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rm08 プロ野球16球団構想について

 カープが強いのは鯉のぼりの季節までと言うが、その五月もすでに半分以上が過ぎ去ったが幸い未だに首位をキープ、むしろ阪神や巨人のほうが失速してる気がしないでもない。ヤクルトの打線は良好だし横浜もリリーフが整備されてきたなど、下位の球団も面白くなってきた。しかしこのような、同じリーグの球団同士で戦うのはしばらく先の話となる。


「そして交流戦が明日から始まるのよね」


「うん。そうだね」


「今年の交流戦は投手の代わりに打つだけの選手が打席に立つというDH制が今年に限ってはあべこべになってるのよね。つまり、本来採用していないセリーグの球団がホームの試合で採用して、普段は採用しているパリーグの球団がホームの試合では採用せず投手がそのまま打席に立つという事らしいの」


「ふうん」


「まあそれ自体は特にどうって事ないんだけど、今後制度とか変わる布石になったりしたら面白いわよね。そう言えば、今自民党が『プロ野球を十六球団に拡大』とか言ってるけど、これもどうなるのかしらねえ」


「増やせるんなら増やした方がいいと思うけど。そっちのほうが面白そう」


「私もそう思うわ。でもどこを本拠地にするかとか、決めるべき部分は色々あるわね。あんまり人口の少ない土地を本拠地にしても収入に直結する観客動員数を稼げなくなるものだから。プロ野球は平日にも試合あるから、スタジアム周辺人口は必須。今の球団も大体大都市にあるでしょう。広島や仙台が下限って程だから」


「残ってる都市って言うと、ううむ、難しいねえ」


「よく言われるのは新潟と静岡。他には京都、岡山、九州南部とか四国、いっそ北関東とか、まあ言うだけならただだけど具体的に動いてるって場所はそんなに多くないわね。企業だけ頑張ればいいものじゃなくて自治体との協力が不可欠なんだし」


「まだ雲を掴むような話って事かな」


「現実ではそうよね。それと選手をいかに確保するかという問題もあるわ。NPBにおけるエクスパンションとして最も派手だったのが一九四九年から一九五〇年にかけてのセパ分裂の際よ。それまで八球団による一リーグ制だったものが一気に十五球団まで拡大。当時は二軍を持ってない球団も多くて選手やコーチの人数も少なくて済んだけど、本当に無茶苦茶な話よね」


「急に球団数が倍増とか、やるもんだねえ」


「カープもそれで生まれたものだから。では選手はどんなのがいたかと言うと、まず主軸となったのは既存の球団から確保した選手たちだったわ。広島出身と言う事もあって譲渡された巨人のショート白石。それに阪急、今で言うオリックスに在籍していた内藤、武智、岩本とか今は消滅した大陽ロビンスの辻井、田中。特に阪急や阪神、それに今では消滅してしまった大映スターズあたりは選手をごっそり持って行かれた球団として知られているわ」


「それにしても選手がそんな簡単に移籍とかしてたんだねえ」


「当時の契約形態は今のサッカーに近い感じがあったみたいで、選手が移籍したいと思えば移籍する事は今より簡単だったらしいの。出番がないからとか、チーム内のモヤモヤにうんざりしたり、恩師である監督が移籍した際についていったり。その他には、元プロが復帰というルートもあったわ。中日にいた森井、阪急にいた笠松や阪田、阪神にいた山口など」


「へえ、とは言っても誰も知らないけど」


「それぞれが実績ある選手で、カープでも貴重な戦力となったけど当時の環境においてはピークを超えた三十代の選手が多くて、実際に最初の一二年ほどでほとんどがいなくなってしまったわ。一九四一年以来の復帰となった金鯱、戦前の消滅球団に在籍していた中山の『俺は三十二歳になるが今度広島に出来る球団に入る。男は三十歳で勝負だ』って台詞なんか熱いものがあるんだけど、選手としては大きく負け越して一年で引退となったわ」


「やっぱりそうなっちゃうのか。それにしても元プロがいっぱいいたんだねえ」


「当時は野球だけで生きていくのも大変な時代だったし、人気や実力の点でもプロが絶対的なトップでもなかったから。だから一時的にプロだったけど退団して、当時の言い方で言うとノンプロの球団に在籍ってルートは全然特別じゃなかったわ。白石も戦後一時的にプロから離れて別府にある植良組ってところに在籍してた事もあるし」


「今でも元プロで社会人野球の選手とか、あるいは独立リーグや海外のリーグに在籍ってパターンもあるよね。球団が増えるならそういう野に下った選手をかき集める事も起こるんだろうね」


「どれほどの戦力になるのか、気になるところではあるわね。そして当然の如く、プロ経験のない新人も多く獲得したわ。エースとなった長谷川良平や上記の中山の説得で入団した樋笠一夫は知名度高いけど、中には三十代後半のルーキーもいたのよね。鈴木銀之助って、東北では指導者としても有名だったらしいけど。当時はドラフトもなかったし、そういう『少しでも使える可能性があるかも』みたいな選手をどうにかかき集めてチームを作ったわけよ。今でもプロに縁がない実力派社会人はいるけど、もしチームが増えるなら即戦力候補となるオールドルーキーも増えるでしょうね」


「そうだねえ。でも確か、広島はいきなり最下位で球団消滅寸前まで行ったんだよね」


「やっぱり金がね。社会人の強豪を母体に阪神などから主力選手を引き抜いた毎日オリオンズ、今のロッテはいきなり日本一になったし、セリーグでは大洋ホエールズ、今のDeNAは勝率五割突破するなどうまくやったところはうまくやれてるけど」


「DeNAって出だしは優等生だったんだね。今と違って」


「まあすぐに追い抜かれたんだけどね。とにかく、リーグ分裂のエクスパンションでとりあえず増やしてはみたものの『やっぱ多すぎたかな』ってのはあって、今度は球団を減らそうとしたの。そのターゲットとなったのがカープと九州にあった西日本パイレーツ。西日本は色々あって最後にはセリーグを離脱して同じく福岡を本拠地としていた西鉄クリッパーズ、今の西武と合併してライオンズという新たな名前を得たわ。そして広島は当時下関を本拠地としていた大洋との合併が決まりかけてたけど土壇場でどうにかして、今まで命脈を保っているの」


「ふうん。でも今は十二球団だよね。そうなったのはいつなの?」


「単刀直入に言うと一九五八年からよ。ちょうどその年に長嶋茂雄が巨人に入団したんだけど、半世紀以上昔の話よ。そんなにも長い間、十二球団でやってきたからそれが当然あるべき姿、過不足ないちょうどいい数だって検証もしないまま言い出す人が出るのも仕方ない話よね。ただ本気でやるならNPBの組織的改革は絶対必要よ。球団としては色々な意見があって当然だけど、それを抑えてリーグとして指導力を発揮出来るか。チーム数拡大はこれが必須よ。当時のMLBは十六球団だったけど今では三十球団に増えたし、日本でもやりようによっては拡大出来るんじゃないのとは思ってはいるけど」


「アメリカかあ。そうだ、外国人とか増やせば手っ取り早く戦力を増やせるんじゃない?」


「二リーグ分裂時はともかく、それ以降の高橋ユニオンズや楽天はしっかりと外国人選手を獲得してるし、もし球団を作るとしたら貴重な戦力となるのは間違いないでしょうね。今は一軍に四人までだけど、例えば六人ぐらいに増やしでもすれば多少楽になるでしょうね。そういった部分含めての改革よ」


「整備すべき事は数多いね」


「でもまあ、整備していざ新球団誕生したとしても最初は苦労するでしょうね。楽天なんかも初期はベテラン揃いだったものを少しずつチームとして固めて、九年目で田中の大奮闘などがあってついに日本一だから。これはかなり順調なペースよ。でもそれがいきなり四つとなるとねえ。セリーグで言うと西日本は優勝せず消滅、大洋は一九六〇年、広島は一九七五年、ヤクルトは一九七八年に初優勝したけど、三十年近くの我慢が必要となってくるでしょうね」


「ううむ、やっぱり思いつきだけじゃ厳しいね。ところで、広島は今のところ順調に来てるけど交流戦はどうなるんだろうね」


「鬼門よね。通算の成績も大きく負け越してるし。まず交流戦は普段より日程がスカスカだから先発ローテーションも楽になるので各球団のエースクラスと当たる可能性が高い。六番手とか谷間の先発がほとんど回ってこないのよね。今までは投手の整備が追いつかず、さりとて打線も弱かったから大いに黒星を集めたわ。ただなぜか西武だけは得意としてるんだけど」


「西武、今年は不調だよね」


「でも西武ってここ数年は序盤不調だけど終わってみればってAクラスってパターンも多いし、疑わしいものよね。この間も岸がノーヒットノーラン達成したし。でもそんな岸をカモにしているのがカープで今まで八試合に登板して勝利なしの七敗、防御率も五点近くと信じられない数字となってるわ。去年なんか岸は一失点に抑えたのに、カープは中崎が一世一代のナイスピッチングを披露して結局負け投手になるとか、もはやオカルトの世界よ」


「よりによって中崎かあ。でも逆に言うと一失点に抑えられたって事はそろそろ終わるんじゃない?」


「それもそうね。実力がないから負けてるってわけじゃないんだし、その時が来ても驚きはしないわ。まあ岸はともかくとして、カープは一見打撃好調だけどエース相手だと当然苦労するだろうから、こっちの投手陣がどれだけ踏ん張れるかが大事よね」


「前田健太、バリントン、大瀬良に、篠田と九里もローテーションに入るのかな」


「とりあえずはそのメンバーで回すでしょうね。大瀬良はもう安心して見ていいかも知れないとして、篠田や九里は正直大丈夫とは言えないわ。そこで大事になってくるのが今二軍にいる面々。特に野村はどれだけ戻せるか」


「二軍と言えば、ウエスタンではよくやってるという話だった福井は酷かったねえ」


「本当に。去年からまったく成長していないと露呈しちゃったわね。そりゃあ駄目だろうとは思ってたけど心の奥底ではそれでも『いきなり好投して驚かせてほしい』とほんの少しだけ期待していたわ。でも駄目だった。上野炎上と同じで予定調和の世界、悲しくさえなかったのが悲しかったわ。まさか小野のほうがましとは。幸いリリーフ陣はミコライオ離脱は痛いものの一岡を中心にいい感じだし、後は先発なんだけど」


「篠田がここまでやってくれてるとは、みたいにはいかなかったね。それと打線だけど、かなりまとまってきたよね。堂林離脱は痛かったけど」


「気付いたら打率.255まで上がってたから痛恨は痛恨よね。一番打者ってのもなかなか面白い起用だったし。今は梵が一番で菊池、丸、エルドレッド、キラ、松山という流れが結構うまくいってるので得点力はなかなかのものよ」


「キャッチャーとか課題はまだあるにしてもね。そう言えば、DHは誰を起用するんだろうね」


「多分エルドレッドかキラでしょう。そしてDHじゃないほうがファーストを守って、外野には誰かが入るという形になるのが自然だと思うけど。栗原は、やっぱり駄目みたいだし」


「いっそロサリオでも使えたらなあ」


「フィリップスが駄目でミコライオの復帰が長引くって事になったらエルドレッド、キラ、ロサリオの並列が見られるかもね。ないほうが幸せだと思うけど。とにかく、苦手な交流戦だけどとりあえず五割を目処に戦ってくれれば。気付いたら二位阪神とは三ゲーム差。直接対決のない交流戦だからそんな簡単に差を詰められる事はないものよ。例えばカープが五割の十二勝十二敗だとしたら、阪神が追いつくには十五勝九敗が必要となるけど、簡単な数字じゃないわ。もちろん、カープが大きく負け越したりしたらその限りじゃないけど」


「交流戦優勝とかしなくても、そこそこなら十分って事か。でもそれすら出来なかったのが今までだし、より上を目指すならそういう悪い歴史は打破しないとね」


 そんな事を話していると敵襲を告げるサイレンがコンピュータルーム内にも大きく鳴り響いた。二人は即座に変身して敵の出現したポイントへと急いだ。


「ふはは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のオリックス男だ! この世界を叩き壊してやるぜ!」


 草原にオリックス男が出現した。パリーグの首位もオリックスだが、動物のオリックスとは綴りが違う。会社はORIXだが動物はIではなくYなので、オリックスバファローズとは動物を無造作に並列した名前ではない。


 好調の要因はやはり優秀な投手陣が第一だが、大砲ペーニャが加わったのも大きい。オフのマネーゲームではむしろ李大浩やバルディリスを他球団に引き抜かれてマイナスかと見られていたが、見事なものである。三原市出身の海田投手も今年はいまいちっぽいけど頑張れ。それはともかく、会社とは関係ないオリックス男を倒すために二人も草原に出現した。


「ええい、またも出てきたのかグラゲ軍。ここ数日はちょっと溜まったものなどもあるし、悪いけどここで放出させてもらうよ」


「今日はいつもより本気なんだからね、早くかかってきなさい!」


「やはり現れたな、エメラルド色の瞳を持つと言われる戦士。しかしまず戦うのは俺ではなくこの雑兵どもだ!」


 次々と出現した雑兵だが、普段と違って今日は大半が渡海雄の手によって破壊された。例の一件で溜まった鬱憤をものに当り散らすことによって晴らそうとしているのだ。瞬く間に雑兵は全滅となった。


「ふう、まったく。これで雑兵はすべてやったな」


「これ以上やってもあなたに勝ち目はないはずよ、オリックス男。出来れば撤退しなさい」


「馬鹿が。戦いはこれからが本番よ」


 そう言うとオリックス男は懐に隠し持っていたスイッチを押して巨大化した。それに対抗して渡海雄と悠宇もひとつになろうとした。渡海雄の内心にあるうねりのようなエナジックウェーブを悠宇はどうにかうまく同調させて、合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 悠宇はオリックスロボット持ち前の素早い動きからの突撃を致命傷にならぬようにうまく回避しつつ、隙を見計らって逆に体当たりを食らわせてバランスを崩した。


「よし、今よ!」


「ええい、メルティングフィストでとどめだ!!」


 渡海雄は朱色のボタンを押した。その瞬間、発生したプラズマ超高熱線によってメガロボットの右手は光輝いた。その輝く右の拳をオリックスロボットの胴体に向けて叩きつけると、そこは瞬く間に風の通り道となった。


「うおお、まさに驚異的なパワー。脱出するしかない!」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってオリックス男は宇宙の彼方へと帰っていった。シーズンはまだ半分も過ぎ去ってはいないので今後色々変動する可能性は大いにある。でも万が一、もしもこのまま行くとしたら広島とオリックスの日本シリーズとなり、それは開幕前おそらくほとんどの人は予想しなかった結果だろう。事前に「どうせ勝つだろう」と思われていたところが順当に勝つ事がほとんどだからこそこういうダークホースの躍動は心地良いのだ。


 そう簡単にはいかないだろうが最後まで走り続けられるといいなと願いつつ、また太陽は遠く沈んで今日の出来事を過去とした。

今回のまとめ

・球団数拡大する場合京都に出来ればいいな

・選手の確保とか球場とか難しい部分は多いけど基本的には拡大賛成

・広島とオリックスの日本シリーズって可能性があるだけで面白い

・交流戦はとにかく大負けしなければその後からでも挽回可能

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