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ng02 2014新春記念 カープとサンフレッチェについて

「明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました」


「今年も我ら南郷宇宙研究所の職員一同、地球の平和を守るために粉骨努力する所存です」


「そして地球とグラゲの間に宇宙を巡った真の友好関係を築かれん事を祈願いたします」


「と言うわけで、今年もよろしくお願いします」


 時あたかも二〇一四年一月一日の朝、元旦である。これぞ冬であると声高に主張するような冷たく、しかし澄んだ空気は蒼天をより鮮やかに引き立てている。


 ぺこりと頭を下げるのは右から紺色のトレーナーに青と黄色のベンチコート、下半身はワインレッドのハーフパンツと黒いハイソックスで寒さをものともしない野性味を醸し出す渡海雄、和装とインバネスコートの組み合わせがダンディーな南郷博士、象牙色のトレンチコートと黒いブーツのネイ、白いセーターと赤と紺色のチェック柄が入った折り目付きのスカートに白いタイツといつになく女の子らしい雰囲気の悠宇という順番である。


 赤く大きな鳥居をくぐり、本殿に向かい賽銭箱に五円玉を投げ入れてから手を合わせる。地球人もグラゲ人もみんな、命を愛し合える日がいつかきっと来るようにみんなで祈った。それが今日この瞬間にかなうならどれだけ幸せであろうか。現実はそうではない。しかし諦めずにそれを信じて行動し続ければいつかその日が来るかも知れない。一人の祈りは小さな塵に等しいとしても積み重ねればうねりともなりうるものである。


 おみくじは渡海雄は吉、悠宇は中吉だった。そして早速一年の運試しとばかりに両手を皿にしてお年玉をねだったところ、研究所の皆さんがごっそり差し出した結果文字通りに桁違いのとんでもない額が集まったので喜ぶどころか真っ青になる有様であった。


「ははは、ははははは。まずいなあ、こりゃあまずいですよ」


「ねえ、想像以上の成果だわ……」


 笑顔を見せようにもこわばってうまく表情を作れず、言葉もまた震えてうまく繋がらなかった。それは決して寒さのせいばかりではない。もちろん今まで以上にもらえるだろうという皮算用はあったが、それにしても多すぎたので逆に恐縮しているのだ。


「遠慮することはない。私たちが今ここで祈ることができるのもひとえに君たちのお陰なのだから」


「いえいえ、そうは言ってもこの額ですよ! こんだけあれば大抵の事はできますよ!」


「私たちが全て責任を持たなければならない事態に君たちを巻き込んでしまったのだから、せめて戦う時以外は自由に生きてほしいのだ。有意義に使ってくれ」


「はい、分かりました! うわあ、どうしようかなあ。こんな大金持ったことないからすぐには思いつかないや」


「私は、まずは新しいグローブを買って、それにバットとスパイクとサッカーボールと、ゲーム機と、それに……」


「ふふっ、夢が膨らむね。まあとりあえず今すぐ使う必要もないし貯金しておきます。それじゃあ、また」


「うむ、今年もしっかりと頼むぞ」


「ええ、こんなに貰ったんだから、損はさせませんよ。しっかり年俸分をペイできるぐらい働きますから、楽しみにしててくださいね!」


 南郷博士もネイも本当は二人が一切働かずに済む事が一番だと思っているのだが本人もやる気だし、実際問題そうならない事は確実なので余計な事は言わないようにした。ただささやかな微笑みだけを残し、そして手を振った。


「やっぱり頑張った甲斐があったわね。こんなあったら今年はもうお金いらないわ。いっそカープに寄付しちゃおうかしら」


「でも二人分足しても育成枠一人にも満たないんだから球団経営も楽じゃないよね」


「本当にねえ。ましてや勝ちながらとなると年俸も上昇していくし。やっとAクラスに入ったけど成績はそれほどでもないし、それでもそれなりに上がる選手は上がってるから」


「特に外国人は結構行ってるみたいだね。それにしても、大竹の人的補償選手が決まるのも結構時間がかかったよね」


「その結果一岡投手という若手で、二軍成績は上々だしなかなかの選手じゃないかしら。ただ大竹離脱はマイナスが大きいわね。前田、バリントン、野村は健在としても去年大竹が担った163イニング防御率3.37という分を誰が埋めるかよね。今井、中村恭平、中崎、篠田、福井、戸田、ううむ」


「不可能とは言わないけど、その名前じゃあ不安しかないなあ。それに久本も先発やるって話あるけど」


「久本は去年も色々なところで投げてたけど、先発としては球数が多く五回でもう汗だくだくだったイメージが強いから、どうなのかしらね。よしんばローテ定着したとしても結局リリーフを多くつぎ込むようだと微妙だし」


「それとルーキーもいるじゃない。大瀬良と九里亜蓮、大学でも実績あるんでしょ」


「そうだけど、基本的にプロで一球たりとも投げた事のない投手を計算に入れるのはちょっとねえ。もちろん去年で言うヤクルトの小川や楽天の則本みたいにいきなり大活躍してそれこそ大竹の穴を埋める活躍をするかも知れないわ。でも東浜みたいに一年目は苦しむかも知れないし、それはせめてシーズンに入ってからじゃないと判断もできないわ」


「まずはキャンプからオープン戦にかけてどれだけやれるかだね。案外リリーフに活路を見出すとかそんな展開だったりしてね。そう言えばリリーフはどうなの?」


「うん。ここも基本的には去年と変わらない面子じゃないかしら。ミコライオ、今村、永川、横山。ただ横山あたりは年齢的にもフルシーズンの活躍はきついかも知れないわね。去年の序盤のピッチングを見ると引退の二文字さえ頭に浮かんだほどだったし」


「それで言うと永川もどうなんだろうね。ピッチング自体は案外安定感があったけどある種病み上がりで今年は本格的な復帰をかけたシーズンになると思うけど」


「そりゃああのピッチングが持続するならかなりの戦力よ。場合によっては抑えとして復権するぐらいのね。それに一岡もリリーフタイプで案外ガンガン行けるかもね。中田もそろそろシーズンを通して活躍してもいい頃合。左では新加入のフィリップスは先発なのかリリーフなのか。ワンポイントとして序盤活躍した河内、それと個人的には岩見よね。球自体は使えると思うんだけど、コントロールがほんの少しでも改善されれば」


「それでまた今井あたりがリリーフに回るのかなあ」


「本当は先発で頑張ってほしいけど結局はそうなる可能性はそれなりに高い気もするわ。そしてその投手陣の球を受けるキャッチャーは、まず第一には石原よね。FAもせず、怪我に気をつけて今年も頑張ってほしいわ」


「二番手は倉で、でも年齢的にもいつまでいけるか分からないから早く會澤なり磯村なりが台頭したらいいのにね」


「ドラフトでも人的補償でもキャッチャーを獲得しなかったということは石原は当分磐石だし、その石原が健在な間に今いる若手が使えるようになってると計算してるはずよ。うまくいくといいんだけど。まずは倉が引退しても大丈夫だと思わせるぐらいの活躍をして地盤を固めてほしいわね」


「そうなると中堅どころで実績皆無な白濱あたりは厳しくなるね」


「彼はそもそも実力的に厳しいから。さて、内野手は基本的にファーストキラ、セカンド菊池、サード堂林、ショート梵でしょうね。ただそれぞれに磐石とは言い切れない事情があるから彼ら以外も出番はそれなりにあるでしょうね。例えばキラはシーズン途中加入で相手としても探りながら投げる部分はあったけど今はもう十分にデータが集まり、それを練る期間も十分にある。だから弱点を突かれて去年ほど打てなくなるかも知れないわ」


「その懸念が現実になると、ファーストは栗原の出番になるのかな」


「栗原がしっかりしてたらキラはいなかったでしょうに。それはともかく、ここ二年は全然仕事してなくて去年の二軍成績なんかもまったくお寒いものだったし、まずは自分との戦いよね。栗原も駄目なら外野から人を呼ぶ事になるか、また新外国人途中加入となるか。ただキラが実力を発揮できればそれで終わる問題だけど」


「だよねえ。やっぱりパワーが違うもの。セカンドの菊池は守備ではもう敵なしに見えるけど、やっぱり打撃はもう一歩だよねえ」


「去年の成績がまず最低ラインみたいなものだし、それを下回るようだとちょっと困るわね。ショートの梵は実力十分だけど膝に問題を抱えていると言うし。二遊間は他に木村、小窪、安部、それに上本も守備だけは一軍クラスと証明したし、さらに田中という新人も加わったから比較的揃ってるほうよね。それと東出もいるけど、怪我からどれだけ回復してるかよね。現状菊池を凌ぐってビジョンが全然浮かばないし、案外あっさり引退なんて事になったりしてね」


「それとサードは堂林で決まりなの? もっと競える人材がいればいいのに」


「サードに関しては本当に人材がいないから、堂林を外すとしたら前述の二遊間の選手が回ってくる展開になるでしょうね。一応報道ではポジション白紙って言うけど、実際問題堂林が一番手になってしまうんじゃないかしら。いい加減期待だけではやっていけない頃合だけど」


「そろそろ勝負の時期なのかな。同期の大卒が入団する年齢だしね。そして外野は、本当どうなるんだろうね」


「ここばかりは何とも言えないわ。とりあえず丸は規定に到達したから本命とは言えるでしょう。それにエルドレッドも他にない突出したパワーを有しているから出来れば使ってほしいわね。ただ外国人枠もあるからどうなるか。他には松山や序盤好調だった廣瀬は多少力になってくれるはず。岩本はいっそこのまま代打に専念したほうがいいのかもとか思っちゃうわ。赤松も控えならまだしもスタメンで使われてるとがっかりするタイプだし。天谷、中東、迎あたりは、まあね。こう見ると外野はまだまだ脆弱で、その分チャンスは多いとも言えそうね」


「二軍からバシっと活躍する選手が現れたらいいんだけどね。まあファンタジーの領域になるけど。ところで、まとめになるけど今年のカープは何位に入ると予想してる?」


「そりゃもちろん一位よ!」


「えええっ! そ、それは、無理じゃない? 率直に言って巨人のほうが強そうに見えるけど」


「それぐらい知ってるわ。普通にやればそりゃあ巨人優勝よね。元々戦力が豊富な上に補強も決まったし。でも今以外にカープ優勝と言えるタイミングなんてそうないわ。何、全部がうまくいったら優勝できるわ。可能性は限りなくゼロに近いのは言うまでもないけど、一応ゼロではないから」


「いやあ、でも実際は不安要素満載だしとりあえず三位が目標なのかなあ。DeNAが先発を補強したりしてるし、案外今年は上がってくるんじゃない?」


「久保に高橋尚成と名前を見るとなかなかの補強に見えるわね。でも補強より大事なのは若手投手がちゃんと成長するかよ。いわばチームの根幹となる部分なんだから。あのチームの暗黒時代はそこが弱かったのが原因だし、今も解決していなから打線が頑張ったところでそううまくいくとは限らないわ」


「普通はそんなずっと暗黒ってないと思うけどなあ」


「あそこはもはや普通じゃないわ。さて、ヤクルトは怪我人と不調だった選手がどれだけ戻るかが鍵ね。中日はよく分からなさを醸し出してはいるけど、新外国人がうまくいったら面白いんじゃないかしら。割と世代交代に苦しんでいるイメージだけど。阪神のスタンリッジ退団はカープで言う大竹退団と同じようなダメージとなるはずよ。ただそれでも投手力は高いし打撃が奮闘できるかよね。去年の終盤みたいに四番鳥谷にならざるを得ないようだと与し易くなるけど」


「こう見ると他のチームも大概穴はあって、やっぱり巨人優勝が現実的に一番可能性高そうだよね。残念だけど」


「まあ金をかけてるチームが勝つのは当然だし、それでちゃんと結果を出せたらまだいいのよ。巨人ファンだって勝ちさえすれば喜ぶし。逆に金をかけて選手を獲得してるのに獲得されたチーム以下の順位に沈むチームとかあったらそっちのほうがお笑い種よ」


 このような事を話しているうちに渡海雄の家に着いた。「せっかくだから寄ってかない?」という渡海雄の提案に同意した悠宇は玄関をくぐり、NHKにチャンネルをセットして天皇杯の決勝戦を見た。


 しかし試合は前半からマリノスのゴール連発で早くも大勢が決まり、こたつやエアコン程度ではフォロー不能なほどの非常に寒い空気が室内を覆った。もう見てられないという事で近所の公園に行って羽根つきをする事にした。


「いやあ、駄目な流れだよねえ、明らかに」


「本当にねえ、期待するとこれよ。まあサンフレッチェが天皇杯の決勝で負けるのはいつもの話だから。それに良かったんじゃないの、マリノスが無冠じゃなくて。去年のリーグ戦があんな結果だったしせめて天皇杯ぐらいはね、獲らないと」


「ところで、今年のサンフレッチェはどうなるんだろうね? 去年はまさかねえ、連覇できるなんてとても思わなかったけどそうなったもんだし。三連覇って狙えるのかな?」


「二度あることは三度あるとも言うしそりゃあ可能性はあるでしょうね。ただサンフレッチェは定期的に選手を抜かれてもうまく補えているからどうにかいい順位でいられ続けてるわけで、それがいつまでも続くと楽観的に考えるのもちょっと自分を偽っているようで難しいわね」


「でもレギュラーは大体固定されてるよね。GKは西川で、DFは塩谷千葉水本、ボランチには森崎兄と青山、右にはミキッチで左はアレだけど。シャドーは石原と高萩でワントップに佐藤寿人って。ああ、でも西川移籍って話だよね」


「GKに関しては林卓人獲得って話もあるし、サイドハーフも甲府の柏という選手を獲得するって話があったり、それと中盤の柴崎が来るとかいう話もあってそれなりに補強計画を進めているらしいわ。その辺は今日の試合が終わってシーズンが完全に終了してからより具体的な行動となるでしょうね。ただ当然相手は去年以上にサンフレッチェを分析し尽くした上で臨んでくるでしょうし、ACLにも出る必要があるし」


「ACLか。また負けるのかな?」


「厳しいでしょうね。ただそもそも去年だって物凄く強いチームが順当に実力を発揮しての連覇って話では全然なくて、普通にやってればマリノスって流れだったのに向こうが勝手に手放したものを拾った優勝なんだし、変に気負わずやるのが一番じゃない? ただJリーグの歴史を見ても今まで連覇出来たのはいずれも関東のクラブだったのよね。そもそも最初から半分以上が関東で、それ以降も関東周辺には多くのクラブが生まれてJ1にも昇格したけど中国四国、それに九州と近隣地方のJ1クラブはなかなか増えないという現状。去年に関しては関西のクラブもJ2が多くて移動だって簡単じゃない中でそれでも広島だったから、そこははっきりと誇ってもいい部分よね」


「関西はセレッソだけで九州に鳥栖と降格した大分か。でも今年はガンバ、神戸、そして徳島と一気に増えたから心強いよね。そう言えばスタジアムの話もどうなるのかなあ」


「そのうち出来るでしょ。ただ色々な流れを見るに今の希望通りとはいかないような気もするけど、それならそれでまた別の流れも生まれるでしょうし。ううむ、どうも漠然とした言い回しになってるけど実際どうなるとか分からないから」


「実際クラブでスタジアムを建てられるほどの財力はないから当然自治体との協力が不可欠となるし、広島県も広島市もそんな余裕あるわけじゃないからね。でもいい時期だけじゃなくて苦しい時期もあった中で頑張ってきたんだし、それにふさわしい舞台があるともっといいよね」


「そうね。とにかく、今年が多くの人にとって素晴らしい年であるならばそれが一番よ。さて、しっかり遊んだしそろそろ帰らなきゃ。じゃあ、またね!」


「うん!」


 いつしか空はくすんだ雲に覆われていた。幸い今日は敵襲なく終わったが明日はどうか分からない。明日来なくても明後日はどうか、誰にも言えない。そんな不確実性の日々をそれでも前向きに生きる事が出来るかが大事になってくるのではないか。なお天皇杯は案の定と言うべきか、マリノスが前半に相次いで奪った二得点で勝利を収めた。

今回のまとめ

・実際はとりあえずAクラスキープできたら上々か

・前田もそのうちポスティングだろうしいる間に優勝できれば

・相変わらず天皇杯弱いサンフレッチェもとりあえず賞金圏内なら及第点

・今年が皆様にとって素晴らしい一年でありますように

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