sw05 クリスマスについて
本当に早いもので今年ももう残り一週間ほどになってしまった。そんな今日は何の日かというと、言うまでもなく終業式の日であってそれ以上でもそれ以下でもない。午前で放課となった渡海雄は両手に荷物をいっぱいに抱える悠宇を見つけた。
「あれれー、おかしーなー。無機物の塊が動いてるぞー」
「くっそ、名探偵みたいな言い回しが癪ね。乙女の苦悩、分かってるでしょうになんと無慈悲な」
「だから計画的に持って帰れって先生も言ってたじゃない。それも全てはこうならないためなのにねえ、聞いてなかったの?」
「はいはい私は計画性のない女ですよ。分かったから少し持ってね。拒否権はないわ」
「見つけなきゃ良かったかな。いや、嘘。蟻とキリギリスの蟻みたいにけち臭い事は言わないさ。手伝ってはあげるよ」
「おお、やはり持つべきものは友って、こらこら何勝手に見てんのよ!」
「ふうん、あったねえ。こんな意味不明な黄緑色の幾何学模様を提出して野菜だと言いはった絵」
「それはロマネスコって、本当に存在する野菜よ。ちょうどブロッコリーとかカリフラワーの仲間よ。見た目は凄いけど食べてみたら意外といけるもんよ。バーニャカウダってね、野菜を茹でてそれが冷めないうちに温いソースに付けてガンガン食べていくイタリアの料理があるらしいけど、家ではそうやって食べたわ」
「バーニャカウダとかアヒージョとか、いつの間にか聞くようになった料理ってあるよね。でも実際食べてみるとそんなゲテモノでもなくて、今後広まっていくのかなあ。それと人参とか玉ねぎとかきゅうりとかのありがちな野菜とはまた別の、スーパーなんかに行くとよく分からない片仮名の野菜なんかも色々置いてあるけど実際食べた事があるものは少ないよね」
「ズッキーニあたりになると、もう定着したと言っていいかしらね。イタリアンな名前はインパクトあるけど味は意外とあっさり系だからいいわ。食べた感覚と価格の釣り合いもいい感じだし。それとアボカドももうどこにでもあるわね。買って熟成させて中が茶色だった時の悲しさたるや。でもはまれば野菜離れした濃厚なパワーがあって、日本に時々やってくる3A出身の大砲みたいなものよね。エルドレッドが三年目にしてホームラン王になった、みたいな存在」
「アボカドは実際は野菜じゃなくて果物らしいよ。まあどっちでもいいんだけどね」
「相変わらずそういう知識は豊富よね。そしてゴーヤ。あれも姿形からして結構怪しげな上に苦すぎだけど普通に売られてるのがにわかには信じ難いのよね。あれこそ煮ても焼いても食えないという慣用句そのまんまの代物だと思うんだけど」
「なんか大人になると苦さとか認識する感覚が鈍くなるらしいんだ。だから野菜も子供にとっては苦くてまずい、となっても大人になると『むしろ程よい苦さがいい』とか味わえるようになるらしいよ。それと辛子とかわさびも。わさびと言えば回転寿司で僕はいくらが好きって事になってるけど、実際はそりゃあ嫌いじゃないけどそれ以上にわさびの入ったネタが無理だからなんだよね。それとラーメンのネギも苦手」
「そんなの『わさび抜きで』『ネギ抜きで』って言えばいいじゃない」
「そうだけど、いちいち言うのも何だかなあって感じ。だから最初からネギが入ってないラーメン屋が最高!」
「そう言えば日本の野菜ってジャンルもあるわね。ネギで言うと九条ネギとかの京野菜みたいな伝統枠から地元の農協が作ったなんとか菜とかその手の新種まで」
「一回とんぶりっての食べたなあ。畑のキャビアらしいけど本物のキャビア食べた事ないからそれとの比較は出来ないね。それを前提で言うと、なかなか悪くないよ。ぷちぷちした食感が全てかと思うけど、味付けもそんなにしつこくなくて食感の邪魔にならないのはいい」
「それと謎フルーツってカテゴリーもあるわね」
「ドラゴンフルーツとかあの辺?」
「ああ、あの毒々しいまでに赤いいかにも熱帯な見た目から繰り出されるやけに淡白な味。果肉には種がびっしりと含まれてる見た目がそれってわけじゃないけど青臭いキウイみたいな感じで、まあ好き好んで食べるような代物じゃないわね」
「熱帯フルーツは変なのいっぱいあるよね。見た目だけで味の印象がないスターフルーツとか、名前は凄そうなパッションフルーツとか。そう言えば夏頃にはあのドリアンが店頭に並んでた事もあったなあ。さすがに買ってもらえなかったけど、存在感抜群だったよ」
「アセロラ、グァバ、アサイーあたりのジュースでしか見ない奴らもこのジャンルに含めるべきなのかしら。それはともかく今日はクリスマス・イヴね」
「ああ言っちゃった。キリスト教において神のように崇め奉られているナザレのイエスさんの誕生会の前日とかいうとてつもなくどうでもいい日のはずなのになぜか親しい人同士で馬鹿騒ぎする日になってるあの! ましてや日本人、大半がキリスト教徒でもないくせになぜか便乗しちゃってねえ。そりゃあ教会が運営してるような幼稚園で『キリスト生誕』みたいな劇をやる園児とか、その日に教会に行ってミサに参加する真面目なキリスト教徒はいいよ。でも大半がそんな事どうでもよくて、何となくイベントだからやっちゃおうって発想でしかないでしょ?」
「まったく、原理主義者でもないのに随分真面目な事言ってからに。別にいいじゃない楽しければ。個人的には色々な歌が聴けるのが好きよ。伝統的なものでは『もろびとこぞりて』が一番好き」
「あれはいい歌だよね。思えば『イヴの夜から始めよう』のイントロの旋律はちょっと影響受けてるような気もするよね。光GENJI界における屈指のレアトラック『White Dreaming with 光GENJI』は先週末にヤフオクで確認したところ三千円から六千円という価格が付けられていたけど、やっぱり音楽ならば聴かれてこそなのにそれが難しいって現状は悲しいよね。まあ個人的には光GENJIのクリスマス曲で一番好みなのは『クリスマス組曲』だけどね。演奏が豪華なのがぐぐっと来る」
「ふふっ、良かったわ。何だかんだでとみお君もクリスマス楽しんでるんじゃない」
「まあそうなんだけどね。でもサンタクロースの正体が両親だって気付いたのは幼稚園の頃だからね。朝起きたら枕元に図鑑置かれてて、でも何だか『親が買ってくれたんだなあ』って醒めてたのは子供として痛恨事だった気がするよ。出来る事なら夢みたいな事をいつまでも信じていたいじゃないって、今となっては思うよ。そこで思い出したのが『アルプス物語わたしのアンネット』のクリスマス回。主人公の弟が父親に『クリスマスプレゼントは?』ってねだるけど父親は買ってなかった。そこでおばあちゃんが『スイスは高いところにあるからサンタさんが来れない』とか適当な事ぬかしたけど弟は納得しない。そんな中で主人公たるアンネットは『うちは貧乏だからサンタさんも来ないのよ』なんて直接的な言い回しで諦めさせようとする豪快さ。まあ翌日偶然オコジョが紛れ込んで『これがクリスマスプレゼントだ』って予定調和的な展開になるんだけどね」
「何よそれは。でもアニメなんかでもクリスマス回って色々あるわね。『巨人の星』とか」
「ああ。あれは、悲しい話だったね。『自分は野球しか知らない野球ロボットではなく人間なんだ』という理屈で年俸ゴネるのも凄いけどクリスマスパーティーは極めつけで、結局皆星については野球ロボットとしか見ていないと判明するのが悲しいよね。スポ根主人公にありがちな極端な方向へフルスロットルで突き進む習性ゆえの悲劇。それと『フランダースの犬』の最終回でネロが凍死したのもイヴの出来事だったっけ。キリスト教的にはハッピーエンドらしいよ、あれ。ナレーションでもそういう旨の事言ってたし」
「そう考えるとクリスマス回って結構悲惨なイベントも多いのね。それと『フランダースの犬』はねえ、どうも最後まで見た事ないのよねえ。例の最終回が有名だから作中でネロが楽しそうにしてても『ああ、でもラストでは死ぬんでしょ』ってなってしまうから最後まで見られない」
「確かに。映画なんかでもラストシーンが有名だったりするとそういう見方をしてしまうよね。『猿の惑星』とか。謎の惑星に不時着というスタート地点から『でもこれ地球なんでしょ?』って知ってるのはねえ、なんか正しい見方じゃないような気がするんだ。それと『シックスセンス』」
「先日高倉健が亡くなったのでテレビで放映されてた『幸福の黄色いハンカチ』もその類じゃない? 妻がいたけどつまらない事で服役する事になった高倉が、出所してすぐ妻に向かって『自分を待ってるなら家の前に黄色いハンカチをぶら下げてて』みたいな手紙を送ってたという設定だったっけ。それでいて本編では『待ってるはずがない』『他の男と一緒になってるだろう』などと結構うじうじしてたけど、例の黄色いハンカチが空いっぱいにはためいてる場面はどこかで見た事あるから『とっくに結末は見えてるのに何をうだうだしてんの』みたいな印象になってしまったわ」
「と言うかその辺の作品はDVDのジャケットなんかでももろにネタバレしてるからねえ。『今更知らない人なんていないだろうから隠す必要もない』と言わんばかりの態度はどうかと思うけど実際知らない人なんていないだろうからねえ。それにハンカチがはためいた場面がラストじゃなくて武田鉄矢と桃井かおりが幸せなキスをして終了なのにもびっくりした」
「あれはまさにびっくりだったわ。言っちゃ悪いけど、何だか汚かった」
「後関係ないけど『ゴースト/ニューヨークの幻』を見る前に唯一知ってたコインを動かしてゴーストの存在を確信するシーンってラストでも何でもなかったんだね。しかもその後女同士でいちゃいちゃ抱き合ったりアクションシーンあったりで結構長いなあって思った。そう言えば二昔ぐらい前の洋画で唐突に挟まれがちな見ちゃいけない系のシーンは勘弁してほしいよね。ゴーストで言うとあのろくろからの一連の流れとかね、血が凍るよ」
「ふっ、聖夜にふさわしい話題で締めたものね。でもゴーストをそういう見方しか出来ないようじゃ一生彼女出来ないわよ、きっと。さあて、無事家にも到着したし、これを部屋に片付けてから……」
二人が扉を開けた時にグラゲ襲来を告げる警報の光が輝いた。急いで悠宇の部屋へと走り荷物を投げつけるとその場で変身し、敵の出現したポイントへと駆けて行った。
「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のトナカイ男だ! この惑星をグラゲ皇帝にプレゼントするのだ!」
悪質なサンタクロースが山の上に出現して、街に災厄をプレゼントしようとしている。そう言えばマジンガーZでサンタクロース風だがトナカイの代わりにロケットがソリを引いているというアイデアが素敵な機械獣サタングロースP10っていたが、こいつが登場する回はあしゅら男爵とブロッケン伯爵それぞれの部下が仲違いしたと思わせて研究所に侵入するとか敵の作戦がなかなか凝っていて面白い。しかも最終的にサタングロースはマジンガーZにやられるけど超合金Zを盗んでドクターヘルにプレゼントという任務は果たしてて、結構熱い。
それはともかく渡海雄と悠宇も白いものが混じっている地面に新たな足跡を刻みつけながらトナカイ男の前に現れた。
「来たなグラゲ軍。お前たちの望むプレゼントは渡せないぞ」
「今日みたいな特別な日にも出てくるんだからまったくもっておめでたい話よね。叩き潰してあげるわ」
「出たなエメラルド・アイズ。お前たちに贈るプレゼントとは死だ! 行け、雑兵ども!」
トナカイ男の合図とともに周辺からわらわら出てきた雑兵たちに二人はパンチキックの贈り物を捧げた。数分後、その場に残った敵はトナカイ男のみとなった。
「よし、これで雑兵は全て片付いた。後はお前もさっさとご退場願おうか」
「この地球に暮らす皆の夢を守るために、あなたには退いてほしいんだけど」
「ふん、俺がグラゲ人のためにこの星をいただくのだ。お前たちには死んでもらう」
そう言うとトナカイ男は懐からスイッチを取り出して、それを押して巨大化した。渡海雄と悠宇もいかがわしい意味ではなく合体してそれに対抗した。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
トナカイロボットは持ち前の立派な角で突撃してくる。それをどうにか受け止めながら体勢を整えると、体落としでトナカイロボットを倒した。
「よし、バランスは崩したわ。後はとみお君が!」
「おう! レインボービームで派手に行くぞ!」
トナカイロボットの動きが止まった一瞬のチャンスを逃さず、渡海雄は白いスイッチを押した。七色の光線が敵の胴体を各々貫き、完全なる破壊を実現した。
「くうっ、夢叶わずか。残念だが一旦戻るしかない」
トナカイ男はソリ、ではなくて機体が爆散する寸前に作動した脱出装置に乗せられて宇宙へと去っていった。そしてこの本文が投稿されるのは十二月二十四日の午後十時となる。その時間、誰かいい相手がいる人はいい。でもこれをリアルタイムで見てるって事は多分いないんだろうと思う。孤独を舐め合うのも寒いけど、一人で強がるのはもっと寒い。どうせ暇なのに投稿予約してさも「今日は忙しいんだ」みたいに自分を偽るような大人にはならないでください。
しかもこんなまったくとりとめのない話題で今年の投稿は終了。師走のせわしない空気の中では時が過ぎるのも早い。ジャンプで十週打ち切り食らったサッカー漫画は実際どれだけまずかったのか調べたかったが単行本が売ってなくてネタに出来なかったとか色々あったけど、それももう過去。ではまた来年。
今回のまとめ
・今回は内容がとっ散らかりすぎたかも
・あっちの数え方だと日没で日付が変わるからイヴは前日でもないらしい
・普通に生活してても漏れ聞こえるような有名ネタバレはもう仕方ない
・聖夜を性夜に塗り替える相手がいればいいのに




