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vm05 交流戦とワールドカップの敗退について

 交流戦の日程は基本的に六月二十二日が最終戦であった。広島の成績はまったく酷いものだった。一時は延々と見込みのない連敗を続けて冷温停止していた悠宇の瞳も最後の連勝で活気を取り戻した。一時期は後一歩で無想転生を会得出来そうなほどにまで哀しみが高まっていたが、幸い連勝によってそれも霧散した。そして今日、ブラジルワールドカップに出場した日本代表もまた地球の裏側で玉砕していた。


「いやあ、とんでもない試合だったねえ。ワールドカップの日本対コロンビア」


「来るべき時が来たってところかしらね。総括すると、まずコートジボワール戦は基本的にずっと攻められてて、やっと日本にも得点しそうな匂いがしてきたってところで体良く本田が先制ゴールを叩き込んだけど、日本の見せ場はそのぐらいしかなかったわね」


「前半の終盤も危うい雰囲気だったけど後半にドログバが出てきてから立て続けに二失点」


「しかも同じような形で。最後には吉田を使ったパワープレーに走ったけど、あれも得点の雰囲気が皆無なまま試合終了。本当に残念な試合だったけどギリシャ戦と比べるとゴールが生まれただけまだましだったわね。無得点だから面白くないって事じゃなくて、ギリシャ戦は本当に何もなかった感じだから」


「前半に相手が退場した時は『いけるかも』って思ったけど、むしろ逆だったね。相手は守備を固めて、日本はそれを突破出来ず」


「アイデア不足よね。ゆっくりとしたパスを回して、高さでは相手の方が上だと分かりきってるのにふんわりとしたクロスを上げては弾かれ」


「終盤にはまたもパワープレーに走ったけどやっぱり不発。そんな事するんならやっぱり最初から高さのある豊田とか選んでたほうが良かったんじゃないの?」


「豊田がいれば勝てたとかそんなもんじゃないけど、あんな退屈な展開じゃ不満の声が上がるのは必定よね。しかも交代枠を残して終了。青山を出すつもりだったって話だけど、出してくれれば良かったのに」


「エクアドル対スイスとか、正直馴染みのない国同士の試合でも見てみると案外面白かったりするもんだけど、日本対ギリシャはそれぞれの国に関係ない人が見ると本当に退屈でどうしようもなかっただろうねえ。日本人の僕でさえ寝てたほうがましかもと思ったから」


「そして第三戦はコロンビア。想像以上にスタメンを入れ替えて言わば二軍だったコロンビアに対してようやく青山を出してくれた日本は、前半はそれなりに見所があったわ」


「今野がPK与えて先制されたけど前半終了直前に岡崎がヘッドで決めて、青山も前へ前へという積極的な意識が明確だったし、これはわざわざ四時半に起きた甲斐があったかなと思ったけど」


「後半よねえ。十番のハメス・ロドリゲスを投入するなどちょっと本気出してきたコロンビア相手にたちまち劣勢に立たされマルティネスにゴールを決められる」


「ディフェンスが全然ついていけてなかったよね。まさに翻弄されっぱなし」


「結局青山も後半途中で退いたし。でもこの結果から言うとねえ、嫌な言い方になるけどさっさと代えてくれたお陰で直接的に関わる事がなくなったのが幸いだったという展開になってしまったわね。青山がいた頃はまだ試合にはなってたもの」


「それ以降日本に見せ場ほとんどなかったもんねえ。ここで交代した山口はまだいいとして、柿谷とか清武は存在感皆無。そしてマルティネスに二点目を決められたところでほぼ勝負あり。コロンビアは四十三歳のGKモンドラゴンを出して高齢出場記録更新するなど余裕綽々」


「日本はすでに心が折れているような戦いっぷりでいつ失点してもおかしくなかったけど、案の定ハメス・ロドリゲスに決められて結果一対四。もう文句のつけようがない大敗よね」


「結局、実力が足りなかったって事でいいのかな?」


「まあ大体はそれで決着がつく話でしょ。ドリブルやパスのスピードや精度からして全然ねえ。それと体格も明らかに弱々しかったし。それにしてもコロンビア戦と同じ時間にNHKでやってたコートジボワール対ギリシャは試合終了直前にギリシャがPKを決めて勝利、大逆転でグループリーグ突破を決めたような、ああいうのを期待していたんだけどそれには値しなかったってところね。残念だけど。ワールドカップという挑戦は終わり、そしてまた仕切り直しよ。そしてカープも、ようやく交流戦が終わったわね」


「本当に長かったね。特に連敗してる頃は」


「あれは酷かったわ。もう何もかもが悪かったもの。まずは先発投手が大抵五回までの早い段階でビッグイニングを作られて勝利の可能性を決定的に皆無に近付ける。打線も大抵抑えられてる。万が一終盤までリードしててもリリーフ陣が打たれてひっくり返される」


「ううん、こうまとめられると全方位的に問題の塊だったねえ。でも終盤には五連勝と浮上したじゃない。最終的には九勝十五敗で阪神や楽天と並んで同率の最下位となったけど、逆に言うとそんな絶望的な連敗をしながらダントツ最下位とかになってないんだから」


「遅きに失したとはまさにこれだけど、連勝すら出来ずグダグダなまま交流戦を終えるよりはましだったわ。そもそも交流戦は五割でいいと思っていたし、普通にやればそれも可能だったはずだったわ。相手が強すぎてどうにも手が出ないという試合ばかりじゃなくて、むしろ具体的に誰がどうとかじゃないけどローテーションの穴埋めしてますってレベルの投手ともよく当たったわ。でも、そんな投手相手に出塁は出来てもタイムリーが皆無だったりして延々と崩せず、逆にこっちの投手が打たれて敗北濃厚となったところで帳尻合わせのように得点ってパターンとかね」


「そう言えば怪我人も多かったよね。ピッチャーでは一岡、キャッチャーでは石原、内野手では堂林、外野手では松山」


「そこも痛かったわね。ミコライオがいなかった時は抑えも任された一岡に三割打ててた松山、打撃は凍りついていたけど正捕手の石原と結構きつい離脱が多くて。でも今の時期は他球団もそれなりに怪我人が出てるものだから、言い訳には出来ないわ。逆に堂林は早ければリーグ再開に間に合うって話もあるし、マイナスばかりじゃないものよ。二軍ではホームラン打ったらしいし。それにしても、それまでのレギュラー一人が抜けるとその穴埋めとして他の選手が入るけど、その穴埋めの選手だって疲れているのだからなかなか構想通りとはいかないものよね。例えばリリーフで言うと、永川がよく炎上して勝利を手放す展開が多かったわ。永川のピッチングは多く叩かれて、それは仕方ない事なんだけど個人的には永川を叩く気にはあまりなれなかったわ。特に例のロッテ戦はね」


「ええ、あの試合は最低だったじゃない。八回から登板の永川が見事にまあ逆転されて」


「あの試合はその前にカープがノーアウト満塁のチャンスを作っていたけど無得点だったのが根本的な敗因よ。それと永川に関してもね、ソフトバンク戦で敗戦投手になったりきな臭さが漂っていた選手をそれでも八回に投げさせたらこうもなるわって話よね。采配ミスとかそういう事じゃないのよ。ただリリーフの層が薄くなっているのを承知でフィリップスを二軍降格させたからにはこのような結果が出る可能性が高いのは分かりきってたし、それが調子を落としていた永川にもろに降りかかったのはむしろ永川にとって災難よ。そもそもミコライオに何もなければああはならなかったものを」


「ふうん。永川には優しいけどミコライオには厳しいねえ」


「期待する数字が違うわ。永川にミコライオと同じ期待をかけるのは酷でしょう。同様に篠田や九里や大瀬良が炎上してビッグイニングを作られるのは仕方ないと言うかまだ比較的寛容でいられるけど前田が日本ハム戦で炎上したのは許しがたいとかね。打線に関しては、ホームランだけは相変わらずよく出てたけど基本的につながりが悪くて得点はそれほどでもなかったから決して良好ではなかったわ」


「エルドレッドとか当たればホームランだけど全然当たらないって感じだったよね。ある意味元に戻ったのかな。それと菊池はよくヒット打ててたよね」


「それとロサリオも上がったり下がったりだったけどよく打ってたわ。ううむ、まさかあんなに活躍するとは、開幕前には予想してなかったわ。あくまで来年以降に期待のサブだと思ってたから」


「日曜日にも増井からサヨナラホームラン打ったし、打撃は凄いよね。守備は下手だけど」


「守備もそうだけど走塁とか、打撃を含めて総合的な判断力なんかもまだまだ荒削りで、まさに素材よね。後は団野村みたいな詐欺師の接近を許さない事。これが一番大事よ。また二十年を無駄にしないためにもね」


「契約とかお金の話は、よく分からないなあ。それはともかく、他球団についてはどんな感じかな?」


「まず交流戦でうまくやったのは巨人よね。十六勝八敗という好成績を残して交流戦優勝、リーグのほうもカープ低迷に乗じて首位浮上。それでもカープも五割ならまだ首位でいられた計算なんだけど、逆に普通のリーグ戦でこんな連敗しなかったのが幸いと思い込むしかないわね。直接対決で三連敗とかしてたら取り返しのつかない差になってたでしょうから。そして阪神は広島にお付き合いしてくれたお陰で今や貯金ゼロ」


「ああ、阪神駄目だったのか」


「そこから中日ヤクルト横浜と、一見順位は変わってないけど中身は結構詰まってきてるわ。横浜交流戦勝ち越したし」


「そうなると混戦模様って事になるんだねえ」


「逆にパリーグはオリックスとソフトバンクが大きく抜け出して、下位の楽天と西武も同様に結構なものだから格差リーグと化しているわ」


「交流戦セパの勝敗は割と五割に近かったよね。それでもこう違ってきてるんだねえ」


「まだ交流戦終わってるわけじゃないんだけどね」


 こんな事を話していると敵襲を告げるサイレンが部屋中に鳴り響いた。本当のところを言うと少し眠気が残っている二人だが集中すればそれも吹っ飛ぶもので、素早く変身すると敵の出現した位置へと急行した。


「ははははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のコンドル男だ! この星をボコボコに叩いてやるわ!」


 まったく関係ないが、コンドルはコロンビアの国鳥であるらしい。とにかくこの、放っておけば地球の破滅を招くコンドル男が出現した草原に、渡海雄と悠宇はたどり着いた。


「そうはいかないぞグラゲ軍! 何度も現れて、でも絶対に負けないぞ!」


「私たちは今回負けても次があるってわけじゃないんだから。あなたたちとは違うのよ」


「ふん、その威勢がどこまで続くかな。さあ行け、雑兵ども!」


 ぞろぞろと現れた雑兵を次々となぎ払って。緑のフィールドには三人しかいなくなった。


「後はお前だけだなコンドル男! もう許さないぞ」


「コンドルならば大きな翼を広げて飛び去ればいいんだわ」


「ふん、逃げ去るのはお前たちの方だ。我らグラゲ軍の切り札を知らないわけではあるまい。それっ!」


 そう言うとコンドル男は懐に隠し持っていたスイッチを押して巨大化した。「コンドルは飛んでいく」と言えばサイモン&ガーファンクルによるカバーが有名だが、日本のサイモン&ガーファンクルを目指したらしいclassは一発屋として名を残した。さて、渡海雄と悠宇は歴史に名を残そうとは思わないものの今を守るための戦いには喜んで参加しようと願っており、その心は共通している。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 かくして渡海雄と悠宇も合体して巨大ロボットとなった。大きな羽根を広げてメガロボット向けて突進攻撃を繰り返す。「負けたけど感動をありがとう」ではすまない戦いだ。悠宇は絶妙な回避でダメージを最小限にしのぎながら耐えた。そして敵は攻め疲れたか、一瞬動きが遅くなった瞬間を見逃さなかったのが渡海雄である。


「よし、ここで勝負だ。スプリングミサイル、当たれよ!」


 ぐっと接近して間合いを詰めると、渡海雄は橙色のスイッチを押した。左膝に仕込まれていたスプリングミサイルがコンドルロボットの胴体を撃ち貫いた。


「ぐぐっ、どうやらここまでのようだな。まあいい、いずれはグラゲの軍門に下る星よ。せいぜい最期まであがくがいいわ」


 負け惜しみの言葉もそこそこに、爆散する寸前に作動した脱出装置に乗せられてコンドル男は地球から飛び去っていった。ワールドカップはまだ続く。日本は駄目だったが、イングランドやイタリア、それにスペインも既に倒れた。最終的にどこが優勝するかは誰にも分からない。

今回のまとめ

・残念な結果に終わった日本代表だが次のロシアに向けて前を向くしかない

・やりようによっては不可能ではなかったはずだがやはり初戦が痛かった

・交流戦連敗中のズタボロっぷりは筆舌に尽くしがたいものがあった

・それでもまだ数字上は十分優勝を狙える位置にいるんだからありがたい話だ

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