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hg11 Pocket Albumについて

 再び七夕に巡りあった。夏の日の出会いもまるで昨日のようであったが、それはすでに三百六十五日の時を経ている。そんな星の巡りを知ってか知らずか、渡海雄と悠宇も祈りを込めた短冊を笹に結んで目を閉じた。


「短冊と言えば、昔の8cmシングルCDはその縦に長い形状から短冊型って言われたりするよねえ」


「へえ、そうなんだ」


「今となっては12cmCDのマキシシングルが普通だけど九十年代はこの小さなCDが売れまくったんだから凄い話だよ。そんな8cmCDの集合体が『Pocket Album-七つの星-』。一九九二年七月に発売された、光GENJI各メンバーのソロ曲が収録された8cmCD七枚組のアルバム」


「七枚組って、なかなか大胆な事やるわね。でもケースはまさに短冊型で、丸く囲まれたメンバーの顔が七つ並んでいるちょっと味気ないデザイン」


「そして何より異様なのは通常のシングルCDの四倍というこの分厚さだよ。これが屏風のように広がって、CD七枚を収納している。ミュージシャン表記は屏風を広げた際、CDがついてるほうの裏に書かれているのでちょっと分かりにくい。それとは別に歌詞カードがあり、これも縦長の紙が折りたたまれてて裏側にはメンバーの写真という構成。そもそも中古のCD屋でも8cmCDの居場所は限られつつある現状でこの異形だから、普通のシングルやアルバムと比べてもあんまり見かけないしAmazonとかオークションなどインターネットの力を使って入手するに限るよ。ざっと見たところどうも千円ぐらいが相場のようだけど」


「曲は、一人二曲入りCDが七枚って事で合計十四曲入りなのね」


「うん。一枚目は佐藤敦啓、二枚目は赤坂で七枚目は内海という風に並んでいるんだ」


「年齢の若い順ね。まずは最年少佐藤敦啓の『Jessieに首ったけ』。作詞及川眠子、作曲もりくん、編曲米光亮」


「及川はWinkやCoCo、それに『残酷な天使のテーゼ』で知られる作詞家だけど光GENJIにはこの曲だけ。もりくんはSMAPの元メンバー、とは関係ないロック系のギタリスト。冒頭で炸裂するブルースハープやコーラスの入れ方からして明白だけどオールドスタイルのロックンロールをイメージした、要はチェッカーズみたいなイメージの楽曲。タイトルに出てくるのも外国の人名だし、歌詞でもGMの名車シボレーの愛称であるシェビーとか言っちゃってるし。ただ歌唱力は相変わらずで、正しいメロディーが不明な部分もある。でもやりたい方向性は明確なので印象としては悪くないよ」


「次は『君には僕が』。作詞佐藤敦啓、作曲松本俊明、編曲米光亮。おお、自分で作詞し始めた」


「多分メンバーで一番作詞がうまいのが彼だからね。何がどうって事じゃないけど、言葉を選ぶセンスがいいんだろうなあ。この曲自体はあえて特筆するほどではないバラードだけど。それとラストで歌唱がよれてるのが尻すぼみな印象を残して残念。本人的にはあえてフェイク入れたって事かも知れないけど、明らかによれてる」


「ここでディスクを入れ替えて、次は赤坂の『抱きしめたい』。作詞原真弓、作曲井上ヨシマサ、編曲石田勝範」


「これは、なかなか凄いよ。ビッグバンドって言うのかな、そんな路線。だからミュージシャン表記でもウッドベース、フレットレスベース、ハープ、チューバ、グロッケンシュピールなどあまり見ない楽器が目白押し。他にもフルート二人にホルン、トランペット、トロンボーンが各三人。サックス四人にバリトンサックスも加わるというかつてない大人数。作曲の井上は実はジャズの素養がある人で、八十年代に出したアルバムも名前からしてそのものズバリな『JAZZ』だったりするから、そういう彼本来の部分を出した曲と言える」


「やっぱりそんなに手がかかってるだけあってゴージャスと言うか、良くも悪くも他の曲とは全然違う雰囲気ね。こう、古いというか時代がかってると言うか」


「ゆったりとした演奏で貴族の戯れみたいな大人びた歌詞を歌う赤坂の甘い声。それぞれの要素は結構調和してるしこれはこれでありな曲だと思うよ。間奏でいきなりテンポが上がったりと結構仕掛けもあるし。そりゃあ最初は驚いたけどね、許容量なんてすぐ広がるものだから」


「ううん、さすがにやりすぎだと思うけど。二曲目は『マスカレード』。作詞平井森太郎、作曲編曲水島康貴」


「この水島って名前は覚えておいてね。今後いっぱい作編曲に携わるから。光GENJIに関わるのはこれが初めてじゃなくて『Hello… I Love You』でキーボード奏者として参加してるみたい。調べてみると佐藤準に師事していたとの事だから佐藤準編曲のどれかで演奏を任されてたんだろうと思うけど、ミュージシャン一括表記だからどの曲で演奏してたかは不明。それ以前のアルバムにも参加してた可能性はあるけど、あまり広げすぎても分かる耳はないからここまでにしておこう。さて、曲自体は打ち込み基調で軽やかなテンポが印象的だけど、コーラスがジョーンズとジョンソンって外国人で、彼らの気合入ったコーラスが普段とは一味違う独自の世界を構築している」


「ちょっと高貴な雰囲気になってる気がするわね。次は山本の『ネバーランドバウンド』。作詞高柳恋、作曲清岡千穂、編曲米光亮」


「歌詞も曲もファンタジー路線全開のパワフルで明るい、七人で歌っても違和感がない曲だよ。と言うか七人で歌ってほしかった。作曲の清岡はこの時期アイドルにも結構曲を提供してたようだけど、アニメ系の仕事のほうが知られてる人で代表曲はドラゴンボールZの主題歌。他にエスパー魔美、ふしぎ遊戯、七つの海のティコなど。近年ではプリキュアも」


「そう並べられると確かにそんな感じのする曲ね。躍動感があって。二曲目は『Flower Girl -Tea for Two-』。作詞三浦徳子、作曲山本淳一、編曲新川博。作曲を自分でやるのは新機軸じゃない?」


「そうだね。ただこの曲がねえ、まあ、素朴で親しみやすいとでも表現しようかな。でも逆にゴーストライターを使った可能性は限りなく低いと推察出来るよね。そんな曲に絵本のような歌詞とファンシーな編曲をまぶして形にした楽曲。ファンにはたまらない、ファン以外にも別の意味でたまらないというソロ曲の真髄みたいな代物だけど、やっぱりプロは凄いなあと改めて認識出来るよ。ああ、でもサビの歌詞は手抜きというか、力尽きたのかな」


「次は佐藤寛之の『あの頃…』。作詞佐藤寛之、作曲山口美央子、編曲新川博」


「これは佐藤寛之のキャラクター通り、地味だけど繊細なバラード。曲自体は結構いいけど、ちょっと短いね。二番もしっかりやれてたらもっと良くなったはず」


「そして二曲目が『ガラス細工の宝物』。作詞佐藤寛之、作曲都志見隆、編曲新川博」


「繊細な質感は前曲と共通しつつ、前向きな明るさも加わった。季節は春で卒業をイメージさせる歌詞だけど、キーボード基調のアレンジはそんな雰囲気をうまく生かしてて、これはいいよ。佐藤寛之の歌詞は、一部引っかかると言うか『プロなら多分こういう言葉の選び方はしないんだろうな』って部分はあるけど全体的なサウンドが良好なので概ね問題はない。タイトルも素敵」


「歌唱力はしっかりしてるし何より声質に合った曲だからなかなかいい感じじゃない。次は諸星の『やってられないよ』。作詞松井五郎、作曲編曲後藤次利、コーラス編曲曳田修・鈴木弘明」


「後藤はかなり有名なベーシストであり作曲家。工藤静香とか、それと八十年代から九十年代にかけては秋元康と組んでの仕事も多かったね。くっきりした曲を作る人という印象で、これもそんな感じ。歌詞は女の気持ちが分からなくて振り回される男の悲哀と言ったところだけどあくまでもコミカルな雰囲気。ただ冒頭のバラード部分は冗長だし最後の台詞もなかったほうが良かったかも」


「やけに賑やかな曲ね。二曲目は『バラードが聴きたくて』。作詞津田りえこ、作曲伊藤博、編曲和泉一弥」


「作曲の伊藤はこの曲だけだけど、インターネットで調べても同姓同名の人が山ほど出てきて本人になかなか突き当たらない。曲に関しては、まあ名前同様ありがちな曲ってところかな。アレンジもちょっとスカスカなんだけど、それが夏の終わりの空虚さにマッチしているのは怪我の功名か狙い通りか」


「さて、次は大沢の『Babylon』。作詞平井森太郎、作曲佐藤健、編曲米光亮」


「夜霧に煙る薄暗い都会に突如エンジン音が鳴り響き、みたいなイントロはなかなか格好良い。全体的にハードボイルドな雰囲気で、バビロンと言いつつ実際はニューヨークかな。ブラスサウンドも華やかかつ危険な雰囲気を醸し出している。極めてアダルティな楽曲」


「次は『NIGHT WALKER』。作詞津田りえこ、作曲NOBODY、編曲米光亮」


「前曲とも共通した、ワイルドでギラついたロック調という大沢の世界だね。それに加えてこっちは勢いあるサウンドが炸裂している。イントロから飛ばしまくりだし。それにしても作曲のNOBODYは一九八四年に『NIGHT WALKER』ってアルバム出してたみたいだけど、こんなタイトル被ってていいのかな」


「大沢特有の粘っこい歌唱が全開ね。そして最後の七枚目は内海の『MOON LIGHT GIRL』。作詞内海光司、作曲編曲佐藤準」


「これもやたらとアダルトな雰囲気だよね、ムーディーな方向で。ギターのフレーズは印象的だけど、ちょっと地味かなあ。内海の囁くような歌唱は夜の静寂を思わせる」


「そしてラスト『明日はもっと素敵な君がいる』。作詞作曲内海光司、編曲水島康貴」


「軽やかな打ち込みは水島の特徴。全体的には夕暮れの通学路みたいな朗らかさで、内海のキャラクターからしても変に大人びた方向に走るよりずっといいよ。うん、この曲は意外と好きだな。サビは弱いけどAメロの雰囲気は好き」


「嫌味なところがなくて、確かに悪くない曲ではあるわね。さりげなく本人作曲だけど無難にこなせてる」


「これで全曲だけど、基本的にはメンバーそれぞれのイメージに沿った曲が並んでいる印象。ざっくり言うと佐藤敦啓はピュア、赤坂は貴族的、山本はファンタジー、佐藤寛之は繊細、諸星はやんちゃかつ純情、大沢はギラつきまくり、内海は大人の中の少年性、みたいな感じかな。正直一部ついていけない曲はある。でもソロ曲ってそれ自体がディープなファン向けだからね。歌唱力の拙さなんて愛の前には何のマイナスにもならないものだから、つまり愛があれば大丈夫」


「広瀬香美じゃないんだから。ただ逆に言うと光GENJIやメンバーに愛がない人が聴くときついって事に……」


 そんな事を話していた渡海雄と悠宇に敵襲を告げる光が風雲急を告げた。幸い今は昼休み。二人は体育館の裏へと走り、そこで変身した。


「ははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のカミツキガメ男だ! この星を破壊するために派遣されたからには結果を残さねばな」


 海辺の道路に出現したのは何とかって芸人がこっそり飼っていたけど脱出した事が最近ニュースになった凶暴な亀を模した異星人であった。周りに噛み付かれたら大変だが、被害者が出る前に渡海雄と悠宇が駆けつけた。


「こんな日だって言うのにまたも現れたなグラゲ軍!」


「なのになぜこの地球を狙い続けるの? そっちがその気なら私たちだって命果てるまで抗い続けるわ!」


「ふん。お前たちが元気でいられるのも今日限りよ。さあ行け雑兵ども!」


 ぞろぞろと出現した雑兵を渡海雄と悠宇は勢いよく倒していった。


「後はお前だけになったなカミツキガメ男!」


「グラゲの皆さんはいわば特定外来宇宙人なんだから、無許可で地球に立ち入りするようだと退去してもらうしかないじゃない」


「なかなかやるな。しかし戦いはまだこれからだ!」


 そう言うとカミツキガメ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。渡海雄と悠宇は互いに目を見合わせた。これに対抗するには心身をひとつにするしかないからだ。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 巨大化した金属製のマシン二体が海をバックににらみ合う。カミツキガメロボットは防御も攻撃も抜群。生半可なオフェンスではダメージを与えられず逆襲を受けるだけとなる。悠宇はいつもに増して慎重だった。


「どうした、かかってくる度胸もないのか!」


「ど、どうするの? ゆうちゃん」


「まだよ、もう少し引きつけてからじゃないと、奴はかなりの力を持っているようだから半端な攻めではこちらがやられるわ。地球のためにも、私たちは負けられないんだから」


 ジリジリとした時が流れる。ついにカミツキガメロボットのほうが「ならばこちらから行くぞ」とばかりに鋭い攻撃を仕掛けてきた。悠宇が待っていたのはその瞬間であった。相手の攻める勢いをそらしてバランスを崩した。


「今よ! とみお君!」


「ようし、ゆうちゃん。ここは一点突破のメガロソードで勝負だ!」


 渡海雄は赤いボタンを押してメガロソードを召喚した。普段だとこれを投げつけるのだが今日に限っては柄の部分を両腕で握り、斬撃を仕掛けた。輝きを湛えた剣はカミツキガメロボットの強靭な装甲を一刀両断に切り裂いた。


「くっ、敵ながらあっぱれなパワーよ。残念だが撤退するしかなさそうだな」


 爆散寸前に作動した脱出装置でカミツキガメ男は宇宙へと去った。戦いが終われば渡海雄と悠宇は地球を守る戦士から小学生に戻る。急いで学校に戻り、午後の授業を受けた。


「ふう、どうにか今日も生きながらえたねえ」


「そうね。特に今日は湿気で肌がべたついてたし、いつもよりお風呂が気持ちいいわ」


 戦い終わって、授業も終わった渡海雄と悠宇は南郷宇宙研究所内にある温泉に浸かって疲れを癒していた。


「それにつけても残念なのは今日の天気よね。雨雲に覆われては星も見えないわ。せっかくの七夕なのに」


「空模様だけはね、仕方ないよ。そう言えばさ、今日は七夕だけど短冊にはどんな願いを書いたの?」


「ええ、そりゃあもう、宇宙が平和になってみんなが仲良く暮らせますようにって事よ」


「ああっ、しまったなあ。僕もそう書けば良かった」


 右手を顔に当てて悔やむ渡海雄を見て悠宇は本気で驚いていた。「じゃあとみお君は何を願ったの?」と聞かれた渡海雄は最初「ううん、言っちゃっていいのかなあ。ゆうちゃんに比べるとねえ」などと尻込みしていたが、しばらくして「やっぱり言おう」と決意したと同時に自ら湯船に頭を突っ込んでから顔を上げた。濡れた前髪を手のひらで払ったその奥にある目はいつになく真剣だった。


「本当の事を言うとね、全ては君なんだよ、ゆうちゃん。僕にとって一番大事なのがゆうちゃんなんだから、僕らの友情がずっと続くようにって願いを込めたの。だって、今日がゆうちゃんと出会ってちょうど一年なんだから」


 ちょうど一年などと思いがけない事を言われて悠宇は一瞬戸惑った。そんな事はとっくに忘れていたからだ。悠宇にとって渡海雄はずっとそこにいたように思えた。しかし冷静に考えてみると確かにちょうど一年だった気がしてきた。悠宇は「ふうん、そうだったっけね」と何度も確かめるようにつぶやき、しみじみと目を閉じた。


「でもきっと始まったばかりなのよね、私たち。ねえ、とみお君。これからも頑張っていきましょう」


「うん、きっとね! 二人で力を合わせて、この世界に本当の平和が訪れるその日まで……」


 時を重ねてもその友情が続く限り、二人は決して負けないだろう。星の彼方からいつ訪れるとも知れない侵略者に立ち向かう勇気の源こそ、この厚くて深い友情であるがゆえに。

今回のまとめ

・お陰様で一周年を迎えました読者の皆様約三千名ありがとうございます

・曲として好きなのは「ネバーランドバウンド」「ガラス細工の宝物」

・でも赤坂の楽曲みたいな意外性ある新機軸もそれはそれで面白い

・ただちょっと高いし購入するならある程度愛が深まってから

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