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rm09 オールスター戦とドラフトの展望について

 一学期の終業式は金曜日に行われ、夏休みが始まった。夏休み。ああ、何と開放的な響きだろう。走ったり泳いだり旅行したり、やりたい事は星の数ほどあるけれどまずは何をしようかとわくわくするだけで楽しめるものである。本番に備えて髪を短く刈り込んだ渡海雄と早くも肌が浅黒く変色しつつある悠宇もまた近未来への期待を隠そうともせずにはしゃいでいた。


「へっへっへ、やっと始まったねえ。夏休みだよ、夏休み!」


「そうね。そしてプロ野球もオールスター戦が開催されたしJリーグもやっと本格的に再開したし、ついでに大相撲名古屋場所も開催中だし色々と盛り上がってるわ。大砂嵐が横綱を連続して破ったりね。そうなると優勝は多分また白鵬ってなりそうだけど、まだ中日だから今後に注目よ」


「そしてオールスターと言えば今年は投票で広島の選手がたくさん選ばれてたねえ。やっぱり僕らだけじゃなくて全体的に盛り上がってるんだなあ」


「現状チームが失速してるのが残念だけど。まあそれでも普通にやったとしても菊池と丸にエルドレッド、それに前田は選ばれていた可能性が高いでしょうね。一岡やキラはそこそこ長い離脱期間があったのが微妙だし、堂林はそれに加えて成績も寂しいものがあるのでまさに人気先行な選出だったけど、とりあえず足を引っ張るような事はなくて本当に良かったわ。まあ酷かったと言えば試合途中で中継を打ち切ってBSやCSでも引き継ぎなしだったテレビ朝日ぐらいのもので。やる気ないんなら独占中継しなきゃいいのに」


「それにしてもエルドレッドのパワーはやっぱり凄いなあ。ホームラン競争でも見事にトップだったし、実際の試合でも右中間にホームランを叩き込んでMVP」


「セリーグの二冠王は伊達じゃないわね。うん、去年の九月からいい調子だったから残留はさせてくれとは思っていたけどまさかこんなに打ちまくるとは思わなかったわ。そりゃあ当たれば飛ぶパワーは元々あったにしてもね、アベレージも望外な高さだし打点もよく稼いでいる。打点に関しては菊池と丸がよくやってるのも一因だけどね」


「菊池と丸の同級生コンビがともに打率三割台で快調に打ってるよね。それに盗塁もそこそこに多い。丸はともかく菊池がこんな順調に打てるようになってるのが凄いよね」


「去年は二割五分がせいぜいってところだったけど、本当に選手として勢いがあるわよね、菊池は。去年は東出の怪我もあって『使うしかない』という部分もあったけどそのチャンスをしっかりと生かしたから今では文句なしのレギュラーに成長して、オールスターでも一戦目には先制タイムリー打ったし」


「一戦目、パリーグ先発の岸は良かったけど二番手の西がまずかったよねえ。堂林と谷繁に連打食らった時点でまずいんじゃないかと思ったけど案の定菊池鳥谷エルドレッドの三連続タイムリーを浴びて炎上」


「ここ数試合はちょっと炎上が続いていたようだからその悪い流れがオールスターでも出てしまったって感じかしらね。オリックスはカープと違ってまだ首位をキープしているけど、ここからが正念場となりそうね」


「炎上と言えば二戦目の先発藤浪も四失点と炎上してしまったなあ」


「同期の大谷との対決だったけど、ただ大谷も球速の割にはちゃんと失点してるあたりがまだまだよね」


「試合はその後も延々と点が入り続けて最終的には十二対六でパリーグが勝利というとてつもない乱打戦に」


「ここまで来ると逆に点が入りすぎな感じもあるけど、まあエンターテインメントとしてはかなり派手で良かったんじゃない。去年みたいにホームランすら皆無なんて事態よりよっぽどましと言えるわ」


「堂林も打ったもんねえ」


「堂林に関しては本番となるリーグ戦でどれだけ高められるかよ。アベレージもせめて二割五分あたりまでは高めてくれないと。ただこのホームランのお陰でドラフトの優先権をセリーグが得たとも言えるし、意外と大事な得点だったのかもね」


「ああ、そう言えばオールスターは単なるお祭りであってそれ以外の何者でもないって試合じゃなくて、ドラフトに絡んでくるんだね。ここ数日は甲子園の予選が各地で繰り広げられていて、それに関連してドラフト候補が好投したとか打てなかったとか、そういうのも記事になってるよね」


「ドラフト候補の選手が所属している高校の試合に何球団のスカウトが集結したって話もドラフトの予測には大事になってくるし、ドラフトマニアは情報収集に忙しい時期よね。やっぱり目玉候補には海外含めて二桁ぐらいの球団が集まるのが常だし、もうちょっと少なかったら中位なのかなとか予測出来るものよ。それに直接プロを目指すか、それとも大学や社会人に進むかって情報もね」


「現時点でも大学を目指すと明言してる選手が何人かいるよね。プロ野球のファンからすると素質あるんならさっさとプロに入ればって思うけど、結局はその人の人生だからねえ。ところで、広島はどんな選手を指名するんだろう。まだドラフトまでには間があるけど今のところはどうなりそうなの?」


「さすがにまだ数ヶ月先の話だから不確定な部分ばかりだけど、一応予測ぐらいはしてみるわ。まず大事なのは先発投手よ。今年のカープはって話だけじゃなくて一般論としてもね」


「それもそうか。と言うかここ最近はその先発投手がどうにも不安定だよね」


「前田は大体問題ないけど、いつメジャー移籍するかという最大の懸念材料があるからね。もし今シーズンのオフに移籍となったらきついなんてもんじゃないわ。絶望よ。実力や実績では前田の次に来るバリントンは大幅に勝ち越せるタイプじゃないし野村も不安定。大瀬良と九里のルーキーコンビは壁の前でもがいている感じ。交流戦でもそうだったけど、先発投手が早々と燃えるようでは勝目が限りなくなくなるものだし、先発がすぐに降板ってなるとリリーフ陣も回跨ぎなんかしなきゃいけなくなって、どこかで力尽きてしまう瞬間が来てしまい結局追い打ちとなる失点を重ねてしまうというパターンにはまってしまうからこそ先発は大事だけど」


「今井あたりがねえ。先発として期待してたのに何だかこの程度で終わってしまうのが歯がゆいよねえ。それと中崎あたりも」


「戸田はこの間のDeNA戦でプロ初勝利となったけどあれは打線に助けられたようなもの。五回四失点じゃあね。ただこれをきっかけにある程度やってくれればという淡い期待もないでもないけど。篠田はシーズン序盤よくやってくれたわ。他となると……」


「福井は、あんまり思い出したくないな。それにしても先発候補がこうあっさりと枯渇するあたりがまさに選手層の薄さなんだろうなあ。でも今シーズンはそんな手持ちの駒をフル活用する以外に道はないんだよね」


「もちろん優勝を狙ってほしいけど、それを口にするにはもうちょっと状態を立て直してからじゃないとね。下手するとAクラスすら危うくなりかねない状況なんだから。さて、今年のドラフト候補の投手でトップクラスの素材として知られているのは高校生では若い頃から注目されてきた安楽、今年はもう予選敗退となったけど去年の優勝に貢献した高橋、それに東北には松本って投手も注目されてるわ。大学生では広島出身の有原が筆頭で他には山崎が二人いたりするけど、その中で競合確実と目されてるのが安楽や有原よ」


「ふうん、じゃあそういう選手を指名したらいいの?」


「ただこの手の一番人気な選手は指名が重複する可能性が高いし、あえてそれ以外の選手を狙うのもひとつの方法よ」


「何だか消極的だなあ」


「そりゃあそうだけど指名が重複したらくじ引きなんだから、それで外したら大変になるのは言うまでもないでしょう。それで苦労しているのが例えば横浜。投手力に不安があるから即戦力的素材が必要ってのは分かるけど大石、藤岡、東浜、松井と四年連続で事前に競合が予想されていた投手を果敢に指名してはくじ引きで外れているの」


「ううむ、それはまたアンラッキーな」


「正直カープもくじ引きはあんまり当たらないほうだし、去年の大瀬良なんて滅多に訪れる事のない幸運よ。他球団のファンから思われているほど単独ばかりを狙っているわけではないんだけど、ドラフト一位でおそらく単独でいけるだろうという投手を獲得しようとしたら重複してくじを外し、外れも重複して結局外野手指名したという過去もあるわけだし、そこはリスクとリターンとの兼ね合いよね。そもそも単独を狙おうにも他球団だって同じ事を考えているかも知れないんだから」


「やっぱ色々考えてるんだねえ。じゃあ投手は当然補強するとして、野手はどうなの?」


「まず現状、暑くなってきたのもあってか打線はここ数試合それなりにうまく稼働しているわね。でももちろん現状にとどまっているようでは浮上はないわ。まずはキャッチャーで言うと會澤がやたらと打撃好調だけど、まだ打席数が少なすぎるから現状は一時的な好調でいつの間にか例年通りの数字にってパターンの可能性もあるわ。それと根本的にキャッチャーとしての評価が低いようだし。本来レギュラーの石原は今シーズン絶不調、倉も年齢的に後何年出来るか不透明。白濱は打撃に期待するような選手じゃない。去年は誰も獲得しなかったけど今年こそはドラフトでキャッチャーを指名しないと」


「誰かいるの?」


「よく言われてるのが高校生の清水や栗原あたりね。有望な高校生を獲得して石原が引退するタイミングに合わせるという考えよ。ああ、それと山川ってのもいるわね」


「おおっ、今年もいるんだ僕と同じ名字。去年の山川さんはフレッシュオールスターでも大活躍だったから一軍でも頑張ってほしいよね。ところで明星ってのはいるの?」


「聞いた事ないわね。話を戻すけど即戦力に近い大学生や社会人のキャッチャーは正直今のところ知名度に乏しい感じはするけど、ちょうど今都市対抗やってるし、この中からカープが指名する選手がいるかも知れないわね」


「社会人と言えば田中が結構いい感じで頑張ってるよね。内野手もそれなりに層が厚くなってきたかも」


「でもまだまだよ。それに梵や木村、さらに今シーズンはずっと二軍に甘んじているけど東出は同年代だけど、この世代ももうベテランって年齢だから、内野手の補強も必要になってくるはず」


「外野手はどうかな?」


「一般論で言うと外野手は内野手からのコンバートもしやすいし、基本的にそんなに補強するようなポジションじゃないものよ。ただ丸は生粋のセンターというタイプじゃないから丸をライトあたりに押しのけられるようなセンタータイプの選手なら獲得してもいいかも」


「今いる選手で言うと赤松みたいなタイプかな?」


「そうね。将来的には打てる赤松になれそうな選手がいたらいいんだけど。まとめると、投手は三人ぐらい獲得するとして、野手もキャッチャーと内外野それぞれ一人ずつぐらい指名出来たらいいんじゃない。じゃあ具体的に誰かと問われると、それは知らないけど。まずは志望届が出揃わない事にはね」


「それもそうだね。ついでにサンフレッチェは、ちょっとまずい戦いを繰り広げてるよねえ」


「中断前からそうだったけど、きついわねえ。昨日の大宮戦とか前半で三点リードしてたのに追いつかれてしまって。どうにも粘りに欠ける部分があるのか。やっぱり三連覇となると簡単にはいかないものね」


 そんな事を話していると敵の襲来を告げるサイレンの音が鳴り響いた。訪れるのは連休だけで良かったのにと渋い顔をしつつもこれも運命だと受け入れて、二人は変身して敵の訪れた地点へと走った。


「ふふふ、私はグラゲ軍攻撃部隊のワオキツネザル女。この星に永遠の休暇をやろう」


 それはまさに驚愕に等しい存在であった。ワオキツネザル女は砂浜の見える道路沿いに出現した。間もなく戦うためのスーツを身に纏った渡海雄と悠宇はそこに駆けつけた。


「むう、またも現れてしまったのかグラゲ軍め!」


「しかし私たちが現れたからにはその陰謀もこれまでよ」


「ふっ、やはり現れたか。お前たちの死をもって惑星の浄化は始まるのだ。さあ行け、雑兵ども! グラゲの栄光を築くのだ!」


 こうして襲いかかってきた雑兵たちを倒すと、残ったのは三人となった。


「後はお前だけだなワオキツネザル女!」


「休暇を与えられるのはこの星ではなくあなたたちのほうよ。さあ、今すぐにでも帰省しなさい」


「まだ戦いは終わっていないぞ。私たちグラゲ軍は最後まで戦い抜くのが流儀だからな!」


 そう言うとワオキツネザル女は懐に隠し持っていたスイッチを取り出し、それを押して巨大化した。渡海雄と悠宇もそれに対抗して合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 さざなみに揺れる砂浜を背景に、二つの巨体は一瞬のタイミングも見逃すものかとばかりに緊迫したにらみ合いを続けていた。そしてその一瞬、悠宇が素早くアクションを起こすとそれに負けじとワオキツネザルロボットも殴り返してきた。


「ううむ、相手はなかなかやるようね。こうなったら大事なのは必殺技の使い方よ。どうにか隙を作るからそうなったら頼むわね、とみお君」


「うん、任せて」


 激しい鍔迫り合いの果てに悠宇はワオキツネザルロボットのしっぽを踏みつけてバランスを崩した。アスファルトにもんどり打つ巨体を目の前に、渡海雄の判断は素早かった。


「ようし! ここはメルティングフィストでとどめだ!」


 敵が立ち上がる前に渡海雄は朱色のボタンを押した。夏の太陽よりもヒートアップしたメガロボットの右拳による渾身の一撃はワオキツネザルロボットの装甲を溶かして貫通した。


「ここまでか。申し訳ありません、惑星浄化にはまだ時間がかかりそうです」


 爆散する寸前に作動した脱出装置に乗せられてワオキツネザル女は地球侵略部隊の本拠地であるブランウワイスに帰還した。そして始まる二人の夏休み。

今回のまとめ

・オールスターでは露骨に足を引っ張る選手が出なくて良かった

・投手も野手も底が割れている中で現有戦力がどれだけ奮起するか

・もちろん優勝を狙ってほしいがとりあえずAクラスだけは確保して

・シーズンの行方も大事だがドラフト熱も高まってくる季節になってきた

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