表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/410

hg19 HEART'N HEARTSとシングル曲について

 そして春は訪れた。三月の声を聞くだけでこうも心が軽くなるものなんだとあからさまに薄くなった代わりに淡い水色の華やいだ色合いの上着を身に付けた渡海雄は強く実感していた。


 そして今日は最後に「り」が付いて定期的に訪れる女の子の日だ。しかもぐっしょりと濡れている。そんな雨のひな祭りもそれなりに風情が、いや、やっぱないわ。でも気にしない。悠宇の家で和菓子を食べさせてもらう渡海雄であった。


「宴もたけなわ。今日は『HEART'N HEARTS』の二枚目を行くよ」


「前回は一枚目のソロ曲集から脱線してソロシングルのほうに向かってたわね」


「ああ、それはね。このアルバムの構造上仕方なかったんだ。と言うのも、例えば後に小室哲哉が自身のユニットであるglobeで『CRUISE RECORD 1995-2000』というアルバムを出した時にベスト+ニューアルバムというコンセプトを打ち出したそうだけど『HEART'N HEARTS』も概ねそういう構造となっているんだ。と言う訳で二枚目にはまずシングル曲が羅列されている」


「ベストアルバムっていつ以来だっけ? 結構久々だと思うけど」


「前回のベストアルバムが『BEST FRIENDS』で、これは一九九一年までのシングルを集めたもの。と言う訳で今回の一曲目は一九九二年の二月に発売された『TAKE OFF』から」


「一九九二年か。それにしても一見カラフルなスーツと思いきやよく見ると腕や肩は黒くて、胸あたりでまっすぐにメンバーのカラーに切り替わってるという奇抜な服ではあるわね。それと大沢の髪がいつもより短い印象。作詞澤地隆、作曲後藤次利、編曲後藤次利、新川博、コーラス編曲曵田修」


「まず最初に言っておくけどね、僕が光GENJI全曲の中で一番好きなのがこの『TAKE OFF』なんだ。何でかって言われると難しいんだけどね。まずはイントロのギターのフレーズが好き。全体的に勢いのある曲調に爽やかさ中心ながらも『GROWING UP』ほどそれ一辺倒にならず、ストリングスの使い方も上昇気流のようで結構熱さもあるし。上昇気流感と言えばBメロのそれもかなりのもので、分解していくと一番好きなパートはここかも知れない。でもやっぱり難しいものだね。今までの曲で特に好きだったものは『荒野のメガロポリス』『水彩画』『ファンタジェンの英雄』『WINNING RUN』『水の惑星』辺りでまだ紹介してないものでもいくらかあるけど、それらと比べて『TAKE OFF』はどこがどういいのか合理的な答えは僕の中に持ちあわせてはいないんだ。でも順位をつけた時一位になるのは『TAKE OFF』一択。それぐらいの存在」


「よく分からないけどそんなに好きなんだ。確かに先述の曲と比べても派手さというか、インパクトがありまくるわけでもないし。確かにいい曲だとは思うけど」


「もはや恋かな? はははっ、いや本当に。もはや何が悪いとか何がいいじゃないんだよ、僕にとってはね。光GENJIの曲からして大抵そういう傾向だけどその極北がこの『TAKE OFF』。今更嫌いになることは不可能だろうね」


「そしてカップリングは『君にCheer Up!』。作詞三浦徳子、作曲佐藤健、編曲中村哲」


「ブラスの音が軽やかで、爽やかさや疾走感を全面に押し出した曲。そして歌詞はスキー場が舞台だけど何かバブルっぽいと言うか、光GENJIのスキー曲はもう一つ『冬の贈り物』ってあったけどあれはほのぼの路線だったでしょ。でもこれは晴れたスキーリゾートでバシッとウェアも決まってて、風のようなスピードで勢いよく滑り降りているイメージ。インパクトはやや薄いけどこれもなかなかの佳曲だよ」


「次のシングルは四月に発売の『リラの咲くころバルセロナへ』。何だか説明口調なタイトルね。作詞康珍化、作曲後藤次利、編曲後藤次利、新川博、コーラス編曲曵田修」


「このシングルのジャケットはメンバー全員のルックスコンディションが良好でいいよ。特に好みなのは佐藤敦啓の蟹みたいな前髪。いや、シュロの葉みたいなって言ったほうがいいのかな。真ん中から小さな房が広がってるみたいな。それと衣装も色使いはカラフルだけど白基調なので節度が保たれてて良好。また、タイトルからもお察しの通りだけどジャケットにも『JOCがんばれ! ニッポン! イメージソング』と書かれているんだ」


「一九九二年と言えばバルセロナオリンピックの年ね」


「これはまさしくそのための曲だよ。地中海の日差しを日本まで持ってきたかのような鮮やかなメロディー印象的な曲で、歌詞もスペインの要素を感じさせる単語をふんだんに盛り込んでてその印象を深めている。そう言えばナンシー関に札幌オリンピックの曲と比較して歌詞がどうとか言われてたな。詳しくは忘れたけど。ちなみにここまで右肩下がりだった売上もそういうタイアップの効果で跳ね上がったんだ。インパクトのある長いタイトルからの盤石感あふれる楽曲にタイアップもあるし、力を入れた曲だったんじゃないかな」


「カップリングは同じスタッフによる『I'LL BE BACK』」


「『リラの咲くころバルセロナへ』が戦いへ赴く高揚感を歌ったものだとすれば、これは対照的に戦いの終わりをイメージさせるスケールの大きなバラードだよ。Cメロにおける諸星の歌いっぷりが印象的で、ある種定型的とは言えるけど純粋に力強さのあるいい曲だよ」


「この次のシングルが『Meet Me』だけどこれは前に紹介したから割愛。そして一九九二年最後のシングルは『愛してもいいですか』。作詞三浦徳子、作曲後藤次利、編曲後藤次利、新川博。また後藤?」


「後藤が最初に関わったシングルが『TAKE OFF』なんだけど一気に主力作家になったみたいだね。曲はというと、まずジャケットの衣装が貴族みたいでしょ? 紫色の照明のせいで死んだような顔色になってるけど。ともかくこの衣装からも連想されるように、この曲は彼らにとって初となるバラードシングルなんだ。なかなかスケールある曲だし歌詞もさすが三浦って気障ったらしさが光る。二番Bメロの歌詞とか結構好きだな。まさに今がその季節だって感じで」


「この頃になるとバラードもなかなかそつがないわね。カップリングは『夢で逢えるから』。作詞作曲山本英美、編曲中村哲」


「これは山本英美の提供曲では最高傑作じゃないかな。華奢なメロディーと歌詞が儚げで良い。ブラスの音も派手じゃないのが逆にムードを高めている。山本の歌詞は決して強い男を描くことはなくて地味と言えば地味だけど、その切なさがうまい具合に作用してて、決してシングルになるような曲じゃないけどトータルで見ると『愛してもいいですか』よりも好み」


「次は『君とすばやくSLOWLY』でその次が『勇気100%』か。バラードシングルを切ったと思えばダンサブルに変貌を遂げて今度はアニメ主題歌とか振り幅大きいわね」


「色々試行錯誤の時期だったって事でしょ。それと『勇気100%』の忍者コスプレジャケットは好きだよ。結構格好良い上に楽しそうだし」


「そして一九九三年八月に出たのが『BOYS in August』。作詞松井五郎、作曲後藤次利、編曲米光亮。またまた後藤か」


「途中に二つ挟んでるし偶然だよ。それと九二年のシングルとは編曲者が違うでしょ。それで楽曲の印象もちょっと変わってるんだ。一言で言うと時代相応って言うのかな。キラキラと爽やかで、何と言うか海沿いの都会っぽい。Bメロのスピード感は今までにあまり見られなかったタイプの格好良さ。楽曲自体は『君とすばやく~』みたいに脱線はしてない王道路線ではあるけど今までのいかにもなアイドル感から一歩進んだような、いい意味での現実感があってなかなかいいよ。それと哀愁だね。歌詞もすっかり元少年となっているし。だからと言ってパワー不足には陥らず、そういう意味では絶妙のバランスの上に立っている曲だよ」


「カップリングは『恋する気持ち』。作詞山本英美、作曲高橋一路、編曲米光亮」


「何と言うかスカスカな、じゃなくって、爽やかでスケールが大きいメロディーとでも言い直そうかな。歌詞も結婚がテーマでやっぱり大人。でもインパクトは薄い。ただ全体に漂うアーバンな感じは今までになかったものだし、そういう意味では新機軸を試したものでもあるのかな。それとジャケットは白い水玉模様のスーツだけど、ぱっと見は何でもないのにずっと見てると目がおかしくなりそうになる。夕焼け色の背景が醸し出すムードはいいけどね」


「この次が十月に出た『この秋・・ひとりじゃない』。作詞松井五郎、作曲馬飼野康二、編曲椎名和夫」


「タイトル通り秋、しかもそろそろ冬が近いという晩秋が舞台でメランコリックな雰囲気を強調した曲。アコースティックギターに安田裕美、吉川忠英、笛吹利明、谷康一と四人も参加していて、間奏のピチカートとか印象的だけどサビのメロディーなんかはもう一歩。とにかく哀愁過多で聴いててちょっと心が疲れる」


「カップリングは『きっと愛しあえる』。作詞松井五郎、作曲和泉一弥、編曲米光亮」


「大団円な曲だよね。するりと耳に入ってくるメロディーにポジティブな歌詞と、幸せな曲だよ。そつがないし、その分特に言うこともないかな。『HEART'N HEARTS』に収録されているシングルはここまでだけど、その後に三曲ほど新曲が入っているんだ」


「あっ、本当。まず一曲目が『TOP OF THE BLUE』。作詞津田りえこ、作曲辻畑鉄也、編曲水島康貴」


「爽やかな曲調だけど、歌詞は一度別れたけど再びこの街に戻ってきたよというシチュエーションでどこか寂しさもある。透き通ってる分だけ逆に悲しいって言うのかな、そんな感じ。メロディーは素直ですっと入ってくるし、そこまでインパクトのある曲じゃないけど悪いところがないのでこの三曲では一番好み」


「次は『そして旅がはじまる』。作詞松井五郎、作曲辻畑鉄也、編曲水島康貴」


「アコースティックでラフな雰囲気が特徴の曲。二番における諸星の豪快を通り越したような歌いっぷりは印象に残る。ただそれ以上に、歌詞の横に写ってる大沢の写真が凄い事になっててねえ。当時のストリート系ファッションってイメージかもしれないけど、何かバスク・オムみたいなサングラスと四股を踏んでるみたいなポーズが徹底的に意味不明で、どうしてもそっちに意識が向いてしまう」


「確かにどう見ても変態の格好ね。そして最後は『風の歌声に耳をすまして』。作詞谷亜ヒロコ、作曲佐藤健、編曲水島康貴」


「バラードで、定番って感じの曲だよ。結構ファンの人気も高いみたいだし。個人的にはイントロのギターが入る部分はいい感じだけど全体的には意外と普通って印象。さて、まとめると新曲は水島の編曲が多いけど、特にダンサブルではない分インパクトはそれほど大きくない曲が続いてる印象。ベストアルバムっぽい中に新曲三つという構成は『ふりかえって…Tomorrow』に似ているけど楽曲のクオリティはあっちのほうが上と言わざるを得ず、ただやっぱり共通した空気ってのがあるよね。それとやっぱりシングル曲はパワーが違う」


 このような事を話していると敵襲を告げる警報が響いたので雛人形が見守る中で二人は素早く変身した。ところでひな祭りといえば二〇〇二年のJリーグ開幕戦でサンフレッチェ広島が札幌に圧勝して中国新聞のコラムの人がミニモニの歌を口ずさむなど荒ぶっていたが、終わってみると札幌広島両方降格という悲しい事件があった。


 これも今思えば何の事はない。札幌の柱谷はチーム作りに失敗したが広島のガジエフもまた失敗した監督だったのだ。その後の木村も無力だった。同じようなことが十年後関西方面で巻き起こったがそれはまた別の話である。


「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のマヒワ男だ。はるばるこのような辺境まで飛来したからにはやることはしっかりやらんとな」


 黄色と黒の色合いが鮮やかなマヒワ男が人通りの少ない道路上に出現した。間もなくそれを追って二人の戦士が姿を現した。


「お前たちの思い通りにはさせないぞグラゲ軍!」


「相変わらずのべつ幕なしに出てくるわね。いい加減諦めたらいいのに」


「ふん。生憎だがこれは俺の仕事なんでね、しっかり完遂させてもらうよ。さあ行け雑兵ども」


 どこからともなく出現した雑兵たちを二人は次々と破壊していき、間もなくそこに残るのは三人だけとなった。


「よし、雑兵は片付いた。後はお前だけだなマヒワ男!」


「大体今日みたいな日によくもまあ侵略を企ててくれるわね。確実に排除してやるわ」


「戦いはまだ終わってないぞ。これが次の勝負だ!」


 そう言うとマヒワ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やっぱりこうなるかと言うことで渡海雄と悠宇も体と心を一つにしてそれに対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 惑星間決戦春の陣。マヒワロボットが発射するミサイルを叩き落としながら接近したメガロボットは素早く必殺技を撃ち込んだ。


「よし、スプリングミサイルで対抗するぞ!」


 渡海雄は橙色のボタンを押した。足に仕込まれていたミサイルが突如現れてマヒワロボットの胴体に強い衝撃を与えた。


「ぐぬぬ、残念だが任務は果たせないな。脱出するしかない」


 爆散する寸前に作動した脱出装置に乗せられてマヒワ男は宇宙へと去っていった。春なのに天気の悪さも困りものだしちょっと寒いのが何よりきついが、まあそんなものだろう。春を春らしく感じるのはこれからでも遅くはない。

今回のまとめ

・ひな祭りについては特にいい思い出も悪い思い出もない

・光GENJI全曲の中で「TAKE OFF」が理屈抜きに一番好き

・試行錯誤しつつ確かな成長を見せるもファンしかついてきていない感がきつい

・「HEART'N HEARTS」収録の新曲はインパクトが薄い

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ