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sk10 補欠選挙と再選挙について

 一年中このぐらいの気温ならこの星もよっぽど過ごしやすくなるのに、と嘆息したくなるほど快適な日々を送っている。しかしその内心は天気ほど穏やかとはいかないようであった。


「それで昨日、補欠選挙などが繰り広げられたね。舞台は北海道、長野、そして広島だった」


「しかも結果は自民の三連敗という」


「まあそうもなるわね。まず衆議院北海道二区に関しては、選出されていた元農林水産大臣の吉川貴盛議員が不整脈と称して、しかし実際は卵の会社から貰ってはいけない金を貰っていたとバレたから去年の十二月に辞職、その後贈収賄の疑いで起訴されたというもの。自民党としては不祥事絡みでは勝ち目なしと踏んだようで候補者の擁立を見送る、いわば不戦敗となった」


「それで立憲民主党の元議員が復活したみたいだね」


「続いて参議院長野県選挙区は、立憲民主党の羽田雄一郎がこれも去年の十二月、現役の国会議員としては日本初となるコロナウイルスで亡くなった事に伴う補欠選挙だった」


「そういうニュースもあったね。確か五十代で、まだ政治家としては若い方だったのに」


「こっちは自民党としても特に負い目はないので候補者を擁立したけど、野党からしても元々この羽田一族は三代に渡って国会議員を輩出してきた安定の地盤。その上で立候補したのが雄一郎の弟である次郎という弔い合戦だったので当初から羽田有利が報じられていたけど、その通りの結果となった。とは言えここまでは自民党としても想定内だった」


「残るは広島か」


「実はこの参議院広島県選挙区のケースは他の二つと異なっているのよ。北海道と長野は一度ちゃんと選挙に勝って選出された議員が亡くなったり辞職したりしたから行う補欠選挙。しかし広島の場合はそもそも当選が無効になった上でもう一回選挙をやって選び直しましょうって再選挙だからね。だから補欠選挙は割と毎年のように開催されているけど、再選挙となると九十二年の参院選で当選した愛知県の議員が選挙公報に記載された学歴が詐称だったと発覚したため有罪決定した九十四年以来となる」


「そんなにレアな展開だったのか」


「よっぽど悪辣じゃないとありえないって事。そして今回の当事者は言うまでもなくあの河井案里だからね。まあよっぽどの事案よ」


「あれも結局罪を認めたんだっけ」


「認めたと言うか認めさせられたと言うか。まず一連の選挙違反事件の顛末を語ると、十九年の参議院選挙、それまで広島県選挙区は与野党が議席を分け合うのが通例となっていたけど得票数を見ると自民が常に圧倒していた。だから上手く票を分ければ二人当選出来るんじゃないかと中央の人間が考えて、元々のベテラン溝手に加えて案里も立候補させた。でも地元である広島県連としては反対だった。そんな事やったら地域の支持層が分断されるのは目に見えてたからね」


「それでも中央からの圧力には抗えなかったのか」


「まあそこにも色々あって、つまり溝手は岸田と同じ派閥に所属している上に当時の安倍総理をかつて批判した事があった。一方案里の夫である克行は逆に安倍を早いうちから支援して側近となっていた。安倍としてはどっちを贔屓したいかは言うまでもないでしょう。だからそれが選挙戦における党本部からの支援金が十倍違うというあからさまな格差にも表れたし、野党候補は無視してひたすら本来仲間のはずの溝手を叩くという本末転倒も甚だしい選挙戦略も私怨ゆえよ」


「そして本来盤石だった溝手の地盤を崩すために大規模買収が繰り広げられたと」


「加えて案里の応援に菅、二階、河野など自民党の大物議員が連日駆けつけた上に安倍総理が来た時には一緒に岸田までもが登壇するという信じ難い光景まで繰り広げられた。自派の溝手を捨ててまで安倍に媚びる地獄の光景。ともあれこの分厚い支援もあり七月に案里が当選、九月に克行が法務大臣として入閣したけど十月に例の疑惑が報道されるというハイペースの展開を経て、一気に疑惑の夫妻としてその悪名は日本中に知れ渡った。しかもこの夫妻を捜査する中で克行と仲が良かった吉川議員の疑惑も発覚したし」


「色々繋がっているんだね」


「そして去年には現役国会議員夫妻同時逮捕という憲政史上初の失態を引き起こすも毒を食らわば皿までの精神か罪を認める気配はなく、有罪判決が下ってもまだ戦う気は満々だった。そうやって判決の最終確定を引き延ばす事で国会議員としての実質がないにも関わらず歳費だの何とか手当だのを全部手にしたんだから、まさしく底知れぬ意地汚さの為せる業よね」


「そんな人間がよく辞任、すなわち自分の有罪を認めたものだね」


「自民党にも色々戦略があるからね。つまり広島なら勝てるかも、という計算から案里には辞任してもらう事にした」


「嘘でしょ! あんな無茶苦茶やられたのになおも勝つ可能性なんてあるの?」


「広島県はかつて日本屈指の宰相である池田勇人を輩出した土地でもあり盤石の保守王国。余計な事をしなければ負けるどころか苦戦すら考えられないぐらいのね。しかも補欠選挙とかそういう通常じゃない選挙の投票率は基本低下するし、不祥事が理由という政治不信が高まる展開も合わさるとね。コロナもあるし。それで投票率が低くなると有利なのは何があっても同じ候補に入れるよという地盤が強固な方。それは言うまでもなく自民党よ」


「まあだから一昨年には両取りも狙ったぐらいだもんね」


「更に野党は今回仮に当選したら四年後には野党現職同士の争いが予想されるので強力な候補を出しにくいだろうという読みがあり、実際当初有力とされた人物に断られ候補者一本化が自民より一ヶ月ほど遅れるという足並みの乱れまで露呈していたから、勝利もあながち夢物語ではないように思えた。それで前もって確定していた北海道と長野は負け確定的としても、広島で一矢報いれば一応の面目は立つという計算だった」


「あそこまでやりたい放題した上で次も入れてくれるだろうって、馬鹿にしてるよね。結局計算通りにはいかなかったみたいだけど」


「それでも地盤が強いから、という楽観論もあったけど途中の情勢調査で横並びか野党リードと報じられた時は衝撃が走ったわ。若くて政治色のない元官僚を連れてきた自民党の人選も間違ってなかったと思うけど、結局逆風が強すぎたという事」


「まあ、そうもなるよね。一方で全勝の立憲民主党は弾みに、と思ったけど宮口は『結集ひろしま』なる諸派の候補なんだね」


「野党共闘のためあえて特定の色が強すぎない政治団体からの立候補にしたようだけど、まあそのうち立憲民主党とかに入るんじゃないかな。なお広島県において諸派候補が勝利した例としては九十二年の栗原君子がいる。これはどうやら当時も野党共闘が図られたものの統一候補に当時の社会党の左派が納得いかず独自に栗原を擁立、本来共闘してるので社会党は表立って公認とか出来なかったから『護憲・ヒロシマの会』とか言う名前からしていかにもな政治団体を立ち上げたものの社会党の大物が応援に来るなど事実上の社会党候補として機能した結果みたい。実際栗原はその後新社会党に進んだみたいで、ガチな人だったのは間違いなさそう」


「色々なパターンがあるものだね」


「それが歴史というものだからね。それで今回の件をまとめると菅が総理になって初の国政選挙かつ今年中には衆議院の任期が切れるから否が応でも開催される総選挙の前哨戦として、政権への評価でもあるこの結果をどう受け止めてどう動くか」


「これでちゃんと中央の人達が責任を痛感して、コロナ対策とか上手くやればいいのにね」


「しかし自民党内で一番ダメージを受けるのはお膝元で負けた扱いになる岸田だというから哀れなものよ。確かに総理の座に目がくらんで仲間を捨てた報いとも言えるけど、根本的には河井案里をゴリ押しして今回の大逆風を招いた安倍菅二階といった連中のほうがよっぽど罪深いのにね。そういう政治力学に辟易してるから投票率三十数パーセントという数字に表れてるんでしょうし」


「まあそりゃあ呆れ返るよね。選挙が全部茶番だったって言われてるようなものだし」


 筆者も以前地元選出議員がしょうもない理由で辞任しての補欠選挙を体験したが、とにかくモチベーションが高まらなかった。再選挙となると尚更だろう。だから今回棄権した人の気持ちは大いに分かるし、それでも投票した人の強い意志に心から祝福したい。


 アホらし、誰が勝とうがどうでもいいわと萎えゆく気持ちをどうにか奮い立たせて投票に行くなんて、ああいう希望のない選挙は二度とやりたくないから最初の段階でしっかりした候補者を選ぼうねと心から主張したい。てめえだぞM崎K介。


「でもこういう時は呆れるよりももっと怒ってもいいんじゃないかしら。いつも戦ってばかりだと伊是名夏子だけど、時には立ち上がらなければずっと愚弄されっぱなしだから。というわけで今広島県で河井夫妻の次に嫌われてると噂の松山がまた守備について勘弁してほしいカープだけど」


「そんな無茶な繋ぎある? でも松山に手を出したくなるほど得点力不足が続いたりしてたし。どうしたらいいんだろう」


「特効薬はない。だから全員で乗り切っていくしかないでしょ。特定の選手ばかり頼ってると下位打線に堂林メヒア田中広輔投手がいて完封負けしまくった時期みたいになる。もちろんね、ショートにしても田中の成績が低迷してるからと言って小園を使えばたちどころに回復なんてものじゃないから。小園も使う、田中の復調にも期待する、それ以外の三好だの矢野だのにも持てる力を発揮してもらう。外野であれば長野松山中村奨成羽月、それぞれの良いところを組み合わせて一つの大きな力とする。人材はいるから、どう使いこなすかよ」


「特に先程名前が出た小園中村奨成羽月ら若手がこれから主力になっていくだろうって期待感はあるよね」


「二軍では石原も良いし、育成の木下も無視出来ない数字。まあこれからよ。投手陣は、案外新人トリオがまだ頑張ってくれてる。怪我から復帰の高橋昂也も悪くない。後は既存の選手の奮起よ。分かってるのかな。島内とかケムナの事なんだけど。遠藤も」


「投手もまた全員でスクラム組んで進むしかないか」


「順位的は四位だけど勝率はここまで五割だから、あえて騒ぎ立てるようなものではない。首位阪神とていつまでもこんなペースでいけるとは思えないし、何より三位にヤクルトがいる。つまりまだ順位はあてにならないって事よ」


「そしてカープより下には中日とDeNAがいる。特にDeNAは酷い成績だね」


「まさかここまで勝てないとはね。いきなり連敗から始まって、ちょっと勝ったかと思うとまたも大型連敗という歴史的な逆噴射スタート。ようやく入国した外国人もかなりのハイペースで一軍で使っているもののまだ本調子には見えない拙速さ。まあまだまだとは言えしんどそう。それとサンフレッチェだけどね、もはや当初の勢いは完全に失せた。ここからが本当の戦いになるわ。ジュニオール・サントスあたりはもっと使いこなせるはずなので、まずは残留第一という基本は忘れず個々の力を上手く引き出してほしいわ」


 このような事を語っていると敵襲を告げる合図が輝いたので、二人は密を避けて誰もいないところへ逃げ込むと、変身して戦いへと身を投じた。


挿絵(By みてみん)


「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のフェレット男だ。この星に住むという蛮族を飼いならしてやろう」


 ヨーロッパでイタチの仲間が家畜化した小動物で、元々は狩りに使われていたというが現在はペットとして日本でも広く認知されている動物の姿を模した異星からの使徒が花咲く丘の上に出現した。見た目は可愛らしいがあくまでもこれは愛玩動物の姿を借りた侵略者。勝手にさせてはならぬという事で地球からの使者もまもなく到着した。


「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「その外見の奥に秘めた攻撃性が本物だとしたら無視は出来ないわね」


「おう、これが噂の邪魔者どもか。討ち取って俺の手柄を増やしてくれる。行け、雑兵ども」


 フェレット男の野心的な指示にただ従うのみの殺戮マシーンが地面を突き破るようにして次々と出現したので、二人は撃破していった。


「よし、これで雑兵は打ち止めか。後はお前だけだフェレット男」


「生憎だけど私達は今のところペットを欲してもないしあなた方のペットになるつもりもないわ」


「ならば死ぬしかないようだな」


 フェレット男はそう言うと懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。大きくなればフェレットとてノロイの如き凶暴な動物も同然。だから渡海雄と悠宇は勇気を振り絞って合体し、目の前の暴力に対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 空に線を描く飛行機よりも小さくしか見えない大空中戦を繰り広げ、最終的には悠宇が持ち前の運動神経をフルに発揮して背中を突いた。


「よし、今よとみお君!」


「分かった。ここはドリルキックでとどめだ!」


 一瞬だけ生じたタイミングを見逃さず、渡海雄は青いボタンを叩いた。瞬く間に足がドリルに変身したかと思うと、勢いよく突撃してフェレットロボットの胴体に風穴を開けた。


「うおお、やるな。これほどの力を持ちながら浪費するしか能がないとは哀れな奴らだ」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置に載せられて、フェレット男は宇宙へと帰っていった。緊急事態宣言がまた発動したからゴールデンウィークはあんまり楽しめそうもないかな。Quo usque tandem abutere, Liberal Democratic Party, patientia nostra? てな感じで。

今回のまとめ

・人間時には怒りの声を上げねばならないし今こそその時ではないか

・特に広島は河井夫妻に蹂躙されてなお自民で良いはずがなかった

・コロナ対策にしてももっと真面目にやらないと総選挙でもどうなるやらだ

・カープもサンフレッチェもここからが踏ん張りどころ全員で戦おう

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