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hg09 VICTORYについて

 ゴールデンウィークが意外と無事に終わったのは二人にとって幸いであった。まだカープは首位をキープしているし。もっとも「鯉のぼりの季節まで」という古来からの格言に従えばここからが本番となってくる。


 実際に先発陣では野村がいなくなってしまったし九里や篠田も危うい。中継ぎ陣では、もう今シーズン見ることはないだろうと思っていた上野が昇格を果たすなどきな臭くなってきた。苦手な交流戦も迫っている。このような苦難を乗り越えた先にあると言われる大いなる勝利を掴むにはあまりに遠い。


「と言うわけで『VICTORY』。これは一九九一年の十月に発売されたアルバムだよ」


「全然『と言うわけで』じゃないでしょ。それにしてもこのアルバム、ジャケットを見るだけでもコンセプトは明瞭ね」


「うん。個人的にテレビで見てて全然面白くない競技暫定二位のF1だけどこの当時はブームだったからね。だから当時の新作ガンダムもF91なんて名前になるし。そんな時流に乗って赤いレーシングスーツに身を包んだ七人がマシン中心にポーズという構図のジャケット。ルックスに関しては、真ん中分けの髪型をしてるメンバーが増えたのが特徴かな」


「佐藤敦啓に赤坂、それと山本もね。山本なんてまるで矢印よ。その中で内海と大沢は安定感あるわ」


「この時期はメンバーのルックスにマイナスが少ないのがいいよね。そして楽曲はまず『CANDY GANG』。作詞作曲西岡千恵子、編曲は佐藤準。イントロはカツカツしたシンセ音が印象的で下町に屯する不良っぽい雰囲気を醸し出してるけど曲が展開するにつれてポップになっていく構成が華やかな曲だよ。全体的にアメリカンな雰囲気でありつつ『悪ぶってても実は純情』というラインの歌詞もなかなか良好」


「出だしだけ聴くとまどろっこしい曲だけどサビはかなり印象が変わるわね。次は『KICK THE EARTH』。作詞作曲井上ヨシマサで編曲はATOMとかいうの」


「ATOMは井上と久保幹一郎というシンセサイザーのプログラマー、あるいはマニピュレーターとかオペレーターとも呼ばれるけど、つまりその曲を作ってる人がイメージしている音をシンセサイザーで実際に作ってプログラムする事を専門にしている人が組んだユニットだよ。シンセって色々な音を作り出せるけど、実際に作るのはかなり専門性の高い作業なのでそういう役割専門の人も存在している。またレコーディングした音源を一つの音楽として組み合わせる際にバランスとかをどうしようかってミキシングという作業もやはり専門のエンジニアがいつけど、ATOMの場合はそれも自分達でこなしていたみたい。そういうわけで他の曲とは異なる彼ら独特の世界観が出まくっている」


「ふうん、何だかよく分からないけど大変そうね。それで、実際これはどんな曲なの?」


「ガシャガシャと機械的な音が響いて不気味だけど、ATOMって大体こんなだからなあ。当時井上が付き合ってたとされる中山美穂に提供した『Rosa』ってハウスを採り入れたラテン調の曲が比較的有名かと思うけど、そういう感じの実験的なサウンドがここでも展開されている。面白いセンスではあるけど、気持ち悪く感じるのも正直なところ」


「ちょっとうざい曲ね。次は『豹になれ』。作詞松井五郎、作曲NOBODY、編曲米光亮。今回は英語の名前が多いわね」


「NOBODYはこれも二人組なんだ。矢沢永吉の関係者で、ロック調の曲に強い人達だよ。だからこの曲もガツンとしたサビが特徴だけど、間奏で諸星がラップを披露してるのは意外性大。これは米光のセンスかな。本格的にラップが日本のヒットチャートを賑わす前にこういうチャレンジもしていたよという貴重な挑戦の記録」


「ただ流れの中でラップは不要かもね。次は『GIRL! GIRL! GIRL!』。作詞原真弓、作曲林哲司、編曲和泉一弥」


「ファンキーなブラスがやたらと陽気な曲だけどそれまでのアーバンで硬派な曲が続いてた流れをぶった切ってて違和感があるよ。歌詞も古い漫画みたいで笑えるし。特に二番の脱力感は結構なもの。そして林はこれが最後の光GENJI提供曲となった。癖のある歌詞ばかりあてがわれて本当にご苦労様でした。『インナーアドベンチャー』『新世紀』と来て最後にこれだもの」


「曲としては個人的にありだと思うけど、確かにそれまでのF1モチーフの男らしくてメカニカルな流れから言うと唐突ね。次は『課外授業』。作詞高柳恋、作曲割田康彦、編曲佐藤準」


「仁義なき戦いみたいなイントロからシャッフル調の軽快な曲につながる構成が凝ってるね。そして『初めて訪れた恋愛感情について教科書には載っていないから戸惑っている』みたいな歌詞で無難にこなしてるけど、この手の制服が似合う曲はこの辺が最後になってくるからそう言う意味では貴重」


「次は『FLOWER OF MY HEART』。作詞三浦徳子、作曲都志見隆、編曲石田勝範」


「三浦と都志見はお馴染みだけど新味は編曲の石田。この人は七十年代から第一線でバリバリ活躍とキャリアも長く、だから使うミュージシャンも他よりベテラン。ベースの人はいわゆる団塊の世代で、GSでデビューしてジャズのビッグバンドを経てスタジオを主戦場に移したという経歴の持ち主みたいだし。またテレビドラマや映画の劇伴という仕事も多い人なので、ゴージャスな音の使い方が印象的。この曲もイントロのストリングスからして幻想的な朝ぼらけって感じで別格感出てるでしょ。歌詞は、叶わない愛を胸に抱く男が主人公。タイトル含めてさすが三浦という気障ったらしさが炸裂していて素敵だと思うな。もちろん素敵なのはメロディーもそうで、サビはかなりグッとくるし最後のコーラスも良い。ただ美しいだけではなく燃える部分も持っている曲で、『VICTORY』の雰囲気とはちょっと違うけど曲で言うとこれが一番好きかな」


「二番ではバイクとか出てきてこの辺がやや硬派要素なのかもね。次は『BATTLE』。作詞佐藤ありす、作曲和泉常寛、編曲馬飼野康二。歌詞が少ないわね」


「ふふっ、いいところに気が付いたね。そしてそれも道理。と言うのも、この曲からは通称『VICTORYメドレー』に入るんだ。全編曲馬飼野康二、青春をテーマにしたというメンバーのソロ曲がしばらく続くけどその第一弾がこの佐藤敦啓ソロの『BATTLE』。これはいわば序曲で、夏のふつふつとした熱気を感じさせる楽曲と歌声になってるよ」


「戦いが始まる直前の決意表明って感じね。次は『POLE POSITION』。作詞真名杏樹、作曲辻畑鉄也」


「これは内海のソロ。爽やかでなかなかいい曲だよ。内海の歌声は相変わらずパワー不足だけどこの曲ではギリギリ声が出てるから全力で叫んでる感じになってるのも乏しいスペックをフル活用してるみたいで好印象。こういう爽やかなお兄さんってキャラクターがやっぱり内海には合ってるよ。『君を探して』みたいな変な色恋沙汰じゃなくて」


「カウントダウンも力入ってるわね。それにタイトルからしてもやっぱりF1レースがモチーフなのね。時々マシンが通り抜けるような音も入ってくるし。次は『MY FRIEND』。作詞夏目純、作曲鶴久政治」


「作曲の鶴久はチェッカーズだね。これは山本のソロで引き続き快調な曲だけどタイトルからも分かるように友情がテーマ。『POLE POSITION』よりさらに素直な曲であっという間に終わるよ」


「ちょっと似た印象の曲が続いたわね。次は『DEAD MAN'S CURVE』。作詞平井森太郎、作曲NOBODY」


「作曲NOBODYだけにロック調な大沢ソロ。快調に飛ばすだけじゃなくてここらでちょっと捻り入れてきましたって感じでアクセントになってる」


「次は『LOVE』。作詞佐藤大、作曲上田知華」


「急に意識が飛んだかのような赤坂ソロのバラード。作詞の佐藤は内海より若い新鋭だけどドラゴンボールZの楽曲制作チームモノリスに参加しており、アニメ系の仕事が多い。今は脚本家もやってる。作曲の上田は、上田知華+KARYOBINって知ってる、はずないか。ギターとかドラムがいない、ピアノと弦楽器の奏者が組んでいたバンドで上田はピアノとボーカルを担当してたんだ。それと作曲もね。その解散後は今井美樹なんかに曲を提供してたけどたまに自分で歌ったりもしてる。と言う事でこの曲自体はそれなりに叙情的ではあるけどアレンジも軽いしどうって事ないけど、赤坂の甘い声によるサビのタイトル連呼はなかなかインパクトあるよ」


「次は『OVER THE DREAMS』。作詞津田りえこ、作曲来生たかお」


「佐藤寛之ソロ曲で、これもバラード。ただ曲が『LOVE』よりも劇的と言うのかな、ストリングス導入の効果もあってかなりの名曲だよ、これは。もうレースとかどうでも良くなってるような気がしないでもないけど、そもそも佐藤寛之の声質自体がバトルだのレースだのに合ってないんだから無理するより歌声に合わせた曲を作ったほうがいいって判断は間違いではなかったはず。ただ惜しいのはメドレーの一曲という扱いなので短い事。フルバージョンがあればいいのにね」


「顔だけじゃなくて歌声もはっきりと個性が出てきたみたいね。次は『CHECKER FLAG』。ああ、ここでゴールにたどり着いたのね。作詞森田由美、作曲山本英美」


「ソロメドレーのラストを飾るのは諸星で、これはバラードと言うよりミディアムテンポって事でいいのかな。『終わったなあ』と実感させるしみじみとした、かつドラマチックでもありスケールのある曲だよ。やっぱりちょっと短いのが残念」


「最後はそればっかりね。そしてラスト『WINNING RUN(NEW VERSION)』。作詞森浩美、作曲馬飼野康二」


「これは八月に出た当時の最新シングルだよ。それでいて光GENJI史上においても屈指と言ってもいいパワーのある素晴らしい曲なんだ。イントロから早くも燃えるし歌詞も曲も熱血路線を爆走、と言うかここまで来るとほとんどアニメソングの領域まで足を踏み入れてるような楽曲で、初めて聴いてすぐ好きになったよ。Cメロの歌詞とか『確かに人気は落ちてるけどまだまだ頑張るぞ』という決意表明みたいで、これもなかなかに熱い。紅白でも歌われたけど、そっちはこのニューバージョン。どう違うかと言うとね、シングルバージョンは炎だけどこっちは光って言うのかな。より疾走感を重視したようなアレンジとなっているんだ。特にキーボードの音色と芳野藤丸のギターが印象的だね。シングルではミュージシャンにドラムがいるけどニューバージョンにはいなかったり、色々変わってるよ」


「ふうむ、確かにパワー重視とスピード重視みたいな違いはあるわね。個人的にはシングルバージョンのほうが好きだけど、ニューバージョンもなかなかの出来栄え」


「元々いい曲だからそりゃあね。ついでにカップリングの『熱帯夜』についても言っておくね。作詞高柳恋、作曲鈴木キサブロー、編曲米光亮。管楽器が活躍するラテン調の曲だよ」


「二番の歌詞の表現とか、なかなか大人びた雰囲気でいいんじゃない。それにしても赤と橙色の縦縞をバックに、胸に布の花をつけた白いスーツというジャケットがやたらとおめでたいわね」


「ジャケットはそれこそレーシングスーツで良かったんじゃないかなとは思うけどね。完全にF1モチーフの曲なんだし。さて、まとめるとこのアルバムの序盤は硬派なイメージだったけど唐突に軟派路線に走ったり、メドレーも一つ一つの曲は悪くない分かえってインパクトの点では中途半端に終わってたりと、本懐を遂げられなかったという印象は正直受けるね。コンセプトは明確だったはずなのに全体的なまとまりが意外と取れてない印象。ただ個々の曲は決して悪くないよ。買いたいと思えばどうせAmazonじゃ限りなく安価で売られてるんだしそれもいい。それと初回限定盤ではステッカーが付いてるけど、これはあってもなくてもどうでもいいよね、今更」


 このような事を語っていた次の瞬間、敵襲を告げる警告のサイレンが部屋中に充満した。連休を微妙に外して、奴らは来たのだ。決して地球人を安心させないトリッキーな戦法にやや苛立ちながらもどうにか心を落ち着かせて、二人は敵が現れたポイントへ急行した。


「ふっ、俺はグラゲ軍攻撃部隊のコイ男だ。俺個人としちゃあこの星の大気圏でも生存出来るんだがグラゲ共栄のためには変わってもらうしかないな」


 屋根より高い山の上に出現したコイ男はこのようなことを呟きつつ侵攻を開始しようとした。しかし間もなくその足取りは止まった。地球よりの使者が出現したからである。


「現れたなグラゲ軍! お前たちの陰謀は絶対に完遂させないぞ!」


「あなたが登っていられる季節はもう終わったのだから、おとなしく降りてきなさい!」


「ふふっ、貴様らが噂に聞く逆臣ネイの作り出したという二体か。その実力、とくと見させてもらうとするか。行け、雑兵ども!」


 こうして襲ってきた雑兵を二人は瞬く間に撃破して周辺には三人だけとなった。


「よし、後はもうお前だけになったなコイ男!」


「名前的にちょっと手を出したくない相手なのは認めるから、とにかく今ならまだ間に合うから退いてほしいわね」


「グラゲ軍人たるものこの程度で退いてはいられんよ。戦いはまだ終わっていないのだからな」


 そう言うとコイ男は懐に隠し持っていた秘密のスイッチを押して巨大化した。負けじと渡海雄と悠宇の二人も合体してそれに対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 屋根どころか雲よりも高く聳え立つメガロボットとコイロボットの二巨体は大地を揺るがしかねないほどの強烈なパワーをお互いにぶつけ合った。力勝負では五分五分で長丁場になるかと思われたが、一瞬のタイミングを見計らって悠宇は内股を仕掛けた。見事にはまって転倒するコイロボット。そしてこの大きなチャンスを見逃す渡海雄ではなかった。


「今よ、とみお君!」


「よくやってくれたゆうちゃん! ならばここで必殺の、メガロソードだ!」


 渡海雄はすかさず赤いボタンを押した。輝くソードが左腕から召喚される。それを素早く握りしめて、コイロボットめがけて投げつけた。ソードは敵の腹部を貫いた。


「ううむ、これほどの力があるとは。逆臣ネイ、やっかいな敵が出現したものだ」


 爆散して空の塵と化す直前に作動した脱出装置によってコイ男は宇宙に帰還した。鯉のぼりの季節は終わったが戦いはまだまだ続く。また気を引き締めて、明日以降に臨まなければならない。早速今日の先発は福井という剣が峰。多分駄目だろうけど万が一好投してくれたら結構楽になるだけに、期待はするが駄目でも上野が炎上したと聞いた時と同じ心持ちでいたいところ。

今回のまとめ

・交流戦はどうにか五割前後で行けたら幸い

・テレビで見て面白くない競技暫定トップはゴルフ

・序盤の雰囲気で固めてればまとまったコンセプトとなってただろうに

・メドレーも不発気味に終わったけどWINNING RUNは名曲

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