vm21 新スタジアム建設候補地一本化について
二月に入り、ちょっと暖かい日に春を感じたと思ったらまたぶり返すような寒さに襲われたりとまさしく三寒四温。一進一退を繰り広げながら、それでもこの島々は春に向けて前進している。
「いやあ、今日は建国記念日だって言うのに寒いねえ」
「本当にねえ。でも着実に春は訪れているものだからね。キャンプも始まって久しいし」
「カープのキャンプ、最初の頃は長野の動向がよくニュースになっていたけど、今では小園の報道も増えてきた感じだよね」
「二十数年ぶりの高卒ルーキー一軍スタートでありながら長野が注目を集めてくれたおかげでいい意味で埋もれていたけど嚢中の錐とはまさにこれで、実力で視線を引き寄せたわね。プレーの評価も高いし、それと体格も先輩と比べて見劣りしないのはしっかりと鍛えてきた証拠。そういう意識の高さもありそう」
「今後のアピール次第ではあるんだろうけど、今年いきなり一軍デビューもあるのかな?」
「そこは何とも言えないけど、想像以上に早い段階から出てくる可能性はありそう。まず二遊間に関しては、菊池と田中は同学年でしかも三十歳になる。そろそろ若い頃の俊敏さが失われる年代に突入してくるだけに、今は盤石であっても数年後を見るとむしろぽっかり口を開けているとさえ言える」
「しかも菊池はメジャー挑戦を希望してるしね」
「ポスティングとか言ってたわね。とは言え正直な話、去年みたいな打撃成績じゃいくら守備が良いと言っても厳しいから、そこは菊池涼介という商品の価値を高めるためにもしっかりやらないとね。出ていくのなら仕方ないけど、出ていき方ってのもあるからね。やはり今までチームに貢献してきた人なんだから、あんまり悲しい別れ方はしたくないじゃない」
「去年は丸がFAで出ていったし、やっぱりこれからはそういう話題も増えていくんだね」
「會澤のFAが近いとかね。でも別れがあればまた別の出会いもある。いつまでも変わらずにいる世界なんてないんだから、そこは前向きに考えていかないと。二遊間で言うと小園を筆頭に去年のドラフトで一気に人材を増やしたし、キャッチャーには坂倉がいる」
「坂倉は練習でも違いを見せているそうで、ブレイク期待しちゃうよね」
「ただ難しいのはキャッチャーというポジションの特殊性よ。枠は一人分しかないし、ピッチャーみたいに試合ごとにコロコロ変えるようなものでもない。それで現状、會澤という打撃に定評あるキャッチャーが一番手として存在してるわけだからね。守備面に関してはまだ鍛える部分もあるし、やはり二軍で経験を積み重ねるのが良いのか、試合出場が減るけど一軍の二番手三番手として育てるべきか」
「二番手以下に関しては、まずベテラン石原がいるけどそろそろ引退も見えてくる年齢だよね」
「七十年代生まれの、つまり今シーズン中には四十歳になる選手にそこまで無理はさせられないわ。また去年は三番手として磯村がそこそこ活躍してくれたけど、じゃあこの磯村が将来ポジションを奪う男かと問われると多分難しい。それを考えると坂倉をもう二番手クラスに据えて鍛えても良いのかなって考えたりもしてるけど」
「とは言え三連覇中のチームだからね。若手にとって簡単に潜り込めるものでもない」
「でもその中で育成していかなきゃならない。ただでさえFAなどでの大型補強は望めないチームなんだから、育てながら勝つのがまずは一番の理想だけど、それがどうやら難しそうな状況になった時は……。目先の勝利より育成と言うのはたやすいけど、実際そういう試合見たら多分イライラするでしょうね。やっぱり負ける姿より勝つ姿を見たいし」
「そうだね。他にもルーキーの正随も打撃でいいものを見せてるみたいだね」
「一方で守備はかなり拙いそうで、そのへんが六位指名になった理由なんでしょうけど素材としては面白そうよね。とは言え別に今すぐ台頭しないと厳しいわけでもないし、最初三年で出番ほぼゼロだった松山の例にならって二軍でみっちり鍛えていけば問題ないわ」
「まずは二軍でどれぐらいやれるかを見てみたいね」
「林も二軍でバックスクリーン直撃弾を放ったみたいだし、三拍子タイプのみならずこういうパワータイプの日本人がレギュラーに定着したらより強くなれるはず。それだけに焦らず着実に実力を培ってくれるとありがたい」
「野手は将来期待の逸材多いよね。投手陣はどうだろう」
「まずはトミー・ジョン手術から復帰の床田は面白そう。コントロールなんかもしっかりしてるのが良いわね。若い投手はそこが怪しい人多いし」
「矢崎とか」
「でもその矢崎も期待値では上の方になるぐらいにぱっとしない若手が多い。去年先発六番手は結局最後まで埋まらなかったし、リリーフもギリギリだった。それでジャクソンは退団して今村だって今年はどれだけ計算出来るかって状況の中で矢崎とか中村祐太、藤井といった年代の選手が出てこないときついわ」
「毎年のようにフランスアみたいな神風が吹くわけないもんね」
「ただ外国人の層は最初から厚いから、そこをフル回転させる事である程度はごまかせるかもね。とにかく投手陣に関してはもっと新しい発見がないと、それこそ破綻するわ」
「ルーキーの島内はどうかな?」
「案外それなりに使えるかも。とは言えルーキーに頼るようではね。やはり連覇継続の鍵は既存の、そして去年は出てこなかった戦力がどれだけ台頭するかよ。これからはより実戦形式の練習も増えて、そしてオープン戦の季節に突入する。そのサバイバルで誰が勝ち残るか、しっかり注目したいわね」
「そうだね。ところでJリーグのほうはもう今月に始まるね」
「あっという間よね。それでサンフレッチェは正直補強は極めて小ぶりなんだけど、それに加えて怪我人も続出してて本当に大丈夫って心配してしまうわ」
「アジアカップで青山が壊れたとか災難もいいところだったよね」
「アジアカップは、準決勝のイラン戦は良かったわね。それまでの試合は勝ち残るため意図的につまらない試合に持ち込んでたのでまあいいとして、決勝戦はかなり冴えない戦いだった」
「前半立て続けに二失点して、後半にようやく一点追いついてここから反撃かと思いきやつまらないハンドでPKを献上して万事休す。しょぼい負け方だったね」
「とは言え富安は今後日本を代表するセンターバックになる素質十分だし、大事なのはこれを今後にどう生かしていくかよ。それでサンフレッチェの話に戻るけど、とりあえずサロモンソンやドウグラス・ヴィエイラといった外国人の新戦力はやってくれないとね」
「去年後半戦は全然駄目だったから、そうやって新しい名前が躍動してくれるといいんだけどね」
「ACLのプレーオフとか言う面倒臭いイベントもあるし、いっそそこで敗退が一番楽なんじゃないのって思ったりもするけど、でもやっぱりこれもカープと同じでやるからには勝つのを見たいのは当然の欲求。ただリーグ戦で駄目だった元も子もないし、そこは首脳陣の手腕よね」
「まあその結果もそろそろ判明するとして、つい先日サンフレッチェの新スタジアム建設地が中央公園に決まったってニュースもあったね」
「これも時間がかかりすぎたから、一本化しただけじゃあんまり喜べなくなったのが悲しいわ。とにかく色々あって、そのやり方は良くないんじゃないかってものもあったけど最終的にこういう形で落ち着くのが事実だとすれば、それも本当は無駄じゃなかったって事になる」
「終わりよければって奴だね」
「ただスタジアムというものは建設すればそれがゴールになるような志の低いプロジェクトであってはならないし、あくまでもこれはサンフレッチェが、そして広島市が次の成長を迎えるためのステップとして有効活用していかないとね。そこは市民球場の前例もあるし釈迦に説法だけど」
「どんな感じのスタジアムになるんだろうね」
「報道を見ると三万人規模って事だし、それと住宅地が近いからそれに配慮したデザインにもなってくるはず。これからもっと詳細な完成予想図とか出てきたら実感も湧いてくるだろうし、早くそういうのを見てみたいわ」
「場所としてはとてもいいところみたいだしね」
「広島城の横というまさに一等地だけにJRに広電にアストラムラインと、交通手段が色々あるのが今のビッグアーチとは大きく違うところよ。バスセンターも近いし、やっぱり便利さが段違い。五年後には完成を目指すって目標も出てたし、さすがにもう話はついてると信じたい」
このような話をしていると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので、二人は覚悟を決めて戦闘モードへと移行した。
「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のパーカーホ女だ。面倒な任務だがまあしっかりやろうか」
東南アジアに生息する巨大な鯉の姿を模した侵略者がまだ草木の生え揃わない枯れ山に出現した。現地では食用にされて絶滅が危惧されているが、この女はむしろ人間を絶滅させかねない危険な存在であり、それを止める対抗手段は間もなく登場した。
「出たなグラゲ軍。お前たちの好きにはさせないぞ」
「相変わらず攻めてくるわね。でも勝手にはさせないわ」
「あーあ、出てきたか。黙って受け入れてくれたら楽なのにね。ならば雑兵ども、奴らを打ちのめせ」
パーカーホ女の指示に従い感情なく襲いかかる雑兵を、二人は次々と破壊していき、残った敵はボス一人だけにした。
「よし、これで雑兵は片付いたか。後はお前だけだパーカーホ女」
「これから暖かくなる世界なのに冷たい争い以外の道はないわけじゃないでしょう」
「何を生温い言葉を。お前たちを倒せば私は出世する。それは十分戦う理由になるだろう」
パーカーホ女はそう言うと懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。今回の敵はあんまりやる気なさそうだったのにやっぱり戦うしかないのか。二人は覚悟を決めて合体した。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
寒波も曇り空も切り裂くような空中戦が繰り広げられたが、相手は巨体ゆえに俊敏性に欠けたのが災いした。悠宇はグルグル回るように立ち回って、有利なポジションを奪ってから攻撃を仕掛けられた。
「よし、そろそろいいんじゃないのとみお君!」
「そうだねゆうちゃん。ここでエメラルドビームの出番だ」
渡海雄は冷静に緑色のボタンを押した。輝く瞳から放たれるエメラルド色の炎はパーカーホロボットを焼き尽くした。
「ふう、駄目か。こんな辺境まで来て骨折り損とはねえ」
機体が爆散する寸前に作動した脱出装置でパーカーホ女は宇宙へと帰っていった。三連休は軒並み寒かったけど、これからもっと暖かくなっていくだろう。
そして今年も一応順位予想。戦力を見ると川崎鹿島浦和が強いのかなとは思う。実際問題川崎の三連覇も決して夢物語ではないだろう。それでもあくまで優勝予想はサンフレッチェ。全部がうまくいけば優勝出来ないはずがない。とにかく順位全体に言えるが、期待するのをやめないのが基本となってくる。
J2に関しては、やはり本命は柏だろう。選手は多少抜けたがそもそも落ちる戦力じゃなかったし。次は大宮といきたいところだが、心の中で推しきれないものがある。鹿児島ユナイテッドの美しい略称がなかなか思いつかなかったので、いつかもっと色々考えてこれだという名前にしたいところ。
01 広島 もはや問答無用
02 川崎 連覇もしたし補強も上等でやはり本命に近い
03 鹿島 選手は優秀だけど首脳陣の選定には疑問符
04 浦和 何となく新鮮味に欠ける
05 清水 期待してるけどドウグラスの状態が気がかり
06 脚阪 宮本監督の真価が問われるシーズンとなりそう
07 桜阪 ロティーナ監督就任も主力えぐられたのは不安
08 札幌 都倉退団はあったが穴埋めは十分なはず
09 神戸 せめて一桁には入らないと恥
10 仙台 案外台風の目になりうるかもと期待している
11 東京 広島並に失速がきつかったけど立て直せるか
12 湘南 いいチームだけどそれ以上の何かを掴めれば
13 鳥栖 権田が抜けたGKの穴をどうするか気になる
14 名鯱 金かかってる割に意外と弱そうな面子
15 横浜 親会社ゴタゴタしてるし守備も危ないような
16 大分 補強は悪くないし片野坂監督の神通力に期待
17 磐田 ギリギリ残留だった上に補強も弱くいささか不安
18 松本 選手がJ1レベルに対応出来れば浮上も
01 柏柏 そもそも落ちちゃいけないチームだったし
02 山口 期待も込めてここだ工藤はまだやれるだろ
03 大宮 選手層からすると柏に続いて本命クラスだが
04 長崎 抜けた戦力は痛いが手倉森監督の手腕に期待
05 徳島 そろそろプレーオフ圏内入らないと
06 東京 新エンブレムは良いけど新監督はどの程度か
07 横浜 外国人は有力どころ揃ってるしそろそろかも
08 甲府 ウタカ一層胡散臭い顔つきになってる
09 新潟 さすがに去年は悪すぎた
10 福岡 井原監督退任がどう作用するか
11 町田 安定して上位に食い込めるようなら凄い
12 山形 選手はまあまあだし順位もまあまあか
13 千葉 人事みるともはや勝利に価値を置いてなさそう
14 岡山 もうちょっと戦力の盛り上がりみたいなものがないと
15 水戸 終わってみればこのへんでまとめてきそう
16 京都 毎度毎度監督選びの段階でギャグを挟む意味が分からない
17 岐阜 戦力的にはこの程度じゃ困るんだけど岐阜だし
18 愛媛 存在感では今治の後塵を拝してるし正念場か
19 鹿児 やんちゃな男の子っぽい感じのマスコットが結構好み
20 金沢 消去法の末路でこんな低くなってしまった
21 栃木 戦力的に大変そうだけど監督中心に粘れるか
22 琉球 チームカラーは格好良いと思うし頑張れ
今回のまとめ
・指先が凍えそうでも期待感は高まる一方
・投手陣で新しい何かが出てくるとありがたいのだが
・サンフレッチェは頼むから降格だけはしないでね
・新スタジアム本当に出来そうでとりあえず安堵