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sw01 サンリオキャラクター大賞について

 夏休み。南郷宇宙研究所のコンピュータルームにて渡海雄はインターネットを楽しんでいた。冷房のよく効いた室内を無料で独占的利用できる上にマシンスペックも抜群。さすが金のかかった設備だけある。お気に入りのサイトを巡っている最中、悠宇もコンピュータルームを訪れた。


「おはよっ! ん、何見てんの?」


「ああ、おはようゆうちゃん。ふふ、これだよ」


http://sanriocharacterranking.com/


「サ、サンリオ!? とみお君ってそういう趣味だったんだ」


「別にいいじゃない、誰が何を愛そうがさ。で、つい最近までサンリオが自分たちが作ったキャラクターの人気投票みたいなものをやってたんだ。その名もサンリオキャラクター大賞。ここでの投票が締め切られたのが七月七日、そして最終的な結果が発表されたのがちょうど昨日だったから今ここで確認していたの」


「ああ、そう。それって例のAKB総選挙みたいなやつでしょ?」


「まあ人気投票と言えば今はAKBだよね。あれは凄いよね。あんな投票者に金銭的負担がかかる選挙なんてそうないよ。その点サンリオはインターネット投票があって、これは一銭たりとも払わずして投票できるんだ。まあショップなんかでお金を払ってからの投票もあるんだけどね、まだまだ若い僕だからそんな浪費できないし、今回はもっぱらインターネット専門だったね」


「ふうん、で、とみお君もやっぱり投票とかしちゃったわけ」


「そりゃあもちろん!」


「誰に?」


「ふふっ、それをいきなり言っても誰が誰とか分かんないでしょ。そもそもさ、ゆうちゃんってどれくらいこういうキャラクターに詳しいの? まあさすがにキティちゃんぐらいは知ってるよね」


「馬鹿にしないでよ。さすがに私だってそれぐらいは知ってるわ」


「そりゃそうか。もう何にでも絡んでくる感じだからね。あのフットワークの軽さはキャラクターの鑑だよ。ただでさえ抜群の知名度がある上にこれだからね、今回も得票数トップ! おめでとう。じゃあ、この二位のうさぎさんの名前は分かる?」


「えっと、マイメロちゃんでしょ。これぐらいも分かるわ。確かアニメとかにもなってた気がするし」


「そうそうマイメロディ。それにリトルツインスターズという正式名称がいまいち知られてないともっぱらの評判のこの双子はどう? これが四位だけど」


「これも知ってるわ。同級生のこうちゃんがこれ好きでグッズとかよく集めてるから」


「さすがだね。男の子が弟のキキで女の子がお姉さんのララだからキキララって言ったほうが通りがいいけど微妙にあべこべだね。順番があべこべと言えば三位はポムポムプリン、五位はシナモロール」


「ああ、これも何となくどこかで見たことがあるような気がするわ。やっぱり上位は知名度抜群なのね、と思ったけどこの馬と犬はちょっと知らないわね。ジュエルペットも知ってるけど」


「ああ、この二つはね、ちょっと特殊なキャラクターと言うのかな。特定の組織に属するキャラクターだから広がりって意味では確かに多少マイナーと言えるかもね。まずはお馬さんのほうから言うと、これはターフィーって名前で、『JRA 日本中央競馬会』のマスコットキャラクターだよ」


「競馬ねえ。でも私、ギャンブルはやった事ないし分からなくても仕方ないかしらね」


「未成年だもんね。そして八位の犬はふくちゃんって言うんだ」


「角帽を被ってる?」


「違うよ、全然違うよ。これは『くすりの福太郎』というお薬を売るお店のマスコットキャラクターだけど、関東地方にしかないから正直全国的な知名度に関しては低くても仕方ない部分はあるね。競馬なら一応全国で見る事が出来るからまだしも、このキャラクターは上位陣の中では一番知名度が低いと思うよ」


「それなのによくこんな高い順位になれたわね」


「ふふっ、その秘密はね、キャラクターの下にある文字列を見れば見えてくると思うよ」


「文字列? これね。『これやります宣言 10位以内ならくすりの福太郎各店にて、限定でお楽しみのプレゼントをします』『競馬場にターフィーシートを作ってGIレースにみんなを招待するよ!』……!」


「そう。つまり、今年は一つの趣向としてまさに選挙みたいに公約を掲げてるんだ。その中でもターフィーとふくちゃんはかなり具体的かつダイレクトな利益になる公約を掲げているからね。それに加えて例えばターフィーならJRAのサイトのトップページでもかなり目立つ形で『清き一票を』と宣伝してたし、まあお見事なものだよ。まあ公約で言うと九位のこれもなかなかのものだけど」


「『ベスト10に入ったら、「クレヨンしんちゃん」にボクが登場するブイ!』って凄い具体的ね。と言うかこれで十位以下になってたらかなり気まずかったんじゃないかしら。しんちゃんサイドにどれだけ迷惑がかかるかとか考えると……」


「まあでもこういう投票でファンが本気で投票した結果、一般人気のある曲がごっそり外れたベストアルバムだってあるんだし、その時はその時であんまり深く考えないほうがいいと思うよ。いいじゃない、結果的に公約達成したんだから。ほとんどのキャラクターは公約となる順位を達成できずに終わったんだからその辺と比較するとね」


「えっ、ほとんど出来てないの?」


「うん、大体はね。基本的には前年度の順位から五とか十位ぐらい上乗せした順位以上なら公約って形だけど、そんな簡単に順位を上げられるもんじゃないからね。上位陣の有名キャラクターは今でも新製品が次々と作られてるのに下のほうはとっくに出ていなかったりするし。で、前置きが長くなったけど僕が投票したのは、この子たちさ」


「随分下にスクロールするわね。五十位ぐらい?」


「まずは前提として、動物キャラより人間キャラに対して積極的に投票したんだ。例えば上位陣ではキティちゃんは猫で、マイメロちゃんはうさぎ、それにポムポムプリンは犬と動物モチーフでしょ。今回の投票対象になってないキャラクターを含めてもやっぱり量で言うと動物キャラのほうが多い。近年は特にね。だからこそ、じゃあ僕は人間キャラを推してやろうって気概を見せたくなるんだ」


「気概とかちょっと格好良さそうな言い方をするものね。で、具体的には誰に投票したの?」


「まず僕とシャープさんの一押しはこれ、四十五位ボタンノーズ!」


「へえ、案外普通の子ね。それにしてもシャープってあの?」


「うん、あの現在経営再建待ったなしな家電メーカーのね。うちの冷蔵庫もシャープなんだ。でももっと見てみると電子レンジは三菱で炊飯器はパナソニックだからあんまりそういうこだわりはないみたいだけど。とにかく、もっと正確に言うとシャープのTwitterにおける公式アカウントの人が六月七日にボタンノーズに投票したんだ。Twitterではその理由なんかも説明してるけど我が意を得たりと思ったね。やっぱりかわいいじゃない、純粋に。髪型もいちごの髪飾りも表情も。誕生は一九七七年。全盛期はアニメ化されたり『いちごのお家』って言う自分の世界観がモチーフなお店が田園調布に出来たり、まあブイブイ言わせてたようだけど今となってはそれも全ては過去の話だね。でも一目見ただけでこの子だって思えたんだ。やっぱりかわいさに世代なんて関係ないからね。キティちゃん、マイメロちゃん、キキララちゃんも七十年代だし」


「へえ、東京にはそんなところがあるんだ」


「まあ今となっては『ありました』だけどね、いちごのお家も。グーグルマップで見てもご覧の通り。田園調布の、扇状に広がってる方の逆をちょっと進むと工事中みたいな建物があるでしょ」


「うん、青いシートに囲まれた黄色い屋根ね」


「それがいちごのお家の跡地だよ。でもストリートビューでその辺を見ると健在だった頃のお家が現れるんだ」


「おお、赤い! それに大きいわね」


「まあ閉店したのが一昨年の十二月とか本当につい最近だからね。だから『いちごのお家』で画像検索するとリアルタイムの写真が出てくる出てくる。ボタンノーズとかほとんど関係なくなってからもこうして命脈を保ち続けたんだから立派だし、素晴らしい事だよ。ついでにこれを模したおもちゃもあったらしくてそれの画像も出るけど、これに付属していたお人形の面子はキティ、キキララ、ボタンノーズだからね。復唱して。キティ、キキララ、ボタンノーズ」


「キティ、キキララ、ボタンノーズ」


「まあそういう時代もあったねと。そんなところかな、ボタンノーズ、と言うか正式な名前はトリシュちゃんらしいけどこの子に関しては。アニメも視聴率とか軽く調べた所によると割とアレだったらしくてDVDどころかVHSも途中で出なくなったって言うし、この子の復権はそこからだと見ているけどなかなかね。それで、このボタンノーズちゃん以外にも色々と投票してるんだ」


「一人一票じゃないの?」


「うん。ネットでは一つのキャラには一日一票だけど複数のキャラに投票できるシステムになってるんだ。まああんまり際限なくあれもこれもとなると微妙なので個人的には一日で五つのキャラに投票してたけど。例えばこれ、タイニーポエム」


「六十六位の子ね」


「中間発表ではもうちょっと高かったのになあ、ちょっと実力を過小評価されすぎているキャラクターとあえて言っちゃうぞ。生まれたのは一九七五年でキキララちゃんやマイメロちゃんと同期。その頃はかなり人気があったらしくて、でもそれもこんなかわいいから当然だね。通称風の子さっちゃんとも言って当時はそっちの名前のほうが知られてたみたい」


「その辺はリトル何とかと同じね」


「同期だけにね。画像検索すると当時のグッズが色々出てくるけどもうどれもこれも安定して高レベルだと思うよ。羊と向き合ってるのとか、普段の和服っぽいのもほんわかとした雰囲気でいいけどバリエーションとしての洋服っぽいファッションもいいし2Dさっちゃんに外れなし! ってぐらい鬼かわいい」


「ふうん、でも今はグッズとかないんでしょ」


「まあ、過去の人と化しているのは確かだね。何と言うかサンリオ初期の立役者みたいな扱いで当時を知る人からは復活希望されてるけど、千秋さんとか。まだまだ道は険しいのかもね。これでいきなり十位ぐらいに入ったらそりゃあ復活不可避だろうけどね」


「まあ頑張ってね」


「毎日投票した結果がこれだからね。僕自身としては悔いはないよ。他には人型キャラのエースであるキキララちゃん、公約でネタに走ってるタキシードサムやたあ坊、その他ウィーメリールーにフランボアルゥルゥ、八千代チャーマーとか。正直半分以上はここ数ヶ月で初めて知ったキャラクターなんだけど、かわいいものはかわいいからね。そうそう、珍しく目標順位達成したビートロイドなるキャラクターは早くも公約を果たしているんだ。他のキャラと合わせて詳細はこの辺りからどうぞ」


http://sanriocharacterranking.com/yarimasu.php


「一人だけちょっと素っ気無い書き方ね。えっ、何このカウントダウン。しかも何と言うのか、まあ独自の味があるイラストね」


「ちょっと古い感じとか言われてるけど、まああんまり尖ったデザインでもそれはそれでってなるからその辺は調和が取れているような気もするよ。でもいいよね。ボタンノーズだって順位自体は前回より上がってるんだけど目標には届かなかった。だから今度こそはって思っているのさ」


 ここで二人の会話を途切れさせる警報音が部屋中に鳴り響いた。グラゲ軍が襲来したのだ。


「ふう、夏休みだって言うのに休みなしとはね」


「地球だって今日もまた休みもせず回り続けているのよ。そういう星を守るんだから私たちだって休みは期待できないのも道理よ」


「確かにね。さあ、行くぞ!」


 素早く戦うためのユニフォームに姿を変えた二人はグラゲ軍が現れた山の中へと走った。


「こんにちは、私はグラゲ軍攻撃部隊の白ネコ女よ。体重はリンゴ三百個分なの」


 敵の姿を見た二人は内心で「うわあ、ちょっとやりにくいのが来たなあ」と思ったが、かわいい見た目に惑わされてはいけない。心を鬼にしてまずは白ネコ女の繰り出した雑兵を蹴散らした。


「ごめんなさい。本当にもうお帰りください」


「いっそぶぶ漬けなんてどうです? 今ならただであげますからこれと引き換えに」


「ふふっ、そんなお気遣いは無用よ。だってあなたたちは今から私に殺されるんだから! 見てなさい!」


 戦いにくそうにしている二人を見て白ネコ女はむしろ強気になった。そして懐から取り出したスイッチを押して瞬く間に巨大化した。二人は「やはりやるしかないか」と改めてせざるを得なかった。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 山を貫かんほどの大きさを持つ二つの巨大ロボットが対峙した。素早く身を翻して殴りかかる白ネコロボットに対して悠宇は華麗な操縦テクニックを見せて軽やかに攻撃を回避する。これを繰り返す中で白ネコロボットの動きが鈍った一瞬を渡海雄は見逃さなかった。


「今だ! これで決めてやる!」


 渡海雄は素早く黒いボタンを押した。すると胸の装甲が開いて、中からロケット鉛筆の芯のような形をしたニードルが大量に発射された。ニードルは白ネコロボットの体全身を貫いた。


「ふふ、今はさようならを言わなければならないようね。また会いましょう」


 脱出装置によって白ネコ女は宇宙へと逃げおおせた。ところで本日七月二十一日と言えば参議院選挙の投票日。今テレビでやっている開票速報も有権者になる前はどうでも良かったものが今は各局も工夫してるのもあるけどやっぱり自分の権利を行使した上で見ると面白くなるもの。もし政治に興味なくてもそれだけで楽しいし、将来の有権者もその時が来たら娯楽の一環と考えるぐらいの気楽さで、大人になったら投票に行きましょうね。

今回のまとめ

・ボタンノーズかわいい

・タイニーポエムかわいい

・キティちゃんもかわいいよ

・本質的に選挙とか投票って楽しいものだと思うんだけど今回も投票率低いらしい

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