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pr70 悪しき制度が消滅した2007年について

 冬も近づいたと思わざるを得ない昨今の朝夕の冷え方だが、日中はまだまだいける。しかし服装はほぼ冬用モードの暖かいものを箪笥から引っ張り出してきたもので、つまり試運転段階ってところだ。もこもことしたそれらの服をまとい、渡海雄と悠宇は連休を楽しんでいた。


「色々タイミングとか難しい部分はあるけど、ともあれ今回は昔話よ。二〇〇七年の事」


「前年はブラウン監督就任して新しいものを導入しようと奮闘していたね」


「その上で何を加えるかって事でまずはドラフトだけど、この時の高校生ドラフトは凄かった。一巡目では投打にセンス抜群で当初ロッテと競合って報道もあった前田健太を単独指名、三巡目には強打のキャッチャー會澤翼と二十年現役を続ける実力者を掴み取ったんだから」


「お見事! でも前田は来季楽天濃厚だってね」


「せめてオファーぐらいは出してほしかったんだけど、今は言わない事にするわ。そして大社ドラフトではパワーアームがほしいというブラウン監督の要望を容れて結果的に唯一の行使例となった希望枠でHonda鈴鹿の宮崎充登を獲得。高卒から十年在籍し指名時すでに二十八歳という高齢ルーキーだった。三巡目にはロッテ志望とされた上野弘文を強行指名、四巡目の青木高広は変則的なフォームからペローンという愛称を付けられた左腕、五巡目の中東も含めていずれも社会人出身で即戦力を求めた指名となった。本当は神戸って大学生の大砲候補も候補だったけど逆にロッテに指名された」


「なかなか熱い戦いもあったんだね」


「ドラフトは力入ってたと思うわ。ただ実は今回、当初は高校時代に一度振られてた木村雄太を狙っていたそう。でも水面下で接触した段階で相変わらず冷淡な姿勢だったので宮崎指名に移った途端木村は十二球団OKを表明。しかしカープ以外に希望枠を使おうとする球団はなく、前年最下位の楽天か横浜の指名濃厚になったところで在京パ希望と言い出した。結局横浜が強行指名したものの『来年はろくな希望枠候補がいないと知っている』みたいな事を言い放ち入団拒否。しかし年が明けた三月に西武からの金銭授受が判明、一場の件がありながら反省の色ゼロって事で不正の温床たる希望枠は消滅した。逆指名という名称から自由枠希望枠と変遷を経た一連の制度、終わってみれば十五年にも満たない歴史だったけどそれでも十分過ぎるぐらい球界を歪ませ腐らせた」


「そんな忌まわしい時代、終わって良かったね。しかし在京パって西武の事だったのか」


「いやこの時点ではすでに西武との金目は切れてて、その当てつけでロッテ志望だったみたい。その後謹慎期間を経てロッテに入団するもろくに活躍出来ず引退。こんな身も心も腐り果てた愚物がプロで成功するはずがないし、でもそんなのを追いかけ続けたスカウトに対する苛立ちもあってひたすら不愉快極まりない一件よ。そして次に外国人だけど、これは酷い。野手は相変わらずゼロで投手もナックルボーラーのジャレッド・フェルナンデス一人仕入れただけなんだから」


「ナックルボーラーか。ロマンに走りすぎでは」


「まあ連投が効いたり面白い投手ではあったけどね、所詮は有力選手を複数揃えた上で予備として組み込むぐらいが関の山の色物止まりだったわ。その本命たるべきダグラスは怪我のため出場ゼロだし。さすがにまずいと気付いたか、シーズン途中に前年まで中日に所属していたアレックス・オチョアを獲得。加齢もあり守備力は衰えてたけど打撃では力になった。また移籍も当初は巨人からテスト入団の大須賀允って内野手を獲得しただけだったけど、五月に去年来たばかりの山田真介で阪神で二軍の帝王やってた喜田剛を獲得。非力な選手が増えた中では貴重な大砲タイプで割と重宝された」


「相変わらず金をかけてない感じだね」


「それで選手成績だけど、野手の要は今年も百打点突破の新井に加えて栗原が三割突破するハイアベレージを記録して和製大砲二本柱体制が確立した。ただ他はかなり弱いかな。二千本安打達成の前田は三割未到達、梵はホームランが増えたものの不安定な数字だし、東出は当然非力。年々数字を落としていた嶋はレギュラー失陥、緒方の落ち方も見てれれない。森笠や廣瀬は無難に二割七分ぐらい打ってるけどもう一歩インパクトに欠けてて、アレックス獲らなかったらどうしてたのか。また捕手は相変わらず併用だけど石原も倉もやけに打撃好調。特に倉がこんなに打てるとは意外」


「併用ならこのぐらい高いレベルでありたいものだけどね」


「次に投手陣だけど、黒田が唯一の二桁勝利でやはり圧倒的な軸となったけど、大竹も防御率三点台で九勝とそれなりに形になってきた。ルーキー青木高広、先発にほぼ専念した高橋建、久々に頑張った長谷川もローテに入っていずれも五勝と悪くない仕事。佐々岡は前年で残る力を出し尽くしたようで引退。エースでありながら便利屋扱いで前へ後ろへと節操なく使われ続けたけど、それをこなし続けるタフさは見事だったわ」


「それを受け入れる人間性も含めて得難い投手だったね。お疲れ様でした」


「そして抑えの永川はかなり不安定な数字。セットアッパーは横山が六十試合登板で内容も良好。よくぞここまで戻ってきたものよ。林は春先の良さ含めて去年と同じ感じ。この林の五十七試合を筆頭に梅津が四十七試合、青木勇人が四十三試合とサイドスロー三人衆が頑張ったけど、だからこそパワーアームを希望したのも頷けるという」


「そのパワーアームこと宮崎や上野は?」


「いずれも三十試合ほど登板して、ルーキーとしてはそれなり。ただ宮崎とか二十代前半なら荒削りながらも来年以降に期待って言えるけど、来年すでに三十歳だからね。結局翌年以降は制球力向上と称して長所を削った凡庸な投手に成り下がったし、上野も期待されたほどの力はなかった。方向性は間違ってなかったけど、例の制度の上ではこの程度が関の山かな」


「悲しいな」


「そしてチーム成績だけど、四月から早くも借金を積み重ね、一時期は返済するも交流戦で馬鹿みたいに負けまくって最下位争いへ。十月時点でもかなり苦しかったけど最後ギリギリで五位浮上を果たした」


「うーん、なかなかうまくいかないね」


「優勝は巨人。FAで小笠原と門倉を獲得し、オリックスでは微妙な成績が続いていたのでトレードで出された谷も復活、木村拓也も頑張ってる。高橋由伸もあわやホームラン王と頑張ったし、投手陣では内海木佐貫高橋尚成がローテーションの柱となり、抑え転向の上原も安定感抜群だった。FA選手と裏金選手の両輪で掴んだ勝利と言える。二位は中日。大揉めしながらオリックス退団してしばらく未所属期間が続いた中村紀洋を二月に育成枠で獲得したところこれがなかなかの戦力になった。投手陣では中田賢一が十四勝と一気に台頭するなど新たな力が加わるも基本的には安定した面々による安定した戦いぶり。CSも制しついに五十四年以来となる日本一まで達成した」


「まさに歴史的勝利か。おめでとう」


「三位は阪神。前半戦は借金生活も夏場から一気に伸びて九月には首位に立つも最後は失速。久保田九十試合登板、藤川四十六セーブなどリリーフ陣に異様な数字が並ぶのは先発の弱さの裏返し。新人王の上園も所詮は八勝程度だし。四位は大矢監督復帰の横浜。引退試合の佐々岡からホームランを放ってタイトル獲得した村田が打線の軸となり巨人から移籍の仁志も奮闘。投手陣は三浦に加えてソフトバンクから獲得した寺原、門倉の人的補償で来た工藤などやはり移籍選手の活躍があった。最下位はヤクルト。青木首位打者に加えて不思議な魅力を持つガイエルがあわやホームラン王、グライシンガーが最多勝と新外国人も当たり続き。古田捕手が厳しくなったのは古田監督としては大変だっただろうけど、やっぱり最下位は落ちすぎかな。それで古田は引退と同時に退団。選手として選手会会長としての鮮烈な活躍から今に至るまで監督候補に希望する声は度々上がるも実現は果たされていない」


「結局二年しか監督やってないのか」


「まあ本人は今の立場が一番楽しいと思うわ。そしてパリーグだけど、優勝は日本ハム。ますます内容を高めたダルビッシュを軸にグリンや武田勝も安定感抜群だった先発、セットアッパー武田久から抑えのMICHAELのパターンも安定していた。打線は稲葉が首位打者獲得など光る部分はあれど小笠原が抜けて迫力不足は否めず。二位はロッテ。成瀬が十六勝一敗で防御率一位と好成績をマークするなど投手陣の安定感が高く、打線も見た目より得点力が高い。西岡の登録名TSUYOSHIは当時からダサいとかTSUTAYAとか揶揄されて、結局一年限りとなった。三位はソフトバンク。巨人から復帰の小久保がチームホームラン王、寺原とトレードで加入した多村も力を見せた。投手陣は杉内和田が軸。一方同世代の新垣はノーコンが悪化してシーズン二十五暴投の日本ワースト記録を樹立。斉藤和巳は十日以上の間隔を空けて登板させるなど大事に使ったけど肉体は限界で、結局この年が事実上のラストシーズンとなった。そして四位は楽天」


「おおっ早くも最下位脱出したのか」


「いや本当によくやったものよ。その中心は打者だと大ベテランでありながらここに来てホームランと打点の二冠を獲得した山﨑武司。一方投手は高卒ルーキー田中将大がいきなり十一勝で新人王獲得など若い力が伸びてきた。Aクラスにはまだ遠いものの着実に強化中。五位は西武。序盤は好調だったけど交流戦でかなり落として、そこから一時期は盛り返すも最終的には及ばず二十六年ぶりのBクラス転落となった。投手陣は涌井最多勝にルーキーの岸孝之も十一勝と力を見せ、野手だと片岡易之が盗塁王など若手の頑張りはあったけど、まああんな事件も起こしたし、これもまた宿命でしょう」


「そして最下位はオリックスか」


「アメリカから招聘したコリンズ監督は金子千尋、大引啓次など若手を積極的に抜擢して将来重視の采配を見せたのでこの結果もある程度は想定内だったかもね。今更復帰した元近鉄のホームラン王だったローズが力を見せるなど個々では光を見せたものの全体的に力不足。ヤクルトから移籍のラロッカはデッドボール多すぎで二十八死球は日本記録。ところで谷を放出した代わりに獲得した長田と鴨志田はともに高校時代は期待されてたけど巨人が囲い込み、でも二十代前半で早々と放出という経緯だった。特に長田はドラフト時『ロッテは長田に振られたから仕方なく西岡を指名した』みたいな扱いだったのに、結果的に『巨人がシャークトレードで戦力増強』って図式になったのは残念に思うわ。しかしカープはこのオリックスより勝率が低い。その上オフに激震が走る。FAで黒田はアメリカへ、新井は阪神へ移籍する事となった。黒田は仕方ないって感じだったけど新井はその後の支離滅裂な言動もあり死ぬほど叩かれまくった」


「ううむ、どうするの?」


「さあどうするでしょうね。なお優勝の巨人は最下位ヤクルトからラミレスとグライシンガー、横浜からクルーンを獲得する弱肉強食のえげつない補強に走った。カープも含めた下位球団は一生弱いまま金満球団に奪われ続ける運命なのか。そういう無力感すら漂う中で一体どうやって戦うのか。次回はそこを見ていきましょう」


 このような事を語っていると敵襲を告げるサイレンが所内に鳴り響いたので、二人はすかさず変身して敵が出現したポイントへと急いだ。


挿絵(By みてみん)


「フハハハハハハ、俺はグラゲ軍攻撃部隊のチビフクロモモンガ男だ。こんな矮小な惑星にすら光をもたらす叡智にひれ伏せ」


 オーストラリアに生息し、概ね名前の通り手のひらに乗るほど小さいながらも滑空可能な有袋類の姿を模した侵略者が赤や黄色に色づく林の中に出現した。しかし勝手に暴れては困るので、そんな地球の意を受けた二人がすぐさま到着した。


「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「こんな紅葉の中を戦場にする事なんてないものを」


「しかしここがお前達の墓場となるのだ。行け、雑兵ども!」


 寒くなりつつある季節に寄り添うかのように下された冷徹な指令に従うだけの殺戮マシーンの群れを、二人は次々と撃破していった。


「よし、これで雑兵は尽きた。後はお前だけだチビフクロモモンガ男」


「冷ややかな季節だからってそういう熱い戦闘なんて不要なのに」


「なら死ね。そして俺の栄光の土台となれ!」


 チビフクロモモンガ男はそう言い放つと、懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦うしかないようだ。二人は覚悟を決めると合体して大いなる力を得た。


「ヴィクター!!」

「エメラルディア!!」


 晩秋の青空のより高い場所で、この星の未来を決める激闘が今まさに行われている。そして悠宇は持ち前の反射神経を駆使して敵の攻撃を回避しつつ接近して、カウンターを浴びせた。


「よし今よとみお君!」


「分かったよゆうちゃん。ここはエンジェルブーメランで勝負だ!」


 一瞬だけ生まれた隙を逃さず、渡海雄は桃色のボタンを叩いた。肩から射出されたブレードを組み合わせて投げると、不規則な変化とともに敵を切り裂いた。


「ぐおおお! なんというパワーだ!!」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によって、チビフクロモモンガ男は宇宙の彼方へと帰っていった。大の里休場でどうなるかと思ったが安青錦初優勝で締めた大相撲など、この三連休にはいくつも重要なスポーツの試合があったがそれを楽しめるのも平和あってこそ。つまらない失言と相手方のイキリから不穏な情勢になりつつあるが、とにかく平和であるよう努めてほしい。

今回のまとめ

・木村雄太に対してはその人生に呪いあれと今も願い続けている

・即戦力が微妙かつ外国人も脆弱で最下位じゃなかっただけで上等

・全体的に移籍が盛況で今もこれぐらいだといいなと思う

・オフの流れも最悪だしこの時期のファンはよく耐えたものだ

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