ng04 2015新春記念 黒田復帰について
あけましておめでとうございます。旧年中はひときわ多くの方に本小説を閲覧していただき誠にありがとうございました。本年もご贔屓のほどよろしくお願いします。
と一万二千人の読者に語ってみたところで本文開始。地球は新年を迎えたが紺色のコートを着込んだ渡海雄と白くてフワフワしたコートで身を固めた悠宇は相変わらず仲良く友情を育んでいた。具体的に言うと、今日は高原の方にある空き地で凧揚げをして遊んだ。
「それにしても驚いたのは黒田復帰だよね」
「ええ、本当に。クリスマスも無事に終えて、後は新年を迎えるだけだと思ってた十二月二十七日土曜日の朝。暖かな布団にくるまれていた私に向かってお母さんは『早く起きなさい』の代わりにこう言ったのよ。『ゆうー、黒田がカープに復帰したわよ』って。一瞬で目が覚めたわ」
「僕もお父さんがインターネットやってるのを横から見てて、ヤフーのトップページに黒田復帰ってあったから思わず声を上げたもん」
「一番びっくりしたのはカープファンじゃないかしら。正直本当に戻ってくるとは思わなかったから。今年もオファー出したって報道はあったけど『はいはい、どうせいつものプロレスでしょ』としか思ってなかったから。まあそりゃいつか帰ってくるかもとは思ってたけどそれが今年になろうとはね」
「アメリカで去年十一勝かつ防御率三点台、イニング数も二百ぐらい稼いでる。アメリカでもまだまだバリバリでやれる数字だったのに」
「例えば今年も松坂や中島、それに田中賢介など日本に出戻りするメジャーリーガーはいるわ。でも彼らはアメリカでは出番がなかったとか力が衰えて数字を残せなくなったとか、向こうの第一線としてやっていくには厳しくなったから日本に戻るというケースで水が高いところから低いところに流れるような普通の事態と言えるわ。松坂は色々と恵まれた結果十八勝をマークしたシーズンもあったけどここ数年は怪我もあって四年でようやく十勝という体たらく。ちなみに黒田は同じ四年で五十一勝。そして中島に至っては……」
「メジャーリーガーですらないもんねえ。アメリカではもう見切られて今以上のマネーは望めない。でも戻ると日本での実績があるから何億ともらえる。選手として合理的なのはよりもらえるほうに動く事だけど黒田はそうじゃない選択をした。異常と言えばまったくその通り。心情としては太田裕美の『しあわせ未満』みたいな感じ」
「そりゃあ確かに年齢的には高いわ。でもまだパドレスから約二十億円に相当するオファーがあったとか報道されてたから、まだアメリカでやるものだとばかり。それでね、もっと数字が落ちて最後の思い出作りにカープ復帰とかでも全然良かったんだけど。まあ、ああだこうだと言っても割れ鍋に綴じ蓋って言葉もあるんだし、いいじゃない黒田はそういう人なんだって事で」
「でもこうなると俄然、優勝という二文字も見えてくるんじゃない?」
「そうね。前田と黒田、二人いるのはまあ多分今年だけでしょうし、そうなると今年こそってなるのは自然な話よ」
「ただ他の先発陣はどうなるんだろうね。去年の終盤なんか前田とそれ以外って感じさえあったけど。バリントンも退団したし」
「バリントン退団という判断は難しいところだったわね。確かに去年のバリントンはおかしかったわ。一応九勝だけどピッチングの印象は不安定の一言で、年齢を考えても契約更新せずという判断は間違いじゃないはず。そしてオリックスに入団決定したけど、これもまた納得の展開よ」
「日本では四年で四十勝と、確実にローテーションを回して二桁を計算出来る投手だったからね。ただ幸いなのはパリーグに移籍したって事かな。復活しても敵として対戦する機会は少ないから」
「楽天へ移籍のミコライオもそうよね。ミコライオはいい投手なんだけど妙に不安定と言うか、いきなり登録抹消されたりとかどうも使い勝手が悪い部分もあったし、当然戦力としてはマイナスなんだけど絶対に埋められない穴では決してないはずよ。じゃあ誰が抑えやるのかと問われると明確ではないんだけど」
「途中入団から先発として活躍してくれたヒースという話もあるよね。CSではリリーフとして良かったし」
「ヒースか新外国人左腕のザガースキーを抑えに据えるのが基本となるでしょうね。そして先発は、新人王を獲得した大瀬良の成長に期待したいところ」
「大瀬良はシーズン途中に苦労してたけど終盤はもう少し持ち直した印象だし、何とかうまく伸びてほしいよね。二桁勝利達成した事で防御率四点台ながらも新人王という形は逆に幸いするかもね。『内容では中日の又吉のほうが良かった』みたいに言われる事もあるけど、それを『来年はもっといい数字を残してやる』という反発力に出来るだろうから」
「大瀬良に関してはパワーもあるしもっと良くなるはず。それと九里もね。二勝って言うけどちょっと巡り合わせが悪かったのも事実だし。ただローテーションに定着するには全体的なレベルアップが必要だから、まさにオフシーズンである今をどうやって過ごしてるかが大事よ。そして野村」
「野村は正直期待外れだったよね。やっぱり豪速球を投げ込むタイプじゃないから、微妙な部分に狂いが生じるとああなるのかな」
「全体的に鋭さがなかった印象だし、今年はそこを磨き直してくれれば。福井や篠田あたりが一年間フルでやれたら面白いんだけど。そして新外国人のジョンソン。大柄なサウスポーでシンカーが武器らしいわ。ザガースキーとジョンソン、弱かった左投手を補強という目論見は概ね正しいわ。後は彼らがどれだけ戦力になるか」
「リリーフはどうだろう。先述の通りミコライオ退団でヒースかザガースキーが加わるとしても、やっぱり去年終盤の駒不足状態を思うとねえ」
「中田、中崎、戸田。よくもまあこんな面子で回してきたものよね。野村監督は本当に苦労したはず。途中で離脱した一岡は当然期待したいところだけど、まずは数字はともかくとして一年間投げきるという実績がほしいわね。それに永川。今村も戻ってきたら大きい。後は……」
「え、江草とか?」
「ふっ、江草は上野や大島の枠でしょう。そして投手のボールを受けるキャッチャーはようやく打撃開眼した會澤が一番手、石原が二番手という形でスタートすると思うわ。石原は去年こそ酷い打率に終わったけど基本あんなに打撃が駄目って選手でもないし、うまくやってくれるはずよ。そして會澤は背番号も良くなったし、三割十本塁打の打撃も楽しみだけどむしろ捕手としての成長を期待したいわね。去年の経験を糧に出来ているか」
「内野手は、去年はファーストエルドレッド、セカンド菊池、サード梵、ショート田中ってあたりが基本だったと思うけどどうなるかな」
「言うまでもなく安泰なのは菊池よ。ああ、菊池。二割五分でもお釣りが来る選手なのにいきなり三割突破して打率リーグ二位なんて信じられない成長を見せた男。もはやチームの中心となったし、心配はしないわ。期待と不安、両方あるのが三遊間よ」
「でも田中はいい戦力になったよね。最初の頃は打率低かったけどどんどん伸ばしていって、ついには梵をサードに追いやってショートのポジション確保するまでに」
「怪我を抱えてる梵のショートはそろそろ限界ってタイミングで台頭してきたのはチームとしてもありがたい流れだったわ。身体能力はそこまでじゃないしより洗練される方向に進んでくれれば。サードはとりあえず梵がファーストチョイスになるのかしらね」
「TBSの枡田絵理奈と結婚した堂林もサードだよね」
「去年は外野とかやってたけど、基本サードだとは思うわ。まだまだ未熟な選手よ。でも梵や木村、小窪あたりの他候補は二遊間の選手がサードに回されたって感じだけど堂林はそうじゃないし、期待はしているわ」
「後回しにしてたファーストはどうなんだろう。エルドレッドの他にもグスマンって外国人獲得したよね」
「打者としてのタイプは長距離砲というより中距離砲に近いとも聞くけど守備位置はエルドレッドと被るようね。結構高い年俸で雇ってるから最初は使われるでしょうし、まあ少なくともキャンプを経て実際どうなのかを確かめてからじゃないと何とも言えないわ。エルドレッドだってホームラン王だから、やっぱり割を食うのはロサリオ」
「ロサリオレベルの選手が出られないってのも贅沢な話だよね。まあ守備はまずいんだけど。ああ、そう言えば新井貴浩という選手も獲得してたよね」
「カープからFA移籍して今年復帰。黒田と同じ形なのにこうも印象が違うのは人徳ってものでしょうね。まあ黒田と違って移籍によって直接的な敵となった事や、数字が明確に衰えてるといった違いもあるけど。ただ思い入れを除外して単純に戦力として見た場合、実績は確かだしマイナスになる事はないとは思うわ。すっかり消耗した選手だけどどれだけ意地を見せられるか」
「由宇で栗原や東出と引退興行なんて事にならなきゃいいけど。さて、外野に話を戻すと、まあ丸は確定で外国人も入るとして、残り一枠になるのか」
「難しい話よね。打撃で言うと松山はなかなかのものを見せてくれたけど守備は相当まずい。天谷もシーズンフルで行ける印象はない。ルーキーの野間も獲得したけど、彼もどれだけやれるのかキャンプやオープン戦で見極めたいところよね」
「他には守備走塁は抜群な赤松はレギュラーだと甚だ不安だからある種除外として、それは中東も似たようなものかな。他には二軍で三割打った土生とかもいるけど、むしろ一番期待されてるのは鈴木誠也かな」
「ああ、鈴木誠也はまさしくホープよね。去年は素晴らしい打撃センスを披露してくれたけど、問題は守備よね。内野手登録ではあるけど、内野守備は二軍でも結構苦労してるみたい。一方で外野だと強肩を披露したりしてる。これは難しい選択よね。さっさと外野に転向させれば戦力にはなるけど、ガンガン打つショートがいればそれは大きなアドバンテージとなるから」
「ジャイアンツの坂本みたいな感じだね。それにキャッチャーに阿部ってのもかなりのアドバンテージだったけど今年からはファースト転向でどうなるか。若い小林にばかり負担をかけるのは危ないと思ってたけどしっかりベテラン相川を獲得してたり、さすがだよね」
「これは結構的確な金の使い方だったと思うわ。カープみたいにこれだと思った若手を使って伸びてくれるのに賭けるしかないって方法はリスクも大きいから。菊池なんかは穴を埋めるどころか隆起してるけどサードなんか全然埋まらなかったし。それで言うと相川なんてのは年齢的にも小林にとって程良い壁になるでしょうね。まあベテランの力がありすぎるとそっちに頼ってしまい、若手の育成がさっぱりって事になりかねないけどそこまでの選手でもないし、後は小林が順調に伸びるかどうかよね」
「阪神は鳥谷がどうなるかだよね。単純に残れば大きな戦力だし抜ければ大ダメージ」
「攻守の要と言える選手だからね。FAなどの補強は失敗で基本的には現状維持という中で鳥谷退団だとマイナスも大きくなるし、和田監督はふんばりどころ」
「それとBクラスに沈んだ中日、DeNA、ヤクルトはどうだろう」
「DeNAはそろそろ四位になれる可能性はありそう。でもヤクルトの補強も結構面白いわ。攻撃は凄かったけど守れずに試合を落としまくってた中でエース候補成瀬とショートの大引。まあ今年の数字を見ると結構微妙なのが気になるけどプラスになるのは間違いないわ。パリーグは放っておいても順位がごちゃつくでしょうし、セリーグのほうもここ二年下位に沈んだチームの巻き返しがあればまたややこしくなってくるはず。まあカープファンとしては落ち着いててって気持ちはあれど、リーグ全体を考えるとね」
「そうだね。ところで話は変わるけどサンフレッチェについてはどうかな」
「石原の移籍はまあ想定内よ。でも高萩が海外移籍を希望して代わりにドウグラスにオファーってのはちょっとびっくりしたわ。補強に関しては廣永というGKはどう見ても原が抜けたから補充した三番手クラスだし、これは語るものでもないわ。ファン・ソッコ移籍で甲府の佐々木にオファーなんて話もあって、実現したら面白そう。シャドーに関しては野津田や浅野、皆川といった若手中心で乗り切るのか、この後に面白い補強が待っているのか。どっちかと言うと後者を期待したいわ」
「そうだね。今年の順位的な目標はどうなるかな? やはり覇権奪還?」
「基本的には賞金圏内って考えはずっと同じだけど、今年からニステージ制に移行するからそれがどのような影響を及ぼすか。まあ十数試合やっていけそうなら行くって程度で、やっぱり大事なのは年間を通しての勝ち点だから」
「そうだね。まずは降格しない。上はそれから考えればいいか」
「明日の事なんて分からないから一から着実に。それがうまくいけばうまくいくし、駄目だった場合どれだけ踏ん張れるかよ。そう言えばプレーオフ敗退して選手もポロポロ抜けるという生々しい現実を突き付けられた磐田あたり、監督はどうやって折り合いをつけるか期待したいところよね。それを考えると森保監督は信じられるわ」
スティーブン・トートの素っ頓狂な歌声が頭の中で響いてくるほどに時は二〇一五年。太陽の輝きはいつもと同じはずなのに新年だからという気持ちで見つめるといつもより強く、そして清々しい日差しが降り注いでいるように思える。何もなく平穏に過ごす事は簡単ではないが、それでもささやかな幸せぐらいは守り抜きたいと初めての太陽に誓う二人であった。
などとやってたら雪が降ってきた。午前中はいい天気だったのに空が雲に覆われたかと思ったらハラハラとこぼれゆく雪。しかもそれは一時的なものではなくとめどなく降り続けている。二人は遊びを切り上げて家に戻った。
翌日になると、すっかり積もっていた。悠宇は無謀にも自転車で出撃したがシャーベット状に凍った道路では命の保証はないということで辺りをうろつくだけで終わった。そんなところに歩いてやって来た着膨れした渡海雄は雪だるまが歩いてきたみたいだった。
「いやあ、大変な雪だったね」
「本当にねえ。ほら、車の上とか見たらこんなにも分厚く積もってるもの」
そこで二人は辺りから雪をかき集めて本物の雪だるまを作った。雪はいっぱい集まったのですぐにそこそこ大きなものが完成した。南を向いて笑う二人と一人。今年も愛と友情が集まり、グラゲという荒天に抗う力となってくれるだろう。
今回のまとめ
・2015年と言えばジェッターマルス
・黒田復帰は未だに驚きのほうが大きく実感に乏しい
・ただせっかく加わってくれるのなら優勝を狙ってほしい
・サンフレッチェはまだ選手動くだろうし特には言えない




