』。作詞作曲編曲MOTOMY。おお、一人だけでやってるのね」


「今まで『天使が天へ帰る日』の佐藤準や『君の涙に虹を見た』の大内義昭など、一人が多くに携わった楽曲はあった。でも前者は作詞、後者はコーラス編曲に他人の手が加わっていたけどこれは純然たる単独だからね、珍しい事だよ。楽曲としてはラップを全面に導入してて、また声の聴こえ方にも特徴があって、例えば二番のBメロ部分は左の遠くから聞こえるように加工してたりと、色々凝ってるのが特徴。面白いセンスだと思う。『HEAT TRAP』とこれの二曲は『SPEEDY AGE』の楽曲を一段階洗練させつつ情熱も高めたような出来で、こういう路線ももっと伸びしろがあったと示しているよ。まあ今更だけど」


「さて、残りは三曲ね。まずは『さよならの情熱』。作詞三浦徳子、作曲土橋雅樹、編曲水島康貴、コーラス編曲土橋雅樹」


「イントロのギターがなかなか印象的だし、歌詞もさすが三浦という気障さが素晴らしい。それに土橋のアプリコットの質感を持つコーラスが絡んでかなり格好良い曲だよ。歌詞は全体的に見ると横恋慕というか略奪愛、みたいな雰囲気だけど舞台装置がちょっと貴族っぽいのが特徴。悪く言うとかなり自分本位な歌詞とは言えるけど、まあそれはいいか。とにかくスリリングなスピード感と大人っぽさが融合して今までにはあまりなかった世界観が特徴」


「次は『Yesterdayと呼ばない』。作詞原真弓、作曲秋元薫、編曲水島康貴」


「とても美しいバラード。これまたイントロからして名曲っぽいオーラがビンビンに出ているんだけど、赤坂から佐藤寛之につなぐというバラードでは定番となっている歌いまわしからサビもなかなかに感動的なメロディーだし、歌詞も卒業式で流れても違和感がないというか、二番のサビの歌詞は特に好き。作曲の秋元はシティポップ系の再評価著しいシンガーだけどこの楽曲ではコーラスも担当してて、天使が舞い降りたような歌唱を披露しているアウトロは特に印象的。バラードとしてはかなり決定的な、美しさと力強さを兼ね備えるひとつの到達点と言える曲だよ」


「そしてラストは『風のyellが聴こえるか』。作詞松井五郎、作曲編曲後藤次利、コーラス編曲曳田修、鈴木弘明」


「『333』や『SPEEDY AGE』に連なる、直前でバラードを入れるけど最後は勢いのある楽曲で締める流れ。ましてやこれはシングルでもいいんじゃないのかって力強さを持っている名曲だよ。実際松井も後藤もシングルで使われる作家だから元々はシングル候補だったのかもね。歌詞はとにかくポジティブな応援歌で、全体的にブラスっぽい音が鳴り響く明るくパワフルな雰囲気と合わさってかなりエネルギッシュ。『HEAT TRAP』と違ってトランペットやトロンボーンの奏者がクレジットされてないから打ち込みなんだろうけど。それにしてもここまで明確に応援歌やってる曲って案外そう多くなかったからね。『リラの咲くころバルセロナへ』もちょっと違うし。ただ最後は走り抜けてフィニッシュという姿は非常に光GENJIらしくて、好ましい幕引きとなったよね。歌詞の横にある佐藤敦啓の目を半開きにした写真もいいけど、衣装が肩口でほつれて輪っかが出来てるのがちょっと気になる」


「ああ、本当だ。確かにこれは気になるわね」


「意図的に表面を粗く仕上げた雰囲気はあるけど、これはさすがにミスでしょ。まあ楽曲には何の影響もないんだけど」


「それにしてもこれで全十曲。終わってしまったのね」


「そうだね。一つの時代がね。楽曲自体は全体的にかなり洗練されているし、歌詞も大人の色恋沙汰なんて表現を何度もしたけど、かなりあからさまなね、描写なんかも多いのは一つ特徴かなと思う。とにかく、確かな成長を感じされる楽曲が連発して、それを普通にこなせてるのは非常に頼もしさを感じる。そういう幅の広がりや楽曲そのもののクオリティなんかを勘案すると個人的には全アルバムで三番目に好き。タイミングもあってファンからするときつかっただろうけど、そこを気にせず楽曲本位で見られるのは後追いの数少ない利点かも知れない」


「ここで土橋だの秋元だの新しい人材を大量投入してきたのも結構印象的だったわね。それがこのアルバムならではのムードを作っているみたい」


「それと金山もSAY・Sの楽曲で先に名前は出てたけど光GENJIの楽曲としてここが初登場。それぞれに特徴的なサウンドを持ちながら一貫しているのは大人びた雰囲気を持ち込んだという事。最初からそういうコンセプトがあったのは間違いない。その上で脱退という現状に合わせるように終盤にはいかにもラストでございますって曲を三連発。でもそれぞれがタイプが違う上にかなりの名曲で一気にアルバムの魅力を引き上げた感じ。全体的なセンスが今までより新しいし、後追いで聴くなら純粋にかなりいいアルバムだと思ってくれる人も多いんじゃないかな。クオリティは間違いなく高い」


 このような事を話していると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので二人は素早く戦士に変身して、敵が出現したポイントへと走った。


「ぐわはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のモンキチョウ男だ! この星の汚れた空気を切り裂いてくれるわ!」


 春の花園をひらひらと舞い踊るモンキチョウは心を穏やかにさせるがここに現れたモンキチョウ男は穏やかという単語からはかけ離れた男臭い男だった。でも羽があるのがかえってきもいと評判である。草原に出現したそんな敵に向かって、すぐに追討の牙は現れた。


「そこまでだグラゲ軍! お前たちの好きにはさせないぞ」


「せっかくいい天気なのにあなたのような怪しい人がいると、困るわ」


「ふん、現れたな逆臣ネイの作りし戦闘兵器ども。今日こそお前たちの最期よ。行け、雑兵ども!」


 春を迎えると色々な虫が湧いてくるが、雑兵たちもそれと同様にわらわらと出現した。渡海雄と悠宇はそれを全滅させた。


「よし、雑兵はあらかた片付いた。後はお前だけだモンキチョウ男!」


「花の蜜を吸うだけならいいけど枯らしてはいけないように、地球を枯らすような真似は私達が許さないわ!」


「ふん、なぜお前ら如きに許されなければならぬのだ。すぐに死ぬ奴らなんぞに!」


 そう言うとモンキチョウ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。見た目通りに好戦的な男。やはり戦いは免れないのか。覚悟を決めた二人もまた合体して敵に対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 春風に寄り添うようにくるくると舞い踊るモンキチョウロボットとメガロボット。傍目からは優雅でも当人たちは必死だ。素早い空中戦闘は悠宇の集中力を大きくすり減らした。しかし負けられない。曲線的なターンを重ねるモンキチョウロボットの足にしがみつくと、勢いのまま地面に叩きつけた。


「よし、今よとみお君!」


「ゆうちゃんナイス! そしてサンダーボールで決着だ!!」


 敵の動きが止まった一瞬を見逃さず、渡海雄は黄色のボタンを押した。右手首から射出された電気の玉が敵の全体を覆った時、全ての勝負はついた。


「ぐおおおおお!! ここまでか。おのれ、覚えておれよ!!」


 モンキチョウロボットはマシン内部がショートして後は大破するのを待つだけになった。憎々しげな負け惜しみを吐き捨てた後、モンキチョウ男は脱出装置に乗せられて宇宙へと去って行った。


 話は変わるがサッカー日本代表は三月にハリルホジッチ監督が就任して初の試合が行われたが連勝となった。特にニ試合目のウズベキスタン戦は圧勝。しかも青山がやけにいいミドルシュートを決めた。やったぜ。ワールドカップでは正当な評価を受ける機会が不足していたがあれぐらいやれると最初から知っていたし、何とかもっと出番増えるといい。

今回のまとめ

・敦賀気比センバツ優勝おめでとうございます

・楽曲は何気に粒揃いだし終盤のラッシュも強烈

・これであんな事さえなければもっと進化していただろうに

・道を歩くたびにやっぱり春って一番いい季節だと再確認する

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ